記憶を売る本屋 2
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#422 [我輩は匿名である]
「暗い暗いって言うなよ。仕方ないじゃん、生い立ちが生い立ちなんだから」
「今も似たようなモンだけどな」
「ははっ、まーね」
飛鳥は苦笑する。
「で、勝手に勘違いして勝手に怒って、挙げ句の果てに勝手に死ぬ、と」
直人は更に呆れたように笑う。
「…ごめんってば」
「人の話はきちんと聞くように!」
「はい…」
まるで説教されているような気がして、飛鳥はうなだれる。
:10/06/22 19:43
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#423 [我輩は匿名である]
「まっ、あんな目に遭ったら2度とやらないだろうけどな」
「うん、無理だね」
話の最中に、直人はふと、ある事を考えた。
「………今思ったんだけどさぁ」
「ん?」
「薫、何でお前の事許せたんだろうな?
前は『石川晶』の名前聞いただけで、すげぇ顔してたのに」
「……何でだろうね」
「だってあいつ、お前の事相当恨んでたぞ?
俺が『何であんな女かばったんだ』とか言われるぐらい」
:10/06/22 19:43
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#424 [我輩は匿名である]
「…まぁ、そう言われても仕方ない事したけどね、あたし」
飛鳥は暗い顔でため息をつく。
しかし、直人には不思議で仕方がなかった。
『初めて人を殺したいと思った』。
そこまで言っていた薫が何故…?
「…そんなに気になる?」
やけに考え込む直人に、飛鳥も首をかしげる。
「うん。だって、『殺してやりたい』とまで言ってたんだぞ?」
「そんなに…!?」
:10/06/22 19:43
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#425 [我輩は匿名である]
ぎょっとしたように、飛鳥が声を漏らす。
「……そのうち聞いてみるか」
途中で面倒くさくなって、直人は考えるのをやめた。
:10/06/22 19:44
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#426 [我輩は匿名である]
「もー、おばあちゃんも人使い荒いなぁ…」
2人が喋っている頃、奏子は買い物から帰っていた。
あの祖母に買い物を頼まれていたらしい。
「お腹減ったなぁー。お菓子買ってくれば良かっ…」
ぶつぶつ独り言を言っていた奏子の目に、ある光景が映った。
奏子は思わず足を止める。
:10/06/22 19:44
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#427 [我輩は匿名である]
近所の公園のベンチに並ぶ、2人の男女。
その横顔は、直人と飛鳥だった。
「(…何で…?)」
一瞬、自分の目を疑った。
しかし、どう見てもあの2人だ。
奏子は逃げるように、早足でその場を離れた。
:10/06/22 19:45
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#428 [我輩は匿名である]
月曜日。
「どうだった?カラオケ」
昼食の時間、薫が直人に尋ねた。
「楽しかったぜ。お前も来れば良かったのに」
直人は笑って言う。
しかし、薫の表情が一気に豹変した。
「『お前も来れば』……?……直人…お前…本気で言ってるのか…?」
「じょ、冗談に決まってんだろ!悪かったよ!」
「そうか、ならいい」
今の目は、かなり危ない目だった。
:10/06/22 19:45
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#429 [我輩は匿名である]
直人は内心ちょっとびびりながら、慌てて弁明した。
「(…危ねぇ…。マジで殺されるかと思った…。……“殺される”…)」
飛鳥と話した、あの内容を思い出す。
「(…いきなり『何で神崎許せたの?』とか聞くの、変だしな…)」
「……何だよ?」
じっと見られて、薫は困ったように声をかける。
が、直人は全く聞いていない。
:10/06/22 19:46
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#430 [我輩は匿名である]
「…………まぁいいや」
そう言って、止まっていた手を動かし始めた。
「(一体何なんだ…?)」
全く読み取れない直人の行動に、薫は呆れて首をかしげた。
:10/06/22 19:46
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#431 [我輩は匿名である]
一方、女子達は。
飛鳥と響子は、じっと奏子を見つめる。
奏子は一言も話さず、ただ黙々と弁当を食べている。
「(……何かあったのかな?)」
「(さぁ…?)」
2人は目で会話する。
「飛鳥さぁ」
不意に奏子が口を開き、飛鳥はビクッとする。
:10/06/22 19:50
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