その日が来る前に、
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#51 [愛華]
「もう子供じゃないの。
教えてよ」
「……ご両親にお任せします
遅かれ早かれわかりますが…
それは今ではなくとも
よいと思います」
「…ありがとうございました」
私たちは家へ帰った。
お母さんはずっと泣いたまま。
お父さんは黙っていた。
:10/06/20 12:27
:840SH
:D6pBQqE2
#52 [愛華]
「私……なんの病気?」
「那佑……」
お父さんは覚悟を決めたようで
話し始めた。
そこからの事は、
あまりよく覚えてない。
覚えてるのは
私は心臓の病気で
25才まで生きられない
そう伝えられたって事だけ。
:10/06/20 12:34
:840SH
:D6pBQqE2
#53 [愛華]
それから、毎日のように
お父さんとお母さんは
ケンカした。
「お前は那佑が心配じゃないのか!」
「そんな訳ないでしょ!!
でも仕事が……」
どうやら二人とも
仕事を残して帰国したようで…
:10/06/20 12:39
:840SH
:D6pBQqE2
#54 [愛華]
「…二人とも戻っていーよ。
今すぐ、どーにかなる訳じゃ
ないし。
仕事かたしてから……
帰ってきて?」
「…だ、だめよ、そんなの!」
「無理に決まってるだろう!」
もう………いいよ
いいんだよ
:10/06/20 12:41
:840SH
:D6pBQqE2
#55 [愛華]
心が冷えてゆく。
二人は……私よりも仕事?
私と仕事を比べて……
ケンカしないで。
「大丈夫だから。戻って。
私………大丈夫だから」
私は 大丈夫 としか言わなかった。
:10/06/20 16:32
:840SH
:D6pBQqE2
#56 [愛華]
二人は結局、外国に戻った。
悲しくなんかない。
不思議と……
余命を告げられた事よりも
二人がいなくなった事の方が
私を苦しめた。
私ひとりだけの家。
「信じらんない…」
自分がお願いしたこととはいえ…
それでも、やっぱり
残って欲しかった。
:10/06/20 16:36
:840SH
:D6pBQqE2
#57 [愛華]
その日、
私は数年かぶりに泣いた。
声を出さずに静かに。
二人への気持ちは、
やがて憎しみへと変わり、
二人は一年後、帰国したけど
「あなたたちは私の親なんか
じゃない」
と言ってやった。
もう誰も信じてなんかやらない。
:10/06/20 20:33
:840SH
:D6pBQqE2
#58 [愛華]
それからは入退院の繰り返し。
退院する度、お母さんたちは
お祝いしてくれたけど…
嬉しくもなんともなかった。
病院の中が私の居場所。
たくさんの人と話をして…
私はいつも笑顔を忘れなかった。
:10/06/20 22:31
:840SH
:D6pBQqE2
#59 [愛華]
どーせ、もうすぐ死ぬんだし…
なら、笑顔で生きようと思った。
私が死ぬその日が来るまで
長くてあと8年。
そんな17才の春、
あなたに出会ったんだよね。
:10/06/20 22:35
:840SH
:D6pBQqE2
#60 [愛華]
出会いは最悪だった。
いきなりキンパの男に
ゲンコツされるんだもん。
でも、初めてみたときから
あたしは
他の人とは違うなにかを
あなたに感じていたのかも
しれないね。
:10/06/20 22:37
:840SH
:D6pBQqE2
#61 [愛華]
ごんっっ!!
「いったぁ!!なにすんの!?」
「ふざけて言うことじゃねぇ。
何が死ぬだ」
ふざけて…?
違うよ。本当の事だもの。
:10/06/20 22:40
:840SH
:D6pBQqE2
#62 [愛華]
あたしは、すぐ逃げ出した。
なによ…知ったよーな事……
でも……初めてだな、あんな人。
「那佑ちゃん……」
「純さん……何??」
純さんとは看護師さん。
純菜とゆーので、あたしは
そう呼んでる。
:10/06/20 22:44
:840SH
:D6pBQqE2
#63 [愛華]
ベッドにねっころがりながら
あたしは純さんと話していた。
「…今日も……会わないの?」
「会うも会わないも……
あんな人たち、親でも
なんでもないよ。
面会なんてする必要なし」
「…ん。わかった」
純さんは私の家族の事情を
知ってる。
あたしは売店で買ったアイスを
食べながら外をながめた。
:10/06/20 22:49
:840SH
:D6pBQqE2
#64 [愛華]
桜が咲いていた。
下にはたくさんの花びら。
この桜が咲いて…散るのを
何度も繰り返し見てきた。
なんか色々……しんどいなぁ…
人は生きる事に意味や価値を
見いだせなくなった時、
何を思うんだろう。
:10/06/21 00:14
:840SH
:mstfc2eg
#65 [愛華]
感想板たてました

来てくれたらうれしいです

bbs1.ryne.jp/t.php?b=novel
:10/06/21 01:04
:840SH
:mstfc2eg
#66 [愛華]
