レイン
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#101 [◆It9is9ljoQ]
それで満たされていた
それで、不安を取り除いていた
何度も言うように、俺はアイが好き。
自分ばかりが此奴に嵌って堕ちている
まぎれもなくそうなんだろう
やから、本当は
愛されていないんじゃないかと
いう不安を取り除くために、女を使った
:10/09/19 08:35
:SH706i
:uijvO.N2
#102 [◆It9is9ljoQ]
ぼんやりと、アイは青に点滅している
俺の携帯に視線をずらす。
見られても何も問題なんてない
むしろ、見て欲しいとすら感じとった
:10/09/19 08:36
:SH706i
:uijvO.N2
#103 [◆It9is9ljoQ]
嫉妬、という感情が此奴にあるんなら
それを引き出したいと思った
:10/09/19 08:36
:SH706i
:uijvO.N2
#104 [◆It9is9ljoQ]
泣いて縋る此奴が
何処かで見られればいい
そんな事を思うてた
異常なんやろか、此奴以上に俺は。
好きやから、嫉妬してほしい
好きやから、俺の為に泣いて欲しい
:10/09/19 08:37
:SH706i
:uijvO.N2
#105 [◆It9is9ljoQ]
簡単に云うたら、
愛されてるっちゅー証が
欲しかったんやって思う。
:10/09/19 09:00
:SH706i
:uijvO.N2
#106 [◆It9is9ljoQ]
「やから、こうやって!
ちゃうちゃう、右!そっちは左!」
「あーもう煩い、静かにしてや」
「お前絶対免許取らん方がええ」
「普通の道路にバナナの皮なんか
落ちてへんよ」
股の間に、すっぽりとアイは納まる
コントローラー強く握り過ぎや、つーか
持ち方が独特やねん、
:10/09/19 09:01
:SH706i
:uijvO.N2
#107 [◆It9is9ljoQ]
もうどんぐらいゲームしてんねやろ
気ぃついたら9のとこにあった
時計の短い針はもう11を
過ぎたとこになっとった
:10/09/19 09:02
:SH706i
:uijvO.N2
#108 [◆It9is9ljoQ]
明日は学校も休み、天気は曇りやっけ
快晴やないし外なんか
よー出る気が起きん
此奴が帰る言い出したら送って、
ほんでから
明日は昼までゆっくりして、
また家に呼んだらええわ
:10/09/19 09:02
:SH706i
:uijvO.N2
#109 [◆It9is9ljoQ]
「よっこらせ、っと…
俺風呂いってくる」
「んー」
「精々バナナで転ばんようにな」
「煩い」
「目疲れたらベットに横なっとき」
「ん」
コントローラーから目を離さないアイに
小さく笑みをつくれば部屋を出た、
:10/09/19 09:04
:SH706i
:uijvO.N2
#110 [◆It9is9ljoQ]
次の日、目が覚めたら
窓にはびっしり水滴がついとった、
いつもならこの時間いうたら
電気つけんでも明るいのに、
今日はどうも薄暗い
雨降ってるわ。
…あーもう、気ぃ怠い
:10/09/19 10:30
:SH706i
:uijvO.N2
#111 [◆It9is9ljoQ]
携帯を開くと
待ち受け画面には何のアイコンも
残っとらへん、彼奴まだ寝てるんか
取り敢えず電話いれたけど、
出よらへん
メールだけ入れ取ったら
連絡来るやろ。
枕を抱き込むとその上に頭を置いた
:10/09/19 10:31
:SH706i
:uijvO.N2
#112 [◆It9is9ljoQ]
「‥‥‥、」
雨やと憂鬱なる、
ほんで隣に居てへんってなったら
また寂しいなってしゃあななるねん。
こんな事ちっとも
彼奴は思うてへんやろうけど…
:10/09/19 10:31
:SH706i
:uijvO.N2
#113 [◆It9is9ljoQ]
此奴には人一倍、
優しいしてるつもりや
