【統合】ﾌｧﾝﾀｼﾞｰなおしりＨ

ザップの発する不快な言葉を鈴々は全く無視した。

司会者は舞台の端まで下がり、代わりにレフリーが中央に出る。

「両者下がって！」

レフリーの指示で２人は数歩、後方へ下がる。

ザップは目を血走らせ、対照的に鈴々は涼しい顔をしている。

場内が一瞬、静まり返る。

「レディー！…ファイト!!」

（ｶｰﾝ！）

レフリーの号令で試合開始のｺﾞﾝｸﾞが鳴り響く。

ｺﾞﾝｸﾞと共にザップがいきなり拳を振るって突進する。

「うおぉぉぉっ!!!」

鈴々はガードを固めて防御の体制に入った。

ガードの上から容赦ないザップの拳が鈴々に打ち込まれる。

（ﾄﾞｶﾞ！ﾄﾞｶﾞ！ﾄﾞｺﾞ！）

ザップの強烈な圧力によって鈴々はｽﾞﾙｽﾞﾙと後退する。

「おーっと！これはザップ選手いきなりの猛攻！鈴々選手、耐えられるか～!?」

鈴々はとうとう壁際に追い詰められ、更なる攻撃を受け続けた。

凄惨な光景に場内がどよめく。

「ぐはははっ！俺様のパンチにガードなんて通用しねぇ!!」

全く動かない鈴々にザップは全力で打ち続けた。

が、徐々にザップの動きがスローダウンしていく。

「ハァ、ハァ、ゼェ、ゼェ…」

そしてついにザップの動きが止まる。

ザップは全く手応えのない鈴々の姿に混乱した。

「な、なんだ？こいつ…。立ったまま失神しちまったのか？…ハハッ、そうに違いねぇ。ハッハッハ！」

そんなザップの前に鈴々はガードを下げ、キョトンとした表情を見せた。

「何？まさかもう終わりなの？」

ザップはアホ面をかいて絶句した。

「へっ！？」

場内のどよめきが歓声に変わる。

「ホントつまんないなぁ。もう終わらせてもいいよね？」

次の瞬間、呆然と立ち尽くすザップのみぞおちに鈴々の強烈な蹴りが突き刺さる。

「はいやぁっ

」

（ドゴォッ

）

蹴りの衝撃でザップは吹っ飛ばされ、反対側の壁にめり込んで失神した。

レフリーすらも状況を飲み込めず、数秒間、唖然としていた。

そんなレフリーに鈴々が声をかけた。

「ねぇ、もう終わりだよね？これ以上やったら死んじゃうかもよ？」

レフリーがはっと我に帰る。

「し…試合終了！勝者、鈴々選手!!」

場内は割れんばかりの鈴々コールに包まれた。

大会は大盛況の内に終了し、晴れて世界一の称号を手にした鈴々は次なる目標を達成すべく、故郷を旅立つ準備を整えた。

世界一とは言えそれはあくまで人間の中だけの話。

メルーザを始めとする魔族のエリート層に通用するかはわからない。

そのことは鈴々もわかっており、この旅立ちには苦難を乗り越える修行の意味も込められていた。

生まれ育った賑やかな繁華街の人々に盛大に見送られ、鈴々は旅立った。

旅路についてしばらく歩くと、鈴々の前方からフード付きのマントに身を包んだ人間らしき者が歩いてきた。

その人間は鈴々の顔を見ると彼女に話しかけた。

「あなたはもしや、あの天下無双武闘大会で優勝された鈴々さんではございませんか？」

きょとんとした表情で鈴々が受け答える。

「うん。そうだけど…。」

「こんなところであの有名な鈴々さんにお会いできるとは。神に感謝いたします。」

「そ、そんなぁ、大袈裟だよ

アハハッ

」

まんざらでもない様子の鈴々。

「実は私、占い師をしておりまして…。是非、鈴々さんを占わせていただけないでしょうか？勿論、お代はいりませんので。」

世界一の武闘家と言えども鈴々は女の子。
占いと聞いて興味が湧かないはずがない。

「えっ？占い？じゃあ、占ってもらおっかなー

」

「おお、これはありがとうございます。ではさっそく…」

占い師は水晶をかざして何やら念を込め始めた。

「むぅぅ…」

鈴々の胸が高鳴った。

（ﾄﾞｷﾄﾞｷ

）