レイン
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#100 [◆It9is9ljoQ]






 だから、
 そんな安堵をくれるメールすら疎ましい

 都合の良い存在
 アイがくれない"愛情"、それを
 違う誰かから貰う

⏰:10/09/19 08:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#101 [◆It9is9ljoQ]



 それで満たされていた
 それで、不安を取り除いていた

 何度も言うように、俺はアイが好き。

 自分ばかりが此奴に嵌って堕ちている
 まぎれもなくそうなんだろう
 やから、本当は
 愛されていないんじゃないかと
 いう不安を取り除くために、女を使った

⏰:10/09/19 08:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#102 [◆It9is9ljoQ]



 ぼんやりと、アイは青に点滅している
 俺の携帯に視線をずらす。

 見られても何も問題なんてない
 むしろ、見て欲しいとすら感じとった

⏰:10/09/19 08:36 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#103 [◆It9is9ljoQ]


 嫉妬、という感情が此奴にあるんなら
 それを引き出したいと思った

⏰:10/09/19 08:36 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#104 [◆It9is9ljoQ]




 泣いて縋る此奴が
 何処かで見られればいい
 そんな事を思うてた

 異常なんやろか、此奴以上に俺は。

 好きやから、嫉妬してほしい
 好きやから、俺の為に泣いて欲しい

⏰:10/09/19 08:37 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#105 [◆It9is9ljoQ]


 簡単に云うたら、
 愛されてるっちゅー証が
 欲しかったんやって思う。

⏰:10/09/19 09:00 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#106 [◆It9is9ljoQ]



 「やから、こうやって!
 ちゃうちゃう、右!そっちは左!」

 「あーもう煩い、静かにしてや」

 「お前絶対免許取らん方がええ」

 「普通の道路にバナナの皮なんか
 落ちてへんよ」

 股の間に、すっぽりとアイは納まる
 コントローラー強く握り過ぎや、つーか
 持ち方が独特やねん、

⏰:10/09/19 09:01 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#107 [◆It9is9ljoQ]


 もうどんぐらいゲームしてんねやろ

 気ぃついたら9のとこにあった
 時計の短い針はもう11を
 過ぎたとこになっとった

⏰:10/09/19 09:02 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#108 [◆It9is9ljoQ]


 明日は学校も休み、天気は曇りやっけ
 快晴やないし外なんか
 よー出る気が起きん

 此奴が帰る言い出したら送って、
 ほんでから
 明日は昼までゆっくりして、
 また家に呼んだらええわ

⏰:10/09/19 09:02 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#109 [◆It9is9ljoQ]



 「よっこらせ、っと…
 俺風呂いってくる」

 「んー」

 「精々バナナで転ばんようにな」

 「煩い」

 「目疲れたらベットに横なっとき」

 「ん」

 コントローラーから目を離さないアイに
 小さく笑みをつくれば部屋を出た、

⏰:10/09/19 09:04 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#110 [◆It9is9ljoQ]



 次の日、目が覚めたら
 窓にはびっしり水滴がついとった、

 いつもならこの時間いうたら
 電気つけんでも明るいのに、
 今日はどうも薄暗い

 雨降ってるわ。
 …あーもう、気ぃ怠い

⏰:10/09/19 10:30 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#111 [◆It9is9ljoQ]





 携帯を開くと
 待ち受け画面には何のアイコンも
 残っとらへん、彼奴まだ寝てるんか

 取り敢えず電話いれたけど、
 出よらへん

 メールだけ入れ取ったら
 連絡来るやろ。
 枕を抱き込むとその上に頭を置いた

⏰:10/09/19 10:31 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#112 [◆It9is9ljoQ]



 「‥‥‥、」

 雨やと憂鬱なる、
 ほんで隣に居てへんってなったら
 また寂しいなってしゃあななるねん。

 こんな事ちっとも
 彼奴は思うてへんやろうけど…

⏰:10/09/19 10:31 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#113 [◆It9is9ljoQ]




 此奴には人一倍、
 優しいしてるつもりや

 怒った事なんて
 数える程しかない

 手上げるなんてとんでもない

 やけど、
 此奴は一向に靡いたりせん。

⏰:10/09/19 10:31 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#114 [◆It9is9ljoQ]


 優しいして甘うして
 俺から離れられんようにって
 しとるつもりやのに、

 こいつは空気みたいに
 ふんわり飛んでいきよる

 離れていく様子もないし、
 嫌われてる様子もない

⏰:10/09/19 10:32 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#115 [◆It9is9ljoQ]




 ………、どないしたええねん
 俺は恋愛に刺激なんか要らん

 只ゆっくりゆっくり
 毎日一緒におれたらええ

 それだけやねん

 それ以上なんか要らん


⏰:10/09/19 10:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#116 [◆It9is9ljoQ]






 〜♪

 アイやって解るよう指定しとる
 着信音が鳴った

 偉い大きい音で。
 寝てしもうても出られるようにって

 「やっとかかってきたわ、
 おはよーさん」

⏰:10/09/19 10:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#117 [◆It9is9ljoQ]


 「んー」

 まだ寝ぼけとるんか、
 小さい声で唸りよる此奴に
 愛しいわ、って笑みが漏れた

 そんな些細な事で俺は満たされとる

⏰:10/09/19 10:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#118 [◆It9is9ljoQ]



 「相変わらず低血圧やなー
 ちゃんと寝れたん?」

 「んー」

 「今日雨やしどっこも
 出かけられそうないしDVDでも
 見にけーへん?」

 ベットから起きあがって、
 クスクスと笑う

 はよ会いたい、只それだけ
 はよ会いに来て、顔みたいわ

⏰:10/09/19 10:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#119 [◆It9is9ljoQ]