怒った事なんて
数える程しかない
手上げるなんてとんでもない
やけど、
此奴は一向に靡いたりせん。
:10/09/19 10:31
:SH706i
:uijvO.N2
#114 [◆It9is9ljoQ]
優しいして甘うして
俺から離れられんようにって
しとるつもりやのに、
こいつは空気みたいに
ふんわり飛んでいきよる
離れていく様子もないし、
嫌われてる様子もない
:10/09/19 10:32
:SH706i
:uijvO.N2
#115 [◆It9is9ljoQ]
………、どないしたええねん
俺は恋愛に刺激なんか要らん
只ゆっくりゆっくり
毎日一緒におれたらええ
それだけやねん
それ以上なんか要らん
:10/09/19 10:33
:SH706i
:uijvO.N2
#116 [◆It9is9ljoQ]
〜♪
アイやって解るよう指定しとる
着信音が鳴った
偉い大きい音で。
寝てしもうても出られるようにって
「やっとかかってきたわ、
おはよーさん」
:10/09/19 10:33
:SH706i
:uijvO.N2
#117 [◆It9is9ljoQ]
「んー」
まだ寝ぼけとるんか、
小さい声で唸りよる此奴に
愛しいわ、って笑みが漏れた
そんな些細な事で俺は満たされとる
:10/09/19 10:34
:SH706i
:uijvO.N2
#118 [◆It9is9ljoQ]
「相変わらず低血圧やなー
ちゃんと寝れたん?」
「んー」
「今日雨やしどっこも
出かけられそうないしDVDでも
見にけーへん?」
ベットから起きあがって、
クスクスと笑う
はよ会いたい、只それだけ
はよ会いに来て、顔みたいわ
:10/09/19 10:34
:SH706i
:uijvO.N2
#119 [◆It9is9ljoQ]
「今日はやめとくわ」
予想外の言葉に、
俺は一気に寂しいなった
動揺も隠されへん
:10/09/19 10:34
:SH706i
:uijvO.N2
#120 [◆It9is9ljoQ]
「‥‥は?本間に言うてるん?
熱出ても会いにきとったお前が。
今度こそ風邪でも引いたん?」
「読みかけの本溜まってるし
またにする、」
「あー‥さよか
ほなまた学校でやな」
:10/09/19 10:35
:SH706i
:uijvO.N2
#121 [◆It9is9ljoQ]
電話を切った、
無性に‥やりきれんなった
直ぐに都合のええ女に、無意識に
芹沢なのはに、連絡を取った
:10/09/19 10:35
:SH706i
:uijvO.N2
#122 [◆It9is9ljoQ]
「何で昨日メール
返してくれへんかったん?」
甘い声、甘い香水の匂い
アイはこないにして話はしよらん
何で?なんていう束縛地味た言葉は
一切使われたことない
:10/09/19 10:37
:SH706i
:uijvO.N2
#123 [◆It9is9ljoQ]
「あぁ、見てへんかった」
「じゃあ何で今日電話くれたんっ?」
「別に何やったってええやん、
はよやらせてや」
肩にすりよせる此奴に小さく笑った
その笑いは、自分への嘲笑
:10/09/19 10:38
:SH706i
:uijvO.N2
#124 [◆It9is9ljoQ]
「なぁ、次何時会える?」
「また連絡するわ」
「ほんま気まぐれやねんから‥うち、
いつでも待ってるし連絡してな?
朔くんの為やったら時間あけるから」
「ほなまた」
下着姿のまま甘い声を出すこの女を
一度も振り返る事なく部屋を出た
:10/09/19 10:40
:SH706i
:uijvO.N2
#125 [◆It9is9ljoQ]
いつまでこんなん続けんねやろ
何度もこの女が言うた「愛してる」に
安堵してる自分に一番苛立った
携帯を開けば、
やはり目立ったアイコンは無い
それがまた、
余計に俺を虚しくさせた
:10/09/19 10:40
:SH706i
:uijvO.N2
#126 [◆It9is9ljoQ]
「今日どないする?
