記憶を売る本屋 2
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#631 [我輩は匿名である]
「…あそこじゃね?」

しばらく滑ると、斜面の右端で女子グループが留まっているのを見つけた。

「…みたいだけど、邪魔だな。もうちょっと降りて」

要に指示されて、直人はルートを変えて更に降りる。

「……あ、止まって」

直人は言われた通りに、右に寄って止まる。

女子グループが止まっている所とふもとの、ちょうど中間くらいの高さだ。

また、さっきよりも少し斜面が緩やかに見える。

⏰:11/01/04 21:23 📱:N08A3 🆔:CNkCJZG6


#632 [我輩は匿名である]
「…ここから降りれる?」

緩やかながらも、やはり危険なのか、進入禁止のテープが張ってある。

「…あぁ」

「気をつけてね。お前が怪我したらどうしようもないんだから」

「へっ、そんなヘマするかよ」

ひと呼吸おいた後、テープをくぐり、コースを外れて滑りだした。

今までの斜面より急勾配だが、集中していれば滑れない事もない。

しかし、雪の質がゲレンデとは違ってフカフカなため、少々滑りにくい。

⏰:11/01/04 21:23 📱:N08A3 🆔:CNkCJZG6


#633 [我輩は匿名である]
「つーかさぁ!何でお前わかんの!?」

「そんな大声を出さなくても十分聞こえてるよ」

「うっせぇ!さっきからスピード出し過ぎて耳痛ぇんだよ!で、何で!?」

「……俺は、ちょっと特別だからだよ」

「はぁ!?何それ!?どういう……あ!」

話している途中で、前方に誰かが倒れているのを見つけた。

「いた!!」

ストックで雪を蹴り、さらにスピードを上げる。

転びそうになりながらも、何とか降りきった。

⏰:11/01/04 21:23 📱:N08A3 🆔:CNkCJZG6


#634 [我輩は匿名である]
「神崎!」

急いでスキー板を外して、飛鳥に駆け寄る。

見たところ、血は出ていない。

うつ伏せになっている飛鳥を抱き起こし、何度も声をかける。

すると、飛鳥がうっすらと目を開けた。

「神崎、大丈夫か!?」

「水無月…?」

飛鳥はボーッとしながら、直人の名前を呼ぶ。

「怪我は?どっか痛いとこ無いか?」

⏰:11/01/05 19:20 📱:N08A3 🆔:4VAH5Vzw


#635 [我輩は匿名である]
「……無い……ていうか……寒くてわかんない…」

転げ落ちている時にとれたのか、帽子や手袋が無くなっている。

直人は自分の手袋を外し、飛鳥に付けてやった。

「水無月…」

「あ?」

「…ありがと…」

飛鳥はホッとしたように、直人に笑いかけた。

「…何死にそうな顔してんだよ」

「だ…誰が死にそうな顔してんのよ…」

⏰:11/01/05 19:20 📱:N08A3 🆔:4VAH5Vzw


#636 [我輩は匿名である]
呆れた顔で言い返してくるのを見ると、どうやら大丈夫そうだ。

「今から運んでやるから、もうちょっと頑張れよ」

「うん…」

「…死んでもいいとか、考えるんじゃねーぞ」

「考えねーよ…」

「よし」

直人は飛鳥に自分の帽子をかぶせ、飛鳥を背負って立ち上がる。

「……はぁ……温かい…」

直人におんぶされて、飛鳥は小さな声で言った。

⏰:11/01/05 19:21 📱:N08A3 🆔:4VAH5Vzw


#637 [我輩は匿名である]
「水無月…ちょっと寝ててもいい…?」

「あぁ」

直人の返事を聞いて、飛鳥は目を閉じた。

「運ぶはいいけど、どこに行けばいいか知ってるの?」

飛鳥との会話が終わったのを見て、要が話し掛けてきた。

「知ってるわけねーだろ。案内して」

直人は当然のように答える。

「いいけど、あの板と棒どうするの?」

⏰:11/01/05 19:21 📱:N08A3 🆔:4VAH5Vzw


#638 [我輩は匿名である]
レンタルの物だが、やっぱり持って帰らないと怒られるだろうか?

しかし、飛鳥を背負っているため、手が空いていない。

「仕方ないなぁ…」

要がそう言ったのと同時に、直人は一瞬眩暈を感じた。

転ばないように足を踏張り、眩暈を振り切るように首を横に振る。

そして顔を上げ、直人は自分の目を疑った。

「やぁ♪」

目の前にいるのは、違う制服を着た、自分とそっくりの男。

⏰:11/01/05 19:22 📱:N08A3 🆔:4VAH5Vzw


#639 [我輩は匿名である]
「…要…?」

「ぴんぽーん♪」

要はにっこり笑って答える。

見た目も声も要そのものだが、なぜここにいるのだろうか。

「えっ!?何で!?お前さっきまで俺の中にいたじゃん!」

「まぁまぁ落ち着いて。歩きながらゆっくり話すから」

要はそう言って、スキー板とストックを持って歩きだす。

何が何だかわからないまま、直人もそれについて行く。

⏰:11/01/06 18:21 📱:N08A3 🆔:zqGirkmY


#640 [我輩は匿名である]
「…やっと教えてくれる気になったか?」

「まぁね。到着までの間だけ、聞きたい事に答えてあげるよ」

「じゃあ…」

直人は早速何かを聞こうと思ったが、ふと考えた。

聞きたい事がありすぎて、何から聞けばいいのかわからない。

「どこから聞けばいいのかわからなくて迷ってるだろ」

「…うん」

「じゃあ、どうして俺がこの時代にいるのか、から話そうか」

⏰:11/01/06 18:22 📱:N08A3 🆔:zqGirkmY


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