記憶を売る本屋 2
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#61 [我輩は匿名である]
「(…好き…じゃない、よな…」

飛鳥は答えてから、自分の心臓の鼓動が高鳴っているのに気付いた。

「(……そりゃ…晶と要はそうだったけど……、私は…)」

考えれば考えるほど、何だか胸が熱くなる。

「(……水無月は……私の事、どう思ってるんだろ…?)」

「飛鳥!」

⏰:10/04/21 22:14 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#62 [我輩は匿名である]
奏子が飛鳥の腕を掴む。

「へっ?」

振り向くと、アルバイト先のカフェを通りすぎかけていた。

「あれっ?ごめんごめん」

飛鳥は笑いながら店の中に入る。

奏子も何だか少しモヤモヤした気持ちで入っていった。

⏰:10/04/21 22:14 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#63 [我輩は匿名である]
4日後。

廊下に張り出された課題テストの順位を見て、一年生のほぼ全生徒が愕然とした。

直人は100位、飛鳥は98位、響子は121位、奏子は165位だった。

しかし、4人とも自分の順位など、もはやどうでも良かった。

「薫が…」

「2位…?」

「ええーっ!?」

直人、飛鳥、奏子が茫然とする横で、響子と薫が凍り付いている。

⏰:10/04/22 18:36 📱:N08A3 🆔:07aOrgP2


#64 [我輩は匿名である]
『2位:月城 薫(8組) 498点』

の上に1行、

『1位:桐生 良介(4組) 499点』

と書いてあった。

「月城ー!」

クラスの男子たちが薫に詰め寄る。

「何であと2点頑張れなかったんだぁー!?」

「…これでも自己ベストなのに…」

肩を持って揺さ振られながら、薫はブツブツ呟く。

⏰:10/04/22 18:36 📱:N08A3 🆔:07aOrgP2


#65 [我輩は匿名である]
「おい月島!」

その声に、クラスメイトの手が止まる。

見ると、自信有りげな顔をした良介が立っていた。

「(来たーーーっ!!)」

薫以外の4人が縮こまる。

「お前、名前すらないじゃないか」

「お前のすぐ下にあるだろ」

「What's?」

良介は成績表とにらめっこする。

「ん?お前、月島じゃなくて月城(つきじょう)だったのか」

⏰:10/04/22 18:36 📱:N08A3 🆔:07aOrgP2


#66 [我輩は匿名である]
「惜しいな、月城(つきしろ)だ」

何故か反対に、薫が良介を見下した言い方をして威張る。

「おっ、惜しいのはお前の方だろ!

まさかお前、負けるのがわかってたから響子ちゃんを渡さないように…!?」

「さぁな?でも…」

薫はフッと笑う。

「次は負けねぇからな…」

良介の目の前で、薫は宣言する。

⏰:10/04/22 18:37 📱:N08A3 🆔:07aOrgP2


#67 [我輩は匿名である]
「のぞくところだ!」

「あぁー惜しいな、のぞ“む”だな」

「だっ、黙れ!覚えてろよ!次こそは響子ちゃんを返してもらうからな!」

良介はキッと睨み返して、自分の教室に戻っていった。

「…何でテストの順位で響子の婚約者を決めなきゃいけないんだ…」

さっきまで威勢が良かったのに、薫は急に暗くなって壁にもたれかかる。

「…薫…」

⏰:10/04/22 18:37 📱:N08A3 🆔:07aOrgP2


#68 [我輩は匿名である]
「…いや、やっぱりおかしいだろ」

薫はもたれるのを止め、しゃきっと立つ。

そして、響子の方を向いた。

「やっぱ、断ってくる」

「へ?」

「だって、おかしいだろ?お前だって、他人の点数で彼氏決められるなんて…」

そう言われて、響子も「…うーん…」と頭を悩ませる。

「ちょっと、あいつに言って来る。響子はここにいろ」

そう言って、薫は良介の後を追った。

⏰:10/04/22 18:37 📱:N08A3 🆔:07aOrgP2


#69 [我輩は匿名である]
「おい、桐生」

薫に呼び止められ、良介は足を止めて振り向く。

「…俺、やっぱり勝負降りる」

薫はきっぱりと言い張った。

その言葉に、良介はフッと、余裕の笑みをこぼす。

「僕に勝てないから?」

薫は心底イラッとしたが、冷静に「そうじゃない」と言い返す。

⏰:10/04/22 18:38 📱:N08A3 🆔:07aOrgP2


#70 [我輩は匿名である]
「同じ事じゃないか。僕に負けて、響子ちゃんを取られるのが怖いんだろう?

そうだよねぇ。あんだけ自信満々で話に乗ったのに、負けたんだからね」

「…お前…!」

「知ってる?響子ちゃんの好きな男のタイプ。

格好よくて、優しくて、頭が良い男だって。

君、そんな事知らないだろ?」

良介はまるで、薫を見下すような言い方で笑う。

「…そんなもん、ガキの時の話だろ」

薫は良介を睨みながら言い返す。

⏰:10/04/22 18:38 📱:N08A3 🆔:07aOrgP2


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