新しいゲーム買うてんけどやりに
来ぇへん?アイが出来るよう
簡単モードにしたるし」
「今日は帰るわ、また誘って」
「読みかけの本でもあるん?」
「そうそう」
:10/09/19 10:42
:SH706i
:uijvO.N2
#127 [◆It9is9ljoQ]
「またあの堅苦しい本け?
そないなん読んどったら自分
いつか洗脳されてまうで」
「それはそれでいいかもしらへんわ、
じゃあまた明日」
手を振って、ふわりと笑う
此処最近のアイは生き生きしてるように
見えるんは気のせいなんか
:10/09/19 10:44
:SH706i
:uijvO.N2
#128 [◆It9is9ljoQ]
それと裏腹に、此奴は俺との時間を
段々減らしていきよった
:10/09/19 10:44
:SH706i
:uijvO.N2
#129 [◆It9is9ljoQ]
会うんは放課後と行きしだけ。
クラスがちゃうから、って何時もは
昼休み俺が顔出しにきて話しよるのに
昼休みは教室にすら居てへん
顔が見たくて、どーせまた一人で
図書館やろ、
思うて向かうたって居らへん
:10/09/19 10:45
:SH706i
:uijvO.N2
#130 [◆It9is9ljoQ]
友達は比較的少ない
女子特有のグループ行動なんか
してる様子なんか見えへん
それは彼奴が一番苦手なようにも
みえるし、俺と付き合うてることすら
苦手なんやないかって思うて
前に聞いてみたらそんな事はないって
いいよった、けど。
:10/09/19 10:45
:SH706i
:uijvO.N2
#131 [◆It9is9ljoQ]
「どないしてん、
ついに振られたんか?」
「そんなんちゃうわ、
なぁ一樹、アイ‥見てへんか?」
「見辺らへんのかいな
せやなぁ‥図書館とかに
転がってそうやんか、あの子」
:10/09/19 10:47
:SH706i
:uijvO.N2
#132 [◆It9is9ljoQ]
「アイの事何やと思うてんねん、阿呆
それが居てへんねん」
「そういや昼は一緒やないなぁ
自分らが一緒に居るとこ
最近見てへんし」
「‥‥‥」
:10/09/19 10:48
:SH706i
:uijvO.N2
#133 [◆It9is9ljoQ]
「やっぱ、振られたんや」
「行き帰りは変わった様子ないねん」
「ほなあれや、委員会とかちゃうん
あの子逐一報告するタイプちゃうやろ
あんま心配せんでも放ってたら
戻ってくるやろ、どんと構えときぃや
飼い主さん」
けらけらと笑う友人に、
俺はやっぱ考えすぎか、と予鈴と共に
席へと戻った
:10/09/19 10:48
:SH706i
:uijvO.N2
#134 [◆It9is9ljoQ]
「アイちゃん
今日ケーキ食いに行こや」
「アイ〜、はよ帰るで」
「せや、映画のチケット!
手に入ったんやで、あれやん
アイがぼーっと見とった奴の続編」
:10/09/19 10:50
:SH706i
:uijvO.N2
#135 [◆It9is9ljoQ]
「なあなあアイちゃん
明日どっか行かへん?」
悉く振られ、やけど毎日のように
俺はアイとの時間を
作ろうって必死やった
生き生きしとった筈の
アイが段々また、いつもみたいな
表情に変わっていくんが
日に日に手にとるように解った
:10/09/19 10:51
:SH706i
:uijvO.N2
#136 [◆It9is9ljoQ]
「話、あんねやけど」
苛立った声を隠し、
ぎこちない笑みを浮かべた
:10/09/19 12:12
:SH706i
:uijvO.N2
#137 [◆It9is9ljoQ]
放課後の教室でアイは
相変わらず窓側の一番端の席に
ぽつんと腰を下ろして本に没頭していた
それは彼女が不審な行動を取り始めて
2週間が経った頃。
:10/09/19 12:13
:SH706i
:uijvO.N2
#138 [◆It9is9ljoQ]
他の女と居ったって寂しさは紛れん
好きやって囁かれる度に
逆に、その声がアイと重なって
息をする事すら
