*- エロチュウ -*
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#3 [亜夢]
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「だ…だめだよ…」
アタシの働いてるBARに来る常連客には厄介なやつがいる。
同じビルの3階でホストをしてる“皐月”と名乗る男だ。
「―店長いいんですか?…」
またどうせトイレで女の子を“アッチ”で口説いてる。
「かなりお金使ってくれてるから、きつく言えないんだよなあ…」
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:10/05/17 05:21
:F02B
:Za81RYNg
#4 [亜夢]
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うちの店はカナリ小さな個人店だ。 だから働きやすくて数ヶ月、アタシもここにいるんだけれど―…
さすがにお客さんや彼女ていう役割についた何人もの女とトイレで“ナニ”をされるのは不愉快だ。
「1回言わないと、分からないんですよ!!!」
アタシはトイレに向かう。
「響サン!!!」
アタシは皐月サンのことを名字でよんでいる。
-
:10/05/17 05:25
:F02B
:Za81RYNg
#5 [亜夢]
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「なあに?」
すぐさま、彼はドアをあけてニッコリ微笑む。
「あむむも混ざりたいの?」
響皐月はアタシのことを馬鹿にいて“あむむ”とか呼んでいる。
「なにいって―…」///
アタシは思いっきりドアを閉め直す。
ああ、また言おうとおもってたのにいえなかった。
「諦めるしかないですよ。」
苦笑する猫みたいな顔の店長。
-
:10/05/17 05:28
:F02B
:Za81RYNg
#6 [亜夢]
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響皐月(ヒビキサツキ)―…
本人曰く21歳。
(アタシのふたつ上…)
身長は高くて足が長い。
どうみても細い体。
顔は、雑誌にのってるモデルさん並に小さいし、
3階にあるホストクラブでは常にナンバー1だとか!!!
月に稼いでる額がウン万円―…
ただ異常なくらいの女好きなことはみてとれる。
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:10/05/17 05:32
:F02B
:Za81RYNg
#7 [亜夢]
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「ねえ、あむむ〜ん☆」
俺を癒して♪と言いながらスコッチをロックで飲む渋い男だったりもする。
「はい…て呼び方なおしてくださいよ!!!」
「うん、なおすよ☆癒してくれたら。」
「いったい何したら癒されるんですか?」
う〜んとね、とイケメンは少し天井のへんをみながら、人差し指で氷をカラカラと回す。
「チュウしてくれたら絶対癒されるんだけどなあ〜」
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:10/05/17 05:36
:F02B
:Za81RYNg
#8 [亜夢]
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「お客さんに色かける際、してあげてください―…」
ナンバーにはいってるとは言え、色恋で落とすなんて最低。 だけど響サンがどんな営業してるかなんかどうでもいい。
「あむむ、知ってた?俺ね、ポリシーがあって好きじゃない子とはキスしないんだよ。」
「ほかはするのに?」
「そう!!!!」^^
笑顔で言う響サンに首を傾げながらもへえ、と言うアタシ。
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:10/05/17 05:38
:F02B
:Za81RYNg
#9 [亜夢]
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「だから、キスしていい?」
ドキッ―…
流れからして“俺はお前のこと好きだからキスしていい?”って聞くんだよオーラ満載だからね。
水商売のひとってこわいこわい。
それに比べてあのひとは―…
チリンチリン♪
「中谷さん、いらっしゃい。」
-
:10/05/17 05:41
:F02B
:Za81RYNg
#10 [亜夢]
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「マスター今晩は。 おっ亜夢チャン、久しぶりだね。」
いつものカウンターの端に座って、赤ワインを飲む中谷サンに、アタシは胸きゅんなのだ。
肌は少し焼けてて、中肉中背でひげがいい感じ。 食通だし、いろんな話をしってる28歳の彼―…
「なに、あむむって俺よりあっちのが好みなの?」
「ええ!!!!」
勿論ですとも、と返事したかったけど、あえてやめといた。
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:10/05/17 05:44
:F02B
:Za81RYNg
#11 [亜夢]
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「ひっでえ〜…俺みたいなイケメンを目の前にして…ってコラ!!! 人の話聞けっ!!!」
アタシが熱い眼差しで中谷サンをみてると響皐月がわがままばっかり言って、相手してオーラをだしてくる。
子犬かっ!!!!
「わかりました〜どうしたんですかあ〜…」
「君、僕が真剣に君と付き合いたいっていったらどうする?」
「へ?」
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:10/05/17 05:47
:F02B
:Za81RYNg
#12 [亜夢]
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「もし俺が付き合ってって、あむむに告白したらどうする?
…
@付き合う
A無理っていう
Bちょっと意識する
C実はその台詞待ってたのよ…
さあどれだ!!!!」
「Aっすね。」
質問の3秒以内に答えるとまた子犬みたいにくうん、といって顔をカウンターにひっつける。
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:10/05/17 05:50
:F02B
:Za81RYNg
#13 [亜夢]
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「むしろなんですか…そのC番とかどう考えてもおかしいでしょ!!!」
「確かに。 俺ってそんなにお笑いのセンスあったっけ…イヒヒ。」
ひとりで響皐月が飲みにくるときは、客と来るときと全く違う雰囲気だ。
仕事の響サンはきりっとしてて男らしくて、いまみたいに甘えただったり面白いキャラだったりがなかなかない。
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:10/05/17 05:53
:F02B
:Za81RYNg
#14 [亜夢]
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ある日のことだ。
アタシが自転車をとめてBAR CIELに向かってると…
「よっ♪」
後ろから声をかけられる。
「この子が皐月サンのお気に入りのバーの子ですか?」
後輩ホストらしき子あわせて全部で10人くらい。
「いまからCIEL行くとこなんだよね♪」
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:10/05/17 05:57
:F02B
:Za81RYNg
#15 [亜夢]
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と、ダーツもありカラオケのある店を後輩ホスト君達も気にいった様子。
「しかもマスターのご飯まじうまあい!!!」
ココにはBAR CIEL特製の一品料理なんかもおいてある。
日によってマスターの腕と食材でかわるけれど。
マスターは愛嬌はいいし、サービス精神あるし、料理もうまけりゃ、カクテルつくらせれば最強だったり。
おまけにダーツはカウントアップで700をゆうにこえたりもする。
-
:10/05/17 06:00
:F02B
:Za81RYNg
#16 [亜夢]
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「今日は俺のおごりだから、じゃんじゃん飲んで遊べよ。」
響皐月はそういうと、いつも通り一差し指でロックアイスをカラカラとグラスの中で遊ぶ。
「…皐月君、今日は何を悩んでるの?」
マスターと響サンは意外と色んな話をしてるみたい。
「わかった。 また《あの子》のこと?」
その質問にも答えない響皐月。
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:10/05/17 06:03
:F02B
:Za81RYNg
#17 [亜夢]
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[あの子って誰だろ…]
思わず気になりながらもアタシはほかのホスト君に頼まれて、ブルドックを作る。
[まさか響皐月、ちゃんと本命いるんじゃないの―?]
