レイン
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#1 [◆It9is9ljoQ]


踏み外せない、踏み外さない

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⏰:10/09/17 17:47 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#2 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 人間はエゴの塊
 追い詰められるとその部分が
 剥き出しになる
 
 表面やたてまえの上では
 誠実でありたい、理性的でいたい
 
 

⏰:10/09/17 17:49 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#3 [◆It9is9ljoQ]






 
 どんなにエゴイストになりたなくても
 
 きっと私には無理、
 
 絶対に無理
 
 

⏰:10/09/17 17:50 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#4 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 さて、問題です。
 
 どうして人は尚、エゴイストに
 なれないと解っていて
 取り繕うのでしょうか。
 
 
 

⏰:10/09/17 17:50 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#5 [◆It9is9ljoQ]



 
 「"アイ"」
 
 そうふわりとした柔らかな声に呼ばれ、
 私は無意識にゆっくりと顔をあげた
 
 彼の瞳は、ゆらゆらと―――‥
 
 
 「阿呆、何見とんねん」
 
 くすりと笑った。
 彼が笑うと、その表情で周りはまるで
 花に溢れたようになる
 
 そんな笑い

⏰:10/09/17 17:51 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#6 [◆It9is9ljoQ]



 はっとした。
 音が消えていた私の脳内に
 ようやく音が戻ってきた

 時刻は5時を過ぎた所、
 窓の外から聞こえる、運動部の掛け声

⏰:10/09/17 17:51 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#7 [◆It9is9ljoQ]

 
 「いや、何もない」
 
 そういって手元にあった本を
 閉じれば頭上から手が伸びてきて
 ひょいとそれを掴んだ

 「っ、と‥またくっそ真面目な本読んで
 自分哲学者にでもなるん?」
 
 「好きなんよ、はよ返して」

 けらけらと笑い出す彼から本を
 取り返せば制鞄へと終い、席を立つ

⏰:10/09/17 17:52 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#8 [◆It9is9ljoQ]


 先に教室を出ようとすれば
 先程と変わらぬ、見なくても解るような
 笑みを張り付けてにたにたと
 私の後ろを追っている。

 「怒んなやー、ごめんって。
 今日お前俺んちで飯食うて帰るやろ?」

 「せやね」
 
 「‥っぷ、そこ偉い素直やん」
 

⏰:10/09/17 17:52 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#9 [◆It9is9ljoQ]





 
 上機嫌な彼と並んで歩く。
 
 朔也と付き合い始めて今月で半年。
 ちらりとふいに彼へ視線を向けた。

 色素の薄い金色の髪
 毎朝器用に熱しているのであろうにも
 関わらず、まるで傷んだようには
 見えない彼の外ハネの髪は
 放課後になっても継続している様
 

⏰:10/09/17 17:53 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#10 [◆It9is9ljoQ]



 彼のことは、どちらかと云えば好き
 恋愛対象ではある、筈
 愛してるといわれれば私もだと云う
 
 抱きしめられれば、背中に腕を回す
 
 キスをせがまれれば、それに応える
 

 ごく、自然なカップルである。
 
 只彼が不意に、稀に、汚れてみえる
 
 

⏰:10/09/17 17:54 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#11 [◆It9is9ljoQ]


それは自分がいかに綺麗かと
いう訳じゃない
 
只、凄く汚れて見える彼が

私の視界に写れば
酷く滑稽にみえてしまう。


⏰:10/09/17 18:00 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#12 [◆It9is9ljoQ]



 
 「"アイ"、むっちゃ好きやで」
 
 彼の部屋に着いた瞬間
 彼は後ろから私を抱きしめる
 
 抱きしめて、しがみついて
 首筋に舌を這わせる
 
 それをいつものことだと言わんばかりに
 私は只々それを受け入れる


⏰:10/09/17 18:01 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#13 [◆It9is9ljoQ]

 
 やっぱり、貴方を汚れたように思う
 
 愛だとか、愛しい気持ちだとか
 離さないで欲しい、とか
 傍に居たい、傍に居てほしい
 
 なんて
 
 なにひとつ沸いて来やしない
 

⏰:10/09/17 18:02 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#14 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 行為自体、好ましくはない。
 只、彼が求めるから応えるだけ
 
