記憶を売る本屋 2
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#605 [我輩は匿名である]
「飽きてきたな」
「水無月って飽きっぽそうだもんね。そろそろ戻ろっか?」
「だな」
2人の部屋があるのは、今いる所のもう1つ上のフロア。
直人達はまたぼちぼち歩いて、自分達のフロアに戻ることにした。
「……水無月ってさ」
廊下を歩きながら、奏子がおずおずと口を開く。
「ん?」
:11/01/02 18:56
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:HkuEKuJ6
#606 [我輩は匿名である]
「……好きな子とかいるの?」
「…は?」
思わぬ質問に、直人はきょとんとする。
が、奏子の表情はいつになく真面目だ。
「え…何でいきなり…?」
「…ちょっと、気になってさ。…で、いるの?いないの?」
「いや…」
直人の脳裏に、一瞬飛鳥の顔がよぎる。
しかし、奏子に問い詰められ、とっさにこう答えてしまった。
:11/01/02 18:57
:N08A3
:HkuEKuJ6
#607 [我輩は匿名である]
「いないけど…」
その答えに、奏子も少し目を丸くする。
「本当に?」
「あぁ、まぁ…」
直人はどうすればいいのかわからず、適当に頷く。
「…じゃあ、さ」
奏子は直人から目を逸らす。
「……あたしと、付き合ってよ」
「………へ?」
:11/01/02 18:58
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:HkuEKuJ6
#608 [我輩は匿名である]
何かの冗談だろう。直人は思った。
「え…本気?」
「当たり前じゃん!こんな事冗談で言う!?」
奏子は恥ずかしそうに顔を赤らめる。
それを見て、直人もようやく実感がわいた。
告白されたんだ、俺。
:11/01/02 18:58
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:HkuEKuJ6
#609 [我輩は匿名である]
「えっ、ちょっ、俺!?そんな…」
直人は動揺し、おろおろする。
それを見て、つられて奏子も焦りだした。
「まっ、まぁすぐ答えてもらえると思ってないし!考えといてよ!ね?」
「あ、あぁ…」
2人はお互い目を合わせずに、自分達の部屋に戻った。
:11/01/02 18:59
:N08A3
:HkuEKuJ6
#610 [我輩は匿名である]
薫と良介は、そろってまじまじと直人を見る。
午前中に部屋に戻ってきた時から、どうも様子がおかしい。
午後のスキーは楽しそうに滑ってはいたものの、飛行機に乗る時みたいにはしゃぎはしなかった。
夕飯も風呂も、ひたすらボーッとしていた直人。
「直人、何かあったのか?」
「うーん…」
「うーん、じゃわからないだろ!」
「うーん…」
薫と良介が話し掛けても、これだ。
:11/01/02 21:34
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:HkuEKuJ6
#611 [我輩は匿名である]
痺れを切らした良介が、直人の肩を掴んで前後に揺さ振り始める。
「何なんだよ!気になるじゃないか!言えよ!」
「まぁ落ち着けよ」
薫は冷静に、良介の手を止める。
すると、直人は少し顔を上げて、やっと口を開いた。
「……俺、…告られちゃった…」
何の事かわからず、ちょっと間2人はぽかんとする。
「…え?」
「だから!付き合ってくれって言われたの!」
:11/01/02 21:34
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:HkuEKuJ6
#612 [我輩は匿名である]
「………えぇー!?」
まさかの言葉に、2人は思わず声を上げる。
「何で!?誰に!?」
「『何で!?』は無いだろ…」
直人に食い付く良介に、薫は呆れながら呟く。
「…安斎」
「安斎?」
「…誰?」
「絶対言うと思った」
:11/01/02 21:35
:N08A3
:HkuEKuJ6
#613 [我輩は匿名である]
奏子だとわかっていない良介に、直人と薫は声を合わせる。
「響子の友達だよ、5組の」
「あのデカい女?」
「それは8組の神崎飛鳥」
「……あぁ!あのショートカットの方か!で、何で?」
「そんな事俺に聞くなよ!」
「そうじゃなくて!何で悩んでるんだよ?嫌いなのか?」
「…嫌いとかじゃねぇよ。そうじゃないけど…」
嫌ではないようだが、どこか煮え切らない様子。
:11/01/02 21:35
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:HkuEKuJ6
#614 [我輩は匿名である]
「………神崎か?」
事情を知っている薫が尋ねる。
「え、あのデカい女が好きなのか?」
「……わかんね」
直人は大きくため息を吐く。
奏子に告白されてから、要もなぜか黙ったままだ。
「嬉しいよ?嬉しいんだけど、何か…モヤモヤするっていうか…。
あいつに『好きな奴いるのか』って聞かれて…パッと浮かんだのが…」
「…神崎だったんだな」
:11/01/02 21:35
:N08A3
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