フフン、意外と純情なんだなあとおもいながら出来上がったブルドックをホスト君に渡す。
「お姉さん彼氏いるの?」
「いませんよ―…」
そんな軽いやりとりをしてる。
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:10/05/17 06:06
:F02B
:Za81RYNg
#18 [亜夢]
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カランカラン♪
「わっ―今日は混んでるね〜…」
中谷サンと同僚のひとが店にはいってきた。
アタシはすぐにおしぼりを渡して、いらっしゃいませ、と声をかける。
「亜夢チャンはいつみても元気でかわいいね。 癒される。」
ニコリと微笑む中谷サン。
アタシはその笑顔だけで元気になれます〜!!!
と…
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:10/05/17 06:09
:F02B
:Za81RYNg
#19 [亜夢]
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「お兄さんの左手の薬指って―…」
「あ、え…」
突然ロックグラスを持ったまま、響皐月が中谷サンに声をかける。 左手の薬指―…?
「中谷サン、新婚だもんなあ〜」
ほろ酔いの同僚がそう言う。
いつも中谷サンは家族の話はしないし、アタシには『一人は寂しいよ』と愚痴ってたのに、うそだったんだ―…
ううん、アタシが勝手に独身ておもってただけだ―…
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:10/05/17 06:13
:F02B
:Za81RYNg
#20 [亜夢]
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トイレで少し深呼吸する。
馬鹿だ、既婚者に恋してしまうところだった。
ハアと息をはいた瞬間に溜まってたもの一気に出ていったからか、涙もぶわあってあふれ出した。
「亜夢のばかあ〜…」
コンコン。
「いまでます―…」
アタシは涙をふいて、
「ごめんなさ―…」
-
:10/05/17 06:15
:F02B
:Za81RYNg
#21 [亜夢]
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「わっ!!!」
出ようとしたのに響皐月にトイレにまた詰め込まれた。
「さっきの客帰ったぞ。 どうせ泣いてたんだろ…?」
「なっ、泣いてないもん…」
「強がるなよ。 目元みてみろよ。」
アイラインが崩れてこすった後が出来てる。
「だっ…あた…エーン…」
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:10/05/17 06:18
:F02B
:Za81RYNg
#22 [亜夢]
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「ほら。」
ふわっと、自然に響皐月がアタシを胸の中に包み込む。
「ちょっ…」
「このほうが泣きやすいだろ。」
確かにそうだ。
あったかくて、ほっとするからクシャクシャになるまで泣いた。
「大丈夫になった?」
眉頭を落としながら聞く響皐月…心配してくれてんだ。
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:10/05/17 06:20
:F02B
:Za81RYNg
#23 [亜夢]
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「お礼はチュウでいいよ。」
「冗談はやめてくださいっ…そんなファーストキスは簡単に奪わ―…」
あれ?
響皐月の顔がすごくちかくにある。 ながいまつげ。 お人形サンみたい…じゃなくて!!!!
く、く、唇が…!!!
「ファーストキスがどうしたって?」
「―――」///
アタシのファーストキスさよなら…
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:10/05/17 06:23
:F02B
:Za81RYNg
#24 [亜夢]
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「憂鬱だ…」
大学の授業中にアタシは、ぼそっと呟く。
「アンタ今日はさっきから上の空じゃん〜〜どしたの?」
右から高校からの親友アリサ。
「アリサ、たぶんアレだよ。 愛しの中谷ッチに、嫁がいた〜〜とかじゃにゃい?」
ちゃらけて左から幼なじみの裕也がそういった。
「…裕也ってまじKYだわ。」
アタシはそういって深くため息をついた。 冗談でいったことがリアル…笑いとれないよね。(苦笑)
-
:10/05/18 03:08
:F02B
:2tMYvgRI
#25 [亜夢]
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裕也は謝らなかったけど、(むしろ謝らなくていいんだけど…)アタシの大好きな苺みるくとメロンパンを買ってそっと置いてくれた。
「でもさ!!! 初体験を既婚者に盗られなくてよかったじゃん!!!」
グサリ―…
「え…?アンタその顔…捧げちゃったとかやめてよ!!!?」
焦り出すアリサ。
既婚者にはあげなかったけど…初キスは、尻軽で有名な女たらしのナンバー1ホストに持ってかれました…
なんて口が裂けてもいいたくなかった。
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:10/05/18 03:12
:F02B
:2tMYvgRI
#26 [亜夢]
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しかも!!!
その初キス奪われ事件で、キスの後からずっと胸がぎゅうってなってたなんて、死んでも言えない。
相手はあの響皐月だ。
「絶対むりむりむり!!!」
「…なんか亜夢、すごい百面相だけど…思い詰めてる?心配なんだけど。」
アタシ、だいぶテンションがおかしいことになっている。
今日はCIEL休みだから、裕也とアリサと放課後ゆっくりデートしちゃうんだ!!!
