その日が来る前に、
最新 最初 🆕
#1 [愛華]
辛かった。
苦しかった。
だから、生きたかった。
いつだって、願ったことは
ただひとつ。
「ただ一人、誰かの為に生きたい。」
それが君だったらいいな って
幼い心の中で思った。
まだ17才の春。

⏰:10/06/19 19:31 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#2 [愛華]
その時わたしは
まだ17才。
毎日が苦しかった。
見える景色は毎日同じ。
いつか。
って何度も願ったけど
その思いは音をたてて
その度くずれていった。

⏰:10/06/19 19:37 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#3 [愛華]
「だーかーら!!!
俺はなんもしてねぇっつってるだろがよ!!!」
「…お前いつもそういってるだろ……」
ここは病院。
そこに昨日入院した男
赤石隆則(あかいしたかのり)
19才。

⏰:10/06/19 19:44 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#4 [愛華]
「だからさぁ!!
俺はケンカ止めただけだって」
「止めただけ……?
ホントか?」
「……まぁ一発二発…」
「殴ってんじゃねーか!!」
そう隆則を追い詰めるのは
長谷充(はせみつる)
警察官であり、
今となっては隆則が起こす
事件の専門となりつつある
かわいそうな30才のオッサン。

⏰:10/06/19 19:53 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#5 [愛華]
「お前なぁ。
骨折で済んだからいーけど。
相手、ナイフ持ってんだぞ?
もし刺さってたらどーする?」
「刺さってねーからいーだろ」
「まぁそーだな。
結果オーライってことで♪


んなわけねーだろボケ!!!」

⏰:10/06/19 19:58 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#6 [愛華]
長谷の顔は疲れというか呆れ
というか怒りというか…
まぁそんなマイナスの感情が
たっぷり現れていた。
「そんなイライラすんなよ
ハゲつるつる」
「長谷充だ!!
おもしろくねーわ!!」

⏰:10/06/19 20:02 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#7 [愛華]
「お前なぁ、毎回
呼び出される俺の身にもなれ!
今回だってな。
俺、なんて呼び出された
と思う?」
「え…さぁ?」

「赤石がまたやらかした。
めんどくせーから長谷よろ〜

ふざけんな!!俺の
日曜日返せコラァ!!」


あー………
もう隆則にはどうしようも
なかった。

⏰:10/06/19 20:07 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#8 [愛華]
ひととおり、長谷の説教
&やつあたりが終わった
ところで、長谷は
帰ることになった。
「今回も先に手だしたの
向こうだし、ナイフも持って
たからお前は大丈夫だよ多分」
「おーわかった」
「…毎回、悪いのはあっち
だけどな。
あんま心配かけんな。
骨折だけじゃ済まなくなる事も
あるかもしれねーぞ」

⏰:10/06/19 20:14 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#9 [愛華]
毎回、長谷はこういう。
「じゃーな」
「長谷」
「…ん?」
「さんきゅな。…いつも」
「そー思うなら日曜に
ケンカすんな。
ただでさえ寝不足なんだぞ」
「おーわかった。」
少し胸が、温かかった。

⏰:10/06/19 20:18 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#10 [愛華]
〜隆則side〜

⏰:10/06/19 20:21 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#11 [愛華]
赤石隆則19才。
キンパツのせいで
必要以上にケンカに絡まれる。
昨日は道端でケンカしてたのを
止めようとして、
案の定絡まれ、階段から落下。
足首を骨折。
後に待ってたのは、いつもの
長谷の説教。

⏰:10/06/19 20:27 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#12 [愛華]
長谷はいーやつだ。
親のいない俺にとって
ただひとり信頼してる男でもある。
メーワクかけてるけど

その度ちゃんと後始末
してくれる。

⏰:10/06/19 20:30 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#13 [愛華]
その日もいつものように
長谷の説教を受け、
俺は暇だったので院内を
散歩することにした。

⏰:10/06/19 20:33 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#14 [愛華]
この日。君と出会ったんだ。
ケンカばっかだった俺に
光をくれた君。
でも君自身は闇を抱えて
今日という日を
苦しみの中、生きていた。

⏰:10/06/19 20:37 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#15 [愛華]
「うわ、足がちがち!
うごかねぇ!!」
散歩しようとしたのはいーが
骨折してたの忘れてたな。

