レイン
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#1 [◆It9is9ljoQ]


踏み外せない、踏み外さない

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⏰:10/09/17 17:47 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#2 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 人間はエゴの塊
 追い詰められるとその部分が
 剥き出しになる
 
 表面やたてまえの上では
 誠実でありたい、理性的でいたい
 
 

⏰:10/09/17 17:49 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#3 [◆It9is9ljoQ]






 
 どんなにエゴイストになりたなくても
 
 きっと私には無理、
 
 絶対に無理
 
 

⏰:10/09/17 17:50 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#4 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 さて、問題です。
 
 どうして人は尚、エゴイストに
 なれないと解っていて
 取り繕うのでしょうか。
 
 
 

⏰:10/09/17 17:50 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#5 [◆It9is9ljoQ]



 
 「"アイ"」
 
 そうふわりとした柔らかな声に呼ばれ、
 私は無意識にゆっくりと顔をあげた
 
 彼の瞳は、ゆらゆらと―――‥
 
 
 「阿呆、何見とんねん」
 
 くすりと笑った。
 彼が笑うと、その表情で周りはまるで
 花に溢れたようになる
 
 そんな笑い

⏰:10/09/17 17:51 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#6 [◆It9is9ljoQ]



 はっとした。
 音が消えていた私の脳内に
 ようやく音が戻ってきた

 時刻は5時を過ぎた所、
 窓の外から聞こえる、運動部の掛け声

⏰:10/09/17 17:51 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#7 [◆It9is9ljoQ]

 
 「いや、何もない」
 
 そういって手元にあった本を
 閉じれば頭上から手が伸びてきて
 ひょいとそれを掴んだ

 「っ、と‥またくっそ真面目な本読んで
 自分哲学者にでもなるん?」
 
 「好きなんよ、はよ返して」

 けらけらと笑い出す彼から本を
 取り返せば制鞄へと終い、席を立つ

⏰:10/09/17 17:52 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#8 [◆It9is9ljoQ]


 先に教室を出ようとすれば
 先程と変わらぬ、見なくても解るような
 笑みを張り付けてにたにたと
 私の後ろを追っている。

 「怒んなやー、ごめんって。
 今日お前俺んちで飯食うて帰るやろ?」

 「せやね」
 
 「‥っぷ、そこ偉い素直やん」
 

⏰:10/09/17 17:52 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#9 [◆It9is9ljoQ]





 
 上機嫌な彼と並んで歩く。
 
 朔也と付き合い始めて今月で半年。
 ちらりとふいに彼へ視線を向けた。

 色素の薄い金色の髪
 毎朝器用に熱しているのであろうにも
 関わらず、まるで傷んだようには
 見えない彼の外ハネの髪は
 放課後になっても継続している様
 

⏰:10/09/17 17:53 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#10 [◆It9is9ljoQ]



 彼のことは、どちらかと云えば好き
 恋愛対象ではある、筈
 愛してるといわれれば私もだと云う
 
 抱きしめられれば、背中に腕を回す
 
 キスをせがまれれば、それに応える
 

 ごく、自然なカップルである。
 
 只彼が不意に、稀に、汚れてみえる
 
 

⏰:10/09/17 17:54 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#11 [◆It9is9ljoQ]


それは自分がいかに綺麗かと
いう訳じゃない
 
只、凄く汚れて見える彼が

私の視界に写れば
酷く滑稽にみえてしまう。


⏰:10/09/17 18:00 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#12 [◆It9is9ljoQ]



 
 「"アイ"、むっちゃ好きやで」
 
 彼の部屋に着いた瞬間
 彼は後ろから私を抱きしめる
 
 抱きしめて、しがみついて
 首筋に舌を這わせる
 
 それをいつものことだと言わんばかりに
 私は只々それを受け入れる


⏰:10/09/17 18:01 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#13 [◆It9is9ljoQ]

 
 やっぱり、貴方を汚れたように思う
 
 愛だとか、愛しい気持ちだとか
 離さないで欲しい、とか
 傍に居たい、傍に居てほしい
 
 なんて
 
 なにひとつ沸いて来やしない
 

⏰:10/09/17 18:02 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#14 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 行為自体、好ましくはない。
 只、彼が求めるから応えるだけ
 
 所謂、私には愛がないのかもしれない
 
 "人を愛し、人にも愛されるように"
 そう名付けられた名前とは
 まるで正反対の人間になってしまった様
 
 

⏰:10/09/17 18:06 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#15 [◆It9is9ljoQ]

 
 私は知ってる、
 彼が私だけを見ていない事
 
 抱きしめられた時に伝わる彼の体温も、
 柔らかな髪も、花のようなその笑みも

 私だけのものじゃないって事を。
 
 
 
 もう一つ、
 
 その原因が私だということも
 何もかも解っている。
 
 

⏰:10/09/17 18:07 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#16 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「やから、こうやって!
 ちゃうちゃう、右!そっちは左!」
 
 「あーもう煩い、静かにしてや」

 「お前絶対免許取らん方がええ」

 「普通の道路にバナナの皮なんか
 落ちてへんよ」
 
 
 彼の間に挟まれて、もう数時間。
 彼の予定では
 今夜は朝までゲームらしい。

⏰:10/09/17 18:16 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#17 [◆It9is9ljoQ]


 
 私の自宅は彼の済むマンションから
 徒歩で15分程の所。
 帰りが遅くなろうとも焦る距離ではない
 終電に乗り遅れることもない
 泊まりにでようが、親は夜勤
 
 幸い明日は学校も休みで
 朝方まで彼の部屋に居ることになる。

⏰:10/09/17 18:37 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#18 [◆It9is9ljoQ]


 風呂に入ってくる、と言い残して
 部屋を出た彼を見送って
 ソファーへと移動した私は無防備にも
 放り出された彼の携帯電話に
 視線をやる
 
 
 慣れた手つきでそれを手に取れば
 ロックすらかかっていない
 メールフォルダに目を通す

⏰:10/09/17 18:38 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#19 [◆It9is9ljoQ]

 
 芹沢 なのは
 
 受信ボックス、明朝体の字で
 並んだその名前
 
 "ハートマーク"の絵文字
 目がちかちかする
 
 私が使うことのない、カラフルな絵文字
 
 私が打つことのない、愛してるの文字
 

⏰:10/09/17 18:38 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#20 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 それらが
 
 ざっと私の名前を挟んで数十件
 
 
 「だあいすき、はよ会いたい」
 
 「ぎゅってされな寝られへん」

 「次は何時泊まり来れるん?」

⏰:10/09/17 18:39 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#21 [◆It9is9ljoQ]


 
 芹沢なのは、
 
 芹沢なのは、
 
 芹沢なのは、
 
 聞き覚えのない名前、
 他校の女子生徒だろうか
 

⏰:10/09/17 18:39 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#22 [◆It9is9ljoQ]

 
 はじめに彼の携帯を見たのは二ヶ月前
 
 不意に、出来心だった
 
 ショックだとか、最低だとか
 その前に沸いて来たのは

 "あぁ、やっぱり"
 
 
 
 諦めだった。
 

⏰:10/09/17 18:39 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#23 [◆It9is9ljoQ]

 
 相変わらず彼女との関係は
 続いているようだ

 絶望感はない
 逆に少しの安心
 
 きっと彼も私がメールを
 見たことを知っている、もしくは
 見られたがっている。
 
 普通ならロックなり何なりつける筈
 
 元にあった場所に携帯を
 直すと、私は溜息を一つ零した
 

⏰:10/09/17 18:44 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#24 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 
 彼と別れず付き合っているのは
 彼が私の寂しさを埋めてくれるから。
 
 依存している。
 朔也にではなく、"彼氏"に。
 

⏰:10/09/17 18:44 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#25 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 多分きっと、彼もそうじゃないのか
 
 私だけの温もりじゃ
 きっと足りないから
 
 他を探してる。

 "君じゃなきゃ駄目"なんて
 君は嘘つかないから
 
 

⏰:10/09/17 20:12 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#26 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「暑、たーだーいーま。
 アイも風呂入って帰るん?」
 
 「私はええよ、着替えないし
 帰って化粧落としたりしやなあかん」
 
 「ほんならもっかい!
 今度こそみっちり教えたるわ」

 
 ふっと笑って、私の額にキスを落とすと
 私の隣に腰を下ろした。

⏰:10/09/17 20:18 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#27 [◆It9is9ljoQ]

 
 何も変わらない
 芹沢なのはに嫉妬もない
 
 次の瞬間には
 私の頭の中から彼女の存在なんて
 
 遠に消えていた
 
 そんなもの
 

⏰:10/09/17 20:18 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#28 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 帰路についた、
 玄関を開ければ薄暗い
 
 当たり前だろう、もう翌朝の6時前
 母子家庭、只でさえ寂しい親一人
 子一人、母親が戻るまで後1時間弱
 
 その間にシャワーを浴びて
 ベッドに入る

⏰:10/09/17 20:23 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#29 [◆It9is9ljoQ]
 

 疚しいことがある訳じゃない
 実質この朝帰りがばれた事も
 数えきれない
 
 叱られることもない、
 だけど最近じゃこうして
 誰も居ない家に戻ることで
 
 ほっとしていた

⏰:10/09/17 20:23 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#30 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 ベッドに入り、不意に思い出す、
 手と手が触れ合った感触
 
 キスなんかよりも、sexなんかよりも
 私にとっては大事な愛情確認
 
 17になったばかりの私には
 身体で感じる温もりなんか要らなかった
 

⏰:10/09/17 20:39 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#31 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 昔は純粋に、手を繋いだりするだけで
 満足だった。相手が欲しいとか
 そんなもの微塵も感じない
 
 身体で応えることは出来ても

 心がついていかない
 
 

⏰:10/09/17 20:40 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#32 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 窓の外から聞こえる、
 雨の音にうっすらと目をあけた
 
 曇った空に、雨の日のにおい
 穏やかな気持ちになった
 
 チカチカと光る、枕元の携帯電話
 着信が2件、メールが1件
 
 どれも朔也から。

⏰:10/09/17 20:57 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#33 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 溢れる程の愛情は受けている
 
 それを信じきれていないだけ
 
 
 

⏰:10/09/17 20:57 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#34 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 甜言蜜語も要らない
 
 もしも私が泣いていたら
 彼は真っ先に駆け付ける?
 