 「今日はやめとくわ」

 予想外の言葉に、
 俺は一気に寂しいなった

 動揺も隠されへん

⏰:10/09/19 10:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#120 [◆It9is9ljoQ]



 「‥‥は?本間に言うてるん?
 熱出ても会いにきとったお前が。
 今度こそ風邪でも引いたん?」

 「読みかけの本溜まってるし
 またにする、」

 「あー‥さよか
 ほなまた学校でやな」

⏰:10/09/19 10:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#121 [◆It9is9ljoQ]








 電話を切った、
 無性に‥やりきれんなった

 直ぐに都合のええ女に、無意識に
 芹沢なのはに、連絡を取った

⏰:10/09/19 10:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#122 [◆It9is9ljoQ]



 「何で昨日メール
 返してくれへんかったん?」

 甘い声、甘い香水の匂い

 アイはこないにして話はしよらん
 何で?なんていう束縛地味た言葉は
 一切使われたことない



⏰:10/09/19 10:37 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#123 [◆It9is9ljoQ]




 「あぁ、見てへんかった」

 「じゃあ何で今日電話くれたんっ?」

 「別に何やったってええやん、
 はよやらせてや」

 肩にすりよせる此奴に小さく笑った
 その笑いは、自分への嘲笑


⏰:10/09/19 10:38 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#124 [◆It9is9ljoQ]


 「なぁ、次何時会える?」

 「また連絡するわ」

 「ほんま気まぐれやねんから‥うち、
 いつでも待ってるし連絡してな?
 朔くんの為やったら時間あけるから」

「ほなまた」

 下着姿のまま甘い声を出すこの女を
 一度も振り返る事なく部屋を出た

⏰:10/09/19 10:40 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#125 [◆It9is9ljoQ]


 いつまでこんなん続けんねやろ

 何度もこの女が言うた「愛してる」に
 安堵してる自分に一番苛立った


 携帯を開けば、
 やはり目立ったアイコンは無い

 それがまた、
 余計に俺を虚しくさせた

⏰:10/09/19 10:40 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#126 [◆It9is9ljoQ]





 「今日どないする?
 新しいゲーム買うてんけどやりに
 来ぇへん?アイが出来るよう
 簡単モードにしたるし」

 「今日は帰るわ、また誘って」

 「読みかけの本でもあるん?」

 「そうそう」

⏰:10/09/19 10:42 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#127 [◆It9is9ljoQ]



 「またあの堅苦しい本け?
 そないなん読んどったら自分
 いつか洗脳されてまうで」

 「それはそれでいいかもしらへんわ、
 じゃあまた明日」

 手を振って、ふわりと笑う
 此処最近のアイは生き生きしてるように
 見えるんは気のせいなんか

⏰:10/09/19 10:44 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#128 [◆It9is9ljoQ]



それと裏腹に、此奴は俺との時間を
段々減らしていきよった


⏰:10/09/19 10:44 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#129 [◆It9is9ljoQ]


 会うんは放課後と行きしだけ。
 クラスがちゃうから、って何時もは
 昼休み俺が顔出しにきて話しよるのに
 昼休みは教室にすら居てへん

 顔が見たくて、どーせまた一人で
 図書館やろ、
 思うて向かうたって居らへん

⏰:10/09/19 10:45 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#130 [◆It9is9ljoQ]




 友達は比較的少ない
 女子特有のグループ行動なんか
 してる様子なんか見えへん

 それは彼奴が一番苦手なようにも
 みえるし、俺と付き合うてることすら
 苦手なんやないかって思うて
 前に聞いてみたらそんな事はないって
 いいよった、けど。

⏰:10/09/19 10:45 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#131 [◆It9is9ljoQ]




 「どないしてん、
 ついに振られたんか?」

 「そんなんちゃうわ、
 なぁ一樹、アイ‥見てへんか?」

 「見辺らへんのかいな
 せやなぁ‥図書館とかに
 転がってそうやんか、あの子」

⏰:10/09/19 10:47 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#132 [◆It9is9ljoQ]


 「アイの事何やと思うてんねん、阿呆
 それが居てへんねん」

 「そういや昼は一緒やないなぁ
 自分らが一緒に居るとこ
 最近見てへんし」

 「‥‥‥」

⏰:10/09/19 10:48 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#133 [◆It9is9ljoQ]






 「やっぱ、振られたんや」

 「行き帰りは変わった様子ないねん」

 「ほなあれや、委員会とかちゃうん
 あの子逐一報告するタイプちゃうやろ
 あんま心配せんでも放ってたら
 戻ってくるやろ、どんと構えときぃや
 飼い主さん」

 けらけらと笑う友人に、
 俺はやっぱ考えすぎか、と予鈴と共に
 席へと戻った

⏰:10/09/19 10:48 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#134 [◆It9is9ljoQ]



 「アイちゃん
 今日ケーキ食いに行こや」


 「アイ〜、はよ帰るで」


 「せや、映画のチケット!
 手に入ったんやで、あれやん
 アイがぼーっと見とった奴の続編」

⏰:10/09/19 10:50 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#135 [◆It9is9ljoQ]




 「なあなあアイちゃん
 明日どっか行かへん?」

 悉く振られ、やけど毎日のように
 俺はアイとの時間を
 作ろうって必死やった

 生き生きしとった筈の
 アイが段々また、いつもみたいな
 表情に変わっていくんが
 日に日に手にとるように解った

⏰:10/09/19 10:51 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#136 [◆It9is9ljoQ]

 







