記憶を売る本屋 2
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#471 [我輩は匿名である]
「月城薫は、俺が誰かわかってるみたいだったけど?」

「(そうなのか!?)」

「まぁ彼は勘鋭そうだしな」
声はからかうように笑っている。

「(…薫はお前の事知ってるのか?)」

「さぁ?全く知らないって事はないだろうけど」

直人は全くわからない。

ノートの端っこに、適当に図を書いてみる。

⏰:10/10/21 19:05 📱:N08A3 🆔:yJnmi4cE


#472 [我輩は匿名である]
真ん中に“幽霊”、その両脇に“オレ”“薫”と書いて、幽霊に矢印を引っ張る。

「(…お前、あと誰知ってる?)」

「お前の周りにいる人は大体知ってるよ。

月城薫、神崎飛鳥、安斎奏子、香月響子、あとロン毛の変な男子」

「(あぁ…あの自称・帰国子女な)」

最近あまり顔を見ないため、すっかり忘れていた。

「あと」

声が補足する。

⏰:10/10/21 19:05 📱:N08A3 🆔:yJnmi4cE


#473 [我輩は匿名である]
「石川晶」

直人はその名前にハッとした。

「(何であいつの事まで…!?)」

「さぁ?何でだと思う?」

声は問い詰めるように聞き返してくる。

晶を知っているのは、直人の近くでは薫と響子しかいない。

直人はさっきの図にいろいろ付け足し、それをじっと見つめる。

男の声。晶を知っている人物。薫じゃない…。

しばらく見ていると、直人はある人物を思い出した。

⏰:10/10/21 19:06 📱:N08A3 🆔:yJnmi4cE


#474 [我輩は匿名である]
自分とそっくりな顔をした、たった1人の晶の友達…。

「…お前…」

驚きのあまり、授業中だという事も忘れ、声を漏らす。

「…要か…?」

「…やっと思い出してくれたんだね」

声は、待ちわびたという感じで返事をした。

自分で言ったものの、直人は全く信じられない。

本を読んでいた時の直人と真逆の事が、要に起こっているみたいではないか。

「お前、何で…?」

⏰:10/10/21 19:07 📱:N08A3 🆔:yJnmi4cE


#475 [我輩は匿名である]
「声出てるよ」

声に言われて顔を上げると、周りの生徒が不思議そうにこっちを見ている。

直人は恥ずかしくなって、黙ってうつむく。

「(でも何で?つーかお前、どこにいんだよ?)」

「お前の中だよ。直人も同じような事あっただろ?5月ぐらいに」

言われてみれば、要の声によく似ている。

しかも“直人の中にいる”という事は、半年前の直人とほぼ同じ状態だ。

⏰:10/10/21 19:07 📱:N08A3 🆔:yJnmi4cE


#476 [我輩は匿名である]
「(何で!?お前にも本あんの!?)」

「無いよ」

「(じゃあ何でこんな事になってんの?)」

「…それは…今はまだ言えないな」

要は、なぜこんな状況になっているのは知っているようだ。

しかし、『今はまだ』という事は、いつか教えてくれるのだろうか?

「(まだって、いつか教えてくれんの?)」

「まぁ、言うべき時になったらね」

⏰:10/10/22 22:24 📱:N08A3 🆔:PoYSolQc


#477 [我輩は匿名である]
「(いつになんの?それ)」

「さぁ?」

「(何なんだよお前ー!)」

「何って、長月要だよ」

「(知ってるっつーの!)」

直人はわけがわからず、うなだれながら大きくため息を吐いた。

⏰:10/10/24 22:22 📱:N08A3 🆔:F3jbXIQM


#478 [我輩は匿名である]
昼休み、直人は不服そうに薫を見る。

「…何でわかってたわけ?幽霊の正体が要だって」

「逆に何でわからなかったわけ?」

呆れるように薫が聞き返す。

「石川晶が運動嫌いって話で『意外だ』って言うんなら、

あの女を知っている人間って事だろ?

その中から男の声ってので、今日子は候補から外れる。

で、『もう忘れたのか』って言われたんなら、お前が知ってる男だろ?

だったら長月要しかいないじゃないか」

⏰:10/10/24 22:22 📱:N08A3 🆔:F3jbXIQM


#479 [我輩は匿名である]
「さすが学年1位」

薫の解説に、要も納得している。

何だか疎外感を味わっている気がして、直人はムスッとする。

「…あーあー、どうせバカですよ、俺は」

「いじけるなよ」

要と薫の声が重なる。

「ハモるなよお前ら!」

「……え、今もいるのか?長月要」

「いるよ、24時間いるみたいだぞ」

⏰:10/10/24 22:23 📱:N08A3 🆔:F3jbXIQM


#480 [我輩は匿名である]
「えー迷惑な話」

「そんな事言われたって困るよ!」

『迷惑』と言われてショックだったのか、直人の中で要が叫ぶ。

「でも、何でそんな事になってるんだ?」

「えっ?俺だけ!?お前なってないの!?」

「なってない。響子も何も言ってないし、お前だけじゃないのか?」

「えーもう意味わかんねぇ…」

直人は椅子の背もたれにもたれて天井を見上げた。

⏰:10/10/24 22:23 📱:N08A3 🆔:F3jbXIQM


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