 所謂、私には愛がないのかもしれない
 
 "人を愛し、人にも愛されるように"
 そう名付けられた名前とは
 まるで正反対の人間になってしまった様
 
 

⏰:10/09/17 18:06 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#15 [◆It9is9ljoQ]

 
 私は知ってる、
 彼が私だけを見ていない事
 
 抱きしめられた時に伝わる彼の体温も、
 柔らかな髪も、花のようなその笑みも

 私だけのものじゃないって事を。
 
 
 
 もう一つ、
 
 その原因が私だということも
 何もかも解っている。
 
 

⏰:10/09/17 18:07 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#16 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「やから、こうやって!
 ちゃうちゃう、右!そっちは左!」
 
 「あーもう煩い、静かにしてや」

 「お前絶対免許取らん方がええ」

 「普通の道路にバナナの皮なんか
 落ちてへんよ」
 
 
 彼の間に挟まれて、もう数時間。
 彼の予定では
 今夜は朝までゲームらしい。

⏰:10/09/17 18:16 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#17 [◆It9is9ljoQ]


 
 私の自宅は彼の済むマンションから
 徒歩で15分程の所。
 帰りが遅くなろうとも焦る距離ではない
 終電に乗り遅れることもない
 泊まりにでようが、親は夜勤
 
 幸い明日は学校も休みで
 朝方まで彼の部屋に居ることになる。

⏰:10/09/17 18:37 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#18 [◆It9is9ljoQ]


 風呂に入ってくる、と言い残して
 部屋を出た彼を見送って
 ソファーへと移動した私は無防備にも
 放り出された彼の携帯電話に
 視線をやる
 
 
 慣れた手つきでそれを手に取れば
 ロックすらかかっていない
 メールフォルダに目を通す

⏰:10/09/17 18:38 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#19 [◆It9is9ljoQ]

 
 芹沢 なのは
 
 受信ボックス、明朝体の字で
 並んだその名前
 
 "ハートマーク"の絵文字
 目がちかちかする
 
 私が使うことのない、カラフルな絵文字
 
 私が打つことのない、愛してるの文字
 

⏰:10/09/17 18:38 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#20 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 それらが
 
 ざっと私の名前を挟んで数十件
 
 
 「だあいすき、はよ会いたい」
 
 「ぎゅってされな寝られへん」

 「次は何時泊まり来れるん?」

⏰:10/09/17 18:39 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#21 [◆It9is9ljoQ]


 
 芹沢なのは、
 
 芹沢なのは、
 
 芹沢なのは、
 
 聞き覚えのない名前、
 他校の女子生徒だろうか
 

⏰:10/09/17 18:39 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#22 [◆It9is9ljoQ]

 
 はじめに彼の携帯を見たのは二ヶ月前
 
 不意に、出来心だった
 
 ショックだとか、最低だとか
 その前に沸いて来たのは

 "あぁ、やっぱり"
 
 
 
 諦めだった。
 

⏰:10/09/17 18:39 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#23 [◆It9is9ljoQ]

 
 相変わらず彼女との関係は
 続いているようだ

 絶望感はない
 逆に少しの安心
 
 きっと彼も私がメールを
 見たことを知っている、もしくは
 見られたがっている。
 
 普通ならロックなり何なりつける筈
 
 元にあった場所に携帯を
 直すと、私は溜息を一つ零した
 

⏰:10/09/17 18:44 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#24 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 
 彼と別れず付き合っているのは
 彼が私の寂しさを埋めてくれるから。
 
 依存している。
 朔也にではなく、"彼氏"に。
 

⏰:10/09/17 18:44 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#25 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 多分きっと、彼もそうじゃないのか
 
 私だけの温もりじゃ
 きっと足りないから
 
 他を探してる。

 "君じゃなきゃ駄目"なんて
 君は嘘つかないから
 
 

⏰:10/09/17 20:12 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#26 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「暑、たーだーいーま。
 アイも風呂入って帰るん?」
 
 「私はええよ、着替えないし
 帰って化粧落としたりしやなあかん」
 
 「ほんならもっかい!
 今度こそみっちり教えたるわ」

 
 ふっと笑って、私の額にキスを落とすと
 私の隣に腰を下ろした。

⏰:10/09/17 20:18 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#27 [◆It9is9ljoQ]