 
 「話、あんねやけど」
 
 苛立った声を隠し、
 ぎこちない笑みを浮かべた

⏰:10/09/19 12:12 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#137 [◆It9is9ljoQ]


 放課後の教室でアイは
 相変わらず窓側の一番端の席に
 ぽつんと腰を下ろして本に没頭していた


 それは彼女が不審な行動を取り始めて
 2週間が経った頃。




⏰:10/09/19 12:13 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#138 [◆It9is9ljoQ]


 
 他の女と居ったって寂しさは紛れん

 好きやって囁かれる度に
 逆に、その声がアイと重なって
 息をする事すら
 器用に出来ひんなってしもた

 やから、何言われても
 向き合う覚悟で口を開いた

 

⏰:10/09/19 12:14 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#139 [◆It9is9ljoQ]



 
 「何?」

 顔を上げた彼女は何時もと変わらず
 何も考えていないんじゃないかって
 いうくらいに大人しい声で口を開いた。
 


 「"アイちゃん"俺に最近冷たない?」
 
 「冷たいんは今始まった事やないやん」
 
 どしたの、いきなり。とクスリと笑みを
 漏らした彼女に苛立ちが起こる

⏰:10/09/19 12:14 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#140 [◆It9is9ljoQ]




 俺の苛立っている原因を、此奴は
 解ってるんじゃないのか
 わざとこうして俺の心を揺さぶるような
 事をして楽しんで居るんじゃないか

 そんな考えばかりが脳裏を掠めた


⏰:10/09/19 12:14 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#141 [◆It9is9ljoQ]




 
 「そんなん言うてるんちゃうわ」
 
 苛立った声、違う、
 こんなつもりじゃなかった

 苦痛に顔を歪める、ソレとは裏腹に
 また、この表情

 此奴はふわりと笑った
 とても綺麗に、生き生きとした笑み

⏰:10/09/19 12:15 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#142 [◆It9is9ljoQ]


 
 「何が可笑しいねん」

 気が付けば、俺の声は小さく震える

 
 「なあ、何が可笑しいねんって
 言うてんのが聞こえへんのか!」




 
 ガタ―――‥
 
 鈍い音がして、近くにあった椅子を
 手にとれば音を立て床にたたき付けた

⏰:10/09/19 12:16 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#143 [◆It9is9ljoQ]


 びくりと、肩を振るわせたアイはまた
 可笑しそうに笑った

 本間に此奴、洗脳されたんちゃうか
 何が面白いねん。
 

⏰:10/09/19 12:16 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#144 [◆It9is9ljoQ]



 「何やねん、お前‥最近可笑しいわ
 どないしてん、何かされたんか!?」
 
 彼女に近づけば肩に手を置いた
 強く揺すれば、
 揺するほど肩を振るわせて
 この女は笑いよる。

 絶望、一人きり取り残されたと
 言わんばかりに悲しそうな目をした
 俺の手前
 やはり浮かぶのは笑みだけ。

⏰:10/09/19 12:17 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#145 [◆It9is9ljoQ]





 幸せそうな、笑み
 その意味が俺には解らへん
  


⏰:10/09/19 12:17 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#146 [◆It9is9ljoQ]


 
 「‥‥もう、冷めたん?」
 
 「そんなんやないよ」
 
 「じゃあ何やねん!何でそんなんやねん
 お前が無愛想なんも今始まったこと
 ちゃうんも解ってるわ、」
 
 「うん」
 
 「でも、何時もとちゃう」
 
 「うん」

⏰:10/09/19 12:17 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#147 [◆It9is9ljoQ]



 
 「不安やねん、お前が、アイが
 どっかに行ってまいそうで怖いんや。
 俺どないしたらええんか解らんわ」




 
 しゃがみ込んで震えがとまらん。

 依存でもええ、何やってええ
 自分一人が堕ちてったってかまわへん

⏰:10/09/19 12:18 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#148 [◆It9is9ljoQ]







 愛しくて、たまらん
 傍に居てくれな俺は壊れてしまう

⏰:10/09/19 12:18 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#149 [◆It9is9ljoQ]


 小さな笑みを浮かべたアイ
 表情はとても優しい、すたすたと
 近づいてくれば背伸びをして、

 俺をそっと抱きしめた、
 好きだよって微笑んだ



 俺の心は段々満たされてって
 アイはアイで何か心境の変化が
 あったんか、幸せそうな顔をしよる

⏰:10/09/19 12:19 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#150 [◆It9is9ljoQ]



 愛しくて、堪らなくて
 私の名前を呼んだ

 目を合わせて微笑んだ俺に見せたのは
 また、遠くを見る目


⏰:10/09/19 12:49 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#151 [◆It9is9ljoQ]


 「アイ」

 「‥‥‥、」

 「‥イ、アイ‥どないしてん」

 「あぁ、‥どしたん?」


 ほんの少し前までは、あんなににも
 幸福そうな表情を見せていたのに
 目の前に居るのは紛れもない
 人形のような瞳をしたアイの姿

⏰:10/09/19 12:50 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#152 [◆It9is9ljoQ]


 だけど、それに気が付かない振りをした
 きっと、まだ俺には解らないけれど
 いつか解るだろう、そんな気持ちで

 今は目の前に映った彼女の瞳から
 目を背けるように強く抱きしめた
 忘れようとした

⏰:10/09/19 12:50 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#153 [◆It9is9ljoQ]


 それから、芹沢なのは を完全に切った

 もう必要がないと感じたから
 というよりも、
 此方の軽い気持ちとは裏腹に
 段々と重くなる女の気持ちが面倒で
 休まるなんて事すら
 無くなってしまいそうだと




 簡単に細い糸を切るようにと、
 彼女とは離れた

⏰:10/09/19 12:51 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#154 [◆It9is9ljoQ]