わすれよっと。
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:10/05/18 03:15
:F02B
:2tMYvgRI
#27 [亜夢]
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でも神様って大体意地悪だったりする…
「俺ちょっとTSUTAYA寄ってくる!!! スタバいるでしょ?ちょっくら待ってて〜♪」
上機嫌に裕也がCDをあさりにいく。 このパターンはよくある。 裕也がひとりでCDとデートしてるときは、アリサとアタシで色んな他愛もない会話をしながらコーヒーを飲む。
「あれ…今日はカプチーノじゃないんだ…」
ふうん、といいながらアリサは怪しいぞ光線をおくってくる。
しまった―…アタシは悩み事があるときは無意識にチャイとかに浮気してしまうのをアリサはよく知ってる。
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:10/05/18 03:22
:F02B
:2tMYvgRI
#28 [亜夢]
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週末、中谷サンが既婚者だと分かったこと…泣いてしまったら不意打ちに響皐月にキスされたこと…
気づいたら全部アリサにぶちまけてた。
「はあ…」
「ご愁傷様でした。」
アリサはフラペチーノを飲み干してそう言った。 アタシも同じ状況なら同じこといっただろう。
「そのホストさんは…亜夢にとってどうなわけ?」
どうって―…
-
:10/05/18 03:26
:F02B
:2tMYvgRI
#29 [亜夢]
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う―ん…
「どうって言われても分からないかなあ〜…」
「じゃあ嫌いとか興味がないってことではないんでしょ? 意識してるなら、なおさらだけど、少し知ってみてもいい相手なんじゃない?」
そうなのかあ…アタシは、甘ったるいチャイを飲んで少し、うってなってしまった。 やっぱりカプチーノがいいや…。
と、
「お姉さん♪なにやってるの?」
-
:10/05/18 03:32
:F02B
:2tMYvgRI
#30 [亜夢]
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素無視しようとしたら回り込んできて、ねえねえ〜…と話しかける。 夕方からナンパとかお断りだっつうの!!!
「あれ?CIELのお姉さんじゃん!!! みたことあると思ったあ〜♪」
この子は響皐月のとこの従業員だ。 確か彼氏いる?とか聞いてきたブルドック飲む男の子。
普段物覚えが悪いアタシも店のお客さんの顔と飲み物は覚えられる。
「皐月サンもすぐそこにいるんすよ〜♪」
て…呼ばなくていいからあああああ!!!!!
-
:10/05/18 03:36
:F02B
:2tMYvgRI
#31 [亜夢]
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黒いパーカーを頭に被って大きめのサングラスに見慣れないノーセット。 全身真っ黒なのに、シルバーアクセと真っ赤な派手な鞄で、お洒落にコーディネートされている。
「あれっ…あむむ☆ 可愛い子ふたりで何やってんの〜?」
そんな響皐月は相変わらずアタシをあむむ、とか不思議な呼び方をする。
「皐月サン、そんなにCIELのお姉さんと仲良くしたらエース怒るのもわかりますよっ!!!」
ケラケラ笑う後輩たち。
わけのわかってないアリサ。
ここから消えたいアタシ。
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:10/05/18 03:43
:F02B
:2tMYvgRI
#32 [亜夢]
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「なに?…ナンパされてんの?この状況って。」
あっけらかん〜としながら裕也が分厚いショップ袋を両手に握りしめて帰ってきた。 な、ナイスタイミング!!!
「俺CIELの常連なんですよ。」
前々から裕也にはいってある。
どスケベ女たらしホスト響皐月がうちの店の常連サンだってことは。
「ああ、例のホストさんかあ。 噂はいろいろ亜夢から聞いてますよ。」^^
にっこり笑う裕也。
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:10/05/18 03:46
:F02B
:2tMYvgRI
#33 [亜夢]
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「すいませんけど、僕の大事な子…あんまり遊んであげないでくださいね☆」
にこりと再び微笑む裕也。
その言い方って【アタシ、裕也の彼女でえす♪】になってないか!!!?
それも迷惑!!!
「大丈夫ですよ!!! 手は出さないんで♪」
丁寧に微笑んで会釈すると、手を軽くふって響皐月たちは去っていった。
-
:10/05/18 03:50
:F02B
:2tMYvgRI
#34 [亜夢]
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アタシ、妙に…響皐月がアタシと裕也が付き合ってるって思ってないかとか気にしてる。
裕也が言った言葉を、撤回して【うちら付き合ってないですよ?】なんていいそうにもなった。
なんなんだアタシ。
今日は月曜日。
シフトでは明日から4日連勤だ。
「次会ったらどんな顔しよ…」
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:10/05/18 03:52
:F02B
:2tMYvgRI
#35 [亜夢]
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火曜の授業は、なんだかいつもより長く感じた。
「たぶん―…響皐月のことが気になってるからだ。」
っっっ!!!
「アリサ〜…アタシの気持ちを勝手にナレーションしないでよう…」///
「でも合ってるデショ?」
クスリと意地悪に笑うアリサ。
「も〜…」
丁度タイミングよく鳴ったチャイムで、裕也は背伸びをして起きる。 全く気楽なやつだ。
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:10/05/18 04:00
:F02B
:2tMYvgRI
#36 [亜夢]
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8時に出勤。
シャツに黒いパンツ。 長い髪の毛をバレッタでまとめて、アタシは腰に黒いながめのエプロンをまく。 これがCIELのユニホーム。
そんな堅苦しいものはないけれど。
「店長おはようございます☆」
うん、おはようとマスターは言った。 このほんわかした雰囲気が好きなお客さんはかなり多い。
この店はリピーターが週に何回もくるくらい、ゆったりすごせるバーだ。
居心地がいいくせに、やたらいいムードが漂うこじゃれたバーだ。
-
:10/05/18 04:05
:F02B
:2tMYvgRI
#37 [亜夢]
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珍しくギムレットがバーのところに置かれてある。
これを飲むとしたらうちのお客さんでは、何かの社長さんをしている村上さんだけだ。
「昨日村上サン来てたんですね!!!」
ううん、と首を横に振るマスター。
「昨日皐月クンがひとりで、ギムレット飲みにきてたんだよ。」
響皐月がギムレット?
「彼の癖を教えてあげようか、亜夢ちゃん。」
え?