 
 何も変わらない
 芹沢なのはに嫉妬もない
 
 次の瞬間には
 私の頭の中から彼女の存在なんて
 
 遠に消えていた
 
 そんなもの
 

⏰:10/09/17 20:18 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#28 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 帰路についた、
 玄関を開ければ薄暗い
 
 当たり前だろう、もう翌朝の6時前
 母子家庭、只でさえ寂しい親一人
 子一人、母親が戻るまで後1時間弱
 
 その間にシャワーを浴びて
 ベッドに入る

⏰:10/09/17 20:23 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#29 [◆It9is9ljoQ]
 

 疚しいことがある訳じゃない
 実質この朝帰りがばれた事も
 数えきれない
 
 叱られることもない、
 だけど最近じゃこうして
 誰も居ない家に戻ることで
 
 ほっとしていた

⏰:10/09/17 20:23 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#30 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 ベッドに入り、不意に思い出す、
 手と手が触れ合った感触
 
 キスなんかよりも、sexなんかよりも
 私にとっては大事な愛情確認
 
 17になったばかりの私には
 身体で感じる温もりなんか要らなかった
 

⏰:10/09/17 20:39 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#31 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 昔は純粋に、手を繋いだりするだけで
 満足だった。相手が欲しいとか
 そんなもの微塵も感じない
 
 身体で応えることは出来ても

 心がついていかない
 
 

⏰:10/09/17 20:40 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#32 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 窓の外から聞こえる、
 雨の音にうっすらと目をあけた
 
 曇った空に、雨の日のにおい
 穏やかな気持ちになった
 
 チカチカと光る、枕元の携帯電話
 着信が2件、メールが1件
 
 どれも朔也から。

⏰:10/09/17 20:57 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#33 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 溢れる程の愛情は受けている
 
 それを信じきれていないだけ
 
 
 

⏰:10/09/17 20:57 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#34 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 甜言蜜語も要らない
 
 もしも私が泣いていたら
 彼は真っ先に駆け付ける?
 
 愛の言葉を吐いて安心させて
 抱きしめてくれる?
 
 試したくなった

⏰:10/09/17 20:58 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#35 [◆It9is9ljoQ]


 所詮綺麗事を並べる
 目の前の男に、傷ついてほしかった

⏰:10/09/17 20:58 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#36 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 好きだというなら私に騙されて
 好きだというなら心乱されて
 好きだというなら、
 
 泣いて縋ってエゴじゃないって
 感じさせて


 そんな自分に、苦笑が漏れた

⏰:10/09/17 20:59 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#37 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「やっとかかってきたわ、
 おはよーさん」
 
 「んー」
 
 「相変わらず低血圧やなー
 ちゃんと寝れたん?」
 
 「んー」
 
 「今日雨やしどっこも
 出かけられそうないしDVDでも
 見にけーへん?」

⏰:10/09/17 21:21 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#38 [◆It9is9ljoQ]


 
 クスクスと笑う声が受話器越しに
 伝わる、急な誘い
 
 従順だった私は、彼を困らせたくなった
 


⏰:10/09/17 21:21 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#39 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「今日はやめとくわ」
 
 「‥‥は?本間に言うてるん?
 熱出ても会いにきとったお前が。
 今度こそ風邪でも引いたん?」
 
 「読みかけの本溜まってるし
 またにする、」
 
 「あー‥、さよか
 ほなまた明日学校でやな」
 

 残念そうな声を残して電話が切れた。

⏰:10/09/17 21:21 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#40 [◆It9is9ljoQ]

 
 そんな事が、何度も続いた
 会う日数を減らした、彼の家に寄るのを
 辞めた、学校の行き帰りだけを
 過ごすようにした

 苦しめて、でも離れていく気配のない
 彼に酷く苛立った


⏰:10/09/17 21:22 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#41 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「話、あんねやけど」
 
 苛立った声を隠したような
 彼に呼び止められたのは
 彼を傷付け始めて2週間が経った頃。

 やはり、何時も通り
 放課後の教室でのこと。

 やっぱりそろそろ限界?