 それから、寂しさを埋める術は
 見つかることもなく、
 趣味を探して没頭する訳でもなく、

 最近じゃまた部屋にも寄るようになった
 アイだけで充分だと
 言い聞かせるようになった


⏰:10/09/19 12:53 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#155 [◆It9is9ljoQ]



 一人だけが溺れていてもいい
 そう、開き直るかのように
 考え方を変えた俺には
 それが苦痛に思う事もなければ
 前以上にも彼女に優しくなった

 依存するようになった

 傍に居るようになった

 愛を囁いたり、愛情確認をする事も
 以前と比べて格段に増えた

⏰:10/09/19 12:53 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#156 [◆It9is9ljoQ]




 只、只、少し彼女が怖くなった

 時々俺を射るように見る視線を
 感じるようになった

 時々、俺を冷めた目で見る
 視線に気づいた

⏰:10/09/19 12:53 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#157 [◆It9is9ljoQ]




 だから、それを埋めるために
 大事にしよう、傍に居よう

 そう、壊れたものを扱うようにと
 慎重になった

 だけど、出来なくなった
 どれだけ身体を重ねる事が増えても
 彼女の唇にキスを
 落とすことがなくなった


⏰:10/09/19 12:54 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#158 [◆It9is9ljoQ]




 怖くなった
 ふいに顔を逸らされるんじゃないかと
 
 怖くなった
 ふわりと風船のように
 飛んで消えてしまうんじゃないかって

 慎重になった、距離を置いた、


⏰:10/09/19 12:54 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#159 [◆It9is9ljoQ]






 それが、間違いだったのだろうか
 重いと、負担だと、感じたのだろうか


⏰:10/09/19 12:54 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#160 [◆It9is9ljoQ]

 

 

 「好きやで、"アイ"」
 
 へらりと、俺は笑った
 最近の笑みは自分でも解るように
 ‥ヘタになった

 愛想笑いは昔から得意だった筈
 なのに、最近の俺はどないしたんや

⏰:10/09/19 12:55 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#161 [◆It9is9ljoQ]





 アイの前では、
 段々笑うんがしんどなった

 解るんやもん、笑った顔見せる度
 つまらなさそうな表情をする様子に

 こないなん、誰が見ても一発や
 俺から離れようとしてるんやって解る

⏰:10/09/19 12:56 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#162 [◆It9is9ljoQ]

 
 頬杖を付き、机を挟んだ手前
 いつものように額へキスを落とした。
 
 漆黒の腰まで伸びた髪が揺れる。
 柔らかくて、艶があって、
 肌の色は透き通っていて
 黒目がちな大きな瞳に長い睫毛
 読んでいた本をぱたりと閉じ顔をあげた

⏰:10/09/19 12:56 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#163 [◆It9is9ljoQ]












 目が、あった
 息を呑むほど綺麗に映った


⏰:10/09/19 12:57 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#164 [◆It9is9ljoQ]






 「なぁー、」
 
 「んー」

 別に、何が言いたかった訳やない
 声が聞きたなった

⏰:10/09/19 12:57 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#165 [◆It9is9ljoQ]





 
 「なぁー、なぁー、なぁー、」
 
 「何よ、どないしたん?」
 
 「好きやで」
 
 「知ってる」
 
 くすりと笑い、長い横髪を耳にかけた
 彼女は決まった台詞で口を開いた。

⏰:10/09/19 12:58 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#166 [◆It9is9ljoQ]




 
 にこにこと笑っていた筈なのに
 それは急に切なくなって、
 やりきれなくなって
 目を細めた、笑えなくなった

 気が付かれたのかもしらへん
 はっとして笑みを作ろうとした

⏰:10/09/19 12:58 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#167 [◆It9is9ljoQ]




 だけど、それよりも前に彼女の口角が
 上がっていくのが解った
 
 無意識なのだろうか、
 こちらをじっとみて
 愛しそうな声で呟いた






「ス・キ」

⏰:10/09/19 12:59 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#168 [◆It9is9ljoQ]

 
 「ね、朔也のいう好きって何?」

 ふと、彼女は口を開いた

 
 「どないしたんや、いきなり」
 
 「答えたくないなら別にええんよ」
 
 「"YES or はい"やん、アイちゃん」

 今日の彼女は、お喋りな気がする。
 急に、ふいに、可笑しな事を聞いた

⏰:10/09/19 13:26 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#169 [◆It9is9ljoQ]



 
 
 
 「せやなあ、傍に居りたいとか
 こうしたいとか」
 
 俺はゆっくり立ち上がれば
 柔らかな笑みを浮かべると机を挟んだ
 彼女の手前、くるりと回り込めば
 ゆっくりと抱きしめた

 彼女の質問の意味をもう一度考えた
 

⏰:10/09/19 13:27 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#170 [◆It9is9ljoQ]


 
 "愛してる"
 
 そう呟くと、
 胸が締め付けられる気持ちになった

 何も言わない彼女に、
 抱きしめる力を強めた

 離れていったりせんといてや、
 それで、そんな自分に苦笑が漏れた


⏰:10/09/19 13:27 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#171 [◆It9is9ljoQ]






 
 
 「で、満足シマシタカ?」

 ふっと笑い、彼女の顔をのぞき込んだ。
 彼女の瞳は冷たくて、
 小さく首を傾げれば
 此方を見て口を開いた

 譫言のように、小さく声を発した

⏰:10/09/19 13:28 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#172 [◆It9is9ljoQ]