-
:10/05/18 04:09
:F02B
:2tMYvgRI
#38 [亜夢]
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「彼はね…スコッチをロックで飲むでしょう?」
ひとりで来るときは、確かにそれ以外飲んでるのを見かけない。
「彼、少し悩んだり、照れくさかったりすると…アイスをね、…こうやって人差し指でカラカラ回す癖があるんだよね。」
あ、そういえば…
「あとはね、気分が病んでたりすると…ギムレットを飲むんだよ。 彼って意外と繊細でね…」
まえに信用してた後輩をかわいがっててお金を貸したら飛ばれたことがあったらしくて、真剣にへこんでたとき、ギムレットを片手にマスターとお話してたんだって。
-
:10/05/18 04:13
:F02B
:2tMYvgRI
#39 [亜夢]
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「あとひとつあるけど…聞きたい?」
うん、と縦に首を振る。
「皐月クンはね…亜夢チャンがいるときに絶対ギムレットは飲まないんだよ。 と、違う言い方をすれば、…彼は僕に君が休みか電話してくるんだ。 やすみですよ、というとギムレットを頼んで…人生や恋愛について話したりしてくるんだよ。」
にっこり優しく微笑むマスター。
「でもそれって、アタシがいたら邪魔だから確認なんじゃないですか?」
アハハと軽く笑ってマスターは首を横にふった。
「亜夢チャンもまだまだだね。 …彼が君の存在を気にしてるからだよ。」
-
:10/05/18 04:18
:F02B
:2tMYvgRI
#40 [亜夢]
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「〜…だからそれってアタシに話を聞かれたくないからですよね?」
「うん、それはそうだよ。 だって君について話してるんだから。」
え?
「それは皐月クンも、君に言えるなら僕に相談したりしないだろうね。」
どういう意味?
カランカラン♪
「左渡さんいらっしゃい。」
焼酎ボトルを素早く出して、おしぼりをお客さんの手にそっとかけてあげる。
でも―…さっきのマスターが言ったことがすごく胸にひっかかる。
-
:10/05/18 04:21
:F02B
:2tMYvgRI
#41 [亜夢]
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4連勤最後の日。
週2のアルバイトの子が月曜と土曜固定出勤なので、アタシは何かがない限り、火・水・木・金にCIELにいる。
―…結局、響皐月は来ない。
12時過ぎたときだった。
カランカラン♪
「やっほお―い☆」
裕也とアリサがふたりでカウンターに腰かける。 このふたりはアタシが仲良くさせたんだが、ふたりで飲みにいくほど仲がいい。
「今日も飲むぞお♪…とマスター!!! あれ食べたいっ!!!」
-
:10/05/18 04:26
:F02B
:2tMYvgRI
#42 [亜夢]
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いつも裕也とアリサは、マスター特製のオムレツをたべたがる。 確かに美味しい。 本当に毎回食べるたびにおいしくなる。
「亜夢、アタシはね〜…カルアミルクくださあい。」
ふたりは自由に飲んで食べて、ダーツして遊んでる。 アタシはそれをみてただ笑ってるだけ。
と、
カランカラン♪
金曜の12時なのに珍しく響皐月がひとりでやってきた。
「あれっ…」
響皐月はアタシをみて目を丸くする。
-
:10/05/18 04:29
:F02B
:2tMYvgRI
#43 [亜夢]
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「響サン、何飲まれます?」
なんでアタシをみて驚いたのかは知らないけれど…なんだか不愉快だ。
「えとギム〜…じゃなくて、いつもの…」
いつものとはスコッチ。
ギムレットて今言いそうになったってことは何かに悩んでるんだな?ふうん〜…
裏方からオムレツを持ったマスターがでてきて裕也とアリサに渡した。
「また何かほしかったら言ってね。」
もちろん響皐月は裕也とアリサをみて、あれ?て顔を作る。
-
:10/05/18 04:32
:F02B
:2tMYvgRI
#44 [亜夢]
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「おまえの彼氏と友達じゃん…」
やっぱり勘違いしてた。
「あれ、アタシの幼なじみと親友。 どっちも長いつきあいのおともだちです〜…彼氏なんか出来た試しがないって前言ったじゃないですか。」
アタシが呆れながらそういうとスコッチをコースターの上に置いた。
「やあ、皐月クンおはよう。」
「マスター!!! あいついないってい〜〜〜〜〜」
ごにょごにょと内緒話をするふたりを背にしてアタシも裕也とアリサのオムレツに便乗しておいた。
-
:10/05/18 04:36
:F02B
:2tMYvgRI
#45 [亜夢]
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「そろそろ皐月クンもはっきりしたほうがいいんじゃないかな、と思ってね。 君も子供ではないんだし。 あんな子を野放しにしておくと、後悔するよ。」
とマスターの声がはっきり聞こえた瞬間、
カランカラン♪
「亜夢チャン―…」
中谷サンが店にひとりではいってくると、響皐月と裕也&アリサの間にひとりで座る。
「赤ワインですか?」
「ああ、頼むよ。」
胸に針金がささったみたいに凄く痛む。
-
:10/05/18 04:39
:F02B
:2tMYvgRI
#46 [亜夢]
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新しいボトルをあけて、それを中谷サンにそそぐ。
「亜夢チャン…ごめんね。 僕は君を傷つけたよね? 言い訳に聞こえるかもしれないが、きいてくれるかい?」
それは中谷サンがお嫁サンとうまくいってないこと、アタシをみると元気をもらえること、―…淡々と語られた。
「僕はたぶん、君にこうして会えるから、頑張れるんだよ。」
嘘つき。
大人はやっぱり嘘ばっかりなんだよ。
「ありがとうございます」
アタシは何の感情もいれずにその言葉だけを伝えた。 アタシが中谷サンに対するあこがれはとっくに消えてた。
-
:10/05/18 05:10
:F02B
:2tMYvgRI
#47 [亜夢]
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そうこうしてるうちに、数十分すると中谷サンはチェックをして帰った。 アタシの態度でもわかったんだろう。
アタシって、まだまだ浅はかだなあ…と改めて思った。
「亜夢。」
へ?
