その日が来る前に、
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#151 [愛華]
ふっと、窓の下をみた。
もしかしたら、また君が……
「……那佑」
俺は階段を下りていった。
松葉杖で、踏み外さないように
気をつけながら。
見つからないように
細心の注意を払って。
:10/06/29 20:57
:840SH
:khB4iVoE
#152 [愛華]
はやく、はやく行かなきゃ。
今度こそ。
近くに、従業員用の小さな
玄関があった。
その時、運よく近くには
誰もいなかった。
俺は迷わず、そこから出た。
:10/06/29 21:01
:840SH
:khB4iVoE
#153 [愛華]
こんなに簡単に抜け出せる
ものなのか
とか思いながら、
俺は中庭に急いだ。
「……那佑」
那佑は桜を見ていた。
………あの日のように。
:10/06/29 21:18
:840SH
:khB4iVoE
#154 [愛華]
「……あれ、隆則じゃん。
どーやってココに?」
那佑はゆっくり振り向いた。
目が少し赤かった。
「…泣いてんじゃないかって…
思って。」
「泣く……?私が?
……そっか、知ってるんだ。
……純さんが死んだこと」
:10/06/29 21:30
:840SH
:khB4iVoE
#155 [愛華]
「……」
俺は何も言わなかった。
…ううん。言えなかった。
那佑があまりにも悲しそうで
……美しかったから。
「……私……泣けなかった」
:10/06/29 21:33
:840SH
:khB4iVoE
#156 [愛華]
「純さんが死んだって知った時。
だって急すぎるよ。
この前まで……笑ってたのにさ」
「……うん」
「純さんには…私と違って
未来がいっぱいあったのに。
:10/06/29 21:37
:840SH
:khB4iVoE
#157 [愛華]
なのに。
神様はひどいよね、ほんと」
「…うん」
那佑は桜の木に手をあてた。
「この桜ね。あたしが入院
したてのころは、もう少し
低かったんだよ」
あ……ちょっと笑ってくれた。
:10/06/29 21:40
:840SH
:khB4iVoE
#158 [愛華]
「あたしより後に入院したのに
あたしより先に退院してく人を
………何人も見てきた。
ってゆーかほとんどそう
だったんだけどね」
那佑は…話し続けた。
「でも……あたしより先に
死んじゃう人もいて。
その度に
あたしもいつか、こうなるんだ
って思ってた。」
:10/06/29 21:46
:840SH
:khB4iVoE
#159 [愛華]
「……冷たい人間だよあたし。
死ぬことなんか、ちっとも
怖くなんかないって……
思ってた」
「……うん」
「……純さんね、
腕時計壊れてたの」
………腕時計??
:10/06/29 21:49
:840SH
:khB4iVoE
#160 [愛華]
「それを知ったのは、
一ヶ月くらい前。
考えてみればさ、
すぐ買えばよかったのに……
純さんは不便な生活で我慢して
一ヶ月過ごした」
那佑は……なにが言いたいんだ?