 
 「‥‥ね、」
 
 「んー?」








 「一人の寂しさを埋めるためやないん?
 誰でもええ、一人が寂しいから
 二人がいいんやないの?」

⏰:10/09/19 13:29 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#173 [◆It9is9ljoQ]



 のぞき込んで微笑んで見せれば
 思いも寄らない言葉に、息を呑んだ
 
 冗談かと、何を言い出すんだと
 笑えば彼女の瞳は真剣で、俺と目を
 合わせたりする訳やなくて、

 何を言えばいいか、気の利いた言葉すら
 出てこない

⏰:10/09/19 13:29 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#174 [◆It9is9ljoQ]



 
 「せやなあ‥アイちゃん
 ついに本に洗脳でもされたんか?」

 苦笑まじりに、俺は笑った









⏰:10/09/19 13:30 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#175 [◆It9is9ljoQ]



 
 「朔也、終わりしよ」

 向き直って、首を傾げて、
 退屈そうに彼女は笑った。


 「冗、談やろ‥」

 「冗談なんかやないんよ」

 淡々としている、何もかも
 そう、吹っ切ってしまったかのような
 何ももう望んではいない様な瞳で
 はっきりとした口調でそう呟いた

⏰:10/09/19 13:30 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#176 [◆It9is9ljoQ]






 何時やったか、言われた事があった
 
 "一人は寂しい、だから
 二人がいい。それ以上は要らない"

 またあの分厚い本に洗脳でもされたんかって
 そんときは笑い話にして片づけた

⏰:10/09/19 13:30 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#177 [◆It9is9ljoQ]


 それはもう何ヶ月も前の話

 ふわふわとしていて、
 何も考えていないって
 そんな表情ばかりのアイからは
 考え付かない言葉だと、
 その当時はそればかりだった

 もしかしたらその時から、
 彼女はこんな様子だったのかもしれない

 思考は洗脳されていたのかもしれない
 

⏰:10/09/19 13:31 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#178 [◆It9is9ljoQ]

 


 
 
 
 「俺も、二人がええ」

 気休めを、呟いた 

 
 「でも、もう終わり」
 
 「‥俺の何処があかんの?」

 只それはもう彼女には何の意味も
 持たへんくて、もう二度と俺の元には 
 帰ってけーへんって事が嫌でも解った
 

⏰:10/09/19 13:32 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#179 [◆It9is9ljoQ]





 
 
 「何もないんよ」
 
 「じゃあ‥何、やねん
 なあ、急過ぎんねんお前」

 何で、のんびりとした
 恋愛が出来たら俺は
 それだけでシアワセやった

 此奴やって同じなんやないん

⏰:10/09/19 13:32 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#180 [◆It9is9ljoQ]





 束縛やってしてるつもりもない
 負担にならへんようにって、
 何もかも自由に、
 只過ごしてきたんやないん

 問題なんて何一つ無かったんやないん
 お前が居らな、俺は空っぽやねん

⏰:10/09/19 13:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#181 [◆It9is9ljoQ]



 「さよなら」

 穏やかな口調、駄々を捏ねる
 子供を言い聞かせるような優しい声

 辛そうだとか、そんな様子は
 少しも無い

⏰:10/09/19 13:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#182 [◆It9is9ljoQ]


 
 「なあ、理由云うてくれな
 俺どないにも出来ひんやんけ」

 心なしか、声が震える

 
 「嫌い」
 
 「‥‥嫌、い?本間に言うてるん」
 
 「嫌い、笑った顔も
 愛しそうに私を見るその瞳も全部」

⏰:10/09/19 13:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#183 [◆It9is9ljoQ]


 笑みすら無くなった彼女
 出会った時も確か、こんな表情ばかりを
 していたんやっけ。

 懐かん、警戒心剥き出しの
 猫みたいな瞳

 嫌い?笑った顔が‥?
 お前の事を好きやって、
 そう見てた目まで
 全部が嫌いやって、言い切った

⏰:10/09/19 13:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#184 [◆It9is9ljoQ]







 「それ‥どういう意味やねん」
 
 「んー、その通りの意味」

 困ったように笑う、アイ

 何か物足りないと言わんばかりに
 唇に手を当てると、品定めをするように
 俺を見る

⏰:10/09/19 13:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#185 [◆It9is9ljoQ]

 





 「憎んで、憎んで、嫌って?」
 
 目が霞む、視界が狭まる
 
 その代わり只悪魔みたいな笑みを
 浮かべた此奴の姿だけが
 ぼんやりと映りこみ
 楽しそうな表情で此方に近づく

⏰:10/09/19 13:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#186 [◆It9is9ljoQ]

 

 
 
 「お前なんか要らない、そう
 突き放してくれたら私
 朔也のこと好きになるかもしれない」
 
 
 
 
 
 
 
 それが、最後にきいた彼女の言葉
 声、表情、頭に置かれた
 優しい手の感触が最後

 次に俺の目に映った彼女は、
 少しばかり不機嫌そうな顔をした、遺影
 

⏰:10/09/19 13:36 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#187 [◆It9is9ljoQ]


"sakuya" end


〜Season U〜


⏰:10/09/19 13:37 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#188 [◆It9is9ljoQ]







 身内のみで行われた、小さな葬儀

 彼女の死因は紛れもなく自殺なんだと
 思っていた。

 だけど、俺の耳に入ったのは
 事故死という言葉

⏰:10/09/19 14:14 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#189 [◆It9is9ljoQ]


 それを聞いても尚、
 俺は自殺なんじゃないかって、
 遺書か何か残っていないのかと
 彼女の遺品を見せて貰った

 それらしきものは一つもなくて
 彼女の携帯の待ち受け画面には
 笑顔で笑う俺と、ふてくされたようなアイ

 つきあい始めて一ヶ月が経った頃の
 写真だった。

⏰:10/09/19 14:15 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#190 [◆It9is9ljoQ]