 愛の言葉を吐いて安心させて
 抱きしめてくれる?
 
 試したくなった

⏰:10/09/17 20:58 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#35 [◆It9is9ljoQ]


 所詮綺麗事を並べる
 目の前の男に、傷ついてほしかった

⏰:10/09/17 20:58 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#36 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 好きだというなら私に騙されて
 好きだというなら心乱されて
 好きだというなら、
 
 泣いて縋ってエゴじゃないって
 感じさせて


 そんな自分に、苦笑が漏れた

⏰:10/09/17 20:59 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#37 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「やっとかかってきたわ、
 おはよーさん」
 
 「んー」
 
 「相変わらず低血圧やなー
 ちゃんと寝れたん?」
 
 「んー」
 
 「今日雨やしどっこも
 出かけられそうないしDVDでも
 見にけーへん?」

⏰:10/09/17 21:21 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#38 [◆It9is9ljoQ]


 
 クスクスと笑う声が受話器越しに
 伝わる、急な誘い
 
 従順だった私は、彼を困らせたくなった
 


⏰:10/09/17 21:21 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#39 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「今日はやめとくわ」
 
 「‥‥は?本間に言うてるん?
 熱出ても会いにきとったお前が。
 今度こそ風邪でも引いたん?」
 
 「読みかけの本溜まってるし
 またにする、」
 
 「あー‥、さよか
 ほなまた明日学校でやな」
 

 残念そうな声を残して電話が切れた。

⏰:10/09/17 21:21 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#40 [◆It9is9ljoQ]

 
 そんな事が、何度も続いた
 会う日数を減らした、彼の家に寄るのを
 辞めた、学校の行き帰りだけを
 過ごすようにした

 苦しめて、でも離れていく気配のない
 彼に酷く苛立った


⏰:10/09/17 21:22 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#41 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「話、あんねやけど」
 
 苛立った声を隠したような
 彼に呼び止められたのは
 彼を傷付け始めて2週間が経った頃。

 やはり、何時も通り
 放課後の教室でのこと。

 やっぱりそろそろ限界?

⏰:10/09/17 21:34 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#42 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「何?」
 
 「"アイちゃん"俺に最近冷たない?」
 
 「冷たいんは今始まった事やないやん」
 
 
 "ちゃん"付けで私を呼ぶ彼
 
 緊張を隠せない彼の癖
 怯えている彼、こんな性癖が
 自分の中にあったのか、なんて
 心中自分を嘲笑した
 

⏰:10/09/17 21:34 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#43 [◆It9is9ljoQ]

 
 「そんなん言うてるんちゃうわ」
 
 苛立った声
 
 苦痛に顔を歪める彼に、
 私はふわりと笑みを見せる
 

⏰:10/09/17 21:35 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#44 [◆It9is9ljoQ]

 
 「何が可笑しいねん」





 
 「なあ、何が可笑しいねんって
 言うてんのが聞こえへんのか!」
 
 
 身体を震わせて笑う私は
 やっぱり異常なのかもしれない
 
 その異常さに 溺れるのが、
 どうしようもなく快楽で―――‥
 

⏰:10/09/17 21:35 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#45 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 ガタ―――‥
 
 鈍い音がした。
 近くにあった椅子が音を立てて
 床にたたき付けられる
 

⏰:10/09/17 21:41 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#46 [◆It9is9ljoQ]






 「何やねん、お前‥最近可笑しいわ
 どないしてん、何かされたんか!?」
 
 肩を捕まれ、揺すられて
 その彼の瞳はゆらゆらと揺れている

⏰:10/09/17 21:41 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#47 [◆It9is9ljoQ]


 
 悲しそうな目に、やはり浮かぶのは
 笑みだけ。
 
 半年も付き合いを続けて、
 今程感情が高ぶったことはなかった
 

⏰:10/09/17 21:42 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#48 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「‥‥もう、冷めたん?」
 
 「そんなんやないよ」
 
 「じゃあ何やねん!何でそんなんやねん
 お前が無愛想なんも今始まったこと
 ちゃうんも解ってるわ、」
 
 「うん」
 
 「でも、何時もとちゃう」
 

⏰:10/09/17 22:30 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#49 [◆It9is9ljoQ]

 「うん」
 
 「不安やねん、お前が、アイが
 どっかに行ってまいそうで怖いんや。
 俺どないしたらええんか解らんわ」
 
 
 しゃがみ込んで震える彼が
 愛しくて。
 
 小さな笑みを浮かべた私は
 そっと彼を抱きしめた

⏰:10/09/17 22:30 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#50 [◆It9is9ljoQ]


空っぽな心が

貴方の涙で満たされる


⏰:10/09/17 22:31 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#51 [◆It9is9ljoQ]


 
 "アイ"
 
 "愛"
 
 
 重なってる間中、愛しそうに
 彼は私の名前を呼んだ
 
 その度薄れてく
 
 さっきまで満タンだった愛の感情が。
 
 崩れてく、抱きしめられてる
 間中ずっと、私は冷めた瞳をしていた
 
 

⏰:10/09/17 22:35 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#52 [◆It9is9ljoQ]


 愛の満たし方を知らないのか。
 
 何度も私の髪を撫でる
 何度も私の額にキスする
 彼をぼんやりと見つめる
 
 

⏰:10/09/17 22:40 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#53 [◆It9is9ljoQ]


 重なった後、彼は幸福そうな
 顔をする。
 
 それが不思議で仕方ない
 
 気持ちなんてないのに
 幸福そうな顔をする彼が、
 
 羨ましくも感じた
 

⏰:10/09/17 22:40 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#54 [◆It9is9ljoQ]


彼の携帯から

芹沢なのは の 名前が消えた



⏰:10/09/17 22:42 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#55 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 "つまらない" それだけ。
 
 "単純な男" それだけ。
 
 何時も通り無防備に放り出された携帯
 それはもう、見てほしいと
 言わんばかりに。

⏰:10/09/18 18:46 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#56 [◆It9is9ljoQ]

 
 メールは一件すら残っていない
 アドレス帳からも消えている
 
 溜息を一つ零した私、浮かぶのは落胆
 感心のない表情(カオ)
 

⏰:10/09/18 18:46 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#57 [◆It9is9ljoQ]


トキメキが足りない?
刺激が足りない
 
苛立ち、一人強く舌を噛んだ
 

⏰:10/09/18 18:46 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#58 [◆It9is9ljoQ]


 
 
 
 「好きやで、"アイ"」
 
 へらりと、彼は笑う
 頬杖を付き、机を挟んだ私の手前
 いつものように額へキスを落とした。
 
 漆黒の腰まで伸びた髪が揺れる。
 読んでいた本をぱたりと閉じ
 顔をあげた



⏰:10/09/18 18:47 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#59 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 
 彼は何時からだろうか
 私の唇にキスを落とすことが無くなった
 
 額や頬
 いや、全然問題はない
 

⏰:10/09/18 18:47 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#60 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「なぁー、」
 
 「んー」

⏰:10/09/18 18:48 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#61 [◆It9is9ljoQ]

 
 「なぁー、なぁー、なぁー、」
 
 「何よ、どないしたん?」
 
 「好きやで」
 
 「知ってる」
 
 普通は逆なもんじゃないの?
 
