その日が来る前に、3
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#100 [愛華]
「隆則くん、ごめんね。那佑の
わがままひどくて……」
「あー全然!慣れてますから」
「隆則そこは否定してよ!」
お母さんも相当隆則が気に入ったみたいで、隆則に母親がいない
ことを知って、まるで自分の
息子みたいに接してる。
やっぱり自分の母親と彼氏が
仲いいとうれしいもの。
:11/01/12 15:51
:840SH
:grMj3a42
#101 [愛華]
お父さんは知らないけど(笑)
でもあたしの恩人ってことも
あって感謝はしてるみたい。
「じゃあ、那佑。帰るわね。
隆則くん那佑をよろしくね」
「はい」
「まったねー」
お母さんが帰ってふたりきりに
なると、さっきまで賑やかだった病室が急に静かになる。
:11/01/12 15:54
:840SH
:grMj3a42
#102 [愛華]
誰かがいる時はいいけど、
ふたりになると………
離れていた時間があると
こうなっちゃうのかな。
「………那佑?どうした?」
「ん?なんでもないよ」
そんなことを考えてると、
隆則が心配そうにあたしの顔を
覗きこんだ。
:11/01/12 15:58
:840SH
:grMj3a42
#103 [愛華]
「まーた変なこと考えてんの?」
「…………へ?」
隆則はあたしの隣にボスッと
腰を下ろした。
「……もうどこにも行かない」
もう、どこにも。
「ほんと?」
:11/01/12 16:00
:840SH
:grMj3a42
#104 [愛華]
「ほんとだっつの」
「なら頭なでて」
「ん。いくらでも」
隆則はこうやってあたしの
不安をいつも壊してくれる。
いとも、簡単に。
:11/01/12 16:13
:840SH
:grMj3a42
#105 [愛華]
「那ー佑ー!!」
バンッ!!とドアを開けて
入ってきたのは梓だった。
「あず………」
「大丈夫!?あたし話きいて
心臓止まりそうになったよ!」
「うん、わかったから……」
梓はあたしをぎゅーっと
抱きしめた。
:11/01/12 16:24
:840SH
:grMj3a42
#106 [愛華]
梓には入院してから会って
いなかったけど隆則とのことは電話で話していた。
梓は「そっか」とだけ
言ってくれた。
多分、同じこと考えてたんだ。
直純くんのこと…………。
:11/01/12 19:00
:840SH
:grMj3a42
#107 [愛華]
「あ、タカ久しぶり!!」
「あ、うん」
「結局あんたはいっつも、いい
とこ持ってっちゃうんだね〜
憎いなぁ!!この!!」
そういって首をしめる梓。
「ちょ、苦しいから!やめろ!」
「あはははは!今度こそ、那佑を傷つけたら容赦しないから!」
:11/01/13 18:45
:840SH
:1CBM2/bQ
#108 [愛華]
梓、嬉しそうだな。
心配かけて、ごめんね。
「あ、タカ」
「ん?」
「…………直純、外にいるから」
:11/01/13 18:50
:840SH
:1CBM2/bQ
#109 [愛華]
「…………ん、わかった」
………え?なに………?
直純くんが……来てるの?
隆則はそういって病室から
出ていってしまった。
「梓………どういうこと?
直純くん、来てるの?」
:11/01/13 20:59
:840SH
:1CBM2/bQ
#110 [愛華]
「うん。一緒に来たよ」
「じゃああたしも話さなきゃ。あたし、直純くんに言わなきゃ
ならないことがあるの」
「それは那佑の心配すること
じゃないから大丈夫だよ」
梓はにこっと笑った。
意味がわかんないよ。
あたし直純くんにまだ謝ってない
ひどいこといっぱいしたのに。
怖くて、連絡もしてなかった。
:11/01/13 21:03
:840SH
:1CBM2/bQ
#111 [愛華]
「……………梓、あたしね…
あの日直純くんに言うつもり
だったんだよ」
「………何を?言ってごらん」
「………つきあおう って」
そのほうが幸せになれるかもって
信じたかったから。
:11/01/13 21:07
:840SH
:1CBM2/bQ
#112 [愛華]
「でもあたし………隆則が好きで
やっぱりダメで……それで…」
「だーいじょうぶ!!