器用に出来ひんなってしもた
やから、何言われても
向き合う覚悟で口を開いた
:10/09/19 12:14
:SH706i
:uijvO.N2
#139 [◆It9is9ljoQ]
「何?」
顔を上げた彼女は何時もと変わらず
何も考えていないんじゃないかって
いうくらいに大人しい声で口を開いた。
「"アイちゃん"俺に最近冷たない?」
「冷たいんは今始まった事やないやん」
どしたの、いきなり。とクスリと笑みを
漏らした彼女に苛立ちが起こる
:10/09/19 12:14
:SH706i
:uijvO.N2
#140 [◆It9is9ljoQ]
俺の苛立っている原因を、此奴は
解ってるんじゃないのか
わざとこうして俺の心を揺さぶるような
事をして楽しんで居るんじゃないか
そんな考えばかりが脳裏を掠めた
:10/09/19 12:14
:SH706i
:uijvO.N2
#141 [◆It9is9ljoQ]
「そんなん言うてるんちゃうわ」
苛立った声、違う、
こんなつもりじゃなかった
苦痛に顔を歪める、ソレとは裏腹に
また、この表情
此奴はふわりと笑った
とても綺麗に、生き生きとした笑み
:10/09/19 12:15
:SH706i
:uijvO.N2
#142 [◆It9is9ljoQ]
「何が可笑しいねん」
気が付けば、俺の声は小さく震える
「なあ、何が可笑しいねんって
言うてんのが聞こえへんのか!」
ガタ―――‥
鈍い音がして、近くにあった椅子を
手にとれば音を立て床にたたき付けた
:10/09/19 12:16
:SH706i
:uijvO.N2
#143 [◆It9is9ljoQ]
びくりと、肩を振るわせたアイはまた
可笑しそうに笑った
本間に此奴、洗脳されたんちゃうか
何が面白いねん。
:10/09/19 12:16
:SH706i
:uijvO.N2
#144 [◆It9is9ljoQ]
「何やねん、お前‥最近可笑しいわ
どないしてん、何かされたんか!?」
彼女に近づけば肩に手を置いた
強く揺すれば、
揺するほど肩を振るわせて
この女は笑いよる。
絶望、一人きり取り残されたと
言わんばかりに悲しそうな目をした
俺の手前
やはり浮かぶのは笑みだけ。
:10/09/19 12:17
:SH706i
:uijvO.N2
#145 [◆It9is9ljoQ]
幸せそうな、笑み
その意味が俺には解らへん
:10/09/19 12:17
:SH706i
:uijvO.N2
#146 [◆It9is9ljoQ]
「‥‥もう、冷めたん?」
「そんなんやないよ」
「じゃあ何やねん!何でそんなんやねん
お前が無愛想なんも今始まったこと
ちゃうんも解ってるわ、」
「うん」
「でも、何時もとちゃう」
「うん」
:10/09/19 12:17
:SH706i
:uijvO.N2
#147 [◆It9is9ljoQ]
「不安やねん、お前が、アイが
どっかに行ってまいそうで怖いんや。
俺どないしたらええんか解らんわ」
しゃがみ込んで震えがとまらん。
依存でもええ、何やってええ
自分一人が堕ちてったってかまわへん
:10/09/19 12:18
:SH706i
:uijvO.N2
#148 [◆It9is9ljoQ]
愛しくて、たまらん
傍に居てくれな俺は壊れてしまう
:10/09/19 12:18
:SH706i
:uijvO.N2
#149 [◆It9is9ljoQ]
小さな笑みを浮かべたアイ
表情はとても優しい、すたすたと
近づいてくれば背伸びをして、
俺をそっと抱きしめた、
好きだよって微笑んだ
俺の心は段々満たされてって
アイはアイで何か心境の変化が
あったんか、幸せそうな顔をしよる
:10/09/19 12:19
:SH706i
:uijvO.N2
#150 [◆It9is9ljoQ]
愛しくて、堪らなくて
私の名前を呼んだ
目を合わせて微笑んだ俺に見せたのは
また、遠くを見る目
:10/09/19 12:49
:SH706i
:uijvO.N2
#151 [◆It9is9ljoQ]