うーん。絶対安静って
看護師言ってたけど。
…あ、トイレいきたくなった。

⏰:10/06/19 20:41 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#16 [愛華]
ビー

「赤石さん、呼びました?」
「あートイレいきたい
ですけどー…」
「じゃあ車椅子つかって
下さい」
俺はナースコールで看護師を
呼び、車椅子を借りた。

⏰:10/06/19 20:43 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#17 [愛華]
「よいしょ」
車椅子は思ったより小さく
なんか違和感があった。
廊下に出ると、さっきの
看護師がいた。
「さっき赤石さんと
しゃべっちゃった☆
あの人カッコイイよねー」

「えーうらやましい☆」


くだらねぇ。
俺は昔から女が苦手だった。

⏰:10/06/19 20:49 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#18 [愛華]
女は顔だけで男を判断する。
女のつけた香水の匂いを
嗅ぐと、具合が悪くなる。

なにがうらやましいだ…

気分が悪いまま廊下を
進んでいると、


ドンッッ!!!

誰かが俺にぶつかった。

⏰:10/06/19 21:30 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#19 [愛華]
「いってぇ……」
「いたた…あ、ごめんね!!
大丈夫!?」

俺にぶつかったのは女だった。

「こらぁー!!那佑ちゃん!
待ちなさい!!」

「げ!!」
女は後から追ってきた看護師に
捕まった。

⏰:10/06/19 21:34 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#20 [愛華]
「ほんっっとに
すいません!!
ほら、那佑ちゃんも!!」

「ごめんなさい…」

女は15才くらいに見えた。
しかし、廊下を走って怒られる
くらいに元気なのに…
どこが悪くて入院してんだ?

⏰:10/06/19 21:37 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#21 [愛華]
「那佑ちゃん、はやく
病室もどりましょ?」

「い や だ!!」

那佑とかいう女は、
病室に戻らないと駄々を
こねはじめた。


…俺、関係ねーし……
病室に戻ろうとすると、
那佑に腕を掴まれた。

⏰:10/06/19 21:41 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#22 [愛華]
「じゃあこの人の部屋に
遊びに行く!!
いいでしょ?隆則」

「なにいってんだよ!
ダメにきまって…って え!?
なんで俺の名前…」

「昨日から噂だよ?
カッコイイ人が入院したって。
あなたでしょ?赤石隆則さん」

コイツ……

⏰:10/06/19 21:46 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#23 [愛華]
「ガキがなにいってんだ!
俺関係ねーだろ!」

「ガキって…あたし17才
だよ??」

17!?
二つしか違わねぇじゃん…

「那佑ちゃん!!
赤石さんにメーワクかけないで
病室もどるわよ!!」

⏰:10/06/19 21:49 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#24 [愛華]
看護師もイライラしてるみたいだ。

やれやれ……
とんでもないとこに
巻き込まれた……
ケンカよりやっかいかも?

「…いいじゃん。


どーせそのうち死ぬんだし」

空気が凍った。

⏰:10/06/19 21:51 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#25 [愛華]
「那佑ちゃん、なに言って…」

「あれ?あたし
間違った事言った?」


そのうち死ぬ……?
なんで…
看護師、なんもいわねぇの?

「那佑ちゃん!!
違うよ!まだきまってな…」



ごんっっ!!

⏰:10/06/19 21:55 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#26 [愛華]
「いったぁ!!
なにすんの!!?」
俺は那佑にゲンコツした。

「ふざけて言うことじゃねえ。
なにが死ぬだ」

「ふざけて…?
ふざけてないよ」
那佑はそう言うと、
走ってどこかへ行った。

え…?あれ?
まだ話おわってねーし……

⏰:10/06/19 22:00 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#27 [愛華]
「赤石さん……」
看護師が申し訳なさそうに
言った。

「あーいーですよ、別に。
てか、いつもあんな
感じなんですか??」

「はい……」


なんだ??なんか…
様子が変??
俺の中で
ひとつの疑問が浮かんだ。

⏰:10/06/19 22:05 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#28 [愛華]
「さっきの……嘘ですよね?」


「……えと……」


なんで詰まるんだ?


「私から言うことじゃないです
仕事に戻りますね」


汗が流れた。

⏰:10/06/19 22:09 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#29 [愛華]
看護師の様子はあきらかに
おかしい。

もし、アイツの言ってる事が
本当だったら……?


