記憶を売る本屋 2
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#395 [我輩は匿名である]
「へ?」
思いも寄らぬ誘いに、飛鳥はきょとんとする。
「行きてぇんだろ?カラオケ。
俺カラオケ好きだし、お前が良いんなら行くぜ」
直人は笑顔で飛鳥を誘う。
行きたい。飛鳥は思ったが、口には出せなかった。
奏子が直人を好きだという事を考えると、行っていいのかわからないのだ。
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#396 [我輩は匿名である]
「…そう、だね。考えとこ」
そんな答えしか返せなかった。
「あ、お前バイトとかあるもんな。行けそうだったら言えよな」
「うん、ありがと」
直人は特に変に思う事なく、笑顔で言った。
:10/06/14 19:57
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#397 [我輩は匿名である]
昼休み。
「カラオケ?」
奏子が席を立っている間に、飛鳥は響子に相談していた。
「いいじゃない、行ったら。私だったら行くわよ」
「…そう?」
響子に当たり前のように言われて、飛鳥は更に悩む。
「…まぁ、相手が友達だから悩むのもわかるけどね。
でも、飛鳥ちゃんも水無月くんが好きなんでしょ?」
「……………うん」
:10/06/14 19:57
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#398 [我輩は匿名である]
飛鳥は大きく頷く。
「じゃあなおさらよ。気遣ってたら、取られちゃうわよ?」
響子は真剣な顔で、急かすように言う。
一息つき、飛鳥は考える。
「(…そう…なんだよなぁ…。
でも、奏子とややこしい事になったらめんどくさいし…)」
悩んでる飛鳥を、響子はじっと見つめる。
「……いいなぁ。私にもあったな、そういう時」
懐かしそうに、響子が笑った。
:10/06/14 19:58
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#399 [我輩は匿名である]
「そうなの?」
「そりゃあるわよー。友達と取り合いしたって事はなかったけど」
「やっぱり、2人で出かけるって時、緊張した?」
「したした。でも1番は…やっぱり優也と初めてご飯行った時かな。
あっちはもっと緊張してあらしいけど」
響子が嬉しそうに話すのを、飛鳥も笑顔で聞き入る。
「そうなの?」
「うん。優也が誘ってきたからね。
『良かったら今度、2人でご飯行きませんか?』って」
:10/06/14 19:58
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#400 [我輩は匿名である]
「へぇ。いいね、そういうの」
「飛鳥ちゃんだって、水無月くんにカラオケ誘われてるじゃない」
「…そっか」
飛鳥は思い出したように頷く。
「……ちょっと悪い気もするけど、大丈夫だよね?」
「大丈夫よ。行ったら感想聞かせてね」
響子は早くも楽しそうに笑った。
:10/06/14 19:59
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#401 [我輩は匿名である]
が。
「あ!」
「ん?」
飛鳥は困ったような顔でうなだれる。
「あたし、いい服持ってない…」
「あらまー…。家にどんな服があるの?」
「ジャージ」
「だけ!?」
「うん」
暗い顔で答える飛鳥に、響子は目を丸くしている。
:10/06/14 19:59
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#402 [我輩は匿名である]
しかし、すぐにキリッとした顔で言った。
「……今日、奏子ちゃんバイトよね?」
「うん」
「飛鳥ちゃん、お金ある?」
「…昨日給料日だったから、1万円ぐらいはある」
1万円か。響子は少し考え。
「まぁいいわ。飛鳥ちゃん、今日放課後、買い物行こ」
響子に言われて、飛鳥はきょとんとする。
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#403 [我輩は匿名である]
「…でも、あたし買い物とか行った事ないし…」
「わかってるわよ!私がちゃんとついて行くから!」
手に力を入れて、響子は飛鳥を説得する。
響子が来てくれれば安心だ。
ちょっと間黙った後、飛鳥は「うん!」と大きく頷いた。
:10/06/14 20:00
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#404 [我輩は匿名である]
「ここさぁ、どうやって行くかわかんねぇんだよなぁ…」
その頃、直人は後ろの黒板を使って、薫とTVゲームの話をしていた。
直人が書いた簡単な地図を、薫はじーっと見つめる。
「お前、これ行けた?」
「このソフト、多分全クリした」
「マジかよ!どうやった!?」
直人に詰め寄られ、薫は腕を組んで考える。
「……忘れた」
「何だよそれー」
直人は悔しそうに壁にもたれる。
:10/06/14 20:00
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