思わず方向が違うとも裕也たちのほうをみる。 ふたりはふたりで、キャッキャ言いながら遊んでる。
てことは…
「亜夢って呼ばないから違和感…かな?」
ロックグラスを片手に苦笑いする響皐月。
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:10/05/18 05:23
:F02B
:2tMYvgRI
#48 [亜夢]
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「亜夢、俺と今度デートしない?」
ロックグラスの中にはいったアイスを見ながら響皐月は言った。
「いやですよ。 変なことされそうですもん。」
アタシは苦笑しながらそう答える。
響皐月は子犬が耳を下げるときみたいな顔を作る。 両肘をテーブルにつけてアイスをただ、じいっと見つめる。
「…べ、別にいいですけど。 甘いもの御馳走してくれるなら…」
「まじ?やった☆ 俺もさ〜甘いもの大好きなんだよね〜特にね―…」
カランカラン♪
-
:10/05/18 05:27
:F02B
:2tMYvgRI
#49 [亜夢]
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「やっぱりココにいたの、皐月…」
胸元がセクシーに開いた服をきたお姉さんが響皐月の隣に座ると顎を肩に乗せる。
「こんなお子様騙しちゃかわいそうでしょう?」
と耳元で言うわりに、声がでかい。 わざとアタシの耳にはいるように話している。
「あむむはイイ子だから…俺の悪い誘いにはのってくれないよ。 からかってるだけだもん♪俺冗談の固まりだから〜☆」
クスリとほほえむと時計で時間を確認する響皐月。
「あやの、同伴してくれんの?」
「だからココにきたんでしょ」
アタシは蚊帳の外―…
-
:10/05/18 05:31
:F02B
:2tMYvgRI
#50 [亜夢]
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お会計を済ませると、あやのって女の人は響皐月の腕に自分の腕を絡めてでていった。
【俺冗談の固まりだから☆】
【からかってるだけ…】
響皐月のいった言葉がアタシの胸をチクチク突き刺す。
また、泣いてしまいそう。
裕也もアリサも2時すぎには店をでて酔っぱらったまま自転車を押してかえっていった。
裏方でカチャカチャ洗い物をしてるマスター。
こっそりトイレに入るとまた涙が溢れてきた―…
「もお〜…亜夢のばかあ…」
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:10/05/18 05:35
:F02B
:2tMYvgRI
#51 [亜夢]
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コンコン。
「うわっ…ごめんなさいっ…」
お客さんはいないから、マスターが心配してノックしてくれたんだろう。 アタシはちゃんと涙をふいてアイラインを整えてトイレの扉をあける。
「なんで―…また泣いてるの?…」
数十分前に出ていった響皐月が悲しそうにアタシをみて言った。
そのまま又、トイレに押し込まれる。
「…なんで泣いてんの?」
「泣いてなんかっ…」
そのまま響皐月の胸の中にすっぽりおさまる。 あったかさに涙がまた滲む。
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:10/05/18 05:39
:F02B
:2tMYvgRI
#52 [亜夢]
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「俺…亜夢が泣いてるとこ、見るの嫌い―…」
ドキン―…
アタシを亜夢って呼ぶ響皐月。
アタシを大きな腕で包み込んでる響皐月。
「泣かないから離して…っ」///
突然照れくさくなる。
すうっと、右手がアタシの左の頬に触れる。 とても自然に響皐月の顔がまた、近くになる。
「亜夢。」
ああ、たぶんこれは好きにさせるための呪文か魔法だ。
-
:10/05/18 05:43
:F02B
:2tMYvgRI
#53 [亜夢]
-
―…
「もう行かなきゃ…」
あったかいものを唇に残して響皐月はそう言った。
「あ、これ…ココに載ってるの俺の番号とメアドだから…気がむいたら連絡頂戴よ☆」
な?とほほえみながらアタシの頭をクシャクシャとするとトイレを出ていった。
まだ―…胸がはずんでる―…
***
(

)今日の更新は
>>24からここまででした

-
:10/05/18 05:48
:F02B
:2tMYvgRI
#54 [亜夢]
-
>>003-053***
華の金曜は終わってお休みの日がきた。 4連勤のあとのこの週末は結構好きだったりする。
メリハリがつけれるしね。
でも―…今日はどうも考え過ぎて何もできない気がする。
響皐月から貰った彼の名刺。
アドレスと電話番号それから、いつもと雰囲気が違う響皐月の写真が名刺にのってある。
「はあ―…」
-
:10/05/19 07:46
:F02B
:aOzGAOJ.
#55 [亜夢]
-
かけるか…
かけないか…
携帯の画面を開いたまま、アタシは何度か携帯と名刺をみた。
一度番号をいれてみても、すぐに消した。
携帯に登録する?
…あ〜、わかんない…
「はあ〜…」
何回ため息をついただろう。
気づいてたらベッドでそのまま眠りについてた。
-
:10/05/19 15:58
:F02B
:aOzGAOJ.
#56 [亜夢]
-
せっかくの土曜日は、自宅で携帯と奴の名刺だけで終わってしまった。
目をさましたのは日曜の昼。
「あ…やば…」
アタシは2時に高校の同級生で仲良しの桜に会う約束してたんだった―…
時計は12時半。
「よかった…」
お風呂に急いではいって、そそくさと化粧をする。 ちょうどいい時間だ。
アタシは待ち合わせ場所にむかう。
-
:10/05/19 16:01
:F02B
:aOzGAOJ.
#57 [亜夢]
-
響皐月のこと考えずにすむ…
アタシはいつも待ち合わせにしてる、スタバにひとり座ってチャイを飲んだ。
(あっま〜…)
またカプチーノじゃない。
今回はアリサに言われなくても気づく。
「亜夢〜!!!」
夜の仕事をしてる桜は、キラキラしたアクセ達を身にまとい、長い爪…ばさばさなまつげに綺麗にセットされた髪の毛。
-
:10/05/19 16:05
:F02B
:aOzGAOJ.
#58 [亜夢]
-
ひさびさの再会だから、色んな話が次から次ぎとでてくる。
「てゆうか〜…アタシ彼氏できたんだっ♪」
桜は薬指に輝く指輪をこちらにみせてニコニコとほほえんだ。
「…よかったじゃん!!!」
でも内心不安になった。
桜の言う彼氏とは、ホストのことだ。
彼女が夜を始めた理由も、最近風俗にいこうか悩んでる理由も遊ぶお金だった。
-
:10/05/19 23:16
:F02B
:aOzGAOJ.