「どうせそのうち…」

どんな気持ちで

「ふざけてないよ」

あの言葉を……

⏰:10/06/19 22:11 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#30 [愛華]
その夜は眠る気になれなかった

昼に出会った彼女は
まだ17才で……



もし本当だったら……

「ふざけて言うことじゃねえ」


俺は……最悪の言葉を……
彼女は今……
どんな気持ちで………

⏰:10/06/19 22:15 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#31 [愛華]
「な……ゆ……」
気がつくと声に出していた。



なに考えてんだよ、俺。
あんな女、俺には
関係ねーじゃん。
気にすることじゃない。
そう言い聞かせた。

⏰:10/06/19 22:17 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#32 [愛華]
ふと窓の外を見ると、桜が
咲いていた。
月明かりに照らされ、
花びら一枚一枚が宝石のように
輝いていた。


すげぇ…
俺の部屋は2階だから、
桜が近くで見れる。
窓から手を伸ばせば
枝に手が届きそうだ。

⏰:10/06/19 23:38 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#33 [愛華]
窓を開けてみた。
桜をよく見ようと顔を窓から
出すと………

人影が見えた。

え??こんな時間に誰だ?

どうやらそいつも桜を見ている
らしい。

目を凝らしてよく見ると……


「なゆ……?」

⏰:10/06/19 23:42 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#34 [愛華]
那佑は泣いていた。
声を押し殺して。


なぜかわからないけど
行かなくちゃって思った。
はやく、行かなきゃ って。

⏰:10/06/19 23:45 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#35 [愛華]
足をひきずって車椅子に乗り
部屋から出た。

絶対みつかるだろこんなの…

案の定、見つかった。

「赤石さん、こんなとこで
なにしてるんですか…?」

ほらな。だが、幸い。
その看護師は昼間
ナースコールで呼んだ
看護師だった。

⏰:10/06/19 23:54 📱:840SH 🆔:hMWSntJM


#36 [愛華]
しめた!!
「…すいません看護師さん。
実は昼間、姉がこの病院に
来てたんですけど。
外に忘れ物したらしくて。
すごい大事な物らしいので
取りにいきたいんですけど…」

「そーなの?でも無理よ。
あたしがとってきてあげる」

「いや、俺が!!
……お願いします」
今まで生きてきて一番の
作り笑顔。
「……だめです」


ちっっ

⏰:10/06/20 00:00 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#37 [愛華]
結局、その日は行けなかった。
部屋に戻って窓の外を見ると
アイツはもういなかった。

どうして……泣いてたんだ?

心がもやもやする。


……くそっっ

頭の中はアイツでいっぱい。
今日会ったばかりのアイツ。


明日……もう一度会いたい。

⏰:10/06/20 00:05 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#38 [まあ]
〜那佑side〜

⏰:10/06/20 11:42 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#39 [まあ]
「那佑、いい子にしてるのよ」

「うん…でもママ、
いつ帰ってくるの?パパも…
外国から帰ってこない…」

「那佑がいい子にしてたら
いつか帰ってくるから」

いつか?

いつかって………いつ?

⏰:10/06/20 11:45 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#40 [愛華]
すいません上のふたつは
名前間違ってました

⏰:10/06/20 11:46 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#41 [愛華]
私は、その いつか を信じて
待ち続けた。
寂しさに押し潰されそうな日も
悲しみに支配されそうな日も。

お母さんが言った「いつか」
を信じて。

⏰:10/06/20 11:49 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#42 [愛華]
毎月、膨大な生活費が
お母さんから送られてきた。

お父さんもお母さんも、
外国で大きな仕事をしていて
帰ってこれないらしい。


お金なんていらない。
私が欲しいのは……

⏰:10/06/20 11:51 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#43 [愛華]
温もりを忘れた私の心は
少しずつ…冷たくなっていった

でも、泣かなかった。
いつも笑って明るく過ごした。

いい子にしててねって……
言ってたから。

⏰:10/06/20 11:54 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#44 [愛華]
そんなある日。
確か……小学四年生の頃。
お母さんがいなくなって
ちょうど一年たった、春。

「ご両親…呼んでもらえる?」

「え……」


最近、体の調子がかなり悪く
風邪かな と思い病院へ行った。
そこで色々検査して……

たかが風邪で……と思ってた。

でも……違った。

⏰:10/06/20 11:59 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#45 [愛華]
「…両親は今、外国にいます。」