 彼はにこにこと笑っていた筈なのに
 ふと、切なそうに目を細めた
 

⏰:10/09/18 18:48 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#62 [◆It9is9ljoQ]





 それ、その表情――――‥
 
 「ス・キ」
 
 
 無意識に、笑みが零れた
 

⏰:10/09/18 18:49 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#63 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 一人は寂しい、だから
 二人がいい。それ以上は要らない
 
 「ね、朔也のいう好きって何?」
 
 「どないしたんや、いきなり」
 
 「答えたくないなら別にええんよ」
 
 「"YES or はい"やん、アイちゃん」

⏰:10/09/18 21:00 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#64 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 昔は、出会った頃は、彼の笑顔が
 眩しかった。スキだった。
 
 くすりとまた、彼が笑う。
 最近はそれが"エゴイスト"の象徴
 ‥‥じゃないかなんて、
 
 むかつく。

⏰:10/09/18 21:00 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#65 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「せやなあ、傍に居りたいとか
 こうしたいとか」
 
 立ち上がった彼は柔らかな笑みを
 浮かべ机を挟んだ私の手前、
 くるりと回り込めば背中に伝わる体温
 

⏰:10/09/18 21:00 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#66 [◆It9is9ljoQ]





 
 "愛してる"
 
 耳元で囁かれた甘い台詞
 何時もより、彼の体温が高く感じる
 背中が熱い、抱きしめる力が強く
 感じるのは私の気のせいなのか

⏰:10/09/18 21:01 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#67 [◆It9is9ljoQ]




 
 
 「で、満足シマシタカ?」
 
 「‥‥ね、」
 
 「んー?」

 「一人の寂しさを埋めるためやないん?
 誰でもええ、一人が寂しいから
 二人がいいんやないの?」
 
 「せやなあ‥アイちゃん
 ついに本に洗脳でもされたんか?」

⏰:10/09/18 21:01 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#68 [◆It9is9ljoQ]






 茶化してみせる彼に、ふわりと笑う
 
 「朔也、終わりしよ」
 
 ゆっくりと、目を見開いた朔也に
 冗談やろ、そう唇を小さく震わす彼に
 冗談なんかやないんよと目を細めた
 
 夕日が差し込む、二人が決まって
 視線を交じ合わせるのはこの時刻
 この場所か、少し固い、ベッドの上

⏰:10/09/18 21:02 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#69 [◆It9is9ljoQ]

 
 そんな毎日に退屈を感じた
 愛を知らない、愛せない
 
 だから、リセットしたくなった
 それには彼は要らない


⏰:10/09/18 21:07 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#70 [◆It9is9ljoQ]




 ゲームのデータのようにセーブ出来ない
 上書きも出来ない
 
 リセットするには、
 周りは全て崩さなきゃならない
 

⏰:10/09/18 21:07 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#71 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「俺も、二人がええ」
 
 「でも、もう終わり」
 
 「‥俺の何処があかんの?」
 
 強いて云うなら、彼の笑った顔

⏰:10/09/18 21:17 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#72 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「何もないんよ」
 
 それは少し酷過ぎるから。
 
 「じゃあ‥何、やねん
 なあ、急過ぎんねんお前」
 
 縋り付くように、今にも泣きそうな
 私が居なくちゃ生きていけないと
 
 そんな表情

⏰:10/09/18 21:18 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#73 [◆It9is9ljoQ]






 「さよなら」

 もっと早く気付けばよかった
 もっと早く、こうしていれば
 私は満たされていた

⏰:10/09/18 21:24 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#74 [◆It9is9ljoQ]


 
 
 「なあ、理由云うてくれな
 俺どないにも出来ひんやんけ」
 
 「嫌い」
 
 「‥‥嫌、い?本間に言うてるん」
 
 「嫌い、笑った顔も
 愛しそうに私を見るその瞳も全部」
 

⏰:10/09/18 21:25 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#75 [◆It9is9ljoQ]






 「それ‥どういう意味やねん」
 
 「んー、その通りの意味」
 
 苦笑が漏れた。
 そしてそのあと
 立ちすくむ彼に、笑みを向けた

⏰:10/09/18 21:25 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#76 [◆It9is9ljoQ]











 「憎んで、憎んで、嫌って?」
 
 充血させた瞳で私を見つめる
 その姿ではまだ、駄目
 

⏰:10/09/18 21:26 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#77 [◆It9is9ljoQ]

 
 「お前なんか要らない、そう
 突き放してくれたら私
 朔也のこと好きになるかもしれない」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 最後にきいた、彼女の言葉
 

⏰:10/09/18 21:26 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#78 [◆It9is9ljoQ]


side "ai" end



side "sakuya" start


⏰:10/09/18 21:27 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#79 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 人は、独りやと生きられへん

 "好きやで"、"愛してる"
 "ずっと傍に居てや"
 
 そないに言葉並べて、
 人を縛り付ける

⏰:10/09/18 21:47 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#80 [◆It9is9ljoQ]


 
 
 理由は簡単
 
 独りが怖いから。
 必要とされたいから。
 
 
 
 

⏰:10/09/18 21:47 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#81 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「"アイ"」
 
 この名前が、好き
 
 ゆっくりと顔をあげた、
 彼女と目が合う

⏰:10/09/18 21:48 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#82 [◆It9is9ljoQ]


 ぼうっと俺を見る、俺の瞳を見る
 やけど、こいつは空気みたいや
 始めて会った時からそう

 ふわふわしとって、ツンケンしとって
 気ぃついたらどっかに
 飛んでってしまいそうなこの女

⏰:10/09/18 21:48 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#83 [◆It9is9ljoQ]




 「阿呆、何見とんねん」
 
 じっと見られて、照れた
 苦笑を交えて呟けば口角をあげた
 
 
 
 「いや、何もない」
 
 喋ったら、ぶすっとしよる。

⏰:10/09/18 21:49 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#84 [◆It9is9ljoQ]




 難しそーな顔して何読んでんねん
 直ぐに閉じられたアイの手元にあった
 本を手にとった‥うわ、漢字ばっかやん

 エゴ、イスト?
 よーわからんわ、
 

⏰:10/09/18 21:49 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#85 [◆It9is9ljoQ]

 
 「っ、と‥またくっそ真面目な本読んで
 自分哲学者にでもなるん?」
 
 「好きなんよ、はよ返して」


 けらけらと笑えば、瞬時に
 本を取り返せされれば鞄へと終う、
 席を立つ時ふらりと揺れた

 危な、ちゃんと立たれへんのか。
 

⏰:10/09/18 21:50 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#86 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 アイと並んで歩く
 
 見れば見る程こいつ白い
 髪が真っ黒なせいか、余計に白い
 夏やて焼けてる様子ない
 日焼け止めなんか塗ってるとこも
 みてへん。

⏰:10/09/18 21:50 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#87 [◆It9is9ljoQ]

 
 ぼんやりと、歩くアイと目があった
 何も言わんとすぐに
 逸らしよった、ほんまかわええ
 
 
 出会ったんは高校一年の春
 付き合うたんは高校二年の春
 
 きっかけ?一目惚れして一年片思い
 言うたらそんな感じ。
 

⏰:10/09/18 21:51 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#88 [◆It9is9ljoQ]


 放ってたら先教室を出ようとする
 

 「怒んなやー、ごめんって。
 今日お前俺んちで飯食うて帰るやろ?」

 「せやね」
 
 「‥っぷ、そこ偉い素直やん」
 
 そう笑えば彼女の頭を撫でる
 大人しく撫でられる彼女は猫。

⏰:10/09/18 21:58 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#89 [◆It9is9ljoQ]


 最初程刺々しいなくなったし
 にやってした企んだ笑いやて
 見せてくるようなったし
 
 やっぱ、かわええ
 

⏰:10/09/18 21:58 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#90 [◆It9is9ljoQ]



 「"アイ"、むっちゃ好きやで」
 
 部屋に着いてすぐ
 後ろからアイを抱きしめる
 
 甘い匂いがする
 落ち着く、すっかりこの匂いに
 俺は堕ちてた

 首筋に舌を這わせる、小さく甘い声を
 漏らしたアイに抱きしめる力を強めた

⏰:10/09/18 21:58 📱:SH706i 🆔:uqv1p28Y


#91 [◆It9is9ljoQ]



こんな時でさえ、
此奴の瞳は何処か遠くを見ている。

抱きしめる力を強めたところで、
それは何も変わらない

人形のようで、冷たいガラスのような瞳

⏰:10/09/19 08:27 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#92 [◆It9is9ljoQ]



 目が合えば、曖昧に笑う

 本当に俺の事を好きだと
 思っているのだろうか

 つきあい始めて二ヶ月が経った頃から、
 俺はそんな風に思っていた。

⏰:10/09/19 08:28 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#93 [◆It9is9ljoQ]



 自分ばかりが此奴に
 嵌ってしまっているのではないか
 自分ばかりが堕ちているんやないか

 そう考えたら
 どうしようもなくやりきれない。

⏰:10/09/19 08:29 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#94 [◆It9is9ljoQ]


 好き、一言でいえばそう。
 それ以上は有るかも知れない、
 けどそれ以下じゃないって
 事くらいは解ってる。

 只、此奴は…アイは。
 好きだと俺が口に出せば私もだという
 抱きしめれば、背中に腕を回し、
 拒絶もない
 キスをせがめばそれに応える

⏰:10/09/19 08:29 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#95 [◆It9is9ljoQ]


 何の問題もないのかもしれない
 ごく、普通の恋人同士なのかも知れない
 だけど、その瞳は何時も近くを見ない
 俺を見たりせん

 もっと他の、俺なんかよりも
 難しい漢字ばかりの本を
 愛しているように思うし
 一人で過ごし、自分の世界に入ることに
 没頭しているかのように見えてしまう。

⏰:10/09/19 08:32 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#96 [◆It9is9ljoQ]


 それはもしかすれば俺の推測なのかも
 知れんけど、彼女の行動はそれを匂わす

 不安、そればかりが俺を取り囲んだ


⏰:10/09/19 08:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#97 [◆It9is9ljoQ]





 「なぁ、アイ」

 汗ばんだ手で、彼女の髪を撫でた
 それに気持ちが良さそうに目を
 閉じていた彼女は、どないしたん?
 そうふわりと曖昧に笑った。

 どれだけ距離を縮めて、1cmの隙間すら
 無くしたとしても
 彼女の心は此処にはない

⏰:10/09/19 08:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#98 [◆It9is9ljoQ]











 ブーッ ブーッ

 放り出していた携帯電話が光る、
 ちかちかと青い点滅、女からのメール

⏰:10/09/19 08:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#99 [◆It9is9ljoQ]