⏰:10/09/17 21:34 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#42 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「何?」
 
 「"アイちゃん"俺に最近冷たない?」
 
 「冷たいんは今始まった事やないやん」
 
 
 "ちゃん"付けで私を呼ぶ彼
 
 緊張を隠せない彼の癖
 怯えている彼、こんな性癖が
 自分の中にあったのか、なんて
 心中自分を嘲笑した
 

⏰:10/09/17 21:34 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#43 [◆It9is9ljoQ]

 
 「そんなん言うてるんちゃうわ」
 
 苛立った声
 
 苦痛に顔を歪める彼に、
 私はふわりと笑みを見せる
 

⏰:10/09/17 21:35 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#44 [◆It9is9ljoQ]

 
 「何が可笑しいねん」





 
 「なあ、何が可笑しいねんって
 言うてんのが聞こえへんのか!」
 
 
 身体を震わせて笑う私は
 やっぱり異常なのかもしれない
 
 その異常さに 溺れるのが、
 どうしようもなく快楽で―――‥
 

⏰:10/09/17 21:35 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#45 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 ガタ―――‥
 
 鈍い音がした。
 近くにあった椅子が音を立てて
 床にたたき付けられる
 

⏰:10/09/17 21:41 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#46 [◆It9is9ljoQ]






 「何やねん、お前‥最近可笑しいわ
 どないしてん、何かされたんか!?」
 
 肩を捕まれ、揺すられて
 その彼の瞳はゆらゆらと揺れている

⏰:10/09/17 21:41 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#47 [◆It9is9ljoQ]


 
 悲しそうな目に、やはり浮かぶのは
 笑みだけ。
 
 半年も付き合いを続けて、
 今程感情が高ぶったことはなかった
 

⏰:10/09/17 21:42 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#48 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「‥‥もう、冷めたん?」
 
 「そんなんやないよ」
 
 「じゃあ何やねん!何でそんなんやねん
 お前が無愛想なんも今始まったこと
 ちゃうんも解ってるわ、」
 
 「うん」
 
 「でも、何時もとちゃう」
 

⏰:10/09/17 22:30 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#49 [◆It9is9ljoQ]

 「うん」
 
 「不安やねん、お前が、アイが
 どっかに行ってまいそうで怖いんや。
 俺どないしたらええんか解らんわ」
 
 
 しゃがみ込んで震える彼が
 愛しくて。
 
 小さな笑みを浮かべた私は
 そっと彼を抱きしめた

⏰:10/09/17 22:30 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#50 [◆It9is9ljoQ]


空っぽな心が

貴方の涙で満たされる


⏰:10/09/17 22:31 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#51 [◆It9is9ljoQ]


 
 "アイ"
 
 "愛"
 
 
 重なってる間中、愛しそうに
 彼は私の名前を呼んだ
 
 その度薄れてく
 
 さっきまで満タンだった愛の感情が。
 
 崩れてく、抱きしめられてる
 間中ずっと、私は冷めた瞳をしていた
 
 

⏰:10/09/17 22:35 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#52 [◆It9is9ljoQ]


 愛の満たし方を知らないのか。
 
 何度も私の髪を撫でる
 何度も私の額にキスする
 彼をぼんやりと見つめる
 
 

⏰:10/09/17 22:40 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#53 [◆It9is9ljoQ]


 重なった後、彼は幸福そうな
 顔をする。
 
 それが不思議で仕方ない
 
 気持ちなんてないのに
 幸福そうな顔をする彼が、
 
 羨ましくも感じた
 

⏰:10/09/17 22:40 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#54 [◆It9is9ljoQ]


彼の携帯から

芹沢なのは の 名前が消えた



⏰:10/09/17 22:42 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#55 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 "つまらない" それだけ。
 
 "単純な男" それだけ。
 
 何時も通り無防備に放り出された携帯
 それはもう、見てほしいと
 言わんばかりに。

⏰:10/09/18 18:46 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#56 [◆It9is9ljoQ]

 
 メールは一件すら残っていない
 アドレス帳からも消えている
 
 溜息を一つ零した私、浮かぶのは落胆
 感心のない表情(カオ)
 

⏰:10/09/18 18:46 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#57 [◆It9is9ljoQ]