「旅行かなにか?」

「いえ…一年前から仕事で、
それから帰ってきません」

「君……ひとりを残して?」

改めて言われると…辛かった。

⏰:10/06/20 12:02 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#46 [愛華]
「ご両親と話がしたい。
呼んでもらえる?」

「…わかりました」

その夜、お母さんに電話した。

「お母さん…あのね。
お医者さんがね………」

私は全部話した。

「ただの風邪じゃないの?」

「違うみたい。だから
お医者さんが来てって。」

お母さんとお父さんは、すぐ
帰って来てくれた。

⏰:10/06/20 12:08 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#47 [愛華]
次の日の夜。
お母さんとお父さんは帰ってきた。
「那佑〜久しぶり!!」

「大きくなったなあ」

お父さんとお母さんは
私を抱きしめてくれた。
次の日、病院に行く事になった。

私はお母さんたちが
帰ってきてくれた事が
うれしくて………

まだこの時は、
未来を予測できなかった

⏰:10/06/20 12:14 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#48 [愛華]
「ご両親はこちらへ…」

お母さんたちは医者に呼ばれ
個室に入っていった。


……なんかこれ、見た事ある。

あれ??なんで…お父さんたち
帰ってきたんだっけ?

そうだ。私の為。
私、ただの風邪じゃないって…

ただの風邪じゃない……?


お母さんたちがいなくなった事で

さっきまで感じなかった
不安が広がってゆく。

⏰:10/06/20 12:19 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#49 [愛華]
怖い…怖い…

お母さん…お父さん…
はやく来て……

30分くらいして、二人と医者は
出てきた。


お母さん……なんで泣いてるの?

⏰:10/06/20 12:21 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#50 [愛華]
「お母さん…どしたの?」

「…なんでもっっない…の」

嘘。だって………
私だって馬鹿じゃない。

「私……なんの病気??」

「大した事ないって」

「じゃあなんでお母さんは
泣いてるの!!??」
私は叫んだ。

⏰:10/06/20 12:23 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#51 [愛華]
「もう子供じゃないの。
教えてよ」

「……ご両親にお任せします
遅かれ早かれわかりますが…
それは今ではなくとも
よいと思います」

「…ありがとうございました」


私たちは家へ帰った。
お母さんはずっと泣いたまま。
お父さんは黙っていた。

⏰:10/06/20 12:27 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#52 [愛華]
「私……なんの病気?」

「那佑……」
お父さんは覚悟を決めたようで
話し始めた。

そこからの事は、
あまりよく覚えてない。

覚えてるのは
私は心臓の病気で
25才まで生きられない

そう伝えられたって事だけ。

⏰:10/06/20 12:34 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#53 [愛華]
それから、毎日のように
お父さんとお母さんは
ケンカした。

「お前は那佑が心配じゃないのか!」

「そんな訳ないでしょ!!
でも仕事が……」

どうやら二人とも
仕事を残して帰国したようで…

⏰:10/06/20 12:39 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#54 [愛華]
「…二人とも戻っていーよ。
今すぐ、どーにかなる訳じゃ
ないし。
仕事かたしてから……
帰ってきて?」

「…だ、だめよ、そんなの!」
「無理に決まってるだろう!」

もう………いいよ
いいんだよ

⏰:10/06/20 12:41 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#55 [愛華]
心が冷えてゆく。
二人は……私よりも仕事?
私と仕事を比べて……
ケンカしないで。

「大丈夫だから。戻って。
私………大丈夫だから」

私は 大丈夫 としか言わなかった。

⏰:10/06/20 16:32 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#56 [愛華]
二人は結局、外国に戻った。

悲しくなんかない。
不思議と……
余命を告げられた事よりも
二人がいなくなった事の方が
私を苦しめた。

私ひとりだけの家。

「信じらんない…」
自分がお願いしたこととはいえ…
それでも、やっぱり
残って欲しかった。

⏰:10/06/20 16:36 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#57 [愛華]
その日、
私は数年かぶりに泣いた。
声を出さずに静かに。

二人への気持ちは、
やがて憎しみへと変わり、
二人は一年後、帰国したけど
「あなたたちは私の親なんか
じゃない」

と言ってやった。

もう誰も信じてなんかやらない。

⏰:10/06/20 20:33 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#58 [愛華]
それからは入退院の繰り返し。
退院する度、お母さんたちは
お祝いしてくれたけど…
嬉しくもなんともなかった。