 どうせまた会いたいだとか、
 好きだとかそんなもの。

 アイが居ない夜は一人が寂しくて
 やりきれなくなって、

 そんなメールに安心している自分が
 居るのとは裏腹に今俺は満たされてる


⏰:10/09/19 08:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#100 [◆It9is9ljoQ]






 だから、
 そんな安堵をくれるメールすら疎ましい

 都合の良い存在
 アイがくれない"愛情"、それを
 違う誰かから貰う

⏰:10/09/19 08:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#101 [◆It9is9ljoQ]



 それで満たされていた
 それで、不安を取り除いていた

 何度も言うように、俺はアイが好き。

 自分ばかりが此奴に嵌って堕ちている
 まぎれもなくそうなんだろう
 やから、本当は
 愛されていないんじゃないかと
 いう不安を取り除くために、女を使った

⏰:10/09/19 08:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#102 [◆It9is9ljoQ]



 ぼんやりと、アイは青に点滅している
 俺の携帯に視線をずらす。

 見られても何も問題なんてない
 むしろ、見て欲しいとすら感じとった

⏰:10/09/19 08:36 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#103 [◆It9is9ljoQ]


 嫉妬、という感情が此奴にあるんなら
 それを引き出したいと思った

⏰:10/09/19 08:36 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#104 [◆It9is9ljoQ]




 泣いて縋る此奴が
 何処かで見られればいい
 そんな事を思うてた

 異常なんやろか、此奴以上に俺は。

 好きやから、嫉妬してほしい
 好きやから、俺の為に泣いて欲しい

⏰:10/09/19 08:37 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#105 [◆It9is9ljoQ]


 簡単に云うたら、
 愛されてるっちゅー証が
 欲しかったんやって思う。

⏰:10/09/19 09:00 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#106 [◆It9is9ljoQ]



 「やから、こうやって!
 ちゃうちゃう、右!そっちは左!」

 「あーもう煩い、静かにしてや」

 「お前絶対免許取らん方がええ」

 「普通の道路にバナナの皮なんか
 落ちてへんよ」

 股の間に、すっぽりとアイは納まる
 コントローラー強く握り過ぎや、つーか
 持ち方が独特やねん、

⏰:10/09/19 09:01 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#107 [◆It9is9ljoQ]


 もうどんぐらいゲームしてんねやろ

 気ぃついたら9のとこにあった
 時計の短い針はもう11を
 過ぎたとこになっとった

⏰:10/09/19 09:02 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#108 [◆It9is9ljoQ]


 明日は学校も休み、天気は曇りやっけ
 快晴やないし外なんか
 よー出る気が起きん

 此奴が帰る言い出したら送って、
 ほんでから
 明日は昼までゆっくりして、
 また家に呼んだらええわ

⏰:10/09/19 09:02 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#109 [◆It9is9ljoQ]



 「よっこらせ、っと…
 俺風呂いってくる」

 「んー」

 「精々バナナで転ばんようにな」

 「煩い」

 「目疲れたらベットに横なっとき」

 「ん」

 コントローラーから目を離さないアイに
 小さく笑みをつくれば部屋を出た、

⏰:10/09/19 09:04 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#110 [◆It9is9ljoQ]



 次の日、目が覚めたら
 窓にはびっしり水滴がついとった、

 いつもならこの時間いうたら
 電気つけんでも明るいのに、
 今日はどうも薄暗い

 雨降ってるわ。
 …あーもう、気ぃ怠い

⏰:10/09/19 10:30 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#111 [◆It9is9ljoQ]





 携帯を開くと
 待ち受け画面には何のアイコンも
 残っとらへん、彼奴まだ寝てるんか

 取り敢えず電話いれたけど、
 出よらへん

 メールだけ入れ取ったら
 連絡来るやろ。
 枕を抱き込むとその上に頭を置いた

⏰:10/09/19 10:31 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#112 [◆It9is9ljoQ]



 「‥‥‥、」

 雨やと憂鬱なる、
 ほんで隣に居てへんってなったら
 また寂しいなってしゃあななるねん。

 こんな事ちっとも
 彼奴は思うてへんやろうけど…

⏰:10/09/19 10:31 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#113 [◆It9is9ljoQ]




 此奴には人一倍、
 優しいしてるつもりや

 怒った事なんて
 数える程しかない

 手上げるなんてとんでもない

 やけど、
 此奴は一向に靡いたりせん。

⏰:10/09/19 10:31 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#114 [◆It9is9ljoQ]


 優しいして甘うして
 俺から離れられんようにって
 しとるつもりやのに、

 こいつは空気みたいに
 ふんわり飛んでいきよる

 離れていく様子もないし、
 嫌われてる様子もない

⏰:10/09/19 10:32 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#115 [◆It9is9ljoQ]




 ………、どないしたええねん
 俺は恋愛に刺激なんか要らん

 只ゆっくりゆっくり
 毎日一緒におれたらええ

 それだけやねん

 それ以上なんか要らん


⏰:10/09/19 10:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#116 [◆It9is9ljoQ]






 〜♪

 アイやって解るよう指定しとる
 着信音が鳴った

 偉い大きい音で。
 寝てしもうても出られるようにって

 「やっとかかってきたわ、
 おはよーさん」

⏰:10/09/19 10:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#117 [◆It9is9ljoQ]


 「んー」

 まだ寝ぼけとるんか、
 小さい声で唸りよる此奴に
 愛しいわ、って笑みが漏れた

 そんな些細な事で俺は満たされとる

⏰:10/09/19 10:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#118 [◆It9is9ljoQ]



 「相変わらず低血圧やなー
 ちゃんと寝れたん?」

 「んー」

 「今日雨やしどっこも
 出かけられそうないしDVDでも
 見にけーへん?」

 ベットから起きあがって、
 クスクスと笑う

 はよ会いたい、只それだけ
 はよ会いに来て、顔みたいわ

⏰:10/09/19 10:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#119 [◆It9is9ljoQ]




 「今日はやめとくわ」

 予想外の言葉に、
 俺は一気に寂しいなった

 動揺も隠されへん

⏰:10/09/19 10:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#120 [◆It9is9ljoQ]



 「‥‥は?本間に言うてるん?
 熱出ても会いにきとったお前が。
 今度こそ風邪でも引いたん?」

 「読みかけの本溜まってるし
 またにする、」

 「あー‥さよか
 ほなまた学校でやな」

⏰:10/09/19 10:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#121 [◆It9is9ljoQ]








 電話を切った、
 無性に‥やりきれんなった

 直ぐに都合のええ女に、無意識に
 芹沢なのはに、連絡を取った

⏰:10/09/19 10:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#122 [◆It9is9ljoQ]



 「何で昨日メール
 返してくれへんかったん?」

 甘い声、甘い香水の匂い

 アイはこないにして話はしよらん
 何で?なんていう束縛地味た言葉は
 一切使われたことない



⏰:10/09/19 10:37 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#123 [◆It9is9ljoQ]




 「あぁ、見てへんかった」

 「じゃあ何で今日電話くれたんっ?」

 「別に何やったってええやん、
 はよやらせてや」

 肩にすりよせる此奴に小さく笑った
 その笑いは、自分への嘲笑


⏰:10/09/19 10:38 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#124 [◆It9is9ljoQ]


 「なぁ、次何時会える?」

 「また連絡するわ」

 「ほんま気まぐれやねんから‥うち、
 いつでも待ってるし連絡してな?
 朔くんの為やったら時間あけるから」

「ほなまた」

 下着姿のまま甘い声を出すこの女を
 一度も振り返る事なく部屋を出た

⏰:10/09/19 10:40 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#125 [◆It9is9ljoQ]


 いつまでこんなん続けんねやろ

 何度もこの女が言うた「愛してる」に
 安堵してる自分に一番苛立った


 携帯を開けば、
 やはり目立ったアイコンは無い

 それがまた、
 余計に俺を虚しくさせた

⏰:10/09/19 10:40 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#126 [◆It9is9ljoQ]





 「今日どないする?
 新しいゲーム買うてんけどやりに
 来ぇへん?アイが出来るよう
 簡単モードにしたるし」

 「今日は帰るわ、また誘って」

 「読みかけの本でもあるん?」

 「そうそう」

⏰:10/09/19 10:42 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#127 [◆It9is9ljoQ]



 「またあの堅苦しい本け?
 そないなん読んどったら自分
 いつか洗脳されてまうで」

 「それはそれでいいかもしらへんわ、
 じゃあまた明日」

 手を振って、ふわりと笑う
 此処最近のアイは生き生きしてるように
 見えるんは気のせいなんか

⏰:10/09/19 10:44 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#128 [◆It9is9ljoQ]



それと裏腹に、此奴は俺との時間を
段々減らしていきよった


⏰:10/09/19 10:44 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#129 [◆It9is9ljoQ]


 会うんは放課後と行きしだけ。
 クラスがちゃうから、って何時もは
 昼休み俺が顔出しにきて話しよるのに
 昼休みは教室にすら居てへん

 顔が見たくて、どーせまた一人で
 図書館やろ、
 思うて向かうたって居らへん

⏰:10/09/19 10:45 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#130 [◆It9is9ljoQ]




 友達は比較的少ない
 女子特有のグループ行動なんか
 してる様子なんか見えへん

 それは彼奴が一番苦手なようにも
 みえるし、俺と付き合うてることすら
 苦手なんやないかって思うて
 前に聞いてみたらそんな事はないって
 いいよった、けど。

⏰:10/09/19 10:45 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#131 [◆It9is9ljoQ]




