記憶を売る本屋 2
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#672 [我輩は匿名である]
「嬉しかった。来てくれるって、思ってなかったし…。

あたしを背負ってくれたあんたの背中…すごい温かくて…、

『良かった、あたしまだ生きてる』って…そう思えて…」

安心したからか、遭難した時の事を思い出してか、飛鳥の目から涙がこぼれ落ちる。

それを見て、直人は焦り始める。

「ちょ、おい、何だよ、泣くなよ…」

「ごめん…。だって、こんな事思うの初めてで…。

助けに来てくれたあんたの顔見て初めて、『あぁ生きてて良かった』って思った…」

飛鳥は両手で涙を拭きながら笑ってみせる。

⏰:11/01/16 23:31 📱:N08A3 🆔:DOuhzdZM


#673 [我輩は匿名である]
「…俺も…お前が生きてて良かった。

あの吹雪の中で、お前が目を覚まして俺の名前を呼んだ時…すげぇホッとした。

何かよくわかんねぇけど…お前だけは死なせちゃダメだって思って…。

…気を付けろよな」

「あ、あたしのせいじゃ無いし!」

「…じゃあ何であんなとこに落ちたんだよ…?」

「…それは…」

2人はそれから、担任の教師が来るまでずっと一緒にいた。

⏰:11/01/16 23:32 📱:N08A3 🆔:DOuhzdZM


#674 [我輩は匿名である]
その後、直人も飛鳥も特に問題ないと判断され、他の生徒達と一緒に帰れる事になった。

あれだけ寝たというのに、直人は飛行機の中でもずっと眠っていた。

今までの直人とは打って変わって、はしゃぐ事もなかった。

スキー実習で疲れて眠る生徒もいたが、そんな軽症なものではない。

それに気付いた薫が飛鳥に事情を聞き、後日薫を通して響子にも伝えられた。

⏰:11/01/16 23:35 📱:N08A3 🆔:DOuhzdZM


#675 [我輩は匿名である]
代休を挟んだ休み明け。

まだ眠気とだるさが完全には抜けないが、直人は何となく早めに学校にやってきた。

「おはよう」

教室に入ると、珍しい事に飛鳥がすでに登校して来ていた。

「おう、珍しく早いな」

「今日日直だったからね」

「よく覚えてたな」

直人は笑いながら自分の席に着く。

飛鳥も直人の前の席に座る。

⏰:11/01/22 12:54 📱:N08A3 🆔:ZOWzt0vc


#676 [我輩は匿名である]
「…大丈夫?眠たいの治った?」

「ん?あぁ、だいぶな。まだちょっとだるいけど」

「そうだね。あの時より元気そうに見える」

飛鳥は安心したように笑う。

「家でずーっと寝てたからな」

鞄から机に教科書を放り込みながら、直人も笑って返事する。

「さて、あたしノート取ってくる」

「取って来なかったのか?」

「持てなかったんだよ。鞄も持ってたし」

⏰:11/01/22 12:55 📱:N08A3 🆔:ZOWzt0vc


#677 [我輩は匿名である]
「あぁなるほどな。暇だし、手伝いに行ってやるよ」

「ゆっくりしてればいいのに」

「いいよ別に。お前手痛めてただろ」

直人は飛鳥に笑いかけて、さっさと立ち上がって歩きだす。

飛鳥も直人について教室を出る。

「…なんか、いつも助けてもらってばっかりだね、あたし」

廊下を歩きながら、飛鳥は申し訳なさそうに言う。

「な、何だよ急に。気持ち悪い」

「だってそうじゃん。あたし全然お礼とか出来てないしさぁ…」

⏰:11/01/22 12:55 📱:N08A3 🆔:ZOWzt0vc


#678 [我輩は匿名である]
「お礼したいの?」

「そりゃしたいよ!」

「ふぅん。じゃあ楽しみにしてるわ」

直人はそれほど期待せずに返事をする。

「…何か、欲しいものとかある?」

階段を下りながら、飛鳥は直人に尋ねる。

今のところ特に何もない直人は、腕を組んで考える。

「今んとこ、無いかな」

「じゃあ、まぁ考えといてよ」

「あぁ」

⏰:11/01/22 12:56 📱:N08A3 🆔:ZOWzt0vc


#679 [我輩は匿名である]
話が終わるとほぼ同時に、職員室の前に到着した。

棚の中には、スキー実習前に提出したノートが約40人分と、プリントの束が入っている。

「な?俺が来てて良かっただろ?」

「うん」

ノート等の量を見て、飛鳥は大きく頷く。

飛鳥はプリント類を、直人はノートを抱えて、また教室に引き返す。

すると、誰かが後ろから2人の背中をポンと叩いた。

「おはよ♪」

後ろにいたのは、ちょうど登校してきた奏子だった。

⏰:11/01/22 12:56 📱:N08A3 🆔:ZOWzt0vc


#680 [我輩は匿名である]
「おはよう」

飛鳥は普通に挨拶するが、直人は奏子を見て思い出した。

「(…そうだ、こいつに返事しないと)」

しかし、今は飛鳥がいるし、自分も両手にノートを抱えている。

「(…後でちょっと話すか)」

直人はそう心の中で決めて、教室に戻った。

⏰:11/01/24 19:59 📱:N08A3 🆔:OV5OGioo


#681 [我輩は匿名である]
昼休み。直人は今までと同じように薫と昼食を摂っていた。

「そういえば、香月はまだ休んでんの?」

「あぁ。昨日はもう熱は下がってたらしいけど。

インフルエンザって熱下がってから何日かしないと学校に来れないからなぁ」

「お前毎年かかるもんな。さすが」

「うるさいな」

直人にバカにされ、薫はムッとして睨み付ける。

直人はからかうように笑い、弁当のおかずを口に運ぶ。

⏰:11/01/24 20:00 📱:N08A3 🆔:OV5OGioo


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