病院の中が私の居場所。
たくさんの人と話をして…
私はいつも笑顔を忘れなかった。

⏰:10/06/20 22:31 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#59 [愛華]
どーせ、もうすぐ死ぬんだし…
なら、笑顔で生きようと思った。

私が死ぬその日が来るまで
長くてあと8年。

そんな17才の春、

あなたに出会ったんだよね。

⏰:10/06/20 22:35 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#60 [愛華]
出会いは最悪だった。
いきなりキンパの男に
ゲンコツされるんだもん。

でも、初めてみたときから
あたしは
他の人とは違うなにかを


あなたに感じていたのかも
しれないね。

⏰:10/06/20 22:37 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#61 [愛華]
ごんっっ!!

「いったぁ!!なにすんの!?」

「ふざけて言うことじゃねぇ。
何が死ぬだ」

ふざけて…?

違うよ。本当の事だもの。

⏰:10/06/20 22:40 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#62 [愛華]
あたしは、すぐ逃げ出した。

なによ…知ったよーな事……


でも……初めてだな、あんな人。

「那佑ちゃん……」

「純さん……何??」

純さんとは看護師さん。
純菜とゆーので、あたしは
そう呼んでる。

⏰:10/06/20 22:44 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#63 [愛華]
ベッドにねっころがりながら
あたしは純さんと話していた。

「…今日も……会わないの?」

「会うも会わないも……
あんな人たち、親でも
なんでもないよ。
面会なんてする必要なし」

「…ん。わかった」

純さんは私の家族の事情を
知ってる。

あたしは売店で買ったアイスを
食べながら外をながめた。

⏰:10/06/20 22:49 📱:840SH 🆔:D6pBQqE2


#64 [愛華]
桜が咲いていた。
下にはたくさんの花びら。

この桜が咲いて…散るのを
何度も繰り返し見てきた。


なんか色々……しんどいなぁ…


人は生きる事に意味や価値を
見いだせなくなった時、

何を思うんだろう。

⏰:10/06/21 00:14 📱:840SH 🆔:mstfc2eg


#65 [愛華]
感想板たてました
来てくれたらうれしいです
bbs1.ryne.jp/t.php?b=novel

⏰:10/06/21 01:04 📱:840SH 🆔:mstfc2eg


#66 [愛華]
その夜遅く。
私はいつものように病室を
ぬけだし、
庭へ出た。
面会用の玄関は、夜は閉まる
のだけれど
その裏にある従業員用の玄関から
簡単にでることができる。

誰にもナイショ。
自分との秘密の時間。

⏰:10/06/21 20:27 📱:840SH 🆔:mstfc2eg


#67 [愛華]
今日も…気付かれなかったな。

よかった。

上を見上げると桜が咲いていた。

綺麗だ。宝石みたい。

桜も……散ってゆくんだよね

⏰:10/06/21 23:03 📱:840SH 🆔:mstfc2eg


#68 [愛華]
綺麗だけど……儚い。

ううん、違うね。

儚いから……綺麗なんだ。


私の命はきっと……
こんなに綺麗には散れない。

⏰:10/06/21 23:05 📱:840SH 🆔:mstfc2eg


#69 [愛華]
誰にも愛されず、ひとりで。

誰の記憶に残ることもなく。




切ない。 淋しい。

⏰:10/06/21 23:07 📱:840SH 🆔:mstfc2eg


#70 [愛華]
私は泣いた。

死への恐怖からじゃない。

私が消えたあとで

自分の存在がなくなったあとで


自分が何を思われるのか

すごく不安で。

⏰:10/06/21 23:10 📱:840SH 🆔:mstfc2eg


#71 [愛華]
忘れられちゃう。
存在が消える。

今までなんとも思わなかった

自分の死への道のり。


私はこの日はじめて

自分の死に、そして生に

光を 求めた。


25才まであと8年。

私は記憶に残りたいのです。

⏰:10/06/21 23:14 📱:840SH 🆔:mstfc2eg


#72 [愛華]
〜隆則side〜

⏰:10/06/23 02:27 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#73 [愛華]
あの日から三日。
病院内を意味もなく散歩したり
してるけど、いまだあの子とは
会えないまま。


