記憶を売る本屋 2
最新 最初 🆕
#582 [我輩は匿名である]
「………まぁな……。ガラス館で…買い物したいって言ってたから……」

呼吸を整えながら、薫はちょっと恥ずかしそうに答える。

「香月、大丈夫かなぁ?」

「…響子は割と丈夫なほうだし…大丈夫だろ…」

「そうだな」

全員揃ったのを再確認して、バスはやっと発車した。

⏰:10/12/30 17:29 📱:N08A3 🆔:FW8KT5jQ


#583 [我輩は匿名である]
ホテルに着いたのは、それから約1時間後の事だった。

部屋に入るなり、直人はベッドにダイブする。

「はぁ〜フカフカ〜♪」

「やめろよ、埃立つだろ」

うっとうしそうに咳払いをしながら、薫もベッドに腰を下ろす。

3人部屋なので少し狭いが、泊まるにはなかなかいいホテルだ。

「今日の晩飯何かなぁー」

直人は寝転がってしおりを広げる。

その横で、薫はふと、さっきから良介が大人しい事に気付いた。

⏰:10/12/30 22:19 📱:N08A3 🆔:FW8KT5jQ


#584 [我輩は匿名である]
「どうしたんだ?気持ち悪いぐらい大人しいな」

不審そうに尋ねるが、良介はベッドに寝転んで、何も言わない。

「(………変な奴。まぁ元々だけど)」

「飯まで暇だな。テレビでも見るか♪」

直人は2人の空気の悪さに気付く事なく、独り言を言いながら勝手にテレビをつける。

「この時間は何もいい番組ないじゃないか」

「わかんねぇだろ?そんな事。つーか、チャンネルおかしくね?」

⏰:10/12/30 22:20 📱:N08A3 🆔:FW8KT5jQ


#585 [我輩は匿名である]
「やっぱり君バカだよね。地方が違うんだからチャンネルが変わるのは当たり前じゃないか」

「あぁ!そうか!」

良介に言われて、直人は納得して頷く。

その横で、薫は鞄からルーズリーフを取り出し、テーブルで何か書き始めた。

⏰:10/12/30 22:20 📱:N08A3 🆔:FW8KT5jQ


#586 [我輩は匿名である]
「…おっ、そろそろ飯の時間じゃね?」

1時間ほどして、直人がふと時計に目をやって言った。

「本当だな。そろそろレストランの前に集まらないとな」

ずっとルーズリーフと睨めっこしていた薫も、それを裏返して立ち上がる。

「さーて、行くか」

テレビを消して、直人もひょいっとベッドから降りる。

「……あ、僕ちょっとトイレ行ってから行くから、先に行ってて」

良介は少し苦笑いして2人に言う。

⏰:10/12/31 10:47 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#587 [我輩は匿名である]
「は?待ってるからさっさと行けよ」

「待たれると焦るんだよ。すぐ行くから」

「ふぅん。じゃあ先行くぞ」

直人は何も疑わず、薫を連れて部屋を出た。

部屋に残った良介は、ちょっと間考え込む。

そして、静かにテーブルに近づき、薫のルーズリーフを拾い上げた。

1番上に『響子へ』と書かれたのを見ると、手紙のようだ。

体調を心配している事や、初めての手紙で緊張している事が書かれている。

途中、良介にはすぐに理解できない内容が出てきた。。

⏰:10/12/31 10:47 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#588 [我輩は匿名である]
『そういえば、まだカレー作ってませんね。

俺が「飯作る」って言った時の今日子の嬉しそうな顔は、今でもはっきり覚えてます。

思えば、結婚してからあんなに喜ばせた事無かったかも知れませんね。

俺は仕事ばっかりで、家に帰っても今日子に何もしてあげられなかったし…。

だから(って事もないけど)、せめて霜月優也よりはいい男になろうと思います。

……なんか、何を書いてるのかわからなくなってきた。

とりあえず、ゆっくり休んで早く元気になって下さい。 月城薫』

⏰:10/12/31 10:48 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#589 [我輩は匿名である]
「(これ…前に言ってた都市伝説の話か…?)」

良介は最後まで目を通し、少しの間立ちすくむ。

そして、またルーズリーフをテーブルに置いて、さっさと部屋を出た。

⏰:10/12/31 10:48 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#590 [我輩は匿名である]
夕飯を終えて、薫はある部屋の前に立っていた。

インフルエンザにかかった生徒が隔離されている部屋だ。

ノックをすると、マスクをした養護教諭が出て来た。

「はーい。あら?どうしたの?体調不良?」

「いえ。…4組の香月響子って、いますか?」

「香月さん?いるわよ。今寝てるけど」

「…そうですか。…しんどそうですか?」

⏰:10/12/31 10:50 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#591 [我輩は匿名である]
「ううん。予防接種してたらしいから、熱が出てるだけでピンピンしてるわよ。

暇だ暇だってずーっと嘆いてるわ」

養護教諭は笑って話す。

響子らしいな、と思いつつ、薫もホッとしたように笑い返す。

「香月さんに何か用?」

「あぁ、はい。これ…渡してもらえますか?」

薫は今日1人で買いに行ったプレゼントを養護教諭に見せる。

中にはあの手紙も一緒に入っている。

「あら、プレゼント?あら〜♪いいよ、渡しといてあげる。名前は?」

⏰:10/12/31 10:50 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194