那佑はなんも気にしないで。
あとはタカと直純の問題だから」
隆則と……直純くんの?
そこにあたしはいないの?
「タカだって男だもん。
けじめくらいちゃんとするよ
もちろん、直純もね」
:11/01/13 21:22
:840SH
:1CBM2/bQ
#113 [愛華]
梓はなにもかもわかってる
みたいだけど、あたしはなにも
わからない。
…………隆則と直純くんは
何を話してるんだろ………
「ほら、そんな顔しないの。
大丈夫だよ。またみんなで
笑えるから。ねっ」
梓がそういうと、本当にそう
なる気がした。
:11/01/13 21:39
:840SH
:1CBM2/bQ
#114 [愛華]
悩んで悩んで出した答え。
後悔はしてないけれど……
できるなら誰も傷つかない
ほうがいい。
そんなの無理だって知ってても
やっぱり思ってしまうんだ。
どうかまた、みんなで
笑えますように。
涙を流さないですみますように。
:11/01/13 22:17
:840SH
:1CBM2/bQ
#115 [愛華]
-隆則side-
:11/01/14 20:36
:840SH
:7yGY5lfg
#116 [愛華]
ジリジリと蝉が鳴いてた。
もう夏なんだ。
「…………あ、直純いた」
「ん、きたきた!おせーよ!」
病院の中庭のベンチに直純は
座っていた。
だるそうに振り向く。
:11/01/14 20:39
:840SH
:7yGY5lfg
#117 [愛華]
長い時間ここにいたのか、
汗でびっしょりだ。
「あっちーなー……」
「どっか移動すっか?」
「いや。ここでいい。隆兄は?」
「俺もここでいいよ」
焼き付くような陽射しが、
今日は心地好く感じた。
:11/01/14 20:43
:840SH
:7yGY5lfg
#118 [愛華]
那佑の側にいる。
もう一度そう決心したときに
直純の顔が浮かんだ。
直純、ごめんな。
俺から那佑を手放したのに。
話さなくちゃ、と思った。
直純ともう一度。
直純も同じ気持ちだったんだな。
:11/01/14 20:53
:840SH
:7yGY5lfg
#119 [愛華]
「………梓から、聞いたよ。
白石と戻ったんだろ?」
「…………ああ」
決めていたとはいえ、
何を言えばいいんだろう。
でも………『ごめん』は
言うべきじゃない。
そう思った。
「………………よかったじゃん」
:11/01/14 21:39
:840SH
:7yGY5lfg
#120 [愛華]
コーラを飲み干しながら、
直純が小さな声で言った。
「…………悔しいけどさ。まぁ、しゃーないわな。オメデトウ」
「…………え」
「なに?罵られると思った?
漫画みたいに殴るとか?」
「いや……でもそれくらい
されるかも…………みたいな」
:11/01/15 01:23
:840SH
:4SniUugs
#121 [愛華]
文句のひとつでも言えば
いいのに………。
なんで、何も言わないんだ?