あれからいろいろ看護師に聞いて
ちょっとだけあの子のことが
わかった。

⏰:10/06/23 19:08 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#74 [愛華]
白石那佑(しらいしなゆ)
17才。
9才の頃から入退院を繰り返し
現在は6回目の入院。

心臓の病気(詳しくは教えてくれなかった)
を小四の春に発症。


今のままだと余命は長くて8年。

⏰:10/06/23 19:13 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#75 [愛華]
でも、そのことに触れるのは
タブー。
しかし、那佑自身はそのことを
気にしていないようで
しょっちゅう、

「どーせもうすぐ死ぬ」

と口に出すらしい。

⏰:10/06/23 19:16 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#76 [愛華]
気にしていない…?
ほんとに?


じゃあ、あの夜の涙は??


あれから夜に那佑を見ることは
ない。

それどころか、あの日以来
一度も姿を見かけていない。

⏰:10/06/23 19:19 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#77 [愛華]
今日は会えるかなー……

あの日から。
なぜか那佑のことが
頭から離れない。

深入りするべきじゃない。
それは自分が一番わかってる。


でも、

もう一度あいたいって


思ったんだ。

⏰:10/06/23 19:23 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#78 [愛華]
車椅子で病院内をうろついていた。

喉が乾いたので、自販機で
ジュースを買うことにした。


が、届かない。

飲みたいジュースは一番上。
車椅子では届かない。

⏰:10/06/23 19:26 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#79 [愛華]
……立つか……

バランスをとりながら立とうと
すると、
ギプスのせいで、よろめいた。

やべっ……



がしっ

⏰:10/06/23 19:28 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#80 [愛華]
「あぶな〜てかばかじゃん?
車椅子から立とうとか(笑)」


「!!那……佑 」


支えてくれたのは那佑だった。

「名前…覚えてくれたんだ」

那佑は、にひっと笑った。

⏰:10/06/23 19:31 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#81 [愛華]
びっくりした……
数日前に会ったばっかなのに

なんか……久しぶりに感じる。


「この前はゲンコツをどーも」

「あ…どーいたしまして…」

なにを言ってんだ俺は。

上手くしゃべれねぇ……

⏰:10/06/23 21:20 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#82 [愛華]
俺たちは庭のベンチで少し話を
することにした。

「…この前…悪かったな」

「…ん?ふざけて言うことじゃねー
とかゆーやつ?
気にしてないよそんなの」

「…そか……」

「…そう言うってことは……
もう知ってるんだね?

……私のこと」

⏰:10/06/23 21:25 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#83 [愛華]
ドキっとした。

「なんか噂でね〜
誰かさんが、色々な看護師さんに
あたしのこと聞きまわってるって
あくまで噂ね?あくまで。」

……バレてんのかよ……

てか、コイツ情報網広いな。

それも長い間入院してるから
なのか… かもしんねーな。

⏰:10/06/23 21:29 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#84 [愛華]
「……別にいーんだよあたし」

何が……いいんだ?

だって泣いてたじゃねーかよ。

「…終わりが見えてるだけ。
それが、ちょっと人より
はやいってだけ。
……時々しんどいけどね」

「…しんどい?」

⏰:10/06/23 21:33 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#85 [愛華]
那佑は悲しそうにわらった。

「終わりが見えてると…
たまに生きるのがしんどくて。

でも、あたし不思議と
怖くないの。死ぬことが」

「…なんで?
フツー怖いだろ?」

⏰:10/06/23 21:37 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#86 [愛華]
「…んーなんてゆーか。
慣れちゃったからかな」

「慣れ…?え?なに?」

「……苦しいのとか
悲しいのとか。

そーゆー感情に」

頭をガツンとやられた気がした。

⏰:10/06/23 21:41 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#87 [愛華]
俺が出会った彼女は
まだ17才で。

その子は闇につつまれ
今日という日を生きていた。

苦しみや悲しみに慣れて
「恐怖」という感情を忘れて
しまうほどに

真っ暗な道を歩いていた。

⏰:10/06/23 21:45 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#88 [愛華]
「…しゃべりすぎちゃったな」

那佑は、白い歯を見せて笑った。


……もう戻れない。

深入りするべきじゃない…?

