記憶を売る本屋 2
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#671 [我輩は匿名である]
「何だよそれ…」
直人は呆れたように笑う。
「でも…良かったよ。…お前が大した怪我してなくて」
「…うん」
飛鳥は返事をして下を向く。
「水無月」
「何…?」
「…ありがとう」
飛鳥の声が震えているのを聞いて、直人は飛鳥を見る。
:11/01/16 23:31
:N08A3
:DOuhzdZM
#672 [我輩は匿名である]
「嬉しかった。来てくれるって、思ってなかったし…。
あたしを背負ってくれたあんたの背中…すごい温かくて…、
『良かった、あたしまだ生きてる』って…そう思えて…」
安心したからか、遭難した時の事を思い出してか、飛鳥の目から涙がこぼれ落ちる。
それを見て、直人は焦り始める。
「ちょ、おい、何だよ、泣くなよ…」
「ごめん…。だって、こんな事思うの初めてで…。
助けに来てくれたあんたの顔見て初めて、『あぁ生きてて良かった』って思った…」
飛鳥は両手で涙を拭きながら笑ってみせる。
:11/01/16 23:31
:N08A3
:DOuhzdZM
#673 [我輩は匿名である]
「…俺も…お前が生きてて良かった。
あの吹雪の中で、お前が目を覚まして俺の名前を呼んだ時…すげぇホッとした。
何かよくわかんねぇけど…お前だけは死なせちゃダメだって思って…。
…気を付けろよな」
「あ、あたしのせいじゃ無いし!」
「…じゃあ何であんなとこに落ちたんだよ…?」
「…それは…」
2人はそれから、担任の教師が来るまでずっと一緒にいた。
:11/01/16 23:32
:N08A3
:DOuhzdZM
#674 [我輩は匿名である]
その後、直人も飛鳥も特に問題ないと判断され、他の生徒達と一緒に帰れる事になった。
あれだけ寝たというのに、直人は飛行機の中でもずっと眠っていた。
今までの直人とは打って変わって、はしゃぐ事もなかった。
スキー実習で疲れて眠る生徒もいたが、そんな軽症なものではない。
それに気付いた薫が飛鳥に事情を聞き、後日薫を通して響子にも伝えられた。
:11/01/16 23:35
:N08A3
:DOuhzdZM
#675 [我輩は匿名である]
代休を挟んだ休み明け。
まだ眠気とだるさが完全には抜けないが、直人は何となく早めに学校にやってきた。
「おはよう」
教室に入ると、珍しい事に飛鳥がすでに登校して来ていた。
「おう、珍しく早いな」
「今日日直だったからね」
「よく覚えてたな」
直人は笑いながら自分の席に着く。
飛鳥も直人の前の席に座る。
:11/01/22 12:54
:N08A3
:ZOWzt0vc
#676 [我輩は匿名である]
「…大丈夫?眠たいの治った?」
「ん?あぁ、だいぶな。まだちょっとだるいけど」
「そうだね。あの時より元気そうに見える」
飛鳥は安心したように笑う。
「家でずーっと寝てたからな」
鞄から机に教科書を放り込みながら、直人も笑って返事する。
「さて、あたしノート取ってくる」
「取って来なかったのか?」
「持てなかったんだよ。鞄も持ってたし」
:11/01/22 12:55
:N08A3
:ZOWzt0vc
#677 [我輩は匿名である]
「あぁなるほどな。暇だし、手伝いに行ってやるよ」
「ゆっくりしてればいいのに」
「いいよ別に。お前手痛めてただろ」
直人は飛鳥に笑いかけて、さっさと立ち上がって歩きだす。
飛鳥も直人について教室を出る。
「…なんか、いつも助けてもらってばっかりだね、あたし」
廊下を歩きながら、飛鳥は申し訳なさそうに言う。
「な、何だよ急に。気持ち悪い」
「だってそうじゃん。あたし全然お礼とか出来てないしさぁ…」
:11/01/22 12:55
:N08A3
:ZOWzt0vc
#678 [我輩は匿名である]
「お礼したいの?」
「そりゃしたいよ!」
「ふぅん。じゃあ楽しみにしてるわ」
直人はそれほど期待せずに返事をする。
「…何か、欲しいものとかある?」
階段を下りながら、飛鳥は直人に尋ねる。
今のところ特に何もない直人は、腕を組んで考える。
「今んとこ、無いかな」
「じゃあ、まぁ考えといてよ」
「あぁ」
:11/01/22 12:56
:N08A3
:ZOWzt0vc
#679 [我輩は匿名である]
話が終わるとほぼ同時に、職員室の前に到着した。
棚の中には、スキー実習前に提出したノートが約40人分と、プリントの束が入っている。
「な?俺が来てて良かっただろ?」
「うん」
ノート等の量を見て、飛鳥は大きく頷く。
飛鳥はプリント類を、直人はノートを抱えて、また教室に引き返す。
すると、誰かが後ろから2人の背中をポンと叩いた。
「おはよ♪」
後ろにいたのは、ちょうど登校してきた奏子だった。
:11/01/22 12:56
:N08A3
:ZOWzt0vc
#680 [我輩は匿名である]
「おはよう」
飛鳥は普通に挨拶するが、直人は奏子を見て思い出した。
「(…そうだ、こいつに返事しないと)」
しかし、今は飛鳥がいるし、自分も両手にノートを抱えている。
「(…後でちょっと話すか)」
直人はそう心の中で決めて、教室に戻った。
:11/01/24 19:59
:N08A3
:OV5OGioo
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