レイン
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#1 [◆It9is9ljoQ]


踏み外せない、踏み外さない

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⏰:10/09/17 17:47 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#2 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 人間はエゴの塊
 追い詰められるとその部分が
 剥き出しになる
 
 表面やたてまえの上では
 誠実でありたい、理性的でいたい
 
 

⏰:10/09/17 17:49 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#3 [◆It9is9ljoQ]






 
 どんなにエゴイストになりたなくても
 
 きっと私には無理、
 
 絶対に無理
 
 

⏰:10/09/17 17:50 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#4 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 さて、問題です。
 
 どうして人は尚、エゴイストに
 なれないと解っていて
 取り繕うのでしょうか。
 
 
 

⏰:10/09/17 17:50 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#5 [◆It9is9ljoQ]



 
 「"アイ"」
 
 そうふわりとした柔らかな声に呼ばれ、
 私は無意識にゆっくりと顔をあげた
 
 彼の瞳は、ゆらゆらと―――‥
 
 
 「阿呆、何見とんねん」
 
 くすりと笑った。
 彼が笑うと、その表情で周りはまるで
 花に溢れたようになる
 
 そんな笑い

⏰:10/09/17 17:51 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#6 [◆It9is9ljoQ]



 はっとした。
 音が消えていた私の脳内に
 ようやく音が戻ってきた

 時刻は5時を過ぎた所、
 窓の外から聞こえる、運動部の掛け声

⏰:10/09/17 17:51 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#7 [◆It9is9ljoQ]

 
 「いや、何もない」
 
 そういって手元にあった本を
 閉じれば頭上から手が伸びてきて
 ひょいとそれを掴んだ

 「っ、と‥またくっそ真面目な本読んで
 自分哲学者にでもなるん?」
 
 「好きなんよ、はよ返して」

 けらけらと笑い出す彼から本を
 取り返せば制鞄へと終い、席を立つ

⏰:10/09/17 17:52 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#8 [◆It9is9ljoQ]


 先に教室を出ようとすれば
 先程と変わらぬ、見なくても解るような
 笑みを張り付けてにたにたと
 私の後ろを追っている。

 「怒んなやー、ごめんって。
 今日お前俺んちで飯食うて帰るやろ?」

 「せやね」
 
 「‥っぷ、そこ偉い素直やん」
 

⏰:10/09/17 17:52 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#9 [◆It9is9ljoQ]





 
 上機嫌な彼と並んで歩く。
 
 朔也と付き合い始めて今月で半年。
 ちらりとふいに彼へ視線を向けた。

 色素の薄い金色の髪
 毎朝器用に熱しているのであろうにも
 関わらず、まるで傷んだようには
 見えない彼の外ハネの髪は
 放課後になっても継続している様
 

⏰:10/09/17 17:53 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#10 [◆It9is9ljoQ]



 彼のことは、どちらかと云えば好き
 恋愛対象ではある、筈
 愛してるといわれれば私もだと云う
 
 抱きしめられれば、背中に腕を回す
 
 キスをせがまれれば、それに応える
 

 ごく、自然なカップルである。
 
 只彼が不意に、稀に、汚れてみえる
 
 

⏰:10/09/17 17:54 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#11 [◆It9is9ljoQ]


それは自分がいかに綺麗かと
いう訳じゃない
 
只、凄く汚れて見える彼が

私の視界に写れば
酷く滑稽にみえてしまう。


⏰:10/09/17 18:00 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#12 [◆It9is9ljoQ]



 
 「"アイ"、むっちゃ好きやで」
 
 彼の部屋に着いた瞬間
 彼は後ろから私を抱きしめる
 
 抱きしめて、しがみついて
 首筋に舌を這わせる
 
 それをいつものことだと言わんばかりに
 私は只々それを受け入れる


⏰:10/09/17 18:01 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#13 [◆It9is9ljoQ]

 
 やっぱり、貴方を汚れたように思う
 
 愛だとか、愛しい気持ちだとか
 離さないで欲しい、とか
 傍に居たい、傍に居てほしい
 
 なんて
 
 なにひとつ沸いて来やしない
 

⏰:10/09/17 18:02 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#14 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 行為自体、好ましくはない。
 只、彼が求めるから応えるだけ
 
 所謂、私には愛がないのかもしれない
 
 "人を愛し、人にも愛されるように"
 そう名付けられた名前とは
 まるで正反対の人間になってしまった様
 
 

⏰:10/09/17 18:06 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#15 [◆It9is9ljoQ]

 
 私は知ってる、
 彼が私だけを見ていない事
 
 抱きしめられた時に伝わる彼の体温も、
 柔らかな髪も、花のようなその笑みも

 私だけのものじゃないって事を。
 
 
 
 もう一つ、
 
 その原因が私だということも
 何もかも解っている。
 
 