#59 [亜夢]
-
きっかけはある雑誌のモデルさんだった。 そのモデルの職業がホストだったため、会えるから―…という理由でホストクラブに足を運んだらしい。
容姿も頭もいい桜は、男で困ったことはなかった。
でも何か埋められない寂しさがあったんだろう。
それを埋めてくれる居心地のいい空間がホストクラブだったんだろう。
-
:10/05/20 06:02
:F02B
:uEyPQx6s
#60 [亜夢]
-
>>003-060***
アタシは行ったこともない空間だからだいぶ客観視してる。
別に響皐月を知ってるからといって、ホストという職業がどんなものかはわかってない。
でも…アタシは偏見してる。
それは知らないからだと思うけれど。
-
:10/05/20 06:07
:F02B
:uEyPQx6s
#61 [亜夢]
-
「でねでね、彼氏ったら…過去の女が最低だったらしくて、手も繋ぎたくなければ、キスも嫌なんだけど…愛しくってえ〜…」
桜が幸せならいい。
でもアタシは心配してしまう。
正直、頑張って水商売をしている桜には、1日で給料を使ってしまうような遊び方はしてほしくなかった。
就職率のかなり低い外資系の昼職をやめて、夜の世界にはいったんだから…
「あ〜、早く結婚したいっ☆」
-
:10/05/20 06:11
:F02B
:uEyPQx6s
#62 [亜夢]
-
「…あれ?」
スタバのテラスは硝子張りなので歩いてるひとたちを人間観察できる。
桜はアタシの後方をみて、あ―!!!と声をかけた。
「アタシの彼氏だっ!!!!」
浮かれた様子の桜。
ぶんぶん手を振ると、響皐月のあのとんがった靴の音がした。
カツカツカツ―…
「亜夢、紹介するっ♪」
-
:10/05/20 06:14
:F02B
:uEyPQx6s
#63 [亜夢]
-
「アタシの彼氏の皐月クン♪」
―…
「あ、どうも。」
間違えないよね。
これはあの響皐月だよね。
少し優しくされたからって図に乗ってたのかも。
彼女いて、当たり前だよね。
「えっ…俺らいつ付き合ったの?」
響皐月はアタシには全く触れない。
-
:10/05/20 06:16
:F02B
:uEyPQx6s
#64 [亜夢]
-
「ひっどお―い…こないだ飲みにいったとき付き合って♪て言ったらイイよっていったじゃん。」
「まじか〜酔っぱらうと女みんなに声かけちゃうからな☆」
やっちゃった、とちゃらけて舌を出す。
「なにそれえ〜…好きじゃないの?桜のこと。」
「まだ会うの3回目じゃん!!!」
ちょっと呆れたように笑う響皐月。
-
:10/05/20 06:19
:F02B
:uEyPQx6s
#65 [亜夢]
-
響皐月は、何度もアタシの様子を横目で伺ってた。
期待してしまう―…
でも女を騙すのが彼らの仕事。
女の子に嘘をつくのも、信用させるのも、得意技だ。
アリサは言ってた。
「騙されていいじゃん。 恋愛が怖くて出来ずに大人になるほうが怖いよ。」
って。
-
:10/05/20 06:22
:F02B
:uEyPQx6s
#66 [亜夢]
-
桜は響皐月にべったりくっついて片手に巻き付いて離そうとしなかった。
「俺いまスカウト中だし、また連絡するわ―!!!」
またね、と手をぶんぶん振ると、響皐月は人混みに消えていった。
「あ〜あ…いっちゃった…皐月ちは忙しいんだから…全然遊んでくれないし、連絡もまちまちなの!!! ずるい男だよね…」
きまずい。
アタシがあの男とキスしてしまったことや、自分の店の常連だなんて、口が裂けてもいえなかった。
-
:10/05/20 06:26
:F02B
:uEyPQx6s
#67 [亜夢]
-
帰宅―…
部屋に戻り、机をみると置いたはずの名刺がない。
おかしいなあ。
アタシは数分周辺を探したけれど、結局みつからず、あきらめて日曜に終わりを告げた。
正直…響皐月を桜が指名してるとなると、のちのち大変なことになりそう…
日が落ち、月がでて、また日がのぼると月曜の朝になる。
今日は授業は昼からたった数時間。
-
:10/05/20 06:29
:F02B
:uEyPQx6s
#68 [亜夢]
-
月曜は短時間の授業プラスCIELはお休みなので、まだゆっくりできる日。
「亜夢、おでかけしようよ♪」
たまにはね、と付け足してアリサがそう言った。
そんなことよりも、アタシは響皐月は何のためにアタシを口説いたり?抱きしめたり…好きっぽいそぶりを見せるの?
ホストだから?