その夜遅く。
私はいつものように病室を
ぬけだし、
庭へ出た。
面会用の玄関は、夜は閉まる
のだけれど
その裏にある従業員用の玄関から
簡単にでることができる。
誰にもナイショ。
自分との秘密の時間。
:10/06/21 20:27
:840SH
:mstfc2eg
#67 [愛華]
今日も…気付かれなかったな。
よかった。
上を見上げると桜が咲いていた。
綺麗だ。宝石みたい。
桜も……散ってゆくんだよね
:10/06/21 23:03
:840SH
:mstfc2eg
#68 [愛華]
綺麗だけど……儚い。
ううん、違うね。
儚いから……綺麗なんだ。
私の命はきっと……
こんなに綺麗には散れない。
:10/06/21 23:05
:840SH
:mstfc2eg
#69 [愛華]
誰にも愛されず、ひとりで。
誰の記憶に残ることもなく。
切ない。 淋しい。
:10/06/21 23:07
:840SH
:mstfc2eg
#70 [愛華]
私は泣いた。
死への恐怖からじゃない。
私が消えたあとで
自分の存在がなくなったあとで
自分が何を思われるのか
すごく不安で。
:10/06/21 23:10
:840SH
:mstfc2eg
#71 [愛華]
忘れられちゃう。
存在が消える。
今までなんとも思わなかった
自分の死への道のり。
私はこの日はじめて
自分の死に、そして生に
光を 求めた。
25才まであと8年。
私は記憶に残りたいのです。
:10/06/21 23:14
:840SH
:mstfc2eg
#72 [愛華]
〜隆則side〜
:10/06/23 02:27
:840SH
:JQjK9wkY
#73 [愛華]
あの日から三日。
病院内を意味もなく散歩したり
してるけど、いまだあの子とは
会えないまま。
あれからいろいろ看護師に聞いて
ちょっとだけあの子のことが
わかった。
:10/06/23 19:08
:840SH
:JQjK9wkY
#74 [愛華]
白石那佑(しらいしなゆ)
17才。
9才の頃から入退院を繰り返し
現在は6回目の入院。
心臓の病気(詳しくは教えてくれなかった)
を小四の春に発症。
今のままだと余命は長くて8年。
:10/06/23 19:13
:840SH
:JQjK9wkY
#75 [愛華]
でも、そのことに触れるのは
タブー。
しかし、那佑自身はそのことを
気にしていないようで
しょっちゅう、
「どーせもうすぐ死ぬ」
と口に出すらしい。
:10/06/23 19:16
:840SH
:JQjK9wkY
#76 [愛華]
気にしていない…?
ほんとに?
じゃあ、あの夜の涙は??
あれから夜に那佑を見ることは
ない。
それどころか、あの日以来
一度も姿を見かけていない。
:10/06/23 19:19
:840SH
:JQjK9wkY
#77 [愛華]
今日は会えるかなー……
あの日から。
なぜか那佑のことが
頭から離れない。
深入りするべきじゃない。
それは自分が一番わかってる。
でも、
もう一度あいたいって
思ったんだ。
:10/06/23 19:23
:840SH
:JQjK9wkY
#78 [愛華]
車椅子で病院内をうろついていた。
喉が乾いたので、自販機で
ジュースを買うことにした。
が、届かない。
飲みたいジュースは一番上。
車椅子では届かない。
:10/06/23 19:26
:840SH
:JQjK9wkY
#79 [愛華]
……立つか……
バランスをとりながら立とうと
すると、
ギプスのせいで、よろめいた。
やべっ……
がしっ
:10/06/23 19:28
:840SH
:JQjK9wkY
#80 [愛華]
「あぶな〜てかばかじゃん?
車椅子から立とうとか(笑)」
「!!那……佑 」
支えてくれたのは那佑だった。
「名前…覚えてくれたんだ」
那佑は、にひっと笑った。
:10/06/23 19:31
:840SH
:JQjK9wkY
#81 [愛華]
びっくりした……
数日前に会ったばっかなのに
なんか……久しぶりに感じる。
「この前はゲンコツをどーも」
「あ…どーいたしまして…」
なにを言ってんだ俺は。
上手くしゃべれねぇ……
:10/06/23 21:20
:840SH
:JQjK9wkY
#82 [愛華]
俺たちは庭のベンチで少し話を
することにした。
「…この前…悪かったな」
「…ん?ふざけて言うことじゃねー
とかゆーやつ?
気にしてないよそんなの」
「…そか……」
「…そう言うってことは……
もう知ってるんだね?
……私のこと」
:10/06/23 21:25
:840SH
:JQjK9wkY
#83 [愛華]
ドキっとした。
「なんか噂でね〜
誰かさんが、色々な看護師さんに
あたしのこと聞きまわってるって
あくまで噂ね?あくまで。」
……バレてんのかよ……
てか、コイツ情報網広いな。
それも長い間入院してるから
なのか… かもしんねーな。
:10/06/23 21:29
:840SH
:JQjK9wkY
#84 [愛華]
「……別にいーんだよあたし」
何が……いいんだ?
