記憶を売る本屋 2
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#72 [我輩は匿名である]
「そう言えば神崎、お前2桁だったじゃん」
教室に入って、直人は飛鳥に言った。
「ん?あぁ、見てたんだ」
「俺も2点足らずでお前に負けたんだ…。薫の気持ちがよくわかる…」
席についてすぐ、直人は頭を抱えてため息をつく。
「何よ、そっちか…」
「…おっと、そういう話じゃねぇな」
単純な直人は、飛鳥の方を向いて笑いかける。
:10/04/23 18:58
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:KdcsC5Iw
#73 [我輩は匿名である]
「やるじゃん!そろそろ親もちょっとはお前の事見直すんじゃね?」
「…まだまだ」
飛鳥は苦笑する。
「弟の1番良かった順位は、9位らしい。だから、私は8位以上を目指すって決めてんだ」
「マジで?でもこれから、1位2位はあのアメリカンと薫が占めるだろうから…
3位〜8位…6人しか枠がないぞ?」
「…まぁ、何とかなるっしょ。ダメそうなら月城に勉強でも教えてもらうわ」
「あぁ、それがいいな」
2人は話ながら笑い合う。
:10/04/23 18:58
:N08A3
:KdcsC5Iw
#74 [我輩は匿名である]
「……水無月さぁ」
飛鳥は何気なく話を変える。
「あん?」
「…もし私が…」
そこまで言って、飛鳥はハッと言うのをやめた。
「…えっ?何だよ?」
「…ごめん、やっぱ何にもない。忘れて」
「はっ??」
ぽかんとしている直人を見ずに、飛鳥は自分の席に戻った。
:10/04/23 18:58
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:KdcsC5Iw
#75 [我輩は匿名である]
その夜、直人はベッドに寝転んでボーッと考えていた。
今日、飛鳥は自分に何を言おうとしていたのか。
あの時の飛鳥の顔は、いつものような表情ではなかった。
直人はそれが気になっていたのだ。
「(…別に怒ってるような顔でもなかったし…何だったんだろ?)」
ふと、響子の『鈍感ね』という言葉が頭に浮かぶ。
あの言葉は、こういう事を指しているのだろうか。
「……って事は…やっぱ俺、気に障るような事したのか…?」
直人はしばし、黙って考える。
しかし、答えが出ないまま眠りに落ちてしまった。
:10/04/23 18:59
:N08A3
:KdcsC5Iw
#76 [我輩は匿名である]
ある日。
掃除当番だった直人は、同じく当番だった飛鳥と奏子と一緒に帰っていた。
薫と響子は、すでに先に学校を出ている。
「…ん?」
道端で、直人はふと足を止める。
視線の先には、スーパーの重そうな袋を両手に下げて立ち止まっているおばあさんの姿。
「どうかしたの?」
奏子が直人に尋ねる。
「…ちょっとな」
:10/04/23 18:59
:N08A3
:KdcsC5Iw
#77 [我輩は匿名である]
直人はそれだけ言って、おばあさんに近づく。
飛鳥と奏子は、その場で様子をうかがう。
「ばあさん、大丈夫か?」
直人はおばあさんに声をかける。
「はぁい?」
おばあさんが顔を上げて、直人を見る。
そして、「あぁ、あんたは…!」と驚きの声を上げた。
「…へ?」
「あんた、あの時の子で……」
おばあさんはそこまで言い掛けて、「ん?」と考え直す。
:10/04/23 19:00
:N08A3
:KdcsC5Iw
#78 [我輩は匿名である]
「…あぁ、私ったらすごい勘違いしたわ。もうあれから40年くらい経ってるのに」
おばあさんはそう言って、上品な笑い声を上げる。
直人は「ん?」と首をかしげる。
「…まぁそれより、それ重くないか?俺運んでってやろうか?」
「あら、本当?…でも、悪いし…」
「いいよ、荷物運ぶぐらい。歩きって事は、家もそんな遠くないんだろ?」
「…行ってみよっか」
2人のやり取りが気になって、飛鳥も直人達の所まで歩く。
:10/04/24 12:46
:N08A3
:23VVxZiA
#79 [我輩は匿名である]
奏子はおばあさんを見て、「もしかして…」と声を漏らす。
「じゃあ…運んでもらえる?」
「おう、いいぜ」
直人は快く言って、おばあさんから荷物を受け取る。
「…私も何か持とうか?」
飛鳥はどういう話なのかすぐに理解して、直人に声をかける。
「え?いいよ、別に」
「でも、重そうだし…」
そう言われて、直人は「まぁ確かに…」と心の中で思う。
:10/04/24 12:47
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:23VVxZiA
#80 [我輩は匿名である]
「あ、じゃあ1個持って」
「あぁ、いいよ」
飛鳥は頷いて、代わりに直人の鞄を持った。
「なんか、悪いわねぇ…」
「いいですよ、私も暇だから」
「私“も”って何だよ?俺が暇みたいだろ」
「だって暇じゃん」
2人が言い合っている間に、奏子も駆け寄ってきて、おばあさんの顔を見る。
:10/04/24 12:47
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:23VVxZiA
#81 [我輩は匿名である]
「あ、やっぱりおばあちゃんじゃん!」
「あらぁ、奏子のお友達だったの」
「………え?」
2人の会話に、直人と飛鳥はきょとんとする。
「この人、うちのおばあちゃんだよ♪」
「マジで!?」
「こ、こんにちは…」
「あらあら、こんにちは」
直人と飛鳥がびっくりしている横で、奏子のおばあさんが笑う。
:10/04/24 12:47
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