記憶を売る本屋 2
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#111 [我輩は匿名である]
飛鳥に声をかけられ、響子はハッと顔を上げる。
「…ごめん、ボーッとしてた」
「…まぁ気持ちはわかるけどさ」
飛鳥も呆れて息をつく。
「…あ、そうだ。どうせなら、どっかでご飯かお茶かしながら話さない?
ちょうど明日土曜だし。…バイト入ってる?」
「ううん。大丈夫」
:10/04/30 20:36
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:ue2rV2uc
#112 [我輩は匿名である]
「じゃあ明日、飛鳥ちゃんがバイトしてるカフェ行こ♪」
「何でそうなるの!?」
「だって、1回行ってみたかったんだもん。じゃあ決まりね」
響子はにっこり笑う。
「(…まぁ、社割あるから、いっか)」
飛鳥は特に深く考えないまま、「しょうがないなぁ」と頷いた。
:10/04/30 20:38
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#113 [我輩は匿名である]
次の日。
飛鳥は響子と共に、バイト先のカフェにやってきた。
「おう神崎」
入るなり、店長が飛鳥に話しかけてきた。
「売り上げのために、全ケーキ食って帰れよ!」
「無理ですよ。そんな金あったらケータイ契約しに行きます」
飛鳥は顔を引きつらせて言い返しながら、適当な席に座る。
「そっか、飛鳥ちゃん、ケータイ持ってないんだっけ」
「うん、仲悪い親に出してもらうの、嫌だしね。自分で稼いでから買おうかなぁと思って」
飛鳥は苦笑して言った。
:10/05/01 20:21
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:/1yPoZ8g
#114 [我輩は匿名である]
そういうところは頑固な飛鳥に、響子も笑い返す。
「とりあえず、何か頼もっか」
「うん」
飛鳥は響子にメニューを開いて渡す。
「飛鳥ちゃん、見なくていいの?」
「いいよ、大体覚えてるから」
「『大体』じゃなくて、『完璧に』覚えてほしいわね」
飛鳥の先輩の女性が、そう言いながらお冷やを持ってきた。
「すいません…」
飛鳥は口を尖らせる。
:10/05/01 20:21
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:/1yPoZ8g
#115 [我輩は匿名である]
「メニューはお決まりですか?」
先輩は響子に愛想良く尋ねる。
「えっ、えーっと…」
響子は少し慌ててメニューを見る。
「あっ、私はとりあえずカプチーノで」
「自分で注いで来な」
「えぇっ!?」
嫌味ったらしく笑う先輩に、飛鳥は変な声を上げる。
「あの…私はアイスミルクティー下さい」
:10/05/01 20:21
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:/1yPoZ8g
#116 [我輩は匿名である]
「はいかしこまりましたー
先輩はにっこり笑って、キッチンの方へと下がっていった。
「意外と、いじられキャラなんだね」
響子は楽しそうに笑って、向かい合っている飛鳥に言う。
「…何かわかんないけど、そうなのかな」
「ははっ、いいじゃない。いじられキャラは、愛されキャラみたいな物よ」
響子はテーブルに両肘をつく。
飛鳥は「そうかなぁ」と首をひねる。
「ところで、私に相談って、何?」
:10/05/01 20:22
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:/1yPoZ8g
#117 [我輩は匿名である]
響子は話を変え、本題に入る。
すると、急に飛鳥の顔が暗くなった。
「………何から話せばいいんだろ…?」
飛鳥は腕を組んで考える。
『奏子が直人を好きだ』なんて勝手に話すと、余計にこじれるかもしれない。
「…飛鳥ちゃんは、水無月君が好き?」
響子は先に、そう飛鳥に尋ねた。
飛鳥は「えっ!?」と、勝手に下向いていた頭を上げる。
:10/05/01 20:22
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:/1yPoZ8g
#118 [我輩は匿名である]
「やっぱりそういう事か」
響子はにっこり笑う。
「……んー、…わかんない」
飛鳥ははっきりしない顔で答える。
「でも、…他の子が『水無月が好きかも』とか言ってるの聞いたら…何かモヤモヤしてきて…」
「……じゃあ飛鳥ちゃんは、水無月くんの事どう思う?」
響子は優しい表情で、質問を変える。
:10/05/01 20:23
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:/1yPoZ8g
#119 [我輩は匿名である]
飛鳥は少し顔を上げる。
「……いい奴だと、思ってる」
何て言えばいいのかわからなくて、飛鳥はとりあえずそこから始めた。
「…私、高校入ってから、誰とも喋った事なくて……高校入る前からだけど。
でもなんか、あいつとは何も考えずに喋れて、なんか楽しくて…。
本を読み終わって、私がまた自殺しそうになったの、怪我してでも止めてくれた」
ちょっとずつ気持ちが整理できてきたのか、飛鳥の口調がスムーズになってきた。
響子も何も言わずに、その話に耳を傾けている。
:10/05/01 20:23
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:/1yPoZ8g
#120 [我輩は匿名である]
「それから…私が『親を見返してやるんだ』って思えるようになったら、
笑って『頑張れ』って言ってくれるし、
この間も、奏子のおばあちゃんが道で困ってたら、すぐ『手伝ってやるよ』って言って…。
あいつバカで能天気だけど、私は…そういう優しい所が、す…」
飛鳥はそこまで言って、顔を赤くして黙り込んだ。
「…考えまとまったね」
「…なんか、楽しそうな話してるわね♪」
響子だけでなく、たまたま注文の物を持ってきた先輩まで笑っている。
:10/05/01 20:24
:N08A3
:/1yPoZ8g
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