記憶を売る本屋 2
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#71 [我輩は匿名である]
しかし、良介の表情は変わらない。

「残念だけど、今君に何言われても、負け犬の遠吠えにしか聞こえないよ?

悪いけど、君に勝ち目は無いと思うけどな。まぁ、頑張ってみれば?」

良介は笑って、教室に入っていった。

廊下に残った薫は1人、黙ってうつむいて、両手を握り締めていた。

⏰:10/04/22 18:39 📱:N08A3 🆔:07aOrgP2


#72 [我輩は匿名である]
「そう言えば神崎、お前2桁だったじゃん」

教室に入って、直人は飛鳥に言った。

「ん?あぁ、見てたんだ」

「俺も2点足らずでお前に負けたんだ…。薫の気持ちがよくわかる…」

席についてすぐ、直人は頭を抱えてため息をつく。

「何よ、そっちか…」

「…おっと、そういう話じゃねぇな」

単純な直人は、飛鳥の方を向いて笑いかける。

⏰:10/04/23 18:58 📱:N08A3 🆔:KdcsC5Iw


#73 [我輩は匿名である]
「やるじゃん!そろそろ親もちょっとはお前の事見直すんじゃね?」

「…まだまだ」

飛鳥は苦笑する。

「弟の1番良かった順位は、9位らしい。だから、私は8位以上を目指すって決めてんだ」

「マジで?でもこれから、1位2位はあのアメリカンと薫が占めるだろうから…

3位〜8位…6人しか枠がないぞ?」

「…まぁ、何とかなるっしょ。ダメそうなら月城に勉強でも教えてもらうわ」

「あぁ、それがいいな」

2人は話ながら笑い合う。

⏰:10/04/23 18:58 📱:N08A3 🆔:KdcsC5Iw


#74 [我輩は匿名である]
「……水無月さぁ」

飛鳥は何気なく話を変える。

「あん?」

「…もし私が…」

そこまで言って、飛鳥はハッと言うのをやめた。

「…えっ?何だよ?」

「…ごめん、やっぱ何にもない。忘れて」

「はっ??」

ぽかんとしている直人を見ずに、飛鳥は自分の席に戻った。

⏰:10/04/23 18:58 📱:N08A3 🆔:KdcsC5Iw


#75 [我輩は匿名である]
その夜、直人はベッドに寝転んでボーッと考えていた。

今日、飛鳥は自分に何を言おうとしていたのか。

あの時の飛鳥の顔は、いつものような表情ではなかった。

直人はそれが気になっていたのだ。

「(…別に怒ってるような顔でもなかったし…何だったんだろ?)」

ふと、響子の『鈍感ね』という言葉が頭に浮かぶ。

あの言葉は、こういう事を指しているのだろうか。

「……って事は…やっぱ俺、気に障るような事したのか…?」

直人はしばし、黙って考える。

しかし、答えが出ないまま眠りに落ちてしまった。

⏰:10/04/23 18:59 📱:N08A3 🆔:KdcsC5Iw


#76 [我輩は匿名である]
ある日。

掃除当番だった直人は、同じく当番だった飛鳥と奏子と一緒に帰っていた。

薫と響子は、すでに先に学校を出ている。

「…ん?」

道端で、直人はふと足を止める。

視線の先には、スーパーの重そうな袋を両手に下げて立ち止まっているおばあさんの姿。

「どうかしたの?」

奏子が直人に尋ねる。

「…ちょっとな」

⏰:10/04/23 18:59 📱:N08A3 🆔:KdcsC5Iw


#77 [我輩は匿名である]
直人はそれだけ言って、おばあさんに近づく。

飛鳥と奏子は、その場で様子をうかがう。

「ばあさん、大丈夫か?」

直人はおばあさんに声をかける。

「はぁい?」

おばあさんが顔を上げて、直人を見る。

そして、「あぁ、あんたは…!」と驚きの声を上げた。

「…へ?」

「あんた、あの時の子で……」

おばあさんはそこまで言い掛けて、「ん?」と考え直す。

⏰:10/04/23 19:00 📱:N08A3 🆔:KdcsC5Iw


#78 [我輩は匿名である]
「…あぁ、私ったらすごい勘違いしたわ。もうあれから40年くらい経ってるのに」

おばあさんはそう言って、上品な笑い声を上げる。

直人は「ん?」と首をかしげる。

「…まぁそれより、それ重くないか?俺運んでってやろうか?」

「あら、本当?…でも、悪いし…」

「いいよ、荷物運ぶぐらい。歩きって事は、家もそんな遠くないんだろ?」

「…行ってみよっか」

2人のやり取りが気になって、飛鳥も直人達の所まで歩く。

⏰:10/04/24 12:46 📱:N08A3 🆔:23VVxZiA


#79 [我輩は匿名である]
奏子はおばあさんを見て、「もしかして…」と声を漏らす。

「じゃあ…運んでもらえる?」

「おう、いいぜ」

直人は快く言って、おばあさんから荷物を受け取る。

「…私も何か持とうか?」

飛鳥はどういう話なのかすぐに理解して、直人に声をかける。

「え?いいよ、別に」

「でも、重そうだし…」

そう言われて、直人は「まぁ確かに…」と心の中で思う。

⏰:10/04/24 12:47 📱:N08A3 🆔:23VVxZiA


#80 [我輩は匿名である]
「あ、じゃあ1個持って」

「あぁ、いいよ」

飛鳥は頷いて、代わりに直人の鞄を持った。

「なんか、悪いわねぇ…」

「いいですよ、私も暇だから」

「私“も”って何だよ?俺が暇みたいだろ」

「だって暇じゃん」

2人が言い合っている間に、奏子も駆け寄ってきて、おばあさんの顔を見る。

⏰:10/04/24 12:47 📱:N08A3 🆔:23VVxZiA


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