レイン
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#180 [◆It9is9ljoQ]





 束縛やってしてるつもりもない
 負担にならへんようにって、
 何もかも自由に、
 只過ごしてきたんやないん

 問題なんて何一つ無かったんやないん
 お前が居らな、俺は空っぽやねん

⏰:10/09/19 13:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#181 [◆It9is9ljoQ]



 「さよなら」

 穏やかな口調、駄々を捏ねる
 子供を言い聞かせるような優しい声

 辛そうだとか、そんな様子は
 少しも無い

⏰:10/09/19 13:33 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#182 [◆It9is9ljoQ]


 
 「なあ、理由云うてくれな
 俺どないにも出来ひんやんけ」

 心なしか、声が震える

 
 「嫌い」
 
 「‥‥嫌、い?本間に言うてるん」
 
 「嫌い、笑った顔も
 愛しそうに私を見るその瞳も全部」

⏰:10/09/19 13:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#183 [◆It9is9ljoQ]


 笑みすら無くなった彼女
 出会った時も確か、こんな表情ばかりを
 していたんやっけ。

 懐かん、警戒心剥き出しの
 猫みたいな瞳

 嫌い?笑った顔が‥?
 お前の事を好きやって、
 そう見てた目まで
 全部が嫌いやって、言い切った

⏰:10/09/19 13:34 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#184 [◆It9is9ljoQ]







 「それ‥どういう意味やねん」
 
 「んー、その通りの意味」

 困ったように笑う、アイ

 何か物足りないと言わんばかりに
 唇に手を当てると、品定めをするように
 俺を見る

⏰:10/09/19 13:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#185 [◆It9is9ljoQ]

 





 「憎んで、憎んで、嫌って?」
 
 目が霞む、視界が狭まる
 
 その代わり只悪魔みたいな笑みを
 浮かべた此奴の姿だけが
 ぼんやりと映りこみ
 楽しそうな表情で此方に近づく

⏰:10/09/19 13:35 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#186 [◆It9is9ljoQ]

 

 
 
 「お前なんか要らない、そう
 突き放してくれたら私
 朔也のこと好きになるかもしれない」
 
 
 
 
 
 
 
 それが、最後にきいた彼女の言葉
 声、表情、頭に置かれた
 優しい手の感触が最後

 次に俺の目に映った彼女は、
 少しばかり不機嫌そうな顔をした、遺影
 

⏰:10/09/19 13:36 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#187 [◆It9is9ljoQ]


"sakuya" end


〜Season U〜


⏰:10/09/19 13:37 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#188 [◆It9is9ljoQ]







 身内のみで行われた、小さな葬儀

 彼女の死因は紛れもなく自殺なんだと
 思っていた。

 だけど、俺の耳に入ったのは
 事故死という言葉

⏰:10/09/19 14:14 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#189 [◆It9is9ljoQ]


 それを聞いても尚、
 俺は自殺なんじゃないかって、
 遺書か何か残っていないのかと
 彼女の遺品を見せて貰った

 それらしきものは一つもなくて
 彼女の携帯の待ち受け画面には
 笑顔で笑う俺と、ふてくされたようなアイ

 つきあい始めて一ヶ月が経った頃の
 写真だった。

⏰:10/09/19 14:15 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#190 [◆It9is9ljoQ]





 
 「ちょっ、お前何でそんな離れんねん
 俺の顔半分しか写らんやんけ」

 「‥ちょっと、近いって」

 「かまへんわ、はよ‥ほらもっとこっち」


⏰:10/09/19 14:15 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#191 [◆It9is9ljoQ]

 

 何も可笑しい事なんか無かった
 何も変わった事なんて無かった

 その画面から目が、離されへんくなって
 アイのおかんに頼んで、
 使う事がないからいうてその携帯を
 譲ってもうた。

 

⏰:10/09/19 14:16 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#192 [◆It9is9ljoQ]




 葬儀が済んで、家に戻った俺は
 ベットに倒れ込んだ、

 2、3日前、此処に彼奴が来とったせいか
 彼奴の香水の少しツンとした匂いが
 少しベットに残ってて、歯を食いしばった

⏰:10/09/19 14:16 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#193 [◆It9is9ljoQ]



 こないに、都合のええ事があるんか?
 本間に、本間に、

 最初から此奴死ぬ気で、ほら、あれや
 あの分厚い本に洗脳されてもーて

⏰:10/09/19 14:17 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#194 [◆It9is9ljoQ]


 "この世界に興味が
 無くなりました、さよなら"

 っちゅー遺書が
 残ってたって可笑しいない

⏰:10/09/19 14:18 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#195 [◆It9is9ljoQ]



 目から知らず知らずに
 こぼれ落ちていた涙を
 拭くことも忘れて、只俺はぼうっと
 アイの携帯の待ち受け画面から
 目を離さなかった


 知らず知らずのうちに
 瞳は閉じられていて
 気が付けば、意識を手放していた

⏰:10/09/19 14:18 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#196 [◆It9is9ljoQ]