 「どないしてん、
 ついに振られたんか?」

 「そんなんちゃうわ、
 なぁ一樹、アイ‥見てへんか?」

 「見辺らへんのかいな
 せやなぁ‥図書館とかに
 転がってそうやんか、あの子」

⏰:10/09/19 10:47 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#132 [◆It9is9ljoQ]


 「アイの事何やと思うてんねん、阿呆
 それが居てへんねん」

 「そういや昼は一緒やないなぁ
 自分らが一緒に居るとこ
 最近見てへんし」

 「‥‥‥」

⏰:10/09/19 10:48 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#133 [◆It9is9ljoQ]






 「やっぱ、振られたんや」

 「行き帰りは変わった様子ないねん」

 「ほなあれや、委員会とかちゃうん
 あの子逐一報告するタイプちゃうやろ
 あんま心配せんでも放ってたら
 戻ってくるやろ、どんと構えときぃや
 飼い主さん」

 けらけらと笑う友人に、
 俺はやっぱ考えすぎか、と予鈴と共に
 席へと戻った

⏰:10/09/19 10:48 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#134 [◆It9is9ljoQ]



 「アイちゃん
 今日ケーキ食いに行こや」


 「アイ〜、はよ帰るで」


 「せや、映画のチケット!
 手に入ったんやで、あれやん
 アイがぼーっと見とった奴の続編」

⏰:10/09/19 10:50 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#135 [◆It9is9ljoQ]




 「なあなあアイちゃん
 明日どっか行かへん?」

 悉く振られ、やけど毎日のように
 俺はアイとの時間を
 作ろうって必死やった

 生き生きしとった筈の
 アイが段々また、いつもみたいな
 表情に変わっていくんが
 日に日に手にとるように解った

⏰:10/09/19 10:51 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#136 [◆It9is9ljoQ]

 







 
 「話、あんねやけど」
 
 苛立った声を隠し、
 ぎこちない笑みを浮かべた

⏰:10/09/19 12:12 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#137 [◆It9is9ljoQ]


 放課後の教室でアイは
 相変わらず窓側の一番端の席に
 ぽつんと腰を下ろして本に没頭していた


 それは彼女が不審な行動を取り始めて
 2週間が経った頃。




⏰:10/09/19 12:13 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#138 [◆It9is9ljoQ]


 
 他の女と居ったって寂しさは紛れん

 好きやって囁かれる度に
 逆に、その声がアイと重なって
 息をする事すら
 器用に出来ひんなってしもた

 やから、何言われても
 向き合う覚悟で口を開いた

 

⏰:10/09/19 12:14 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#139 [◆It9is9ljoQ]



 
 「何?」

 顔を上げた彼女は何時もと変わらず
 何も考えていないんじゃないかって
 いうくらいに大人しい声で口を開いた。
 


 「"アイちゃん"俺に最近冷たない?」
 
 「冷たいんは今始まった事やないやん」
 
 どしたの、いきなり。とクスリと笑みを
 漏らした彼女に苛立ちが起こる

⏰:10/09/19 12:14 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#140 [◆It9is9ljoQ]




 俺の苛立っている原因を、此奴は
 解ってるんじゃないのか
 わざとこうして俺の心を揺さぶるような
 事をして楽しんで居るんじゃないか

 そんな考えばかりが脳裏を掠めた


⏰:10/09/19 12:14 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#141 [◆It9is9ljoQ]




 
 「そんなん言うてるんちゃうわ」
 
 苛立った声、違う、
 こんなつもりじゃなかった

 苦痛に顔を歪める、ソレとは裏腹に
 また、この表情

 此奴はふわりと笑った
 とても綺麗に、生き生きとした笑み

⏰:10/09/19 12:15 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#142 [◆It9is9ljoQ]


 
 「何が可笑しいねん」

 気が付けば、俺の声は小さく震える

 
 「なあ、何が可笑しいねんって
 言うてんのが聞こえへんのか!」




 
 ガタ―――‥
 
 鈍い音がして、近くにあった椅子を
 手にとれば音を立て床にたたき付けた

⏰:10/09/19 12:16 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#143 [◆It9is9ljoQ]


 びくりと、肩を振るわせたアイはまた
 可笑しそうに笑った

 本間に此奴、洗脳されたんちゃうか
 何が面白いねん。
 

⏰:10/09/19 12:16 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#144 [◆It9is9ljoQ]



 「何やねん、お前‥最近可笑しいわ
 どないしてん、何かされたんか!?」
 
 彼女に近づけば肩に手を置いた
 強く揺すれば、
 揺するほど肩を振るわせて
 この女は笑いよる。

 絶望、一人きり取り残されたと
 言わんばかりに悲しそうな目をした
 俺の手前
 やはり浮かぶのは笑みだけ。

⏰:10/09/19 12:17 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#145 [◆It9is9ljoQ]





 幸せそうな、笑み
 その意味が俺には解らへん
  


⏰:10/09/19 12:17 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#146 [◆It9is9ljoQ]


 
 「‥‥もう、冷めたん?」
 
 「そんなんやないよ」
 
 「じゃあ何やねん!何でそんなんやねん
 お前が無愛想なんも今始まったこと
 ちゃうんも解ってるわ、」
 
 「うん」
 
 「でも、何時もとちゃう」
 
 「うん」

⏰:10/09/19 12:17 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#147 [◆It9is9ljoQ]



 
 「不安やねん、お前が、アイが
 どっかに行ってまいそうで怖いんや。
 俺どないしたらええんか解らんわ」




 
 しゃがみ込んで震えがとまらん。

 依存でもええ、何やってええ
 自分一人が堕ちてったってかまわへん

⏰:10/09/19 12:18 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#148 [◆It9is9ljoQ]







 愛しくて、たまらん
 傍に居てくれな俺は壊れてしまう

⏰:10/09/19 12:18 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#149 [◆It9is9ljoQ]


 小さな笑みを浮かべたアイ
 表情はとても優しい、すたすたと
 近づいてくれば背伸びをして、

 俺をそっと抱きしめた、
 好きだよって微笑んだ



 俺の心は段々満たされてって
 アイはアイで何か心境の変化が
 あったんか、幸せそうな顔をしよる

⏰:10/09/19 12:19 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#150 [◆It9is9ljoQ]



 愛しくて、堪らなくて
 私の名前を呼んだ

 目を合わせて微笑んだ俺に見せたのは
 また、遠くを見る目


⏰:10/09/19 12:49 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#151 [◆It9is9ljoQ]


 「アイ」

 「‥‥‥、」

 「‥イ、アイ‥どないしてん」

 「あぁ、‥どしたん?」


 ほんの少し前までは、あんなににも
 幸福そうな表情を見せていたのに
 目の前に居るのは紛れもない
 人形のような瞳をしたアイの姿

⏰:10/09/19 12:50 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#152 [◆It9is9ljoQ]


 だけど、それに気が付かない振りをした
 きっと、まだ俺には解らないけれど
 いつか解るだろう、そんな気持ちで

 今は目の前に映った彼女の瞳から
 目を背けるように強く抱きしめた
 忘れようとした

⏰:10/09/19 12:50 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#153 [◆It9is9ljoQ]


 それから、芹沢なのは を完全に切った

 もう必要がないと感じたから
 というよりも、
 此方の軽い気持ちとは裏腹に
 段々と重くなる女の気持ちが面倒で
 休まるなんて事すら
 無くなってしまいそうだと




 簡単に細い糸を切るようにと、
 彼女とは離れた

⏰:10/09/19 12:51 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#154 [◆It9is9ljoQ]





 それから、寂しさを埋める術は
 見つかることもなく、
 趣味を探して没頭する訳でもなく、

 最近じゃまた部屋にも寄るようになった
 アイだけで充分だと
 言い聞かせるようになった


⏰:10/09/19 12:53 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#155 [◆It9is9ljoQ]



 一人だけが溺れていてもいい
 そう、開き直るかのように
 考え方を変えた俺には
 それが苦痛に思う事もなければ
 前以上にも彼女に優しくなった

 依存するようになった

 傍に居るようになった

 愛を囁いたり、愛情確認をする事も
 以前と比べて格段に増えた

⏰:10/09/19 12:53 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#156 [◆It9is9ljoQ]




 只、只、少し彼女が怖くなった

 時々俺を射るように見る視線を
 感じるようになった

 時々、俺を冷めた目で見る
 視線に気づいた

⏰:10/09/19 12:53 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#157 [◆It9is9ljoQ]




 だから、それを埋めるために
 大事にしよう、傍に居よう

 そう、壊れたものを扱うようにと
 慎重になった

 だけど、出来なくなった
 どれだけ身体を重ねる事が増えても
 彼女の唇にキスを
 落とすことがなくなった


⏰:10/09/19 12:54 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#158 [◆It9is9ljoQ]




 怖くなった
 ふいに顔を逸らされるんじゃないかと
 
 怖くなった
 ふわりと風船のように
 飛んで消えてしまうんじゃないかって

 慎重になった、距離を置いた、


⏰:10/09/19 12:54 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#159 [◆It9is9ljoQ]






 それが、間違いだったのだろうか
 重いと、負担だと、感じたのだろうか


⏰:10/09/19 12:54 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#160 [◆It9is9ljoQ]

 

 

