記憶を売る本屋 2
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#495 [我輩は匿名である]
良介はまるで見下すような目で薫を見る。
「そういう事じゃない」
「同じ事だろ?響子ちゃんと離れたくないなら、僕に勝てば良いだけの話だ。
1回僕に負けたからか?そりゃあれだけ自信満々に乗ってきたのに…」
「いい加減にしろよ」
薫は口調を強め、良介を睨む。
「ちょっと喋らせておけば調子に乗りやがって…。
“俺”とキョウコの事を何も知らない“ただの幼なじみ”が意気がってんじゃねぇぞ…!」
:10/10/31 08:42
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:eAY8INGU
#496 [我輩は匿名である]
薫の話に、良介は眉をひそめる。
「(何だ…?こいつと響子ちゃんの間に、何かあるのか…?)」
前世の事について全く何も知らない良介は、薫のその言葉が気になった。
「……こわっ」
「完璧にキレてるな…」
隣で2人の様子を見ている直人達は、ちょっとハラハラしている。
響子も、いつもと違って、かなり不安そうな顔で薫を見つめている。
:10/10/31 08:43
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:eAY8INGU
#497 [我輩は匿名である]
「…『何も知らないくせに』っていうんなら」
良介は真剣な顔で薫を見る。
「響子ちゃんと何があったか、僕に全部話してくれよ」
「言っても信じねぇよ。お前に言ったって、嘲笑われて終わるだけだ」
「そんな事わからないだろ!?」
珍しく、良介が本気で声を荒げる。
それを、薫は黙ってじっと見ている。
「…じゃあお前」
少し考えた後、薫は落ち着いた声で口を開く。
:10/10/31 08:43
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:eAY8INGU
#498 [我輩は匿名である]
「生まれてくる前から俺と響子が知り合いだったって言ったら、信じるか?」
そう言われて、良介は理解できないという顔で首をかしげる。
「そんな事あるわけ…」
良介はそこまで言って、ハッとある事を思い出した。
「……もしかして、前に言ってた…」
「…ここでするような話じゃない」
やっと話を理解しはじめた良介に、薫は背を向ける。
「本当に知りたくなったら聞きに来い。
…軽い気持ちで来たら張り倒す」
薫は見向きもしないまま言い放って、教室に入っていった。
:10/10/31 08:44
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:eAY8INGU
#499 [我輩は匿名である]
「……とうとう言わないといけなくなっちゃったな」
飛鳥がボソッと直人に言う。
直人も呆れたように「あぁ…」と返事して、ふと響子に目をやる。
響子は思い悩んだ表情でうつむいている。
そして、彼女も無言のまま教室へ去っていった。
「(どうしたんだろ?響子…)」
飛鳥は気にしながら、響子の背中を見つめる。
良介もその場を離れ、直人と飛鳥は顔を見合わせる。
:10/10/31 08:44
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#500 [我輩は匿名である]
「………あ、俺自分の順位見てねぇわ」
直人はちょっととぼけるように言って、また紙を見直す。
しかし、自分の順位を見つける前に目を止めた。
『7位:神崎 飛鳥(8組) 451点』
「………………なぁ」
「何?」
「…………これ、お前?」
直人は飛鳥の名前を指差して、目を丸くする。
「…あたししかいないじゃん」
飛鳥はかなり恥ずかしそうに答える。
:10/10/31 08:45
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:eAY8INGU
#501 [我輩は匿名である]
答えを聞いて、直人はさらにきょとんとする。
「………えっ!?え!?お前っ、…はぁ!?」
いきなり順位を上げた飛鳥に、直人は混乱する。
しかし、落ち着いて考えて、直人はやっと理解した。
「最近さっさと家に帰ってたのって、勉強する為か?
薫と喋ってたのは、勉強教えてもらってたのか!?」
「………うん」
顔を背けて、飛鳥は頷く。
:10/10/31 08:45
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:eAY8INGU
#502 [我輩は匿名である]
「…何かに力入れてみろって言ったじゃん?
だから、ちょうどいいかな、と思って…」
「偉いっ!!」
直人は満面の笑みで飛鳥の肩を叩く。
「やったじゃん!今日は胸張って弟に嫌みかましてやれよな!」
「………うん」
飛鳥は嬉しそうに小さく笑って頷いた。
まるで自分の事のように喜びながら、直人は教室に向かって歩きだす。
「(………やっぱり)」
彼の姿を見ながら、飛鳥は心の中で呟く。
:10/10/31 08:46
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:eAY8INGU
#503 [我輩は匿名である]
「(あたし、あいつの事好きだな…)」
今まで曖昧に思っていた事。
それが今、改めてはっきりとわかった。
「神崎?どうかしたか?」
直人がこっちを向く。
「…ううん、何にも」
飛鳥は答えて、一緒に教室に向かった。
:10/10/31 08:46
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:eAY8INGU
#504 [我輩は匿名である]
放課後。
家の前で、飛鳥は少し緊張していた。
隣に響子はもういない。
自分が頑張って7位をとった事を言うと、彼らは何と言うだろう。
もしも、「そうですか」で終わらされたら…。
そう思うと、なかなか踏み出せずにいるのだ。
「邪魔だよ、そこ」
ドアの前でボーッとしていると、背後から巧の声がした。
:10/11/05 15:44
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