⏰:10/09/17 18:07 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#16 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「やから、こうやって!
 ちゃうちゃう、右!そっちは左!」
 
 「あーもう煩い、静かにしてや」

 「お前絶対免許取らん方がええ」

 「普通の道路にバナナの皮なんか
 落ちてへんよ」
 
 
 彼の間に挟まれて、もう数時間。
 彼の予定では
 今夜は朝までゲームらしい。

⏰:10/09/17 18:16 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#17 [◆It9is9ljoQ]


 
 私の自宅は彼の済むマンションから
 徒歩で15分程の所。
 帰りが遅くなろうとも焦る距離ではない
 終電に乗り遅れることもない
 泊まりにでようが、親は夜勤
 
 幸い明日は学校も休みで
 朝方まで彼の部屋に居ることになる。

⏰:10/09/17 18:37 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#18 [◆It9is9ljoQ]


 風呂に入ってくる、と言い残して
 部屋を出た彼を見送って
 ソファーへと移動した私は無防備にも
 放り出された彼の携帯電話に
 視線をやる
 
 
 慣れた手つきでそれを手に取れば
 ロックすらかかっていない
 メールフォルダに目を通す

⏰:10/09/17 18:38 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#19 [◆It9is9ljoQ]

 
 芹沢 なのは
 
 受信ボックス、明朝体の字で
 並んだその名前
 
 "ハートマーク"の絵文字
 目がちかちかする
 
 私が使うことのない、カラフルな絵文字
 
 私が打つことのない、愛してるの文字
 

⏰:10/09/17 18:38 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#20 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 それらが
 
 ざっと私の名前を挟んで数十件
 
 
 「だあいすき、はよ会いたい」
 
 「ぎゅってされな寝られへん」

 「次は何時泊まり来れるん?」

⏰:10/09/17 18:39 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#21 [◆It9is9ljoQ]


 
 芹沢なのは、
 
 芹沢なのは、
 
 芹沢なのは、
 
 聞き覚えのない名前、
 他校の女子生徒だろうか
 

⏰:10/09/17 18:39 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#22 [◆It9is9ljoQ]

 
 はじめに彼の携帯を見たのは二ヶ月前
 
 不意に、出来心だった
 
 ショックだとか、最低だとか
 その前に沸いて来たのは

 "あぁ、やっぱり"
 
 
 
 諦めだった。
 

⏰:10/09/17 18:39 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#23 [◆It9is9ljoQ]

 
 相変わらず彼女との関係は
 続いているようだ

 絶望感はない
 逆に少しの安心
 
 きっと彼も私がメールを
 見たことを知っている、もしくは
 見られたがっている。
 
 普通ならロックなり何なりつける筈
 
 元にあった場所に携帯を
 直すと、私は溜息を一つ零した
 

⏰:10/09/17 18:44 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#24 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 
 彼と別れず付き合っているのは
 彼が私の寂しさを埋めてくれるから。
 
 依存している。
 朔也にではなく、"彼氏"に。
 

⏰:10/09/17 18:44 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#25 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 多分きっと、彼もそうじゃないのか
 
 私だけの温もりじゃ
 きっと足りないから
 
 他を探してる。

 "君じゃなきゃ駄目"なんて
 君は嘘つかないから
 
 

⏰:10/09/17 20:12 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#26 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「暑、たーだーいーま。
 アイも風呂入って帰るん?」
 
 「私はええよ、着替えないし
 帰って化粧落としたりしやなあかん」
 
 「ほんならもっかい!
 今度こそみっちり教えたるわ」

 
 ふっと笑って、私の額にキスを落とすと
 私の隣に腰を下ろした。

⏰:10/09/17 20:18 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#27 [◆It9is9ljoQ]

 
 何も変わらない
 芹沢なのはに嫉妬もない
 
 次の瞬間には
 私の頭の中から彼女の存在なんて
 
 遠に消えていた
 
 そんなもの
 

⏰:10/09/17 20:18 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#28 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 帰路についた、
 玄関を開ければ薄暗い
 
 当たり前だろう、もう翌朝の6時前
 母子家庭、只でさえ寂しい親一人
 子一人、母親が戻るまで後1時間弱
 
 その間にシャワーを浴びて
 ベッドに入る

⏰:10/09/17 20:23 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#29 [◆It9is9ljoQ]
 

 疚しいことがある訳じゃない
 実質この朝帰りがばれた事も
 数えきれない
 
 叱られることもない、
 だけど最近じゃこうして
 誰も居ない家に戻ることで
 
 ほっとしていた

⏰:10/09/17 20:23 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


#30 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 ベッドに入り、不意に思い出す、
 手と手が触れ合った感触
 
 キスなんかよりも、sexなんかよりも
 私にとっては大事な愛情確認
 
 17になったばかりの私には
 身体で感じる温もりなんか要らなかった
 

⏰:10/09/17 20:39 📱:SH706i 🆔:DNLPCdoc


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