 「好きやで、"アイ"」
 
 へらりと、俺は笑った
 最近の笑みは自分でも解るように
 ‥ヘタになった

 愛想笑いは昔から得意だった筈
 なのに、最近の俺はどないしたんや

⏰:10/09/19 12:55 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#161 [◆It9is9ljoQ]





 アイの前では、
 段々笑うんがしんどなった

 解るんやもん、笑った顔見せる度
 つまらなさそうな表情をする様子に

 こないなん、誰が見ても一発や
 俺から離れようとしてるんやって解る

⏰:10/09/19 12:56 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#162 [◆It9is9ljoQ]

 
 頬杖を付き、机を挟んだ手前
 いつものように額へキスを落とした。
 
 漆黒の腰まで伸びた髪が揺れる。
 柔らかくて、艶があって、
 肌の色は透き通っていて
 黒目がちな大きな瞳に長い睫毛
 読んでいた本をぱたりと閉じ顔をあげた

⏰:10/09/19 12:56 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#163 [◆It9is9ljoQ]












 目が、あった
 息を呑むほど綺麗に映った


⏰:10/09/19 12:57 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#164 [◆It9is9ljoQ]






 「なぁー、」
 
 「んー」

 別に、何が言いたかった訳やない
 声が聞きたなった

⏰:10/09/19 12:57 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#165 [◆It9is9ljoQ]





 
 「なぁー、なぁー、なぁー、」
 
 「何よ、どないしたん?」
 
 「好きやで」
 
 「知ってる」
 
 くすりと笑い、長い横髪を耳にかけた
 彼女は決まった台詞で口を開いた。

⏰:10/09/19 12:58 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#166 [◆It9is9ljoQ]




 
 にこにこと笑っていた筈なのに
 それは急に切なくなって、
 やりきれなくなって
 目を細めた、笑えなくなった

 気が付かれたのかもしらへん
 はっとして笑みを作ろうとした

⏰:10/09/19 12:58 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#167 [◆It9is9ljoQ]




 だけど、それよりも前に彼女の口角が
 上がっていくのが解った
 
 無意識なのだろうか、
 こちらをじっとみて
 愛しそうな声で呟いた






「ス・キ」

⏰:10/09/19 12:59 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#168 [◆It9is9ljoQ]

 
 「ね、朔也のいう好きって何?」

 ふと、彼女は口を開いた

 
 「どないしたんや、いきなり」
 
 「答えたくないなら別にええんよ」
 
 「"YES or はい"やん、アイちゃん」

 今日の彼女は、お喋りな気がする。
 急に、ふいに、可笑しな事を聞いた

⏰:10/09/19 13:26 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#169 [◆It9is9ljoQ]



 
 
 
 「せやなあ、傍に居りたいとか
 こうしたいとか」
 
 俺はゆっくり立ち上がれば
 柔らかな笑みを浮かべると机を挟んだ
 彼女の手前、くるりと回り込めば
 ゆっくりと抱きしめた

 彼女の質問の意味をもう一度考えた
 

⏰:10/09/19 13:27 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#170 [◆It9is9ljoQ]


 
 "愛してる"
 
 そう呟くと、
 胸が締め付けられる気持ちになった

 何も言わない彼女に、
 抱きしめる力を強めた

 離れていったりせんといてや、
 それで、そんな自分に苦笑が漏れた


⏰:10/09/19 13:27 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#171 [◆It9is9ljoQ]






 
 
 「で、満足シマシタカ?」

 ふっと笑い、彼女の顔をのぞき込んだ。
 彼女の瞳は冷たくて、
 小さく首を傾げれば
 此方を見て口を開いた

 譫言のように、小さく声を発した

⏰:10/09/19 13:28 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#172 [◆It9is9ljoQ]

 
 「‥‥ね、」
 
 「んー?」








 「一人の寂しさを埋めるためやないん?
 誰でもええ、一人が寂しいから
 二人がいいんやないの?」

⏰:10/09/19 13:29 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#173 [◆It9is9ljoQ]



 のぞき込んで微笑んで見せれば
 思いも寄らない言葉に、息を呑んだ
 
 冗談かと、何を言い出すんだと
 笑えば彼女の瞳は真剣で、俺と目を
 合わせたりする訳やなくて、

 何を言えばいいか、気の利いた言葉すら
 出てこない

⏰:10/09/19 13:29 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#174 [◆It9is9ljoQ]



 
 「せやなあ‥アイちゃん
 ついに本に洗脳でもされたんか?」

 苦笑まじりに、俺は笑った









⏰:10/09/19 13:30 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#175 [◆It9is9ljoQ]



 
 「朔也、終わりしよ」

 向き直って、首を傾げて、
 退屈そうに彼女は笑った。


 「冗、談やろ‥」

 「冗談なんかやないんよ」

 淡々としている、何もかも
 そう、吹っ切ってしまったかのような
 何ももう望んではいない様な瞳で
 はっきりとした口調でそう呟いた

⏰:10/09/19 13:30 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#176 [◆It9is9ljoQ]






 何時やったか、言われた事があった
 
 "一人は寂しい、だから
 二人がいい。それ以上は要らない"

 またあの分厚い本に洗脳でもされたんかって
 そんときは笑い話にして片づけた

⏰:10/09/19 13:30 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#177 [◆It9is9ljoQ]


 それはもう何ヶ月も前の話

 ふわふわとしていて、
 何も考えていないって
 そんな表情ばかりのアイからは
 考え付かない言葉だと、
 その当時はそればかりだった

 もしかしたらその時から、
 彼女はこんな様子だったのかもしれない

 思考は洗脳されていたのかもしれない
 

⏰:10/09/19 13:31 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#178 [◆It9is9ljoQ]

 


 
 
 
 「俺も、二人がええ」

 気休めを、呟いた 

 
 「でも、もう終わり」
 
 「‥俺の何処があかんの?」

 只それはもう彼女には何の意味も
 持たへんくて、もう二度と俺の元には 
 帰ってけーへんって事が嫌でも解った
 

⏰:10/09/19 13:32 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#179 [◆It9is9ljoQ]





 
 
 「何もないんよ」
 
 「じゃあ‥何、やねん
 なあ、急過ぎんねんお前」

 何で、のんびりとした
 恋愛が出来たら俺は
 それだけでシアワセやった

 此奴やって同じなんやないん

⏰:10/09/19 13:32 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#180 [◆It9is9ljoQ]





 束縛やってしてるつもりもない
 負担にならへんようにって、
 何もかも自由に、
 只過ごしてきたんやないん

 問題なんて何一つ無かったんやないん
 お前が居らな、俺は空っぽやねん

⏰:10/09/19 13:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#181 [◆It9is9ljoQ]



 「さよなら」

 穏やかな口調、駄々を捏ねる
 子供を言い聞かせるような優しい声

 辛そうだとか、そんな様子は
 少しも無い

⏰:10/09/19 13:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#182 [◆It9is9ljoQ]


 
 「なあ、理由云うてくれな
 俺どないにも出来ひんやんけ」

 心なしか、声が震える

 
 「嫌い」
 
 「‥‥嫌、い?本間に言うてるん」
 
 「嫌い、笑った顔も
 愛しそうに私を見るその瞳も全部」

⏰:10/09/19 13:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#183 [◆It9is9ljoQ]


 笑みすら無くなった彼女
 出会った時も確か、こんな表情ばかりを
 していたんやっけ。

 懐かん、警戒心剥き出しの
 猫みたいな瞳

 嫌い?笑った顔が‥?
 お前の事を好きやって、
 そう見てた目まで
 全部が嫌いやって、言い切った

⏰:10/09/19 13:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#184 [◆It9is9ljoQ]







 「それ‥どういう意味やねん」
 
 「んー、その通りの意味」

 困ったように笑う、アイ

 何か物足りないと言わんばかりに
 唇に手を当てると、品定めをするように
 俺を見る

⏰:10/09/19 13:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#185 [◆It9is9ljoQ]

 





 「憎んで、憎んで、嫌って?」
 
 目が霞む、視界が狭まる
 
 その代わり只悪魔みたいな笑みを
 浮かべた此奴の姿だけが
 ぼんやりと映りこみ
 楽しそうな表情で此方に近づく

⏰:10/09/19 13:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#186 [◆It9is9ljoQ]

 

 
 
 「お前なんか要らない、そう
 突き放してくれたら私
 朔也のこと好きになるかもしれない」
 
 
 
 
 
 
 
 それが、最後にきいた彼女の言葉
 声、表情、頭に置かれた
 優しい手の感触が最後

 次に俺の目に映った彼女は、
 少しばかり不機嫌そうな顔をした、遺影
 

⏰:10/09/19 13:36 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#187 [◆It9is9ljoQ]


"sakuya" end


〜Season U〜


⏰:10/09/19 13:37 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#188 [◆It9is9ljoQ]







 身内のみで行われた、小さな葬儀

 彼女の死因は紛れもなく自殺なんだと
 思っていた。

 だけど、俺の耳に入ったのは
 事故死という言葉

⏰:10/09/19 14:14 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#189 [◆It9is9ljoQ]


 それを聞いても尚、
 俺は自殺なんじゃないかって、
 遺書か何か残っていないのかと
 彼女の遺品を見せて貰った

 それらしきものは一つもなくて
 彼女の携帯の待ち受け画面には
 笑顔で笑う俺と、ふてくされたようなアイ

 つきあい始めて一ヶ月が経った頃の
 写真だった。

⏰:10/09/19 14:15 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#190 [◆It9is9ljoQ]