俺は直純から那佑を奪った
のも同然なのに。
「なんで……なんも言わない?」
「なんだよ、言ってほしいの?」
:11/01/15 01:27
:840SH
:4SniUugs
#122 [愛華]
そう言って笑った直純は
6年振りに再会した時とは全く
違う、真っ直ぐな目をしていた。
昔のころの、直純だった。
「…………あの日もさ、俺は
白石に告白だけして隆兄のとこ
行かせるつもりだったの!!」
「え…………えぇ!?」
:11/01/15 01:30
:840SH
:4SniUugs
#123 [愛華]
「まぁ白石がまだ隆兄のこと
好きなのは知ってたし。
敵わねぇなーって思ったから。
まさかこんなふうになるとは
思ってなかったけど、結果は
同じだったんだよ。
よって、予想もしてたわけで。
そんなに傷ついてないっす。」
………嘘ついてんじゃねーよ…
:11/01/15 01:33
:840SH
:4SniUugs
#124 [愛華]
でもそれは。
直純の俺のための強がりだって
わかってたから。
苦しくなった。
だから何も言わなかった。
言葉にはしないけど思う。
直純、 ありがとう。
:11/01/15 01:34
:840SH
:4SniUugs
#125 [愛華]
「今度こそ!白石よろしく!」
「おぅ!まかせとけよ!」
そういって笑いあった。
こんな日が来るなんて、
思いもしてなかったな。
『隆則も直純くんも大切なんだ』
那佑の…………おかげだ。
:11/01/15 01:37
:840SH
:4SniUugs
#126 [愛華]
「………それから、隆兄」
「なに?」
「…………白石に手術を決心
させられるのも…………
隆兄しかいないよ」
……………え?
那佑の………手術………?
:11/01/15 01:39
:840SH
:4SniUugs
#127 [愛華]
一瞬なにを言われたのか
全く理解できなかった。
あんなに暑かったのに、今は
空気がひんやりする。
那佑の、手術?
なんだよそれ、聞いてねぇよ。
:11/01/15 14:34
:840SH
:4SniUugs
#128 [愛華]
俺の表情で、直純は俺がなにも
知らないことを悟ったらしい。
「……そっか。隆兄まだ……」
「どーいうことだ?」
「いや、あの………」
「言えよ」
直純は しまった という顔を
している。
………直純が知ってて
俺は知らなかった那佑のこと。
:11/01/15 14:42
:840SH
:4SniUugs
#129 [愛華]
「………多分、白石も言うのに
決心がいることだと思う。
ごめん。てっきりもう知ってる
と思ってたんだ。
俺からは………言えない」
「なんだよ、それ………」
「白石から隆兄が直接聞いてよ」
那佑から直接?
なんだよ……そんな、重要な
ことなのかよ………
:11/01/15 15:43
:840SH
:4SniUugs
#130 [愛華]
心がモヤモヤとしたまま、直純と病室に戻った。
「…………直純くん!!」
「おー元気そうじゃん」
「うん!………日曜日、行け
なくってごめんね」
直純と那佑が笑って話してる。
嬉しいはずなのに………
俺の頭は別のことでいっぱいで。
:11/01/15 15:47
:840SH
:4SniUugs
#131 [愛華]
「直純くん、それと………」
「隆兄とまたつきあいはじめ
たんだろ?よかったじゃん」
「…………うん。ありがとう」
「………ね、タカどしたの?」
直純と那佑の会話をぼーっと
しながら聞いていると、梓に
不思議そうに話し掛けられた。
:11/01/15 15:51
:840SH
:4SniUugs
#132 [愛華]
「直純とちゃんと話したみたい
だね。一件落着だねー……」
梓は嬉しそうにつぶやいた。
一難去ってまた一難、が
正しい気がするんだけど……
「………さて、俺らは用事
あるからもう帰るわ」
「え、二人とももう帰るの?」
:11/01/15 15:56
:840SH
:4SniUugs
#133 [愛華]
「直純?あたしもぉ?」
「いーから梓!帰んぞ!