「アイ」
「‥‥‥、」
「‥イ、アイ‥どないしてん」
「あぁ、‥どしたん?」
ほんの少し前までは、あんなににも
幸福そうな表情を見せていたのに
目の前に居るのは紛れもない
人形のような瞳をしたアイの姿
:10/09/19 12:50
:SH706i
:uijvO.N2
#152 [◆It9is9ljoQ]
だけど、それに気が付かない振りをした
きっと、まだ俺には解らないけれど
いつか解るだろう、そんな気持ちで
今は目の前に映った彼女の瞳から
目を背けるように強く抱きしめた
忘れようとした
:10/09/19 12:50
:SH706i
:uijvO.N2
#153 [◆It9is9ljoQ]
それから、芹沢なのは を完全に切った
もう必要がないと感じたから
というよりも、
此方の軽い気持ちとは裏腹に
段々と重くなる女の気持ちが面倒で
休まるなんて事すら
無くなってしまいそうだと
簡単に細い糸を切るようにと、
彼女とは離れた
:10/09/19 12:51
:SH706i
:uijvO.N2
#154 [◆It9is9ljoQ]
それから、寂しさを埋める術は
見つかることもなく、
趣味を探して没頭する訳でもなく、
最近じゃまた部屋にも寄るようになった
アイだけで充分だと
言い聞かせるようになった
:10/09/19 12:53
:SH706i
:uijvO.N2
#155 [◆It9is9ljoQ]
一人だけが溺れていてもいい
そう、開き直るかのように
考え方を変えた俺には
それが苦痛に思う事もなければ
前以上にも彼女に優しくなった
依存するようになった
傍に居るようになった
愛を囁いたり、愛情確認をする事も
以前と比べて格段に増えた
:10/09/19 12:53
:SH706i
:uijvO.N2
#156 [◆It9is9ljoQ]
只、只、少し彼女が怖くなった
時々俺を射るように見る視線を
感じるようになった
時々、俺を冷めた目で見る
視線に気づいた
:10/09/19 12:53
:SH706i
:uijvO.N2
#157 [◆It9is9ljoQ]
だから、それを埋めるために
大事にしよう、傍に居よう
そう、壊れたものを扱うようにと
慎重になった
だけど、出来なくなった
どれだけ身体を重ねる事が増えても
彼女の唇にキスを
落とすことがなくなった
:10/09/19 12:54
:SH706i
:uijvO.N2
#158 [◆It9is9ljoQ]
怖くなった
ふいに顔を逸らされるんじゃないかと
怖くなった
ふわりと風船のように
飛んで消えてしまうんじゃないかって
慎重になった、距離を置いた、
:10/09/19 12:54
:SH706i
:uijvO.N2
#159 [◆It9is9ljoQ]
それが、間違いだったのだろうか
重いと、負担だと、感じたのだろうか
:10/09/19 12:54
:SH706i
:uijvO.N2
#160 [◆It9is9ljoQ]
「好きやで、"アイ"」
へらりと、俺は笑った
最近の笑みは自分でも解るように
‥ヘタになった
愛想笑いは昔から得意だった筈
なのに、最近の俺はどないしたんや
:10/09/19 12:55
:SH706i
:uijvO.N2
#161 [◆It9is9ljoQ]
アイの前では、
段々笑うんがしんどなった
解るんやもん、笑った顔見せる度
つまらなさそうな表情をする様子に
こないなん、誰が見ても一発や
俺から離れようとしてるんやって解る
:10/09/19 12:56
:SH706i
:uijvO.N2
#162 [◆It9is9ljoQ]
頬杖を付き、机を挟んだ手前
いつものように額へキスを落とした。
漆黒の腰まで伸びた髪が揺れる。
柔らかくて、艶があって、
肌の色は透き通っていて
黒目がちな大きな瞳に長い睫毛
読んでいた本をぱたりと閉じ顔をあげた
:10/09/19 12:56
:SH706i
:uijvO.N2
#163 [◆It9is9ljoQ]
目が、あった
息を呑むほど綺麗に映った