 
 「ちょっ、お前何でそんな離れんねん
 俺の顔半分しか写らんやんけ」

 「‥ちょっと、近いって」

 「かまへんわ、はよ‥ほらもっとこっち」


⏰:10/09/19 14:15 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#191 [◆It9is9ljoQ]

 

 何も可笑しい事なんか無かった
 何も変わった事なんて無かった

 その画面から目が、離されへんくなって
 アイのおかんに頼んで、
 使う事がないからいうてその携帯を
 譲ってもうた。

 

⏰:10/09/19 14:16 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#192 [◆It9is9ljoQ]




 葬儀が済んで、家に戻った俺は
 ベットに倒れ込んだ、

 2、3日前、此処に彼奴が来とったせいか
 彼奴の香水の少しツンとした匂いが
 少しベットに残ってて、歯を食いしばった

⏰:10/09/19 14:16 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#193 [◆It9is9ljoQ]



 こないに、都合のええ事があるんか?
 本間に、本間に、

 最初から此奴死ぬ気で、ほら、あれや
 あの分厚い本に洗脳されてもーて

⏰:10/09/19 14:17 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#194 [◆It9is9ljoQ]


 "この世界に興味が
 無くなりました、さよなら"

 っちゅー遺書が
 残ってたって可笑しいない

⏰:10/09/19 14:18 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#195 [◆It9is9ljoQ]



 目から知らず知らずに
 こぼれ落ちていた涙を
 拭くことも忘れて、只俺はぼうっと
 アイの携帯の待ち受け画面から
 目を離さなかった


 知らず知らずのうちに
 瞳は閉じられていて
 気が付けば、意識を手放していた

⏰:10/09/19 14:18 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#196 [◆It9is9ljoQ]




 「自分の髪、偉い綺麗やなぁ」

 「気安く触らんといて」

 「また始まった、ええやん猫ちゃん」

 「煩い、私図書館行くから其処退いて」

 「俺と付き合うてくれるんやったら
 退いたってもえーで」

⏰:10/09/19 14:19 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#197 [◆It9is9ljoQ]


 出会ったんは高校一年の春
 同じクラスになった、猫みたいな女に
 一目惚れした

 口数少ないし、見た目がほんわり
 した黒髪の此奴がどーしても猫にしか
 見えへんくて、俺は毎日ちょっかいばっか
 かけとった

⏰:10/09/19 14:19 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#198 [◆It9is9ljoQ]


 思うたより、よく喋る女で
 イラチの、ぶすっとした懐かん猫
 ‥そのまんまやった

⏰:10/09/19 14:20 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#199 [◆It9is9ljoQ]




 変わった女っちゅーんも知ってた

 いっつも堅苦しい分
 厚い本ばっかり読んで
 ほんまに哲学者に
 なるもんやと思うとったし、

⏰:10/09/19 14:20 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#200 [◆It9is9ljoQ]



 「で、今度は何やねん」

 「朔也は生命は平等やと思う?」

 「はぁ?」

 「平等やないって思うねん、
 せやって、簡単に首締めたら簡単に人は
 逝ってまうし、死刑やってあるやん」

⏰:10/09/19 14:21 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#201 [◆It9is9ljoQ]


 「‥お、おう」

 「もうええわ、朔也に聞いた私が
 阿呆やった、はよ帰ろ」

 「何やねんそれー、俺やて、俺やて
 考えとるっちゅーねん」


⏰:10/09/19 14:21 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#202 [◆It9is9ljoQ]







 恋愛に無頓着やっちゅーんも
 解ってた

⏰:10/09/19 14:22 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#203 [◆It9is9ljoQ]



 「アイ、好きやで」

 「ん」

 「‥って、自分は言うてくれへんの?」

 「せやって、スキなもんスキやし」

 「あぁ、そうなん?」

 「言葉に出す必要あるん?」

⏰:10/09/19 14:22 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#204 [◆It9is9ljoQ]



 「何っちゅーか、安心出来たりするやん
 言葉で聞いたら」

 「朔也って何か女の子みたいな
 とこあんなぁ、スキやなかったら
 付き合うたりせんよ」


 「ずっと一緒に居ろな」

 「死んでも?」

 「あぁ、死んでも死んでも」

⏰:10/09/19 14:23 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#205 [◆It9is9ljoQ]


 「朔也は私が死んだら
 後追うような事するん?」

 「んー?」

 「ずっと、って言葉気休めやと
 思うねん。本間にあんのかな。
 人間って一人になりたくないから
 自分を大事にしてくれる人を探そうと
 するもんなんやろ」

⏰:10/09/19 14:24 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#206 [◆It9is9ljoQ]


 あんときは、本間に此奴
 何処まで考えんねんって、思うた

 軽い付き合いばっかやった俺には
 その言葉が偉い重く感じた

 ずっと一緒に居る、とか
 愛してる、とか

 深く考えて使うた事なんか無かったから
 余計、真っ直ぐなアイを直視したりは
 出来ひんかった

⏰:10/09/19 14:24 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#207 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 目を覚ました。
 
 片手には強く握りしめていた
 アイの携帯。
 
 ストラップもシールも
 何もついとらへん白の折り畳み
 綺麗に使うてるからなんやろか
 目立った傷やて付いてへん
 
 ぼんやりとした頭やて、それを見れば
 アイが死んだんが紛れも無い事実やと
 嫌でも思い出された。

⏰:10/09/20 06:25 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#208 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 何日も、寝られへん日が続いた
 
 やけど俺は夢ん中でだけでも
 あいつに会いたくてしゃあなかった
 
 睡眠薬を飲んだ、薬に頼った睡眠は
 どないにしても
 アイは夢に現れたりせんかった

⏰:10/09/20 06:25 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#209 [◆It9is9ljoQ]


 
 その月は、もう9月やいうのに
 台風が近づいてきてるせいなんか、
 アイが泣いとるんか、毎日が雨やった



 
 「梅雨みたいやわ、」
 
 アイが1番好きや、いうとった季節
 

⏰:10/09/20 06:26 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#210 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 「うーわ、雨やんけ」
 
 「もう梅雨の時期やで」
 
 しとしとと止む事のない雨に
 俺はしかめっつらをして、部屋から
 見える窓の外の雨に溜息を零した
 
 そんな俺とは裏腹に、窓に張り付いて
 じっと、少しばかり嬉しそうな
 表情を混ぜたアイはふふっと笑みを
 零した。偉く機嫌がいい

⏰:10/09/20 06:27 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#211 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「何やねん、きっしょ
 雨やで?」
 
 「この季節が1番好きやねん」
 
 「病んでんなー、でもお前
 雨ん中びしょ濡れで立ってそうやもん」
 
 「阿呆‥なぁ、傘さして
 ちょっと外に出てもええ?」
 
 「はぁ?わざわざ風邪引きに行くん」
 
 「紫陽花、見に行きたいねん」

⏰:10/09/20 06:28 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#212 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 ぼつりと呟いたアイを連れて
 家の近くにある花壇にしゃがみこんだ
 
 色とりどりの紫陽花、
 何にも興味の沸かん俺とは別に
 ずっと紫陽花をアイはぼんやりと
 見つめとった
 
 
 

⏰:10/09/20 06:28 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#213 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「ほな帰ろか、そろそろ風邪引く」
 
 「ん」
 
 「満足したんー?」
 
 「なぁ、紫陽花の花言葉知ってる?」
 
 花を見てた筈のアイが
 顔をあげて俺を見とった。
 
 どきりとして、視線を逸らしてしまう
 そして、すぐに苦笑すれば
 何ていうん?と口を開いた
 
 

⏰:10/09/20 06:28 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#214 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「アナタは冷たい」
 
 何かを諦めるかのように
 笑うアイに俺は何も言えへんかった




⏰:10/09/20 06:29 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#215 [◆It9is9ljoQ]


 「雨は嫌いや」

 歯を食いしばって
 溢れそうな涙を堪える

 格好悪、そう言い聞かせて
 俺はゆっくりと立ち上がり洗面所へ
 向かった


⏰:10/09/20 06:30 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#216 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 鏡に写ったんは
 窶れた顔して、目の下に偉い隈
 作った俺の姿やった。
 
 思い返せば可笑しい点は
 いくつもあった
 
 只それを、可笑しいとは
 思うたりせんくて、
 
 変わった女で片付けとったんや。
 日常が麻痺しとった

⏰:10/09/20 22:22 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#217 [◆It9is9ljoQ]





 

 
 「時々、むっちゃ
 朔也のことが嫌いになるねん」
 
 「そら困るわ」
 
 「困る?」
 
 「おん、俺はアイが好きやから」
 
 「へぇ」

⏰:10/09/20 22:40 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#218 [◆It9is9ljoQ]




 
 
 彼女は、変わっとった。
 
 ノリが悪いわけやない
 (けしてノリがええ訳でもない)
 
 コントローラーを渡せば、
 何時間でもやり込むし、
 甘いもんを差し出せば微笑んで
 口に運び、間食する
 

⏰:10/09/20 22:41 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#219 [◆It9is9ljoQ]







 時々奇妙なことを尋ねれば
 満足したように笑うんやった



⏰:10/09/20 22:53 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#220 [◆It9is9ljoQ]

 


 
 「あの子、最後まで
 俺には理解出来ひん子やったわ。」
 
 で、少しは整理出来たんか?
 そう穏やかな声が受話器越しに聞こえる
 

⏰:10/09/20 23:15 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#221 [◆It9is9ljoQ]