トキメキが足りない?
刺激が足りない
 
苛立ち、一人強く舌を噛んだ
 

⏰:10/09/18 18:46 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#58 [◆It9is9ljoQ]


 
 
 
 「好きやで、"アイ"」
 
 へらりと、彼は笑う
 頬杖を付き、机を挟んだ私の手前
 いつものように額へキスを落とした。
 
 漆黒の腰まで伸びた髪が揺れる。
 読んでいた本をぱたりと閉じ
 顔をあげた



⏰:10/09/18 18:47 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#59 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 
 彼は何時からだろうか
 私の唇にキスを落とすことが無くなった
 
 額や頬
 いや、全然問題はない
 

⏰:10/09/18 18:47 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#60 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「なぁー、」
 
 「んー」

⏰:10/09/18 18:48 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#61 [◆It9is9ljoQ]

 
 「なぁー、なぁー、なぁー、」
 
 「何よ、どないしたん?」
 
 「好きやで」
 
 「知ってる」
 
 普通は逆なもんじゃないの?
 
 彼はにこにこと笑っていた筈なのに
 ふと、切なそうに目を細めた
 

⏰:10/09/18 18:48 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#62 [◆It9is9ljoQ]





 それ、その表情――――‥
 
 「ス・キ」
 
 
 無意識に、笑みが零れた
 

⏰:10/09/18 18:49 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#63 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 一人は寂しい、だから
 二人がいい。それ以上は要らない
 
 「ね、朔也のいう好きって何?」
 
 「どないしたんや、いきなり」
 
 「答えたくないなら別にええんよ」
 
 「"YES or はい"やん、アイちゃん」

⏰:10/09/18 21:00 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#64 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 昔は、出会った頃は、彼の笑顔が
 眩しかった。スキだった。
 
 くすりとまた、彼が笑う。
 最近はそれが"エゴイスト"の象徴
 ‥‥じゃないかなんて、
 
 むかつく。

⏰:10/09/18 21:00 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#65 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「せやなあ、傍に居りたいとか
 こうしたいとか」
 
 立ち上がった彼は柔らかな笑みを
 浮かべ机を挟んだ私の手前、
 くるりと回り込めば背中に伝わる体温
 

⏰:10/09/18 21:00 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#66 [◆It9is9ljoQ]





 
 "愛してる"
 
 耳元で囁かれた甘い台詞
 何時もより、彼の体温が高く感じる
 背中が熱い、抱きしめる力が強く
 感じるのは私の気のせいなのか

⏰:10/09/18 21:01 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#67 [◆It9is9ljoQ]




 
 
 「で、満足シマシタカ?」
 
 「‥‥ね、」
 
 「んー?」

 「一人の寂しさを埋めるためやないん?
 誰でもええ、一人が寂しいから
 二人がいいんやないの?」
 
 「せやなあ‥アイちゃん
 ついに本に洗脳でもされたんか?」

⏰:10/09/18 21:01 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#68 [◆It9is9ljoQ]






 茶化してみせる彼に、ふわりと笑う
 
 「朔也、終わりしよ」
 
 ゆっくりと、目を見開いた朔也に
 冗談やろ、そう唇を小さく震わす彼に
 冗談なんかやないんよと目を細めた
 
 夕日が差し込む、二人が決まって
 視線を交じ合わせるのはこの時刻
 この場所か、少し固い、ベッドの上

⏰:10/09/18 21:02 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#69 [◆It9is9ljoQ]

 
 そんな毎日に退屈を感じた
 愛を知らない、愛せない
 
 だから、リセットしたくなった
 それには彼は要らない


⏰:10/09/18 21:07 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#70 [◆It9is9ljoQ]




 ゲームのデータのようにセーブ出来ない
 上書きも出来ない
 
 リセットするには、
 周りは全て崩さなきゃならない
 

⏰:10/09/18 21:07 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#71 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「俺も、二人がええ」
 
 「でも、もう終わり」
 
 「‥俺の何処があかんの?」
 
 強いて云うなら、彼の笑った顔

⏰:10/09/18 21:17 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#72 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「何もないんよ」
 
 それは少し酷過ぎるから。
 
 「じゃあ‥何、やねん
 なあ、急過ぎんねんお前」
 
 縋り付くように、今にも泣きそうな
 私が居なくちゃ生きていけないと
 
 そんな表情

⏰:10/09/18 21:18 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#73 [◆It9is9ljoQ]