:10/06/29 21:52
:840SH
:khB4iVoE
#161 [愛華]
「…純さん知ってたんだよ。
あたしが誕生日プレゼントに
腕時計、買ってあげること。
だから一ヶ月ずっと
腕時計かわなかったんだよ」
那佑は一呼吸おいた。
「…ばかだよね。ほんと。
居眠りトラックなんかに……
ひかれちゃってさ……」
那佑はいつのまにか泣いていた。
:10/06/29 21:55
:840SH
:khB4iVoE
#162 [愛華]
「…あたし……
泣けなかったんだよ……」
大粒の涙が那佑の小さい瞳から
次々あふれていく。
「……あたしも……
いつか……死ぬ………」
もう……いいよ、那佑。
「あたしっ……」
「もういーよ」
俺は那佑を抱きしめた。
:10/06/29 21:59
:840SH
:khB4iVoE
#163 [愛華]
「……もういーんだよ。
お前は……優しいな」
「隆則っ……ばかじゃんっ…」
「……そーかもな」
「………あたしの事………
隆則も忘れちゃう?」
「……忘れねーよ。こんなばか」
:10/06/29 22:03
:840SH
:khB4iVoE
#164 [愛華]
「……出会ってちょっとしか
たってないのに……?」
「時間なんかどーでもいーよ。
お前のことは忘れない。
存在は絶対きえない。」
那佑は強く頷いた。
:10/06/29 22:07
:840SH
:khB4iVoE
#165 [愛華]
「……たかの……りっ…」
あれ、なんか頬っぺた熱いな。
ああ……俺が泣いてんのか。
:10/06/29 22:12
:840SH
:khB4iVoE
#166 [愛華]
「あたし…っっ………
………死にたくないよ……」
それは君が初めて見せた
『弱音』という名の『本音』。
生まれて初めて
誰かの為に 涙を流した。
:10/06/29 22:14
:840SH
:khB4iVoE
#167 [愛華]
〜那佑Side〜
:10/06/30 00:10
:840SH
:FZ/7f0dI
#168 [愛華]
私のすぐ近くで
その人の存在は消えた。
不思議と涙はでなくて。
襲ってくるのは喪失感だけ。
純さん…………なんで?
:10/06/30 18:56
:840SH
:FZ/7f0dI
#169 [愛華]
聞いたところによると
バスに乗るため急いで
道路を渡っているところを、
居眠り運転していたトラックに
正面衝突。
即死。
私は純さんを見ることは
できなかった。
:10/06/30 21:47
:840SH
:FZ/7f0dI
#170 [愛華]
人間ってなんて もろいんだろう。
昨日まで当たり前のように
存在していた命が
今日には、消えている。
悲しくて、儚くて。
だから、余計に辛くて。
:10/06/30 21:52
:840SH
:FZ/7f0dI
#171 [愛華]
死ぬのが怖くない なんて
ただの強がりだったんだ。
ほんとは、怖くて怖くて
たまらなかった。
毎日が恐怖の連続で。
そんな日々からの自己防衛。
「どうせ、そのうち死ぬ」
ってひたすら自分に言い聞かせた。
:10/06/30 21:55
:840SH
:FZ/7f0dI
#172 [愛華]
どーしようもないことなんだ。
そう言い聞かせて。
恐怖から自分を守っていた。
でもほんとは違ったんだよ。
ほんとは気付いて欲しかったんだ。
………私の気持ち。ちょっとでも。
:10/06/30 21:59
:840SH
:FZ/7f0dI
#173 [愛華]
自分で自分に嘘ついてたんだ。
ほんとは怖くてたまらないくせに
……あたし、ばかだね。
隆則。あたしね…………
死にたくないよ。やっぱり。
:10/06/30 22:03
:840SH
:FZ/7f0dI
#174 [愛華]
ぜいたく言わない。
百歳まで、なんて言わない。
ただ、普通に。
大切な人と一緒になって
お母さんになって
おばあちゃんになって。
それだけでいいの。
それは………
……………わがままでしょうか?
:10/06/30 22:12
:840SH
:FZ/7f0dI
#175 [愛華]
-----------------------------
どのくらい泣いただろう。
隆則の腕の中は安心して。
私はいつのまにか眠っていた。
:10/07/01 08:19
:840SH
:8QiiEpMI
#176 [愛華]
夢をみた。
しあわせなゆめ。
純さんがいる。笑ってる。
あ、いやだよ。行かないでよ。
純さんはゆっくり振り向いて
なにかをつぶやいた。
でも、それがなにかは
聞こえなかった。
:10/07/01 08:24
:840SH
:8QiiEpMI
#177 [愛華]
隆則の胸はあったかくて
心地好くて。
ずっと人の温もりを忘れていた
あたしに『安心』
をあたえてくれた。
隆則は……いろいろなものを
あたしにくれるね。
:10/07/01 08:26
:840SH
:8QiiEpMI
#178 [愛華]
「………ん。」
「……お、起きた」
ここ…………まだ庭?