 
 「‥いや、変わらへん。少しもや
 あかんなー、あいつな
 俺の頭ん中から片時も離れてくれへん」
 
 「もう二週間、か」
 
 「実感がな、沸かへんねん。
 いつもみたいに会える気ぃして
 メールが、電話が来る気がして」
 
 苦笑した俺は、譫言のように
 呟いていた。

⏰:10/09/20 23:15 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#222 [◆It9is9ljoQ]




女々しい、そう呼ぶのだろうか
でも、それでも構わんかった


⏰:10/09/20 23:16 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#223 [◆It9is9ljoQ]




 「様子が可笑しかったとか、遺書とか
 それらしきもんは一つも?」
 
 「あぁ、家では
 見つかってへんみたいやわ」
 
 「携帯ん中は?」
 
 「携帯?」
 
 「1番自分が肌身離さず持っとるんは
 携帯な筈やろ?残ってないん
 メモとか、未送信メールとか」

⏰:10/09/20 23:16 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#224 [◆It9is9ljoQ]



 
 一樹は、そう口を開いた。
 遺言無しにぽっくり死ぬかいな、そう
 小さく呟き確認したんか、とだけ続け
 た彼は二言三言続け、電話を切った
 
 考えもしぃひんかった、
 彼女の携帯電話は待ち受け画面にしか
 手をつけたりせんくて
 震える手で、携帯電話を開いた

⏰:10/09/20 23:19 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#225 [◆It9is9ljoQ]





 
 笑顔の俺と、不機嫌そうなアイの姿
 それを見てしまえば
 
 踏み込む勇気が、手の震えが
 とまらへんくて、うなだれるように
 ベッドに横になった

⏰:10/09/20 23:21 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#226 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「‥‥、アイ」
 
 小さく口を開いた
 息がしにくい、ゆっくりと
 開いた未送信ボックスには
 
 "朔也"
 
 
 
 
 そうタイトル付けられた
 メールが1件
 
 

⏰:10/09/20 23:21 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#227 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「朔也が好き、大好き。」

 そう、始まった文章に
 周りが少しずつ音を無くしていった








⏰:10/09/20 23:36 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#228 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 朔也が好き、大好き。

 正確に云うと朔也の悲しそうな顔や
 苦しそうな顔や、泣いた顔が好き
 
 こんな事を言う私に朔也はまた
 本に洗脳されたん?って
 言うたりするんやろうな(笑)




⏰:10/09/20 23:37 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#229 [◆It9is9ljoQ]







 
 昔は私朔也の笑うた時に
 周りが花に溢れるような笑顔が
 ほんまに大好きやったんやで

⏰:10/09/20 23:38 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#230 [◆It9is9ljoQ]




 
 
 それが、何時からなんかな
 それだけじゃ物足りひんくなって
 私の事で頭がいっぱいになればいい
 そう考えるようになってん。
 
 喧嘩したら、苛立ちでも
 私のことで頭いっぱいになるやろ?
 私が別れようっていうたり
 そっけなくしたりしたら
 不安で胸が押し潰されそうになるやろ?

⏰:10/09/20 23:38 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#231 [◆It9is9ljoQ]



朔也を私でいっぱいにしたくなった。



⏰:10/09/20 23:39 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#232 [◆It9is9ljoQ]





 
 好きって何?
 そう聞いた事があったやんな
 私が異常なんか、怖くなって
 確かめたくなった。
 
 朔也がいった、傍に居りたいとか
 抱きしめたいとか
 そんなものは一つも、私の理想の
 恋愛の中には無かったんよ。
 

⏰:10/09/20 23:40 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#233 [◆It9is9ljoQ]

 

 
 


 やから、一緒に居たら
 私はもっと朔也を泣かせてしまうし
 
 朔也がしんどくなってしまう。
 
 私はそれを喜ぶから。
 嫌いって、そう突き放された方が
 愛しさが増すから
 
 私らは一緒に居たらあかんのよ。

⏰:10/09/20 23:40 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#234 [◆It9is9ljoQ]



 
 だからサヨナラ
 リセットしたくなった、ゲームみたいに
 
 なにもかも、朔也のことも
 忘れたくなった
 
 こんな私を嫌って憎んで。
 朔也がそうしてくれたら私
 
 多分ずっと朔也を愛してる
 
 

⏰:10/09/20 23:40 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#235 [◆It9is9ljoQ]



醜い私はね、きっと
朔也を手放したりしたくないから

縛り付けていたいから
永遠に、

だから私、サヨナラを選ぶの

⏰:10/09/20 23:41 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#236 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 
 
 
 そう微笑んで、メールを打ち終わった
 私は道路へと足を進めた
 
 きっと私、これで満たされるの
 
 

⏰:10/09/20 23:44 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#237 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 きっと彼は気付くでしょう
 
 私の目論みに。
 
 それでも構わない
 終わりがあるって、永遠なんて
 信じられない私は 自分から
 断ち切る事を選んだ
 

⏰:10/09/21 00:03 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#238 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
  
 
 
 人間はエゴの塊
 追い詰められるとその部分が
 剥き出しになる
 
 表面やたてまえの上では
 誠実でありたい、理性的でいたい
 

⏰:10/09/21 00:03 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#239 [◆It9is9ljoQ]

 




 
 どんなにエゴイストになりたくても
 
 きっと私には無理、
 
 絶対に無理
 

⏰:10/09/21 00:04 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#240 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 さて、問題です。
 
 どうして人は尚、エゴイストに
 なりたいのにも関わらず
 弱い自分を取り繕うのでしょうか。
 
 

⏰:10/09/21 00:04 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#241 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 
 愛してるから 
 
 相手に染まってしまうから
 
 
 
 いつのまにか他人なんて、
 相手なんかを

 蔑ろに
 出来なくなってしまうから
 
 
 
 
 

⏰:10/09/21 00:05 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#242 [◆It9is9ljoQ]


可笑しいのかもしれない

だけど、私なりの恋が

解った気がした


⏰:10/09/21 00:06 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#243 [◆It9is9ljoQ]





 今日も雨、

 梅雨になれば貴方は私を
 また、思い出して
 苦しんでくれるのでしょうか


⏰:10/09/21 00:07 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#244 [◆It9is9ljoQ]



end


⏰:10/09/21 00:08 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#245 [◆It9is9ljoQ]

 あとがき

 
 無事完結致しました
 
 至らぬ点ばかりでの誤字、脱字、
 上手く頭の中で纏めることが出来ず
 非常に読みにくい文章になってしまい
 読者様には申し訳なく思っております
 
 朔也の"その後"は
 読者様にお任せ致します。
 
 読んで下さった方
 真に有難うございます
 
 暗くて、しんみりとした
 物になっておりますが作者の私の
 思考が詰まっており
 実話を混ぜたものになっています
 
 言わば、私のもう一つの生き方に
 しようとしていたものになります
 
 書く事により、私自身の整理を
 することができました。
 
 また、お会い出来ればと思います
 有難うございました
 
 
 

⏰:10/09/21 00:14 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#246 [◆It9is9ljoQ]


安価

>>1-244


⏰:10/09/21 00:27 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#247 [◆It9is9ljoQ]


 あげ

⏰:10/09/23 08:33 📱:SH706i 🆔:mpA5HTE6


#248 [我輩は匿名である]
この物語りの雰囲気が
すごく、気に入りました。

⏰:10/10/02 11:56 📱:SH706i 🆔:vhjyYOnI


#249 [我輩は匿名である]
自演?w

⏰:10/10/02 13:36 📱:SH003 🆔:NzASEzbI


#250 [我輩は匿名である]
>>249
わー!!!;;
自演じゃないです!
主さんと携帯が同じだったんですね…。

主さん、不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした;;

⏰:10/10/03 01:09 📱:SH706i 🆔:PGX3rGJ.


#251 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/23 20:02 📱:Android 🆔:Oa43ZxSI


#252 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30

⏰:22/10/23 20:06 📱:Android 🆔:Oa43ZxSI


#253 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>220-250

⏰:22/10/23 20:06 📱:Android 🆔:Oa43ZxSI


#254 [ん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/26 10:44 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


#255 [ん◇◇]
>>240-260

⏰:22/10/26 10:44 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


#256 [ん◇◇]
>>270-300

⏰:22/10/28 08:26 📱:Android 🆔:HDgsN/jU


#257 [ん◇◇]
>>1-100

⏰:22/10/28 08:31 📱:Android 🆔:HDgsN/jU


#258 [ん◇◇]
>>100-245

⏰:22/10/28 08:31 📱:Android 🆔:HDgsN/jU


#259 [ん◇◇]
>>1-30

⏰:22/10/28 08:34 📱:Android 🆔:HDgsN/jU


#260 [ん◇◇]
>>30-60
>>60-90
>>90-120
>>120-150

⏰:22/10/28 08:35 📱:Android 🆔:HDgsN/jU


#261 [ん◇◇]
>>150-180
>>180-210
>>210-240
>>240-270

⏰:22/10/28 08:35 📱:Android 🆔:HDgsN/jU


#262 [ん◇◇]
>>210-240

⏰:22/10/28 08:36 📱:Android 🆔:HDgsN/jU


#263 [ん◇◇]
>>210-250

⏰:22/10/28 08:36 📱:Android 🆔:HDgsN/jU


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