記憶を売る本屋 2
最新 最初 全 
#122 [我輩は匿名である]
「さぁどうでしょうね」
擦り寄ってくる先輩を、飛鳥はめんどくさそうな顔で押し返す。
先輩はテーブルにカプチーノとミルクティーを置いて、「ごゆっくりどうぞ」と言って立ち去った。
「(…話できるわけないじゃん…。話が広がったら、奏子がどう言うか…)」
飛鳥はまた鬱陶しそうにため息をつく。
「…他には誰も、その話してないの?」
「うん、他にできる人いないし…」
飛鳥はまた、苦笑して答えた。
響子は鋭い目付きで考える。
:10/05/02 17:30
:N08A3
:Xl0SkL1s
#123 [我輩は匿名である]
奏子に相談を乗ってもらう事も出来た。先輩にも出来たはずだ。
しかし、「他に出来る人がいない」と言う。
つまり。
「…水無月くんが好きだって言ったの、奏子ちゃんじゃない?」
響子は、他の席にも聞こえない程小さな声で言った。
思わず、飛鳥は目を丸くして響子を見る。
「……何で……」
:10/05/02 17:30
:N08A3
:Xl0SkL1s
#124 [我輩は匿名である]
「相談出来る人が私だけって、おかしいなぁと思って。
水無月くんに出来ないのは当たり前だし、薫はそんな相談を受ける柄じゃない。
…まぁあれでも、相談されれば乗るんだけど。
奏子ちゃんもいるのに、あの子には出来ないって事でしょ?
先輩に出来ないのは、誰かが口を滑らせて奏子ちゃんに知られると面倒だから。
……どう?合ってるでしょ?」
響子は自信満々に笑ってみせる。
「…探偵になればいいと思うよ」
全て図星をつかれ、飛鳥はただ茫然とする。
:10/05/02 17:31
:N08A3
:Xl0SkL1s
#125 [我輩は匿名である]
「まぁ、あれよね。飛鳥ちゃんと水無月くんには、本の事もあるしね」
「…うん…。最初はそうだったけど…でも、なんか違うっていうか…。
なんかね、要は、もっと穏やかで、おとなしい感じだったんだ。
だから、水無月とはタイプも全然違うし…。
私も結構性格変わってるし、本の事は…そこまで深く考えてないかなぁ…」
「そっか。…私達も同じだよ」
響子は小さく笑う。
:10/05/02 17:31
:N08A3
:Xl0SkL1s
#126 [我輩は匿名である]
「やっぱり、みんな本とは変わってくるのかな。
私はもっと背も小さかったし、もっと大人しかった。
薫……は、あんまり変わらないかな?強いて言うなら、もうちょっと穏やかで、煙草吸ってたぐらい?」
「そうなの?」
「だから、あんな癌になったのよ」
響子はふぅっとため息をつく。
「意外でしょ?今なら絶対吸わなそうにしてるのに。
薫……優也は、煙草と関連が深い癌だった。
だからもう2度と吸わないでしょうね」
響子は優しく笑う。
:10/05/02 17:31
:N08A3
:Xl0SkL1s
#127 [我輩は匿名である]
「優也はあんなにクールじゃなかったのよ?
薫はにっこり笑う事なんかないけど、優也はいつもニコニコしてた」
「(…また惚気だした…)」
そう思ったが、急に響子の表情が変わった。
「……はぁ…私もどうしたらいいんだろ……」
「……あのアメリカン?」
響子は頷く。
しかし、飛鳥には不思議でならなかった。
「でも、何でそんなに悩むの?響子も月城も、そんなてこずる相手じゃないんじゃ…」
:10/05/02 17:32
:N08A3
:Xl0SkL1s
#128 [我輩は匿名である]
「てこずるのよ、ああいうタイプが1番ね」
響子は肩肘をつく。
「まともに話が通じる相手なら、薫もガン飛ばして一言二言言えば終わるのよ。
でも、りょう……桐生くんはそうじゃない。どこであんな性格になったのかわかんないけど……」
響子は大きくため息をつく。
「……そうだね、この間月城がガン飛ばしても、全く効かなかったもんね」
「私があの時ちゃんと聞き直して、断っとけば良かったのよ…」
話しているうちに、どんどん響子の表情が暗くなっていく。
:10/05/02 17:33
:N08A3
:Xl0SkL1s
#129 [我輩は匿名である]
「いや…そんなちっこい時の事にすがってる奴に、気を遣う事はないと思うけど…」
飛鳥は自分で出来る精一杯の慰めを言う。
「うん…」
「だって、響子は月城が好きなんでしょ?だったら無視すればいいんだよ。
私だって、テストの順位なんかで彼氏とか決めるの、おかしいと思う」
飛鳥はきっぱりと言い切った。
「…そうなのよね…」
響子はまだ浮かない顔をして頷いた。
:10/05/02 17:33
:N08A3
:Xl0SkL1s
#130 [我輩は匿名である]
すると、飛鳥もまた、同じような表情でうつむき、こう切り出した。
「……私さ、本の事、まだ奏子に言えてないんだ」
響子は顔を上げ、また耳を傾ける。
「言おう言おうって思うんだけど、要との事…知られたくないんだ。
何でかわかんないけど…何か、自分の中だけに置いときたい気がして…」
「…そうね、奏子ちゃんが水無月君を好きなら、なおさらね」
響子は小さく笑う。
:10/05/03 17:27
:N08A3
:MyOPNZOQ
#131 [我輩は匿名である]
しかし、飛鳥の表情はまだ晴れない。
「……でも、隠しとくのもモヤモヤするっていうか…」
「…友達だから?」
「…うん」
飛鳥は小さく頷く。
「でも…友達でも、話したくない事はいくらでもあるよ」
あっさり言う響子に、飛鳥は思わず顔を上げる。
「…響子も?」
「そりゃあるよ。私だって、いちいち薫とチューしただの寝ただの、みんなに言いたくないし」
響子は当然のように言い放って、ミルクティーを一口飲む。
:10/05/03 17:36
:N08A3
:MyOPNZOQ
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194