「…あたし……寝ちゃった?」
「……2時間くらいな。
今、夜中の3時。
さすがに松葉杖じゃお前
運べねーからさ。どーしよーか
悩んでたとこだった」
:10/07/01 08:34
:840SH
:8QiiEpMI
#179 [愛華]
「……ありがとう」
「…ん?なにがだよ?」
そばにいてくれて…
その言葉は飲み込んだ。
ポケットに手を入れると、
ゴツッとした感触があった。
:10/07/01 15:02
:840SH
:8QiiEpMI
#180 [愛華]
「……あ」
「………それって…」
純さんにあげるはずだった時計。
……もう必要なくなっちゃった。
私は時計を池に投げようと
振りかぶった。
:10/07/01 15:06
:840SH
:8QiiEpMI
#181 [愛華]
「ちょっと!!待てって!!」
隆則は止めた。
「……それ、俺もらってい?」
「はぁ??なんで??」
「捨てるくらいなら、もらう」
隆則はあたしから時計を奪った。
:10/07/01 15:08
:840SH
:8QiiEpMI
#182 [愛華]
「……似合うか?」
似合うわけないじゃん。
それ、女物だし。
「似合うわけないでしょ
ばーか!!」
「…んだと!?このやろ!」
さりげない、優しさ。
胸が苦しくなる。すっごく。
どうして…こんなに優しく
してくれるの?
:10/07/01 15:12
:840SH
:8QiiEpMI
#183 [愛華]
私は出会ったばかりのこの人に
甘えてばかりだね。
「隆則あのさ、今日いったこと…
あまり……気にしないで?」
「なんで?
俺は嬉しかったけど?」
え?迷惑かけてるのに……
:10/07/01 15:15
:840SH
:8QiiEpMI
#184 [愛華]
「会ったばっかの俺に
ほんとの事いってくれたし…
お前、いつも笑ってっけど
なんか違う気がしてたからさ」
隆則は……気付いてたんだね。
また胸が苦しくなる。
「明日もまた来いよ!!
元気ださねぇと純さんに
笑われっぞ!」
不器用な優しさでいっぱいの人。
:10/07/01 15:20
:840SH
:8QiiEpMI
#185 [愛華]
隆則……
私にとってあなたは特別みたい。
それがなんていう名前の
気持ちなのかわかんないけど
あなたが笑って欲しいなら
あたし、笑うよ。いっぱい。
あなたの笑顔がみたいから。
:10/07/01 15:23
:840SH
:8QiiEpMI
#186 [愛華]
次の日。
私はいつもどおりの朝を
迎えた。
その日は検査とかで色々
ドタバタしてて、隆則のところに
行くのは3時ごろになって
しまった。
:10/07/01 15:26
:840SH
:8QiiEpMI
#187 [愛華]
はやく、隆則に会いたい。
子供みたいにはやる気持ち。
あたしはスキップで廊下を進んだ
「隆則ーきたよー!!」
ガラッと病室のドアを開けると、
そこには隆則がいて。
その隣には綺麗な女の人がいた。
:10/07/01 15:29
:840SH
:8QiiEpMI
#188 [愛華]
…………誰?
「あ、はじめまして。
隆則の………友達ですよね?」
「…あ、えと……」
「速水梓(はやみあずさ)
といいます。もしかして…
あなたが那佑さんですか?」
:10/07/01 15:33
:840SH
:8QiiEpMI
#189 [愛華]
「えと……そうですけど」
「私も同じ17才なの!
隆則からいつも話はきいてるよ」
いつも? ……いつも来てるの?