そんなの知るか。後悔はしてない

この子の闇に触れてしまったから

⏰:10/06/23 21:48 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#89 [愛華]
「……楽にすればいーよ」

俺はこの子の…

「…なんかあったら話きくし」

この子が抱えている闇を

…少しでも…減らしたい。

⏰:10/06/23 21:50 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#90 [愛華]
「…ありがと。…隆則」

「…隆則かぁ…。
じゃあ、俺も那佑でいい?」

「…いーけど…
隆則って何歳?本名は?」

⏰:10/06/23 21:53 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#91 [愛華]
そういえば……
俺のこと何も話してねーや。

「赤石隆則。19才。」

「えー!!二つしか
違わないんだ!
もっと上かと思ってた。
キンパだし」

「キンパ関係ねーだろ!
俺、そんな老けてっか?」

「赤石かー私、白石だよ!」

……人の話きけよ。
なにげ傷ついてんだぞ。
スルーすんな。

⏰:10/06/23 21:57 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#92 [愛華]
「赤と白!なんか対っぽくない?
赤と白が出会えたことに
かんぱーい!!」

そういうと那佑は缶ジュースを
カチンと当ててきた。

赤と白か……

出会ったことは
確かに運命だったかもな。

「……ガキ(笑)」

「なっ!ひど!!」

⏰:10/06/23 22:01 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#93 [愛華]
ただ俺は君の笑顔が見たくて。

それだけだった。

君の苦しみをわかってあげたい。

いつも思っていたから。

この気持ちが恋と気づくのに

さほど時間はかからなかった。

⏰:10/06/23 22:05 📱:840SH 🆔:JQjK9wkY


#94 [愛華]
〜那佑side〜

⏰:10/06/24 01:58 📱:840SH 🆔:WjcdUaN2


#95 [愛華]
初めて
たくさんの事を人に話した。

自分のこと。

なぜかは自分でも分からない。

でも、この人になら
ちょっとだけ自分を
ちょっとだけ私の心を

見せても大丈夫なんじゃないかな

って 思ったんだ。

⏰:10/06/25 20:39 📱:840SH 🆔:I/HA.bV2


#96 [愛華]
あの人が、私の事ききまわってる

って聞いた時、

ちょっと嬉しかった。

自分の事を知ろうと
してくれてる人がいる。

好奇心?同情?単なる気まぐれ?
暇つぶし?

そんなの、どーでもよかった。

…………よかったんだよ、隆則。

⏰:10/06/25 20:51 📱:840SH 🆔:I/HA.bV2


#97 [愛華]
「たーかーのーり!!」

「……またお前かよ(笑)」

あれから私は毎日のように
隆則に会いにいった。

看護師さんには怒られたけど
完全無視(笑)

隆則もメーワクではない
(…と思う)ようだった。

⏰:10/06/25 22:52 📱:840SH 🆔:I/HA.bV2


#98 [愛華]
「毎日きてていーわけ?」
「隆則はあたしが来たら
メーワクなの??」

「んな事いってねーだろ…」

あ、ちょっと顔が赤くなった。
なんだろ。変な感じ。

「ねー隆則、顔あかいよ?」

「え!!き、気のせいだろ!」

⏰:10/06/25 22:55 📱:840SH 🆔:I/HA.bV2


#99 [愛華]
赤くなる隆則はなんか
可愛かった。
照れてんのかな??

あたしと隆則は他愛もない
話をたくさんした。

「あたしねープリン食べたい」

「好きなの?プリン」

「うん。退院したら
バケツプリンってゆーの
食べてみたいなぁ」

「たべりゃいーじゃん」

⏰:10/06/25 23:00 📱:840SH 🆔:I/HA.bV2


#100 [愛華]
「退院…できるかなぁ」

「できるにきまってんだろ」

隆則はハッキリ言い切った。


無理しなくていーのに。
子供じゃないんだから
完全な退院なんて無理だって

知ってるのに。
私はここで一生を終えるのに。

⏰:10/06/25 23:03 📱:840SH 🆔:I/HA.bV2


#101 [愛華]
でも……隆則がいうと
もしかしたら…って思えた。

「…うん。がんばる」

隆則はニッコリ微笑んだ。

隆則が笑うと、胸がきゅってなる

なんだろう?
胸が温かくて、もっと
笑ってほしい。
あなたの為に笑いたいって
思うの。

⏰:10/06/26 18:52 📱:840SH 🆔:dev.iGAs


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194