:10/09/19 12:57
:SH706i
:uijvO.N2
#164 [◆It9is9ljoQ]
「なぁー、」
「んー」
別に、何が言いたかった訳やない
声が聞きたなった
:10/09/19 12:57
:SH706i
:uijvO.N2
#165 [◆It9is9ljoQ]
「なぁー、なぁー、なぁー、」
「何よ、どないしたん?」
「好きやで」
「知ってる」
くすりと笑い、長い横髪を耳にかけた
彼女は決まった台詞で口を開いた。
:10/09/19 12:58
:SH706i
:uijvO.N2
#166 [◆It9is9ljoQ]
にこにこと笑っていた筈なのに
それは急に切なくなって、
やりきれなくなって
目を細めた、笑えなくなった
気が付かれたのかもしらへん
はっとして笑みを作ろうとした
:10/09/19 12:58
:SH706i
:uijvO.N2
#167 [◆It9is9ljoQ]
だけど、それよりも前に彼女の口角が
上がっていくのが解った
無意識なのだろうか、
こちらをじっとみて
愛しそうな声で呟いた
「ス・キ」
:10/09/19 12:59
:SH706i
:uijvO.N2
#168 [◆It9is9ljoQ]
「ね、朔也のいう好きって何?」
ふと、彼女は口を開いた
「どないしたんや、いきなり」
「答えたくないなら別にええんよ」
「"YES or はい"やん、アイちゃん」
今日の彼女は、お喋りな気がする。
急に、ふいに、可笑しな事を聞いた
:10/09/19 13:26
:SH706i
:uijvO.N2
#169 [◆It9is9ljoQ]
「せやなあ、傍に居りたいとか
こうしたいとか」
俺はゆっくり立ち上がれば
柔らかな笑みを浮かべると机を挟んだ
彼女の手前、くるりと回り込めば
ゆっくりと抱きしめた
彼女の質問の意味をもう一度考えた
:10/09/19 13:27
:SH706i
:uijvO.N2
#170 [◆It9is9ljoQ]
"愛してる"
そう呟くと、
胸が締め付けられる気持ちになった
何も言わない彼女に、
抱きしめる力を強めた
離れていったりせんといてや、
それで、そんな自分に苦笑が漏れた
:10/09/19 13:27
:SH706i
:uijvO.N2
#171 [◆It9is9ljoQ]
「で、満足シマシタカ?」
ふっと笑い、彼女の顔をのぞき込んだ。
彼女の瞳は冷たくて、
小さく首を傾げれば
此方を見て口を開いた
譫言のように、小さく声を発した
:10/09/19 13:28
:SH706i
:uijvO.N2
#172 [◆It9is9ljoQ]
「‥‥ね、」
「んー?」
「一人の寂しさを埋めるためやないん?
誰でもええ、一人が寂しいから
二人がいいんやないの?」
:10/09/19 13:29
:SH706i
:uijvO.N2
#173 [◆It9is9ljoQ]
のぞき込んで微笑んで見せれば
思いも寄らない言葉に、息を呑んだ
冗談かと、何を言い出すんだと
笑えば彼女の瞳は真剣で、俺と目を
合わせたりする訳やなくて、
何を言えばいいか、気の利いた言葉すら
出てこない
:10/09/19 13:29
:SH706i
:uijvO.N2
#174 [◆It9is9ljoQ]
「せやなあ‥アイちゃん
ついに本に洗脳でもされたんか?」
苦笑まじりに、俺は笑った
:10/09/19 13:30
:SH706i
:uijvO.N2
#175 [◆It9is9ljoQ]
「朔也、終わりしよ」
向き直って、首を傾げて、
退屈そうに彼女は笑った。
「冗、談やろ‥」
「冗談なんかやないんよ」
淡々としている、何もかも
そう、吹っ切ってしまったかのような
何ももう望んではいない様な瞳で
はっきりとした口調でそう呟いた
:10/09/19 13:30
:SH706i
:uijvO.N2
#176 [◆It9is9ljoQ]
何時やったか、言われた事があった
"一人は寂しい、だから
二人がいい。それ以上は要らない"