 「さよなら」

 もっと早く気付けばよかった
 もっと早く、こうしていれば
 私は満たされていた

⏰:10/09/18 21:24 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#74 [◆It9is9ljoQ]


 
 
 「なあ、理由云うてくれな
 俺どないにも出来ひんやんけ」
 
 「嫌い」
 
 「‥‥嫌、い?本間に言うてるん」
 
 「嫌い、笑った顔も
 愛しそうに私を見るその瞳も全部」
 

⏰:10/09/18 21:25 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#75 [◆It9is9ljoQ]






 「それ‥どういう意味やねん」
 
 「んー、その通りの意味」
 
 苦笑が漏れた。
 そしてそのあと
 立ちすくむ彼に、笑みを向けた

⏰:10/09/18 21:25 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#76 [◆It9is9ljoQ]











 「憎んで、憎んで、嫌って?」
 
 充血させた瞳で私を見つめる
 その姿ではまだ、駄目
 

⏰:10/09/18 21:26 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#77 [◆It9is9ljoQ]

 
 「お前なんか要らない、そう
 突き放してくれたら私
 朔也のこと好きになるかもしれない」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 最後にきいた、彼女の言葉
 

⏰:10/09/18 21:26 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#78 [◆It9is9ljoQ]


side "ai" end



side "sakuya" start


⏰:10/09/18 21:27 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#79 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 人は、独りやと生きられへん

 "好きやで"、"愛してる"
 "ずっと傍に居てや"
 
 そないに言葉並べて、
 人を縛り付ける

⏰:10/09/18 21:47 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#80 [◆It9is9ljoQ]


 
 
 理由は簡単
 
 独りが怖いから。
 必要とされたいから。
 
 
 
 

⏰:10/09/18 21:47 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#81 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「"アイ"」
 
 この名前が、好き
 
 ゆっくりと顔をあげた、
 彼女と目が合う

⏰:10/09/18 21:48 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#82 [◆It9is9ljoQ]


 ぼうっと俺を見る、俺の瞳を見る
 やけど、こいつは空気みたいや
 始めて会った時からそう

 ふわふわしとって、ツンケンしとって
 気ぃついたらどっかに
 飛んでってしまいそうなこの女

⏰:10/09/18 21:48 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#83 [◆It9is9ljoQ]




 「阿呆、何見とんねん」
 
 じっと見られて、照れた
 苦笑を交えて呟けば口角をあげた
 
 
 
 「いや、何もない」
 
 喋ったら、ぶすっとしよる。

⏰:10/09/18 21:49 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#84 [◆It9is9ljoQ]




 難しそーな顔して何読んでんねん
 直ぐに閉じられたアイの手元にあった
 本を手にとった‥うわ、漢字ばっかやん

 エゴ、イスト?
 よーわからんわ、
 

⏰:10/09/18 21:49 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#85 [◆It9is9ljoQ]

 
 「っ、と‥またくっそ真面目な本読んで
 自分哲学者にでもなるん?」
 
 「好きなんよ、はよ返して」


 けらけらと笑えば、瞬時に
 本を取り返せされれば鞄へと終う、
 席を立つ時ふらりと揺れた

 危な、ちゃんと立たれへんのか。
 

⏰:10/09/18 21:50 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#86 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 アイと並んで歩く
 
 見れば見る程こいつ白い
 髪が真っ黒なせいか、余計に白い
 夏やて焼けてる様子ない
 日焼け止めなんか塗ってるとこも
 みてへん。

⏰:10/09/18 21:50 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#87 [◆It9is9ljoQ]

 
 ぼんやりと、歩くアイと目があった
 何も言わんとすぐに
 逸らしよった、ほんまかわええ
 
 
 出会ったんは高校一年の春
 付き合うたんは高校二年の春
 
 きっかけ?一目惚れして一年片思い
 言うたらそんな感じ。
 

⏰:10/09/18 21:51 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#88 [◆It9is9ljoQ]