 
 「ちょっ、お前何でそんな離れんねん
 俺の顔半分しか写らんやんけ」

 「‥ちょっと、近いって」

 「かまへんわ、はよ‥ほらもっとこっち」


⏰:10/09/19 14:15 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#191 [◆It9is9ljoQ]

 

 何も可笑しい事なんか無かった
 何も変わった事なんて無かった

 その画面から目が、離されへんくなって
 アイのおかんに頼んで、
 使う事がないからいうてその携帯を
 譲ってもうた。

 

⏰:10/09/19 14:16 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#192 [◆It9is9ljoQ]




 葬儀が済んで、家に戻った俺は
 ベットに倒れ込んだ、

 2、3日前、此処に彼奴が来とったせいか
 彼奴の香水の少しツンとした匂いが
 少しベットに残ってて、歯を食いしばった

⏰:10/09/19 14:16 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#193 [◆It9is9ljoQ]



 こないに、都合のええ事があるんか?
 本間に、本間に、

 最初から此奴死ぬ気で、ほら、あれや
 あの分厚い本に洗脳されてもーて

⏰:10/09/19 14:17 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#194 [◆It9is9ljoQ]


 "この世界に興味が
 無くなりました、さよなら"

 っちゅー遺書が
 残ってたって可笑しいない

⏰:10/09/19 14:18 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#195 [◆It9is9ljoQ]



 目から知らず知らずに
 こぼれ落ちていた涙を
 拭くことも忘れて、只俺はぼうっと
 アイの携帯の待ち受け画面から
 目を離さなかった


 知らず知らずのうちに
 瞳は閉じられていて
 気が付けば、意識を手放していた

⏰:10/09/19 14:18 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#196 [◆It9is9ljoQ]




 「自分の髪、偉い綺麗やなぁ」

 「気安く触らんといて」

 「また始まった、ええやん猫ちゃん」

 「煩い、私図書館行くから其処退いて」

 「俺と付き合うてくれるんやったら
 退いたってもえーで」

⏰:10/09/19 14:19 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#197 [◆It9is9ljoQ]


 出会ったんは高校一年の春
 同じクラスになった、猫みたいな女に
 一目惚れした

 口数少ないし、見た目がほんわり
 した黒髪の此奴がどーしても猫にしか
 見えへんくて、俺は毎日ちょっかいばっか
 かけとった

⏰:10/09/19 14:19 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#198 [◆It9is9ljoQ]


 思うたより、よく喋る女で
 イラチの、ぶすっとした懐かん猫
 ‥そのまんまやった

⏰:10/09/19 14:20 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#199 [◆It9is9ljoQ]




 変わった女っちゅーんも知ってた

 いっつも堅苦しい分
 厚い本ばっかり読んで
 ほんまに哲学者に
 なるもんやと思うとったし、

⏰:10/09/19 14:20 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#200 [◆It9is9ljoQ]



 「で、今度は何やねん」

 「朔也は生命は平等やと思う?」

 「はぁ?」

 「平等やないって思うねん、
 せやって、簡単に首締めたら簡単に人は
 逝ってまうし、死刑やってあるやん」

⏰:10/09/19 14:21 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#201 [◆It9is9ljoQ]


 「‥お、おう」

 「もうええわ、朔也に聞いた私が
 阿呆やった、はよ帰ろ」

 「何やねんそれー、俺やて、俺やて
 考えとるっちゅーねん」


⏰:10/09/19 14:21 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#202 [◆It9is9ljoQ]







 恋愛に無頓着やっちゅーんも
 解ってた

⏰:10/09/19 14:22 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#203 [◆It9is9ljoQ]



 「アイ、好きやで」

 「ん」

 「‥って、自分は言うてくれへんの?」

 「せやって、スキなもんスキやし」

 「あぁ、そうなん?」

 「言葉に出す必要あるん?」

⏰:10/09/19 14:22 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#204 [◆It9is9ljoQ]



 「何っちゅーか、安心出来たりするやん
 言葉で聞いたら」

 「朔也って何か女の子みたいな
 とこあんなぁ、スキやなかったら
 付き合うたりせんよ」


 「ずっと一緒に居ろな」

 「死んでも?」

 「あぁ、死んでも死んでも」

⏰:10/09/19 14:23 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#205 [◆It9is9ljoQ]


 「朔也は私が死んだら
 後追うような事するん?」

 「んー?」

 「ずっと、って言葉気休めやと
 思うねん。本間にあんのかな。
 人間って一人になりたくないから
 自分を大事にしてくれる人を探そうと
 するもんなんやろ」

⏰:10/09/19 14:24 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#206 [◆It9is9ljoQ]


 あんときは、本間に此奴
 何処まで考えんねんって、思うた

 軽い付き合いばっかやった俺には
 その言葉が偉い重く感じた

 ずっと一緒に居る、とか
 愛してる、とか

 深く考えて使うた事なんか無かったから
 余計、真っ直ぐなアイを直視したりは
 出来ひんかった

⏰:10/09/19 14:24 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#207 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 目を覚ました。
 
 片手には強く握りしめていた
 アイの携帯。
 
 ストラップもシールも
 何もついとらへん白の折り畳み
 綺麗に使うてるからなんやろか
 目立った傷やて付いてへん
 
 ぼんやりとした頭やて、それを見れば
 アイが死んだんが紛れも無い事実やと
 嫌でも思い出された。

⏰:10/09/20 06:25 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#208 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 何日も、寝られへん日が続いた
 