またあの分厚い本に洗脳でもされたんかって
そんときは笑い話にして片づけた
:10/09/19 13:30
:SH706i
:uijvO.N2
#177 [◆It9is9ljoQ]
それはもう何ヶ月も前の話
ふわふわとしていて、
何も考えていないって
そんな表情ばかりのアイからは
考え付かない言葉だと、
その当時はそればかりだった
もしかしたらその時から、
彼女はこんな様子だったのかもしれない
思考は洗脳されていたのかもしれない
:10/09/19 13:31
:SH706i
:uijvO.N2
#178 [◆It9is9ljoQ]
「俺も、二人がええ」
気休めを、呟いた
「でも、もう終わり」
「‥俺の何処があかんの?」
只それはもう彼女には何の意味も
持たへんくて、もう二度と俺の元には
帰ってけーへんって事が嫌でも解った
:10/09/19 13:32
:SH706i
:uijvO.N2
#179 [◆It9is9ljoQ]
「何もないんよ」
「じゃあ‥何、やねん
なあ、急過ぎんねんお前」
何で、のんびりとした
恋愛が出来たら俺は
それだけでシアワセやった
此奴やって同じなんやないん
:10/09/19 13:32
:SH706i
:uijvO.N2
#180 [◆It9is9ljoQ]
束縛やってしてるつもりもない
負担にならへんようにって、
何もかも自由に、
只過ごしてきたんやないん
問題なんて何一つ無かったんやないん
お前が居らな、俺は空っぽやねん
:10/09/19 13:33
:SH706i
:uijvO.N2
#181 [◆It9is9ljoQ]
「さよなら」
穏やかな口調、駄々を捏ねる
子供を言い聞かせるような優しい声
辛そうだとか、そんな様子は
少しも無い
:10/09/19 13:33
:SH706i
:uijvO.N2
#182 [◆It9is9ljoQ]
「なあ、理由云うてくれな
俺どないにも出来ひんやんけ」
心なしか、声が震える
「嫌い」
「‥‥嫌、い?本間に言うてるん」
「嫌い、笑った顔も
愛しそうに私を見るその瞳も全部」
:10/09/19 13:34
:SH706i
:uijvO.N2
#183 [◆It9is9ljoQ]
笑みすら無くなった彼女
出会った時も確か、こんな表情ばかりを
していたんやっけ。
懐かん、警戒心剥き出しの
猫みたいな瞳
嫌い?笑った顔が‥?
お前の事を好きやって、
そう見てた目まで
全部が嫌いやって、言い切った
:10/09/19 13:34
:SH706i
:uijvO.N2
#184 [◆It9is9ljoQ]
「それ‥どういう意味やねん」
「んー、その通りの意味」
困ったように笑う、アイ
何か物足りないと言わんばかりに
唇に手を当てると、品定めをするように
俺を見る
:10/09/19 13:35
:SH706i
:uijvO.N2
#185 [◆It9is9ljoQ]
「憎んで、憎んで、嫌って?」
目が霞む、視界が狭まる
その代わり只悪魔みたいな笑みを
浮かべた此奴の姿だけが
ぼんやりと映りこみ
楽しそうな表情で此方に近づく
:10/09/19 13:35
:SH706i
:uijvO.N2
#186 [◆It9is9ljoQ]
「お前なんか要らない、そう
突き放してくれたら私
朔也のこと好きになるかもしれない」
それが、最後にきいた彼女の言葉
声、表情、頭に置かれた
優しい手の感触が最後
次に俺の目に映った彼女は、
少しばかり不機嫌そうな顔をした、遺影
:10/09/19 13:36
:SH706i
:uijvO.N2
#187 [◆It9is9ljoQ]
:10/09/19 13:37
:SH706i
:uijvO.N2
#188 [◆It9is9ljoQ]
身内のみで行われた、小さな葬儀
彼女の死因は紛れもなく自殺なんだと
思っていた。
だけど、俺の耳に入ったのは
事故死という言葉
:10/09/19 14:14
:SH706i
:uijvO.N2
#189 [◆It9is9ljoQ]
それを聞いても尚、