 放ってたら先教室を出ようとする
 

 「怒んなやー、ごめんって。
 今日お前俺んちで飯食うて帰るやろ?」

 「せやね」
 
 「‥っぷ、そこ偉い素直やん」
 
 そう笑えば彼女の頭を撫でる
 大人しく撫でられる彼女は猫。

⏰:10/09/18 21:58 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#89 [◆It9is9ljoQ]


 最初程刺々しいなくなったし
 にやってした企んだ笑いやて
 見せてくるようなったし
 
 やっぱ、かわええ
 

⏰:10/09/18 21:58 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#90 [◆It9is9ljoQ]



 「"アイ"、むっちゃ好きやで」
 
 部屋に着いてすぐ
 後ろからアイを抱きしめる
 
 甘い匂いがする
 落ち着く、すっかりこの匂いに
 俺は堕ちてた

 首筋に舌を這わせる、小さく甘い声を
 漏らしたアイに抱きしめる力を強めた

⏰:10/09/18 21:58 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#91 [◆It9is9ljoQ]



こんな時でさえ、
此奴の瞳は何処か遠くを見ている。

抱きしめる力を強めたところで、
それは何も変わらない

人形のようで、冷たいガラスのような瞳

⏰:10/09/19 08:27 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#92 [◆It9is9ljoQ]



 目が合えば、曖昧に笑う

 本当に俺の事を好きだと
 思っているのだろうか

 つきあい始めて二ヶ月が経った頃から、
 俺はそんな風に思っていた。

⏰:10/09/19 08:28 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#93 [◆It9is9ljoQ]



 自分ばかりが此奴に
 嵌ってしまっているのではないか
 自分ばかりが堕ちているんやないか

 そう考えたら
 どうしようもなくやりきれない。

⏰:10/09/19 08:29 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#94 [◆It9is9ljoQ]


 好き、一言でいえばそう。
 それ以上は有るかも知れない、
 けどそれ以下じゃないって
 事くらいは解ってる。

 只、此奴は…アイは。
 好きだと俺が口に出せば私もだという
 抱きしめれば、背中に腕を回し、
 拒絶もない
 キスをせがめばそれに応える

⏰:10/09/19 08:29 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#95 [◆It9is9ljoQ]


 何の問題もないのかもしれない
 ごく、普通の恋人同士なのかも知れない
 だけど、その瞳は何時も近くを見ない
 俺を見たりせん

 もっと他の、俺なんかよりも
 難しい漢字ばかりの本を
 愛しているように思うし
 一人で過ごし、自分の世界に入ることに
 没頭しているかのように見えてしまう。

⏰:10/09/19 08:32 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#96 [◆It9is9ljoQ]


 それはもしかすれば俺の推測なのかも
 知れんけど、彼女の行動はそれを匂わす

 不安、そればかりが俺を取り囲んだ


⏰:10/09/19 08:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#97 [◆It9is9ljoQ]





 「なぁ、アイ」

 汗ばんだ手で、彼女の髪を撫でた
 それに気持ちが良さそうに目を
 閉じていた彼女は、どないしたん?
 そうふわりと曖昧に笑った。

 どれだけ距離を縮めて、1cmの隙間すら
 無くしたとしても
 彼女の心は此処にはない

⏰:10/09/19 08:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#98 [◆It9is9ljoQ]











 ブーッ ブーッ

 放り出していた携帯電話が光る、
 ちかちかと青い点滅、女からのメール

⏰:10/09/19 08:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#99 [◆It9is9ljoQ]


 どうせまた会いたいだとか、
 好きだとかそんなもの。

 アイが居ない夜は一人が寂しくて
 やりきれなくなって、

 そんなメールに安心している自分が
 居るのとは裏腹に今俺は満たされてる


⏰:10/09/19 08:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#100 [◆It9is9ljoQ]






 だから、
 そんな安堵をくれるメールすら疎ましい

 都合の良い存在
 アイがくれない"愛情"、それを
 違う誰かから貰う

⏰:10/09/19 08:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#101 [◆It9is9ljoQ]



 それで満たされていた
 それで、不安を取り除いていた

 何度も言うように、俺はアイが好き。

 自分ばかりが此奴に嵌って堕ちている
 まぎれもなくそうなんだろう
 やから、本当は
 愛されていないんじゃないかと
 いう不安を取り除くために、女を使った

⏰:10/09/19 08:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


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