 やけど俺は夢ん中でだけでも
 あいつに会いたくてしゃあなかった
 
 睡眠薬を飲んだ、薬に頼った睡眠は
 どないにしても
 アイは夢に現れたりせんかった

⏰:10/09/20 06:25 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#209 [◆It9is9ljoQ]


 
 その月は、もう9月やいうのに
 台風が近づいてきてるせいなんか、
 アイが泣いとるんか、毎日が雨やった



 
 「梅雨みたいやわ、」
 
 アイが1番好きや、いうとった季節
 

⏰:10/09/20 06:26 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#210 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 「うーわ、雨やんけ」
 
 「もう梅雨の時期やで」
 
 しとしとと止む事のない雨に
 俺はしかめっつらをして、部屋から
 見える窓の外の雨に溜息を零した
 
 そんな俺とは裏腹に、窓に張り付いて
 じっと、少しばかり嬉しそうな
 表情を混ぜたアイはふふっと笑みを
 零した。偉く機嫌がいい

⏰:10/09/20 06:27 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#211 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「何やねん、きっしょ
 雨やで?」
 
 「この季節が1番好きやねん」
 
 「病んでんなー、でもお前
 雨ん中びしょ濡れで立ってそうやもん」
 
 「阿呆‥なぁ、傘さして
 ちょっと外に出てもええ?」
 
 「はぁ?わざわざ風邪引きに行くん」
 
 「紫陽花、見に行きたいねん」

⏰:10/09/20 06:28 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#212 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 ぼつりと呟いたアイを連れて
 家の近くにある花壇にしゃがみこんだ
 
 色とりどりの紫陽花、
 何にも興味の沸かん俺とは別に
 ずっと紫陽花をアイはぼんやりと
 見つめとった
 
 
 

⏰:10/09/20 06:28 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#213 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「ほな帰ろか、そろそろ風邪引く」
 
 「ん」
 
 「満足したんー?」
 
 「なぁ、紫陽花の花言葉知ってる?」
 
 花を見てた筈のアイが
 顔をあげて俺を見とった。
 
 どきりとして、視線を逸らしてしまう
 そして、すぐに苦笑すれば
 何ていうん?と口を開いた
 
 

⏰:10/09/20 06:28 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#214 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「アナタは冷たい」
 
 何かを諦めるかのように
 笑うアイに俺は何も言えへんかった




⏰:10/09/20 06:29 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#215 [◆It9is9ljoQ]


 「雨は嫌いや」

 歯を食いしばって
 溢れそうな涙を堪える

 格好悪、そう言い聞かせて
 俺はゆっくりと立ち上がり洗面所へ
 向かった


⏰:10/09/20 06:30 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#216 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 鏡に写ったんは
 窶れた顔して、目の下に偉い隈
 作った俺の姿やった。
 
 思い返せば可笑しい点は
 いくつもあった
 
 只それを、可笑しいとは
 思うたりせんくて、
 
 変わった女で片付けとったんや。
 日常が麻痺しとった

⏰:10/09/20 22:22 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#217 [◆It9is9ljoQ]





 

 
 「時々、むっちゃ
 朔也のことが嫌いになるねん」
 
 「そら困るわ」
 
 「困る?」
 
 「おん、俺はアイが好きやから」
 
 「へぇ」

⏰:10/09/20 22:40 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#218 [◆It9is9ljoQ]




 
 
 彼女は、変わっとった。
 
 ノリが悪いわけやない
 (けしてノリがええ訳でもない)
 
 コントローラーを渡せば、
 何時間でもやり込むし、
 甘いもんを差し出せば微笑んで
 口に運び、間食する
 

⏰:10/09/20 22:41 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#219 [◆It9is9ljoQ]







 時々奇妙なことを尋ねれば
 満足したように笑うんやった



⏰:10/09/20 22:53 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#220 [◆It9is9ljoQ]

 


 
 「あの子、最後まで
 俺には理解出来ひん子やったわ。」
 
 で、少しは整理出来たんか?
 そう穏やかな声が受話器越しに聞こえる
 

⏰:10/09/20 23:15 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#221 [◆It9is9ljoQ]

 
 「‥いや、変わらへん。少しもや
 あかんなー、あいつな
 俺の頭ん中から片時も離れてくれへん」
 
 「もう二週間、か」
 
 「実感がな、沸かへんねん。
 いつもみたいに会える気ぃして
 メールが、電話が来る気がして」
 
 苦笑した俺は、譫言のように
 呟いていた。

⏰:10/09/20 23:15 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#222 [◆It9is9ljoQ]




女々しい、そう呼ぶのだろうか
でも、それでも構わんかった


⏰:10/09/20 23:16 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#223 [◆It9is9ljoQ]




 「様子が可笑しかったとか、遺書とか
 それらしきもんは一つも?」
 
 「あぁ、家では
 見つかってへんみたいやわ」
 
 「携帯ん中は?」
 
 「携帯?」
 
 「1番自分が肌身離さず持っとるんは
 携帯な筈やろ?残ってないん
 メモとか、未送信メールとか」

⏰:10/09/20 23:16 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#224 [◆It9is9ljoQ]



 
 一樹は、そう口を開いた。
 遺言無しにぽっくり死ぬかいな、そう
 小さく呟き確認したんか、とだけ続け
 た彼は二言三言続け、電話を切った
 
 考えもしぃひんかった、
 彼女の携帯電話は待ち受け画面にしか
 手をつけたりせんくて
 震える手で、携帯電話を開いた

⏰:10/09/20 23:19 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#225 [◆It9is9ljoQ]





