記憶を売る本屋 2
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#21 [我輩は匿名である]
転入生は笑顔で返事をして、生徒の方を向く。

「桐生良介です。5歳まで隣町に住んでたんですけど、父の転勤でアメリカにいました」

要するに、帰国子女ってやつだ。

響子の前の女子達が、嬉しそうにはしゃぐ。

「この辺もだいぶ変わってて何にもわからないんですけど、

楽しくやっていきたいと思うので、仲良くして下さい。よろしくお願いします」

桐生良介はそう言って一礼する。

クラスメイトが歓迎の拍手を送る。

⏰:10/04/19 18:32 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#22 [我輩は匿名である]
「(……隣町……アメリカ……)」

響子は手を叩きながら考える。

そして、ふと思い出した。

「(……もしかして…隣の隣に住んでた、あの“良介くん”…?)」

響子が幼稚園の時に、近所の同い年の男の子が引っ越していった気がする。

幼なじみだったのだが、すっかり忘れていた。

⏰:10/04/19 18:32 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#23 [我輩は匿名である]
休み時間になり、良介の周りは女子でいっぱいだ。

響子は暇なので8組にでも行こうと、席を立つ。

それを良介がたまたま見ていた。

「ねぇ、あの子は?」

ちょうど出ていく所だった響子を指差す。

「あぁ、あの子は香月響子ちゃん」

「えっ!?香月響子!?」

良介が驚いて立ち上がる。

そして、響子を追い掛けるようにして教室を出た。

⏰:10/04/20 10:09 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#24 [我輩は匿名である]
「あぁ、響子」

8組では、黒板の前であの4人が喋っていた。

薫に呼ばれて、響子も輪の中に入る。

「どうだった?転入生」

「それが…」

「響子ちゃぁぁぁん!」

廊下で誰かが叫ぶ声がした。

5人がぎょっとして見ていると、良介が走ってやって来た。

⏰:10/04/20 10:10 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#25 [我輩は匿名である]
「…誰?」

鬱陶しそうに奏子が尋ねる。

「てんにゅ…」

「君だね!?君が響子ちゃんだね!?」

良介はそう言って、目を輝かせながら飛鳥の手を握る。

「はぁ?何だよ、あんた」

「えっ?僕の事覚えてないの!?」

「…香月響子は私です…」

響子がしぶしぶ手を挙げる。

⏰:10/04/20 10:10 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#26 [我輩は匿名である]
良介は「へ?」と響子を見る。

「………えっ?君が響子ちゃん?」

「うん…」

「……さっきから『響子ちゃん、響子ちゃん』と馴れ馴れしい…」

歓声を上げる良介に、薫が顔をしかめる。

「ねっ!僕の事覚えてる!?君の隣の隣に住んでた良介だよ!

あーっ、やっと会えた!元気だった!?身長縮んだね!?」

良介は今度は響子の両手を握りなおす。

⏰:10/04/20 10:11 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#27 [我輩は匿名である]
「(…なんだこのテンション…うぜぇ…)」

「(…縮んだって…)」

「(イケメン…♪)」

3人がそれぞれ思っていると、薫が不機嫌そうに良介の手を振り払った。

「いきなり入ってきて何なんだ?馴れ馴れしく手なんか握りやがって…」

「…何って、僕響子ちゃんのフィアンセだよ?」

良介は当然のように言い放つ。

その一言に、直人達だけでなく、教室中が静まり返った。

⏰:10/04/20 10:12 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#28 [我輩は匿名である]
「…お前…ふざけてるのか…?」

薫は哀れみを込めた目で良介を見る。

「ふざけてないよ。約束したもん、響子ちゃんと」

「は!?」

響子がすぐさま「違う違う」と手を振る。

薫と響子が付き合っている事を知っているクラスメイト達が、良介を見て笑っている。

「違わないよ!幼稚園の時に『大人になったら結婚しようね』って言ったら、

響子ちゃんも『うん♪』って言ってくれたじゃないか!」

「お前…これ以上いい加減な事言ったらぶっ飛ばすぞ…!」

薫の怒りが頂点に達しかけている。

⏰:10/04/20 10:12 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#29 [我輩は匿名である]
が、良介は動じずに首を傾げる。

「っていうか、君誰?」

「俺は!香月響子の彼氏だ!!」

薫は思わず声を荒げる。

クラスメイト達が喜んで声を上げ、薫に拍手を送る。

が、薫は今それどころじゃない。

良介の胸倉を掴み、睨み付ける。

「これ以上響子に手ぇ出したら…殺す…!」

本気で殴り殺しそうな薫に、直人達もおろおろする。

⏰:10/04/20 10:13 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#30 [我輩は匿名である]
…が。

「ワーォ!ジャパニーズボーイこわーい☆」

良介はへらっと笑って言った。

薫の顔が引きつる。

「…地獄に落ちろぉぉぉぉーーー!!!!」

「わあぁぁぁっ!薫!!落ち着けー!!」

良介に殴りかかる薫を、直人や周りにいた男子が慌てて止める。

その間に、響子は奏子と飛鳥の後ろに避難する。

薫が押さえられているのを良い事に、良介は笑いながら、「響子ちゃん!また後でねー」と出ていった。

⏰:10/04/20 10:13 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


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