記憶を売る本屋 2
最新 最初 全 
#695 [我輩は匿名である]
「…て事は…俺たち…両想い?」
「…になるよね」
少しずつ今の状況に慣れてきて、2人は照れながらも笑い合う。
飛鳥はまたせっせと手を動かし、日誌を書きあげた。
「お待たせ。行こ」
「あぁ」
2人は立ち上がり、教室の鍵を閉めて職員室に鍵を戻し、学校を出た。
:11/01/29 13:11
:N08A3
:.coV6bHI
#696 [我輩は匿名である]
「寒いなぁー」
直人はマフラーを鼻の高さまで引っ張り上げて、ポケットに手を入れる。
「…あの吹雪の中ぶっ倒れてから、あんまり寒さを感じなくなってきた」
「マジかよ。俺全然変わんねぇし」
「あんたも1回低体温なってみたら?」
「冗談じゃねー」
2人は冗談を交えながら帰り道を歩く。
「つーか、今からどこ行くわけ?」
:11/01/31 22:36
:N08A3
:uyvesmfk
#697 [我輩は匿名である]
「花屋」
「は!?何で!?」
「…供えに、ね」
飛鳥はぽつりと言った。
「…誰に?」
「……着いたら言うよ」
2人はそう話ながら、近くの花屋に行き、そしてある場所にやってきた。
:11/01/31 22:36
:N08A3
:uyvesmfk
#698 [我輩は匿名である]
何の変哲もない、ただの交差点。
「ここって…」
直人はぼんやり思い出す。飛鳥を追って、“1度だけ”来た事がある。
直人がぼーっと立ち尽くしている横で、飛鳥は信号機のポールの傍にしゃがみこみ、
そこに買ってきた花をそっと置いた。
「…誰か死んだのか?」
「…うん」
飛鳥は腰を下ろしたまま頷く。
:11/01/31 22:37
:N08A3
:uyvesmfk
#699 [我輩は匿名である]
「何年か前に…あたしの大事な友達がここで亡くなったんだ。
……飛び出して、トラックに撥ねられそうになったあたしをかばって」
そんな話を聞いたのは初めてだ。
直人は茫然としながら飛鳥の話を聞く。
「…そんなの、初めて聞いたぞ」
「………初めて、言ったし」
飛鳥は苦笑して言った。
:11/01/31 22:37
:N08A3
:uyvesmfk
#700 [我輩は匿名である]
「…でも、人かばって死ぬとか、女にしてはすげぇ勇気あるな」
「男だよ」
「男かよ!?」
女だと思っていたらしく、直人は驚く。
「(まぁ…女子の友達って言ったら、普通は女子だって思うよな…)」
飛鳥はそう思いながら、目を閉じて手を合わせる。
:11/01/31 22:38
:N08A3
:uyvesmfk
#701 [我輩は匿名である]
今まで、こんなにスッキリした気持ちでここに来られた事はなかった。
石川晶は要が亡くなってからはすぐに後を追って飛び降り、
飛鳥も前世を知って同じ道を選ぼうとした。
立ち直ってからも、家族の事や奏子との事、いろいろあった。
それを全て、やっと乗り越えることができた。
直人と一緒に。
:11/01/31 22:39
:N08A3
:uyvesmfk
#702 [我輩は匿名である]
手を合わせている飛鳥を見つめて、直人は困ったように立ち尽くす。
そして何を思ったのか、飛鳥の横にしゃがみこんで同じように手を合わせた。
「………何であんたまで拝んでんの?」
「“こんな奴にもちゃんと彼氏できました”って教えてやってんの」
「は…何よそれ!?」
「だって教えてやらないと、安心して成仏出来ねぇだろ?」
直人は呆れたように言い返す。
飛鳥は何か言いたそうな顔で睨んでくる。
「(…つーか、こいつ友達いたんじゃん。しかも男って………男…?)」
:11/02/04 23:23
:N08A3
:89PoZBUc
#703 [我輩は匿名である]
直人はハッと、ある事を思い出した。
スキー実習のあの日、あの場にいた“もう1人”の存在。
かすかに記憶に残っている『幸せになれ』『さよなら、直人』という言葉。
あの声は多分、若い男の声だった。
「(……あれって…)」
「…水無月?」
ぼんやりと考えていると、飛鳥が不思議そうに顔を覗き込んできた。
:11/02/04 23:23
:N08A3
:89PoZBUc
#704 [我輩は匿名である]
「あ?」
「どうかした?」
そう聞かれて、直人は少し考え込む。
こんな話をしても、信じてもらえない気がする。
しかし薫や響子のように、普通では“信じられない”事が起きていたりもする。
少しして、直人は「別に」答えながら立ち上がった。
「何それ!?絶対何かあるじゃん!教えてよ」
「そのうちな」
「はぁー!?」
:11/02/04 23:23
:N08A3
:89PoZBUc
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194