記憶を売る本屋 2
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#361 [我輩は匿名である]
「『ふうん、意外だな』って」
「…何だそれ…」
いきなりそんな事を言う幽霊がいるのかと、薫はますます呆れる。
「聞き間違えじゃないのか?」
「違ぇよ!その後も『もう忘れちゃったのか』って言われたし!」
直人は必死に説得するが、薫は「うさんくさい」という表情で聞いている。
「本当だって!」
「…まずさぁ」
薫がため息をつきながら口を開く。
:10/06/10 19:01
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#362 [我輩は匿名である]
「お前の他に、誰か同じ道歩いてたとか…」
「誰もいなかった」
「じゃあ何か考えてたのか?」
「……考えてた」
「何を?」
「石川晶も運動嫌いだったのか、へぇーって」
「(…何だそれ…)」
全く話がつかめなくて、薫は眉間にしわを寄せて腕を組む。
「なんかな、神崎が運動嫌いって話してたんだよ」
:10/06/10 19:02
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#363 [我輩は匿名である]
「はぁ…」
「で、あいつが『石川晶が運動嫌いだったんだから仕方ない』って…」
「…ふうん…。確かに球技大会の時テンション低かったな」
薫は結構どうでも良さそうに返事をする。
「だろ?…って、俺そんな話したいんじゃねぇんだよ!」
「いつか言うと思ってた」
薫は呆れたように笑って言った。
:10/06/10 19:06
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#364 [我輩は匿名である]
「(…でもそれって、普通に考えて…)」
薫は考えながら、悩んでいる直人を見つめる。
「(……まぁ…俺が言うより、自分で気付いた方が良いか…)」
「なぁ、俺、何か恨まれてんのかなぁ?」
直人は特に気にしてなさそうに呟く。
「さぁ?俺にはさっぱりわからないな」
「ちぇっ。いいよ、自分で考えるから」
直人は口を尖らせて、自分の席に戻る。
:10/06/10 19:06
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#365 [我輩は匿名である]
「なぁ」
席に座ると同時に、今度は飛鳥が話し掛けてきた。
「ん?」
「今日は、例の幽霊はいないの?」
飛鳥は暗い顔で尋ねる。
「あ?あぁ、今日はまだ何も」
直人は椅子の上であぐらをかく。
すると、飛鳥は少し恥ずかしそうな顔で、直人にある物を手渡した。
:10/06/12 19:57
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#366 [我輩は匿名である]
「はい」
「…何?お守りじゃん」
直人が受け取ったのは、神社で売っている、青い御守りだった。
「それ、あんたにあげる」
「へ?これ、俺にくれんの?」
「…うん」
飛鳥は視線をそらして頷く。
「何で?」
直人はぽかんとして尋ねる。
:10/06/12 19:58
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#367 [我輩は匿名である]
「だって…変な幽霊に取り憑かれてたら近寄れないじゃん!」
飛鳥はちょっと顔を赤くして、声を上げて答える。
「あぁ、なるほどな!サンキュ!」
直人はニッと笑って、どこに付けようかと考える。
何だか嬉しそうな直人を見て、飛鳥もホッとしたように笑う。
「なぁ、お前ならどこに付ける?」
「私?私は…」
そう聞かれて、飛鳥も一緒に考える。
:10/06/12 19:58
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#368 [我輩は匿名である]
「………お守りって、肌身放さず持っとく物だろ?…財布とか?」
「でも、俺の財布にお守りつけれそうな所なんかねぇぞ」
「あぁ…。うーん…」
「…あ!」
直人はひらめいたように声を上げる。
「財布の中に入れとけばいいか!」
「あぁ、いいんじゃない?それでも」
飛鳥は小さく笑って答える。
:10/06/12 19:58
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#369 [我輩は匿名である]
我ながらいいアイデアだと、直人は財布にお守りを入れる。
「でも、本当にいいのかよ?せっかく自分で働いた金なのに」
「いいよ、それぐらい。だからさっさと幽霊追っ払えよ」
飛鳥はかなり嫌そうな顔で直人に言った。
直人はふと、財布の中身を見つめる。
「お前、もう飯買った?」
「…買ってない。昼休みに食堂でパン買うつもりだけど」
:10/06/12 19:59
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#370 [我輩は匿名である]
急に何を聞くのか。飛鳥は眉間にしわを寄せる。
「じゃあ、パン1個おごってやるよ」
財布の中身を確認した後、直人は満面の笑みを浮かべて言った。
「………へ?」
飛鳥はただきょとんとする。
「なんで?」
「これのお礼!」
答えながら、直人は財布を指差す。
:10/06/12 19:59
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