わかんないよ。
どれが嘘なのか本当なのか…
***
>>054から
ここまで更新しました

-
:10/05/20 06:32
:F02B
:uEyPQx6s
#69 [亜夢]
:10/05/20 06:35
:F02B
:uEyPQx6s
#70 [亜夢]
-
【彼氏】の話をされてから、桜から頻繁にメールで相談されるようになった。
正直、全然携帯放置なアタシにとってマメに連絡をかえすのは疲れる。
特に、土日月曜日はいいんだけど、CIELと学校がある日なんて携帯に睡眠時間をとられるのは、きつい―…
「ごめんっ…話また今度でいいかな?今から仕事なんだよねっ…」
「え?夜に仕事いってるの?」
嘘はだめだ。
-
:10/05/20 17:14
:F02B
:uEyPQx6s
#71 [亜夢]
-
「アタシ今BARで働いてるよ。」
「まじ?じゃあ、今日行ってもいい?」
まずい、繋がってしまう。
…むしろ別に付き合ってる訳でもないから、隠す必要なんてないかあ。
気楽にいこう。
「いいよ。」
アタシは手短に伝えると準備してでかけた。
火曜の夜―…
今日から4連勤の日。
-
:10/05/20 17:17
:F02B
:uEyPQx6s
#72 [亜夢]
-
12時半くらいにメールが入って今から来る、と桜に言われた。
仕事あがりなんだろう。
チリンチリン♪
「うわあ〜酔っぱらったあ〜」
桜が若い男の人を引っ張って、カウンターに座らせた。
「あ、これアタシの新しい彼氏の遊星クン♪」
にゃはは、と可愛く笑う。
遊星ってひとはビールと言うと、ほんのり疲れた顔をした。
-
:10/05/20 17:21
:F02B
:uEyPQx6s
#73 [亜夢]
-
「もうね―…皐月は相手してくれないから無視してやるん…」
さえぎるように店の扉があく。
「いらっしゃいませ―」
入ってきたのは噂の響皐月。
最近になって女の人をつれてくることがなくなった気がする。
ひとりで出勤前に数杯だけ飲みにくる。
何も言わないあいだにアタシはロックグラスにスコッチを流し込む。 アイスがカラカラと音をたてる。
-
:10/05/20 17:27
:F02B
:uEyPQx6s
#74 [亜夢]
-
店内が暗いせいか、遊星サンの影で隠れてるせいか、響皐月はまったく桜の存在に気づかない。
「亜夢…」
アタシは、ドキンとする。
もう―…あむむって調子づいて呼ばれなくなったからだ。
「ああ、皐月クンいらっしゃい…」
マスターが大きな声でそう言った。
「皐月?」
遊星サンがぼそっと桜に聞く。
-
:10/05/20 17:29
:F02B
:uEyPQx6s
#75 [亜夢]
-
「あれ、桜じゃん。 彼氏?」
響皐月はアタシの渡したスコッチをカラカラさせながら、にんまりと桜をみつめた。
「えっと…」
桜は動揺してる。
「よかった。 俺より全然いい男ぽいし。 大事にしてあげてね。」
柔らかくほほえむと持っているスコッチを軽くのどに通す。
桜は何も言わず1万円を机に置くと無言で帰ってしまった。
-
:10/05/20 17:34
:F02B
:uEyPQx6s
#76 [亜夢]
-
その1万円を握りしめて追いかけても、名前をよんでも桜は振り向かなかった。
新しい彼氏という遊星サンもアタシの目先で彼女を追いかけてる。
しょうがない。
アタシはため息をついてそのまま店に戻った。
「おかえり…」
ネクタイを綺麗につけなおしてる響皐月。
もう出勤時間だ。
-
:10/05/20 17:38
:F02B
:uEyPQx6s
#77 [亜夢]
-
「あの子はね…お金で愛を買おうとしてるんだよ。 可哀相でみてられない…でも…」
でも、の後に間があく。
「俺は付き合おうて言葉にいいよ、というべきだったのかもしれないけど…」
ふう、と煙草の煙を吐く。
「俺…いま好きな女がいるから、ね。」
ドキン―…
嘘?本当?
-
:10/05/20 17:41
:F02B
:uEyPQx6s
#78 [亜夢]
-
それとも…
信じる?信じない?
「えと…」
「なんで連絡くれなかったの?亜夢。」
待ってた、と小声で言われる。
「あの…名刺、机置いてたら、どっかいっちゃって…」
「じゃあ俺来るの待ってた?」
ドキン―…
飲み込まれる。 このひとの、空気に。
-
:10/05/20 17:44
:F02B
:uEyPQx6s
#79 [亜夢]
-
「亜夢は俺がホストだから嫌?」
違う…
ホストだから嫌なわけではない。
ホストだから、こうなんじゃないか…ていう固定観念があるんだ…。
「たぶん、俺が本当のこと言ってるか、嘘を言ってるか…わかんないから?じゃないの。」
アタシは縦にうなずく。
-
:10/05/20 17:51
:F02B
:uEyPQx6s
#80 [亜夢]
-
「俺が仕事やめたら…俺と付き合える?」
アタシは考えた。
仕事とアタシを選ぶってこと?
「そんな…どっちが優先だなんてっ…」
「俺はお金がいるから、いまの仕事が辞められない。 …でも嫌なら考えるけど。」
彼は、はあ、とため息ついた。
「…いつからか、わかんないけど…」
目をみつめられる。
-
:10/05/20 23:03
:F02B
:uEyPQx6s
#81 [亜夢]
-
「亜夢に嫉妬してもらいたくて…女の客連れてきてた…」
時計がカチッカチッと音をたてて動いてる。
PPPP…
もちろん出勤時間ぎりぎりのナンバーワンの携帯は鳴り始める。
「なんでこう…〜〜」
響皐月はハアとため息をついて、また名刺をつきだした。
「…やめた。 携帯貸して。」
アタシの手から取り上げて耳元にあてる。
-
:10/05/21 07:32
:F02B
:na8HDJcY
#82 [亜夢]
-
PPPP…
また同じ着信音が響皐月の携帯から流れる。
「俺から連絡する。」
わかった?という目でじっと見られる。
「…あ、はい…」
圧倒されてアタシ、そんなに喋れてないというかまともに顔さえみれなかった。
ジャケットを素早く羽織ると会計分のお金を置いて響皐月は急いだ。
「ありがとうございました…」
-
:10/05/21 07:35
:F02B
:na8HDJcY
#83 [亜夢]
-
響皐月が去ってからマスターは言った。
「やっとか。」と…
「昨日もギムレット飲みにきてたんだよ。」
月曜日。
アタシがCIELを休みな日だ。
「ここ最近の悩み事の原因は君なんだよ。」
くすりと笑うマスター。
「そ…そんなの知らないですよっ…」///
でも、まだやっぱり思う。
本当?嘘?
-
:10/05/21 07:39
:F02B
:na8HDJcY
#84 [亜夢]
-
でも―…
アタシみたいに利用価値のない人間を騙さなくてもいいわけだもんね。
お金持ってて、自由に彼の店で飲めるわけでもない。
アタシを彼のものにしても得ではないはず。
「信じてもいいかなあ…」
ドキン―…
少しだけ携帯を確認することに過敏になった。
センター問い合わせが趣味になりそうなくらい。
-
:10/05/21 07:44
:F02B
:na8HDJcY
#85 [亜夢]
-
あのキスのせい―…
彼を意識しまってる。
アタシは仕事を終えて鞄の中に携帯を放り込んだ。
営業中は連絡よこせないくらい忙しいはずだ。
でも何度も携帯が光っているかを確認する。
それも響皐月のせい―…
-
:10/05/21 07:48
:F02B
:na8HDJcY
#86 [亜夢]
-
水曜日。
あのワン切り以来、響皐月は電話をかけてこなかった。
着信履歴から登録した名前。
そのまま【響皐月】とはいっている…
「はあ…」
ちらっと携帯を見る。
「恋してる子みたい♪」
右からコソコソと耳打ちするアリサ。
-
:10/05/21 18:10
:F02B
:na8HDJcY
#87 [亜夢]
-
「えっ…」///
アタシの顔はたぶんりんごみたいに紅く染まったんだろう。
アリサはニターとしながら指でアタシの頬をつつく。
「〜〜…」///
恋してるのかな?