だって泣いてたじゃねーかよ。
「…終わりが見えてるだけ。
それが、ちょっと人より
はやいってだけ。
……時々しんどいけどね」
「…しんどい?」
:10/06/23 21:33
:840SH
:JQjK9wkY
#85 [愛華]
那佑は悲しそうにわらった。
「終わりが見えてると…
たまに生きるのがしんどくて。
でも、あたし不思議と
怖くないの。死ぬことが」
「…なんで?
フツー怖いだろ?」
:10/06/23 21:37
:840SH
:JQjK9wkY
#86 [愛華]
「…んーなんてゆーか。
慣れちゃったからかな」
「慣れ…?え?なに?」
「……苦しいのとか
悲しいのとか。
そーゆー感情に」
頭をガツンとやられた気がした。
:10/06/23 21:41
:840SH
:JQjK9wkY
#87 [愛華]
俺が出会った彼女は
まだ17才で。
その子は闇につつまれ
今日という日を生きていた。
苦しみや悲しみに慣れて
「恐怖」という感情を忘れて
しまうほどに
真っ暗な道を歩いていた。
:10/06/23 21:45
:840SH
:JQjK9wkY
#88 [愛華]
「…しゃべりすぎちゃったな」
那佑は、白い歯を見せて笑った。
……もう戻れない。
深入りするべきじゃない…?
そんなの知るか。後悔はしてない
この子の闇に触れてしまったから
:10/06/23 21:48
:840SH
:JQjK9wkY
#89 [愛華]
「……楽にすればいーよ」
俺はこの子の…
「…なんかあったら話きくし」
この子が抱えている闇を
…少しでも…減らしたい。
:10/06/23 21:50
:840SH
:JQjK9wkY
#90 [愛華]
「…ありがと。…隆則」
「…隆則かぁ…。
じゃあ、俺も那佑でいい?」
「…いーけど…
隆則って何歳?本名は?」
:10/06/23 21:53
:840SH
:JQjK9wkY
#91 [愛華]
そういえば……
俺のこと何も話してねーや。
「赤石隆則。19才。」
「えー!!二つしか
違わないんだ!
もっと上かと思ってた。
キンパだし」
「キンパ関係ねーだろ!
俺、そんな老けてっか?」
「赤石かー私、白石だよ!」
……人の話きけよ。
なにげ傷ついてんだぞ。
スルーすんな。
:10/06/23 21:57
:840SH
:JQjK9wkY
#92 [愛華]
「赤と白!なんか対っぽくない?
赤と白が出会えたことに
かんぱーい!!」
そういうと那佑は缶ジュースを
カチンと当ててきた。
赤と白か……
出会ったことは
確かに運命だったかもな。
「……ガキ(笑)」
「なっ!ひど!!」
:10/06/23 22:01
:840SH
:JQjK9wkY
#93 [愛華]
ただ俺は君の笑顔が見たくて。
それだけだった。
君の苦しみをわかってあげたい。
いつも思っていたから。
この気持ちが恋と気づくのに
さほど時間はかからなかった。
:10/06/23 22:05
:840SH
:JQjK9wkY
#94 [愛華]
〜那佑side〜
:10/06/24 01:58
:840SH
:WjcdUaN2
#95 [愛華]
初めて
たくさんの事を人に話した。
自分のこと。
なぜかは自分でも分からない。
でも、この人になら
ちょっとだけ自分を
ちょっとだけ私の心を
見せても大丈夫なんじゃないかな
って 思ったんだ。
:10/06/25 20:39
:840SH
:I/HA.bV2
#96 [愛華]
あの人が、私の事ききまわってる
って聞いた時、
ちょっと嬉しかった。
自分の事を知ろうと
してくれてる人がいる。
好奇心?同情?単なる気まぐれ?
暇つぶし?
そんなの、どーでもよかった。
…………よかったんだよ、隆則。
:10/06/25 20:51
:840SH
:I/HA.bV2
#97 [愛華]
「たーかーのーり!!」
「……またお前かよ(笑)」
あれから私は毎日のように
隆則に会いにいった。
看護師さんには怒られたけど
完全無視(笑)
隆則もメーワクではない
(…と思う)ようだった。
:10/06/25 22:52
:840SH
:I/HA.bV2
#98 [愛華]
「毎日きてていーわけ?」
「隆則はあたしが来たら
メーワクなの??」
「んな事いってねーだろ…」
あ、ちょっと顔が赤くなった。
なんだろ。変な感じ。
「ねー隆則、顔あかいよ?」
「え!!き、気のせいだろ!」
:10/06/25 22:55
:840SH
:I/HA.bV2
#99 [愛華]
赤くなる隆則はなんか
可愛かった。
照れてんのかな??
あたしと隆則は他愛もない
話をたくさんした。
「あたしねープリン食べたい」
「好きなの?プリン」
「うん。退院したら
バケツプリンってゆーの
食べてみたいなぁ」
「たべりゃいーじゃん」
:10/06/25 23:00
:840SH
:I/HA.bV2
#100 [愛華]
「退院…できるかなぁ」
「できるにきまってんだろ」
隆則はハッキリ言い切った。
無理しなくていーのに。
子供じゃないんだから
完全な退院なんて無理だって
知ってるのに。
私はここで一生を終えるのに。
:10/06/25 23:03
:840SH
:I/HA.bV2
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