「自己紹介とかいーから、梓。
那佑、わりーな。コイツ、
幼なじみなんだ」
:10/07/01 15:35
:840SH
:8QiiEpMI
#190 [愛華]
隆則が付け加えるように言った。
「あ、そなんだ。えと……
よろしくね、速水さん」
「あはは、梓でいーよー
タメなんだし。
それより、タカきいてよー」
一通りあいさつを終えると
梓は隆則と話し出した。
:10/07/01 15:42
:840SH
:8QiiEpMI
#191 [愛華]
タカ……って呼んでるんだ。
あたしは意味のわからない
モヤモヤでいっぱいだった。
目の前で仲良さそうに話す
二人は……まるで恋人のようで。
ほんとに…ただの幼なじみ?
:10/07/01 15:45
:840SH
:8QiiEpMI
#192 [愛華]
「……タカ、喉かわかない?
あたし、那佑ちゃんと
ジュース買ってくるね!!」
「「え?」」
あたしと隆則の声が重なった。
「じゃ、いってきまーす」
あたしは強引に梓に
連れてかれた。……なんで!?
:10/07/01 15:48
:840SH
:8QiiEpMI
#193 [愛華]
「〜♪」
鼻歌を歌いながらジュースを
選ぶ梓。
……なんなの、いったい。
「ねー那佑ちゃん、コレでい?」
「あ、うん……」
:10/07/01 15:50
:840SH
:8QiiEpMI
#194 [愛華]
「ねー那佑ちゃんとタカって
どーゆー関係?」
梓は小銭を入れながら聞いてきた
「どういうって……」
どーゆー関係なんだろう?
友達なんて大層なもんじゃない。
といって、知り合いってほど
薄い関係ではない。
………ましてや恋人なんかじゃ
絶対にない。
:10/07/01 15:54
:840SH
:8QiiEpMI
#195 [愛華]
そんなあたしの気持ちを
知ってか知らずか。
梓は
「ふーん」 とだけ呟いた。
ジュースを買うと、梓は
近くのベンチに腰掛けた。
……あれ?病室もどらないの?
:10/07/01 15:56
:840SH
:8QiiEpMI
#196 [愛華]
「…ほら、那佑ちゃんも座って!
ちょっと話さない?」
「…別に部屋もどってからで…
それじゃダメなの?」
あたしはあくまで、突っぱねた。
あたしの本能がいってる。
これは………『裏』の顔。
:10/07/01 16:00
:840SH
:8QiiEpMI
#197 [愛華]
「…冷たいなぁ。
………そのためにわざわざ
二人になったのに」
この女………
「…いいよ、ちょっと話そうか」
あたしはあえて話にのった。
なに話すのか見当もつかない。
出会ってまだ1時間も
たっていない女と……
楽しくおしゃべりなんて事
あるはずがないのは
馬鹿でもわかる。
:10/07/01 16:03
:840SH
:8QiiEpMI
#198 [愛華]
梓はジュースを一口飲むと、
ふぅ、と一息ついた。
「単刀直入に言うね。
もう、タカに関わらないで」
「……は?」
なにを言ってるの…この人。
:10/07/01 16:06
:840SH
:8QiiEpMI
#199 [愛華]
「……どーゆー意味?」
声が震える。
……なんであんたなんかに。
「まんまの意味だけど?
………目障りなんだよね。
タカとたいした関係もないくせに
つきまとってさ。
那佑ちゃんタカの事すきなの?」
「……えっ……」
「あたしはすきなの。タカが。
……小さいころからずっと。
:10/07/02 00:24
:840SH
:SveFRjbc
#200 [愛華]
「タカが見てくれなくたって
そばにいられればいい。
……ねぇ、那佑ちゃんにとって
タカはどんな存在なわけ?」
どんな存在……?
大切な人だよ。苦しい時、
そばにいてくれて。
気持ちを聞いてくれた。
隆則だから……本音を話せた。
でも、きっとそれは恋じゃない。
……ほんとうに?
自問自答して答えられずにいると
梓が言い捨てた。
:10/07/02 00:30
:840SH
:SveFRjbc
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