白石また来るからな」
「う、うん…………」
どうやら直純が気をきかせた
らしいな。
2人で話せってことか……
「んじゃな!隆兄!白石!」
:11/01/15 16:02
:840SH
:4SniUugs
#134 [愛華]
パタン…………
さっきまで騒がしかった病室が
一気に静かになる。
「隆則、座れば?」
「え、あぁうん………」
俺はいつも座る椅子に座った。
:11/01/15 16:17
:840SH
:4SniUugs
#135 [愛華]
「直純くん、よかったねって
言ってくれた。嬉しい」
「そっか…………」
夏は日が長い。
チリチリ肌が焼けるような暑さ。
「………なぁ、那佑」
「んー?」
「………手術、受けるの?」
:11/01/15 17:13
:840SH
:4SniUugs
#136 [愛華]
「…………え」
那佑の動きが止まった。
「……直純から少し話聞いた。
詳しいことは那佑から聞けって。な、手術ってなに?」
「……………」
那佑は下をむいたまま。
何か考えてるみたいだ。
:11/01/15 17:18
:840SH
:4SniUugs
#137 [愛華]
「…………隆則、あのね……」
「うん?」
「……あたし、今のままだと20歳まで心臓もたないんだって。
手術受けないと………あと2年
しか生きられないんだって……」
:11/01/15 17:23
:840SH
:4SniUugs
#138 [愛華]
那佑はなんでもないように、
でも少し悲しそうに言った。
どうしようもないんだから。
そう言っているようだった。
お前は諦めていたのかもしれない
諦めたくなくっても
頑張ることが怖かったんだな。
:11/01/15 17:26
:840SH
:4SniUugs
#139 [愛華]
どうしたらその苦しみから
お前を救えるのか。
あの時の俺はわからなかった。
暑い暑い日だった。
俺達の最後の闘い。
長い夏が始まろうとしていた。
:11/01/15 17:32
:840SH
:4SniUugs
#140 [愛華]
-那佑side-
:11/01/16 18:17
:840SH
:82k1wrAk
#141 [愛華]
暑い暑い夏。
去年の夏も確かベッドの上。
来年は海へいきたい
とか思っていたっけ。
真っ青な空を見ながら、
そんなことを思い出していた。
来年は………あたしは
どこにいて、何をして、
誰といるんだろうか。
:11/01/16 18:21
:840SH
:82k1wrAk
#142 [愛華]
「…………あついなぁ……」
思わず口をついた。
壁にある鏡をなんとなく見ると
点滴されている自分の姿が映る。
………なんか、やだな。
病状は確実に悪化していた。
:11/01/16 18:25
:840SH
:82k1wrAk
#143 [愛華]
医者もお母さんもお父さんも。
何もいわない。
でも自分のことだよ。
自分が1番よくわかる。
多分、あたしはもう長くない。
:11/01/16 18:27
:840SH
:82k1wrAk
#144 [愛華]
何度も言われた。
『全力をつくす。必ず治して
みせるから、手術を受けてくれ』
お母さんお父さんにも
何度も説得された。
…………でも、無理なんだよ。
あたしには、無理だよ………。
:11/01/16 18:29
:840SH
:82k1wrAk
#145 [愛華]
死ぬことは怖い。
みんなに会えなくなるのは嫌。
でも。
手術に失敗してひとりで死ぬなら
みんなに見守られて死ぬ
ほうがいい。
あたしの笑顔がみんなの心に
残るように。
決して消えないように。
:11/01/16 18:35
:840SH
:82k1wrAk
#146 [しずく]
この話大好き!!
がんばって!!
:11/01/16 19:14
:PC
:C.gezF26
#147 [愛華]
>>146 しずく様
ありがとうございます!
更新がんばります(^O^)/
:11/01/16 19:29
:840SH
:82k1wrAk
#148 [愛華]
>>145ガラッ
「おぃーっす。起きろー」
「…………寝てないし」
「そう言うなって。ほら、
プリンあるからさー」
「やったー。隆則も食べよ」
「え、1つしか買ってねーよ」
:11/01/16 20:53
:840SH
:82k1wrAk
#149 [愛華]
いつもと同じように隆則が
来てくれた。
………あの日から。
隆則は前よりも頻繁に会いに
来てくれるようになった。
『あたし今のままだと、あと
2年しか生きられないんだ…』
『手術すれば…よくなるのか?』
:11/01/16 20:56
:840SH
:82k1wrAk
#150 [愛華]
『多分ね。でも成功する確率が
かなり低いんだって。だから
あたしは受けないよ』
『受けないって………』
『手術を受けなくたって、
他の方法があるはずだよ。
あたしは諦めない。
でも手術は………受けない』
隆則はなにも言わなかった。
:11/01/16 21:00
:840SH
:82k1wrAk
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