記憶を売る本屋 2
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#235 [我輩は匿名である]
事情を話すのがめんどくさくて、直人は「別に」と吐き捨てた。
「何なに!?事件!?警察行った!?」
「っせぇな、朝っぱらから。喧嘩だよ喧嘩!薫とやり合っただけ!」
直人はイライラし、口調を強くして答える。
「あらぁー、ドンマイ♪」
奏子は少しつまらなそうな顔をして、また直人の肩をたたいた。
『神崎と安斎を見ていて、何も思わないのか』
薫のあの一言は、今でもわからない。
考えながら、直人はじっと奏子を見てみる。
:10/05/28 21:54
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#236 [我輩は匿名である]
「まぁー、あの子ちょっと気難しそうだもんね。
たまにはいいんじゃないの?喧嘩ぐらい」
奏子は明るく、そんな事を言って笑っている。
「………何?何か嫌な事言った?」
直人に見られているのがわかったのか、奏子が尋ねてくる。
が、構わず直人は奏子を見つめ続ける。
「………………やっぱ何もねぇよなぁ…」
しばらく見た後、直人はため息をついて目を逸らした。
彼が何をしたいのかわからず、奏子も首をかしげる。
お互いいろいろ考えながら校舎に入る。
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#237 [我輩は匿名である]
「…あ」
直人は嫌そうに声を上げる。
靴箱では、一足先に着いていた薫たちが靴を履き替えていた。
直人の声を聞いて、薫と響子がこっちを向く。
薫もやはり、直人のように顔に湿布等を貼っている。
しかし薫は、ちらっと直人を見た後、無言で視線を外した。
「さっさと履き替えて行けよ。俺が靴履けないだろ」
「知るか。一生そこで待ってろ」
「何ぃ!?」
顔を見るなり、直人と薫は睨み合う。
:10/05/28 21:54
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#238 [我輩は匿名である]
「あんまり調子乗んなよ、もやしっ子のくせに」
「誰がもやしだ!どうみても人間だろ!」
「もやしじゃねぇかよ!インフルエンザで死にかけた事あるくせに!」
「いつの話だ!!」
「2人ともやめなさい!こんな所でみっともない!!」
2人のくだらない言い合いを見兼ねて、響子がまるで母親のような言い方で割って入った。
響子に叱られて、直人と薫は肩をすくめて黙り込む。
「…響子、行くぞ」
薫は響子を引きつれて、さっさと階段を上がっていった。
:10/05/28 21:55
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#239 [我輩は匿名である]
「おはよう…」
それと同時に、今度は飛鳥がやってきた。
「あっ飛鳥、おはよ」
「…よぉ」
2人も返事を返す。
飛鳥は奏子と同じように、直人を見るなり目をぱちくりさせた。
「…どうしたの、その顔」
「…ちょっとな」
直人はため息をつきながら、それだけ答える。
その間に、奏子は自分の靴を履き替えに行った。
:10/05/28 21:55
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#240 [我輩は匿名である]
「………今日、時間ある?」
飛鳥がぼそっと、直人に声をかける。
直人はスニーカーを持つ手を止めて、きょとんとする。
「どうしたんだよ?」
「………いろいろあってさ。…あんたに聞いてほしくて」
飛鳥の顔は、何だか疲れているように見える。
直人はそれを見ながら、また昨日の薫の話を思い出す。
「(…俺が本の事バラしたからかな…?…説教か…?)」
「…無理そうならいいよ」
飛鳥は少し笑う。
:10/05/28 21:56
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#241 [我輩は匿名である]
「いや!聞くよ!俺で良ければ!つーか俺のせいだし!」
直人は慌てて返事をする。
その慌てっぷりが理解できないのか、飛鳥は首をかしげる。
「どーせ今日は薫と飯食わないだろうし」
「…何で?」
「喧嘩したから♪」
靴を履き替えてきた奏子が、直人と飛鳥の間に入ってきた。
「……顔の怪我って、それで?」
「まぁな。殴り合いとかしたの、小学校以来かも」
「え、まだやった事あったの!?」
:10/05/28 21:56
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#242 [我輩は匿名である]
「(男って大変だなぁ…)」
傷だらけの直人の顔を見ながら、飛鳥はしみじみ思った。
「じゃあ…」
階段を上りながら、直人は飛鳥に言葉をかけようとする。
しかし、ふとある事を考えて止めた。
「(…こいつら、一緒に飯食ってるんだよな…。
って事は…今神崎を誘えば、何か怪しまれたりするかな?
本の話するなって薫も言ってたしな…)」
「どうかしたー?」
何かを言い掛け止めた直人に、奏子が問い掛ける。
:10/05/28 21:56
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#243 [我輩は匿名である]
飛鳥はじっと、直人の方を見つめる。
「…いや、やっぱいいや」
「そう?何か変なの」
「ほっとけ」
そんな事を言っているうちに、教室のドアの前に着いた。
「じゃあな」
直人と飛鳥は奏子に手を振り、教室に入る。
「今日、一緒に飯食おうぜ」
奏子と別れてすぐ、直人は飛鳥に笑いかけた。
突然の事に、飛鳥は「へ?」と聞き返す。
:10/05/28 21:57
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#244 [我輩は匿名である]
「いろいろあんだろ?飯食いながら、全部聞いてやるよ」
直人はニッと笑って飛鳥を誘う。
飛鳥はちょっと間ぽかんとしていたが、笑って「うん!」と大きく頷いた。
:10/05/28 21:59
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