俺は自殺なんじゃないかって、
遺書か何か残っていないのかと
彼女の遺品を見せて貰った
それらしきものは一つもなくて
彼女の携帯の待ち受け画面には
笑顔で笑う俺と、ふてくされたようなアイ
つきあい始めて一ヶ月が経った頃の
写真だった。
:10/09/19 14:15
:SH706i
:uijvO.N2
#190 [◆It9is9ljoQ]
「ちょっ、お前何でそんな離れんねん
俺の顔半分しか写らんやんけ」
「‥ちょっと、近いって」
「かまへんわ、はよ‥ほらもっとこっち」
:10/09/19 14:15
:SH706i
:uijvO.N2
#191 [◆It9is9ljoQ]
何も可笑しい事なんか無かった
何も変わった事なんて無かった
その画面から目が、離されへんくなって
アイのおかんに頼んで、
使う事がないからいうてその携帯を
譲ってもうた。
:10/09/19 14:16
:SH706i
:uijvO.N2
#192 [◆It9is9ljoQ]
葬儀が済んで、家に戻った俺は
ベットに倒れ込んだ、
2、3日前、此処に彼奴が来とったせいか
彼奴の香水の少しツンとした匂いが
少しベットに残ってて、歯を食いしばった
:10/09/19 14:16
:SH706i
:uijvO.N2
#193 [◆It9is9ljoQ]
こないに、都合のええ事があるんか?
本間に、本間に、
最初から此奴死ぬ気で、ほら、あれや
あの分厚い本に洗脳されてもーて
:10/09/19 14:17
:SH706i
:uijvO.N2
#194 [◆It9is9ljoQ]
"この世界に興味が
無くなりました、さよなら"
っちゅー遺書が
残ってたって可笑しいない
:10/09/19 14:18
:SH706i
:uijvO.N2
#195 [◆It9is9ljoQ]
目から知らず知らずに
こぼれ落ちていた涙を
拭くことも忘れて、只俺はぼうっと
アイの携帯の待ち受け画面から
目を離さなかった
知らず知らずのうちに
瞳は閉じられていて
気が付けば、意識を手放していた
:10/09/19 14:18
:SH706i
:uijvO.N2
#196 [◆It9is9ljoQ]
「自分の髪、偉い綺麗やなぁ」
「気安く触らんといて」
「また始まった、ええやん猫ちゃん」
「煩い、私図書館行くから其処退いて」
「俺と付き合うてくれるんやったら
退いたってもえーで」
:10/09/19 14:19
:SH706i
:uijvO.N2
#197 [◆It9is9ljoQ]
出会ったんは高校一年の春
同じクラスになった、猫みたいな女に
一目惚れした
口数少ないし、見た目がほんわり
した黒髪の此奴がどーしても猫にしか
見えへんくて、俺は毎日ちょっかいばっか
かけとった
:10/09/19 14:19
:SH706i
:uijvO.N2
#198 [◆It9is9ljoQ]
思うたより、よく喋る女で
イラチの、ぶすっとした懐かん猫
‥そのまんまやった
:10/09/19 14:20
:SH706i
:uijvO.N2
#199 [◆It9is9ljoQ]
変わった女っちゅーんも知ってた
いっつも堅苦しい分
厚い本ばっかり読んで
ほんまに哲学者に
なるもんやと思うとったし、
:10/09/19 14:20
:SH706i
:uijvO.N2
#200 [◆It9is9ljoQ]
「で、今度は何やねん」
「朔也は生命は平等やと思う?」
「はぁ?」
「平等やないって思うねん、
せやって、簡単に首締めたら簡単に人は
逝ってまうし、死刑やってあるやん」
:10/09/19 14:21
:SH706i
:uijvO.N2
#201 [◆It9is9ljoQ]
「‥お、おう」
「もうええわ、朔也に聞いた私が
阿呆やった、はよ帰ろ」
「何やねんそれー、俺やて、俺やて
考えとるっちゅーねん」
:10/09/19 14:21
:SH706i
:uijvO.N2
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