 「自分の髪、偉い綺麗やなぁ」

 「気安く触らんといて」

 「また始まった、ええやん猫ちゃん」

 「煩い、私図書館行くから其処退いて」

 「俺と付き合うてくれるんやったら
 退いたってもえーで」

⏰:10/09/19 14:19 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#197 [◆It9is9ljoQ]


 出会ったんは高校一年の春
 同じクラスになった、猫みたいな女に
 一目惚れした

 口数少ないし、見た目がほんわり
 した黒髪の此奴がどーしても猫にしか
 見えへんくて、俺は毎日ちょっかいばっか
 かけとった

⏰:10/09/19 14:19 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#198 [◆It9is9ljoQ]


 思うたより、よく喋る女で
 イラチの、ぶすっとした懐かん猫
 ‥そのまんまやった

⏰:10/09/19 14:20 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#199 [◆It9is9ljoQ]




 変わった女っちゅーんも知ってた

 いっつも堅苦しい分
 厚い本ばっかり読んで
 ほんまに哲学者に
 なるもんやと思うとったし、

⏰:10/09/19 14:20 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#200 [◆It9is9ljoQ]



 「で、今度は何やねん」

 「朔也は生命は平等やと思う?」

 「はぁ?」

 「平等やないって思うねん、
 せやって、簡単に首締めたら簡単に人は
 逝ってまうし、死刑やってあるやん」

⏰:10/09/19 14:21 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#201 [◆It9is9ljoQ]


 「‥お、おう」

 「もうええわ、朔也に聞いた私が
 阿呆やった、はよ帰ろ」

 「何やねんそれー、俺やて、俺やて
 考えとるっちゅーねん」


⏰:10/09/19 14:21 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#202 [◆It9is9ljoQ]







 恋愛に無頓着やっちゅーんも
 解ってた

⏰:10/09/19 14:22 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#203 [◆It9is9ljoQ]



 「アイ、好きやで」

 「ん」

 「‥って、自分は言うてくれへんの?」

 「せやって、スキなもんスキやし」

 「あぁ、そうなん?」

 「言葉に出す必要あるん?」

⏰:10/09/19 14:22 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#204 [◆It9is9ljoQ]



 「何っちゅーか、安心出来たりするやん
 言葉で聞いたら」

 「朔也って何か女の子みたいな
 とこあんなぁ、スキやなかったら
 付き合うたりせんよ」


 「ずっと一緒に居ろな」

 「死んでも?」

 「あぁ、死んでも死んでも」

⏰:10/09/19 14:23 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#205 [◆It9is9ljoQ]


 「朔也は私が死んだら
 後追うような事するん?」

 「んー?」

 「ずっと、って言葉気休めやと
 思うねん。本間にあんのかな。
 人間って一人になりたくないから
 自分を大事にしてくれる人を探そうと
 するもんなんやろ」

⏰:10/09/19 14:24 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#206 [◆It9is9ljoQ]


 あんときは、本間に此奴
 何処まで考えんねんって、思うた

 軽い付き合いばっかやった俺には
 その言葉が偉い重く感じた

 ずっと一緒に居る、とか
 愛してる、とか

 深く考えて使うた事なんか無かったから
 余計、真っ直ぐなアイを直視したりは
 出来ひんかった

⏰:10/09/19 14:24 📱:SH706i 🆔:uijvO.N2


#207 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 目を覚ました。
 
 片手には強く握りしめていた
 アイの携帯。
 
 ストラップもシールも
 何もついとらへん白の折り畳み
 綺麗に使うてるからなんやろか
 目立った傷やて付いてへん
 
 ぼんやりとした頭やて、それを見れば
 アイが死んだんが紛れも無い事実やと
 嫌でも思い出された。

⏰:10/09/20 06:25 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#208 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 何日も、寝られへん日が続いた
 
 やけど俺は夢ん中でだけでも
 あいつに会いたくてしゃあなかった
 
 睡眠薬を飲んだ、薬に頼った睡眠は
 どないにしても
 アイは夢に現れたりせんかった

⏰:10/09/20 06:25 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#209 [◆It9is9ljoQ]


 
 その月は、もう9月やいうのに
 台風が近づいてきてるせいなんか、
 アイが泣いとるんか、毎日が雨やった



 
 「梅雨みたいやわ、」
 
 アイが1番好きや、いうとった季節
 

⏰:10/09/20 06:26 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


#210 [◆It9is9ljoQ]

 
 
 
 
 「うーわ、雨やんけ」
 
 「もう梅雨の時期やで」
 
 しとしとと止む事のない雨に
 俺はしかめっつらをして、部屋から
 見える窓の外の雨に溜息を零した
 
 そんな俺とは裏腹に、窓に張り付いて
 じっと、少しばかり嬉しそうな
 表情を混ぜたアイはふふっと笑みを
 零した。偉く機嫌がいい

⏰:10/09/20 06:27 📱:SH706i 🆔:gbbzVp4g


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