でも告白された訳じゃない。
ただ、携帯の番号を知ってるのと…キスを2回交わしただけ。
だけ…じゃないのかもしれないけど…。
-
:10/05/21 18:13
:F02B
:na8HDJcY
#88 [亜夢]
-
今日最後の講義。
アタシは外で煙草を吸う友達たちと一緒にたむろっている。
BBBB…
突然ポケットにいれてた携帯のバイブが鳴り始める。
もしかして…
知らない番号からだ。
「はい、もしもし―…」
-
:10/05/21 21:55
:F02B
:na8HDJcY
#89 [亜夢]
-
「あ、亜夢…?」
声が、―…響皐月だ。
「ごめん…俺携帯落としちゃってさ。 ちゃんと頭にいれといたんだ、亜夢の番号。」
ドキン―…
「もしかしたら俺の連絡待ってたかな、とおもって―…」
まさかな、と鼻で笑う響皐月。
「いや―…あのっ…」///
「待ってた?」///
なんかすごく恥ずかしい―…
-
:10/05/21 22:01
:F02B
:na8HDJcY
#90 [亜夢]
-
「今日俺、休みなんだよね。 まあ今起きたんだけどさ―…遊びにいかないかなあ、とか思ったりして。」
響皐月からの誘い。
ちょうど今日は自宅に帰ろうとおもってたころ。
「あ、―…空いてます。」
と言った瞬間、響皐月はよっしゃと小声でいった。
それがまたアタシの気持ちをぐいぐいっとあげる。
「そしたらさ―…」
-
:10/05/21 22:05
:F02B
:na8HDJcY
#91 [亜夢]
-
最後の講義なんて頭になんかはいってこなかった。
アタシにとって、男の人とのデートは…高校や中学んときにした遊びに行くことくらいしか知らない。
大人の人―…
アタシの知らない世界を知ってる、そんなひととどこに遊びにいくんだろう―…
ドキドキしっぱなしのアタシ。
しかも待ち合わせ場所と時間。
大学の前に、アタシが講義を終えたら、すぐ―…
-
:10/05/22 00:04
:F02B
:Qn3qwYdw
#92 [亜夢]
:10/05/22 00:08
:F02B
:Qn3qwYdw
#93 [亜夢]
:10/05/22 00:12
:F02B
:Qn3qwYdw
#94 [亜夢]
-
「亜夢。」
校門の前。
ヒラヒラと手を振るモデルみたいな男、響皐月。
もちろん周りの子達はチラチラ彼をみたり、さえないアタシを見たり。
ぺこっとお辞儀する。
「まだ堅いなあ…キスもした仲なのに♪」
にんまり微笑んで響皐月は言う。
―…///
-
:10/05/22 06:19
:F02B
:Qn3qwYdw
#95 [亜夢]
-
「乗って?」
キーを片手にピュンピュンて音がすると遠隔操作で車が光る。
これってかなりの高級車、のはず。
詳しくはないけどそれなりにわかる。
「ありがとうございます…」
アタシは助手席のドアの開け閉めまでしてくれる響皐月にどきどきする。
紳士的だなあって。
-
:10/05/22 06:22
:F02B
:Qn3qwYdw
#96 [亜夢]
-
「ね、俺の名前よんで。」
「響サン…」
ハンドルを握りしめたまま、響皐月はハアとため息をつく。
「俺のほんとの名前は龍紀ってかいて…たつき。 本庄龍紀。」
「龍紀…サン。」
「違うよ亜夢。 たつきって呼んで。」
「たつき…」///
よく出来ましたと言いながら優しくアタシの髪の毛を撫でた。
-
:10/05/22 06:27
:F02B
:Qn3qwYdw
#97 [亜夢]
-
「亜夢は、今日夜仕事だろ?」
「はい…」
これで5回目。
さっきから響皐月…じゃなくて本庄龍紀がずっと敬語禁止っていってくる。
年上でしかもお客さんだから龍紀には、すぐにタメ口では話すことができなかった。
「ちょっとずつでいいから…俺は亜夢と仲良くなりたい。」
ドキン―…
アタシの心臓は夜までもつかな?
-
:10/05/22 06:31
:F02B
:Qn3qwYdw
#98 [亜夢]
-
「次俺に敬語で話したら、キスするよ…?」
車のハンドルを握りしめたまま、まっすぐ前に目を向けて龍紀はいった。
「えと…」///
「夜仕事あるなら俺一緒にCIELいってもいい? どうせ暇だろ。」
店がね、と笑った。
水曜日は確かにノーゲストのときもある。
ふたりで行くとかなんだか照れくさい。
-
:10/05/23 23:11
:F02B
:UUkC3.iQ
#99 [亜夢]
-
「はい。」///
あ―…
目の前は赤信号。
ブレーキで止まると同時にシートベルトをはずす龍紀サン。
「おしおき☆」
つぶった目が近づいてくる。
鼻と鼻がぶつかりあったそのときに、後ろからのクラクション。
「ここの信号…せっかちだなあ…」
子供みたくふてくされる龍紀サン。
-
:10/05/23 23:14
:F02B
:UUkC3.iQ
#100 [亜夢]
-
ちがうちがう―…
龍紀サンじゃなくて【たつき】だし、はいじゃなくてうん、だ。
慣れるのに一苦労しそうだけど…
でもドライブ中の龍紀はたくさん自分のことを話してくれたり、たくさん質問をしてくれて、途中から全く気を使わずに会話できた。
「わっ…もうこんな時間か。 いこっか☆」
ぱらぱら雨が降ってる。
手をぎゅっと握られ、駐車場から店のビルまで走る―…///
-
:10/05/23 23:18
:F02B
:UUkC3.iQ
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