 
 笑顔の俺と、不機嫌そうなアイの姿
 それを見てしまえば
 
 踏み込む勇気が、手の震えが
 とまらへんくて、うなだれるように
 ベッドに横になった

⏰:10/09/20 23:21 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#226 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 「‥‥、アイ」
 
 小さく口を開いた
 息がしにくい、ゆっくりと
 開いた未送信ボックスには
 
 "朔也"
 
 
 
 
 そうタイトル付けられた
 メールが1件
 
 

⏰:10/09/20 23:21 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#227 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 「朔也が好き、大好き。」

 そう、始まった文章に
 周りが少しずつ音を無くしていった








⏰:10/09/20 23:36 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#228 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 朔也が好き、大好き。

 正確に云うと朔也の悲しそうな顔や
 苦しそうな顔や、泣いた顔が好き
 
 こんな事を言う私に朔也はまた
 本に洗脳されたん?って
 言うたりするんやろうな(笑)




⏰:10/09/20 23:37 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#229 [◆It9is9ljoQ]







 
 昔は私朔也の笑うた時に
 周りが花に溢れるような笑顔が
 ほんまに大好きやったんやで

⏰:10/09/20 23:38 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#230 [◆It9is9ljoQ]




 
 
 それが、何時からなんかな
 それだけじゃ物足りひんくなって
 私の事で頭がいっぱいになればいい
 そう考えるようになってん。
 
 喧嘩したら、苛立ちでも
 私のことで頭いっぱいになるやろ?
 私が別れようっていうたり
 そっけなくしたりしたら
 不安で胸が押し潰されそうになるやろ?

⏰:10/09/20 23:38 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#231 [◆It9is9ljoQ]



朔也を私でいっぱいにしたくなった。



⏰:10/09/20 23:39 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#232 [◆It9is9ljoQ]





 
 好きって何?
 そう聞いた事があったやんな
 私が異常なんか、怖くなって
 確かめたくなった。
 
 朔也がいった、傍に居りたいとか
 抱きしめたいとか
 そんなものは一つも、私の理想の
 恋愛の中には無かったんよ。
 

⏰:10/09/20 23:40 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#233 [◆It9is9ljoQ]

 

 
 


 やから、一緒に居たら
 私はもっと朔也を泣かせてしまうし
 
 朔也がしんどくなってしまう。
 
 私はそれを喜ぶから。
 嫌いって、そう突き放された方が
 愛しさが増すから
 
 私らは一緒に居たらあかんのよ。

⏰:10/09/20 23:40 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#234 [◆It9is9ljoQ]



 
 だからサヨナラ
 リセットしたくなった、ゲームみたいに
 
 なにもかも、朔也のことも
 忘れたくなった
 
 こんな私を嫌って憎んで。
 朔也がそうしてくれたら私
 
 多分ずっと朔也を愛してる
 
 

⏰:10/09/20 23:40 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#235 [◆It9is9ljoQ]



醜い私はね、きっと
朔也を手放したりしたくないから

縛り付けていたいから
永遠に、

だから私、サヨナラを選ぶの

⏰:10/09/20 23:41 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#236 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 
 
 
 そう微笑んで、メールを打ち終わった
 私は道路へと足を進めた
 
 きっと私、これで満たされるの
 
 

⏰:10/09/20 23:44 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#237 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 きっと彼は気付くでしょう
 
 私の目論みに。
 
 それでも構わない
 終わりがあるって、永遠なんて
 信じられない私は 自分から
 断ち切る事を選んだ
 

⏰:10/09/21 00:03 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#238 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
  
 
 
 人間はエゴの塊
 追い詰められるとその部分が
 剥き出しになる
 
 表面やたてまえの上では
 誠実でありたい、理性的でいたい
 

⏰:10/09/21 00:03 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#239 [◆It9is9ljoQ]

 




 
 どんなにエゴイストになりたくても
 
 きっと私には無理、
 
 絶対に無理
 

⏰:10/09/21 00:04 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#240 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 さて、問題です。
 
 どうして人は尚、エゴイストに
 なりたいのにも関わらず
 弱い自分を取り繕うのでしょうか。
 
 

⏰:10/09/21 00:04 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#241 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 
 
 愛してるから 
 
 相手に染まってしまうから
 
 
 
 いつのまにか他人なんて、
 相手なんかを

 蔑ろに
 出来なくなってしまうから
 
 
 
 
 

⏰:10/09/21 00:05 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#242 [◆It9is9ljoQ]


可笑しいのかもしれない

だけど、私なりの恋が

解った気がした


⏰:10/09/21 00:06 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#243 [◆It9is9ljoQ]





 今日も雨、

 梅雨になれば貴方は私を
 また、思い出して
 苦しんでくれるのでしょうか


⏰:10/09/21 00:07 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#244 [◆It9is9ljoQ]



end


⏰:10/09/21 00:08 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


#245 [◆It9is9ljoQ]

 あとがき

 
 無事完結致しました
 
 至らぬ点ばかりでの誤字、脱字、
 上手く頭の中で纏めることが出来ず
 非常に読みにくい文章になってしまい
 読者様には申し訳なく思っております
 
 朔也の"その後"は
 読者様にお任せ致します。
 
 読んで下さった方
 真に有難うございます
 
 暗くて、しんみりとした
 物になっておりますが作者の私の
 思考が詰まっており
 実話を混ぜたものになっています
 
 言わば、私のもう一つの生き方に
 しようとしていたものになります
 
 書く事により、私自身の整理を
 することができました。
 
 また、お会い出来ればと思います
 有難うございました
 
 
 

⏰:10/09/21 00:14 📱:SH706i 🆔:iLMUWuL.


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