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#401 [愛華]
「やったーハーゲンダッツ!」

「ハーゲンダッツですけど。

………わかりましたから。
ほら、こっち来て」


こいこい、と手を招く天宮。
隣に座るとやっぱり甘くて
いいにおいがした。


「お昼、何かあったんですか?
なんかいつもと様子違って
ましたけど………」

「うん………」

⏰:11/04/03 11:35 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#402 [愛華]
あたしが言葉につまると、
天宮は首にかかっていた
タオルであたしの髪を
わしゃわしゃとなで始めた。


「………ちょ、自分で!
自分でふけるからっ!」

「………」


無視かい!


なんだろう。この手に
抱きしめられたこともあるのに。

なんか今さらすごく緊張する…

⏰:11/04/03 11:43 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#403 [愛華]
緊張するけど、心地好い。
なんかホッとする……。




「……天宮はさ、もし自分が
大切なひとに似てるって
言われたらどうする?」

「なんですか、それ?」

「例えばの話。そうだなぁ……
要君にさ、『滝は昔の俺の親友にそっくりだ』って言われたら
天宮はどう思う?」

「…………」

⏰:11/04/03 12:25 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#404 [愛華]
「それは『光栄なことだ』って
喜べばいいの?でもその人には
なりきれない。悲しめばいい?


あたし……よくわかんなくて」


あの時の松矢君の目。
あたしに誰を重ねていた?
あんなにも哀しい瞳で
誰を見つめていた?


「誰かに言われたんですか?」

「……松矢君、に。昔大事だった人に似てるって言われた…」

⏰:11/04/03 12:31 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#405 [愛華]
「………」

「黙らないでよ」

「………」


結局黙ってるし。
松矢君と話しても怒らないって
言ったのに。嘘つき。
どんだけ松矢君嫌いなのよ……



あたしも何も言えなくなって
ただひたすらにアイスを食べて
いると、天宮はゆっくりと
立ち上がり、あたしがもたれて
いたソファに座った。

⏰:11/04/03 12:35 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#406 [愛華]
そのまま上から、またあたしの
頭をふきはじめる。



「……そんなに気にすること
なんですか?軽く流せばいい話
じゃないんですか?」

「うん…………。でもさ、
なんかあまりにも悲しそうな
目してるから。



悪いことしてるわけじゃないのに
謝りたくなっちゃったの。

その人じゃなくてごめんなさい
………って。」

⏰:11/04/03 18:42 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#407 [まぁ]
あげ\(^^)/

⏰:11/04/10 01:08 📱:SH01C 🆔:nmZ49yzs


#408 [かこ]
主さんお忙しいでしょうが、更新されるの待ってます!\(^ー^)/

⏰:11/04/10 19:58 📱:SA002 🆔:./.7oq1Q


#409 [愛華]
>>407
>>408

ありがとうございます!!
最近忙しさがピークで全然
更新できていなくて本当に
申し訳ないです(ノ_・。)


今週末には落ち着くと思われますので、更新を再開したいと
思っています。

待っていてくださると
嬉しいです!!

⏰:11/04/11 22:29 📱:840SH 🆔:KHn.mgRU


#410 [,]
頑張って下さい
更新待ってます

⏰:11/04/16 00:37 📱:F05C 🆔:emjRMazM


#411 [愛華]
>>410

ありがとうございます!!
今日から更新再開します(^-^)

⏰:11/04/16 13:22 📱:840SH 🆔:r6CJTZ8o


#412 [愛華]
>>406



松矢君が初対面から優しく
してくれていたのは……


『あたし』じゃなくて、
あたしに重ねた『誰か』。


そう思うとすごく悲しくて。
怒りたくもなったけど、なぜか


謝りたくなってしまったんだ。

⏰:11/04/16 13:30 📱:840SH 🆔:r6CJTZ8o


#413 [愛華]
なんとなく誰かに甘えたくなって
後ろに座っている天宮の膝に
顔を埋めた。


そんなあたしの頭をぽんぽんと
なでる手はいつもより優しくて。



「……天宮、いいにおいするー」

「そうですか?どんなにおい?」

「んとね、甘くておいしそうな
ほわーってしたにおい」

⏰:11/04/16 13:36 📱:840SH 🆔:r6CJTZ8o


#414 [愛華]
「んーなんだろ?シャンプー?」

「わかんないけど、なんか
ほっとするにおい……」

「えー?」


天宮は自分で自分のにおいを
かぐけどピンときていない様子。


「んーわかんないですね……」

「別にいーよわかんなくても」

⏰:11/04/16 19:38 📱:840SH 🆔:r6CJTZ8o


#415 [愛華]
あたしだけがわかれば。



その言葉は飲み込んだ。



今日のあたしはなんか変だな。
妙に甘えたい気分だ。
やっぱり松矢君のことが
ショックだったのかな………。


天宮の膝に顔を埋めたまま
すぐ側にある温もりに安心を
感じていた。

⏰:11/04/16 19:42 📱:840SH 🆔:r6CJTZ8o


#416 [愛華]
「なんか今日変ですね陽向さん。松矢のせいですか?」


お、するどい。
でもあたしはあえて答えない。


「俺、動けないんですけど……」

「いーやーだ。ここにいて!」


あたしは天宮が席をたたないよう膝に手をまわして抱き着く。

我ながらなんてわがまま。

⏰:11/04/16 19:53 📱:840SH 🆔:r6CJTZ8o


#417 [愛華]
でもそんなわがままを聞いて
くれる優しい天宮。


きっと、あたしのことを
「手のかかる妹」ぐらいにしか
思ってないんだろうな。




そう思うとちょっとだけ胸が
ちくりと痛んだ気がした。


「………ん?」

「どうかしました?」

⏰:11/04/18 00:01 📱:840SH 🆔:boYxZINA


#418 [愛華]
「いや、別に……んー?」



なんだ?今の。
なんか面白くない気分だった。



あたしは頭を捻りながら
ゆっくり立ち上がると、天宮の
隣に腰を下ろした。


「アイス溶けてますよ」

「天宮にあげるよ。
あたしは優しいから」

「溶けたからいらないだけでしょ責任持って食べなさい」

⏰:11/04/18 00:06 📱:840SH 🆔:boYxZINA


#419 [愛華]
ちょっとだけ怒った声。
隣の天宮をそっと盗み見すると
そこには穏やかな天宮の顔。



あぁ……なんて幸せなんだろう。
なんて温かいんだろう。



誰かが側にいてくれる。
こんなふうに笑顔で接して
頭を撫でてくれる。


でも、でもね。

⏰:11/04/18 00:11 📱:840SH 🆔:boYxZINA


#420 [愛華]
あまり優しくしすぎないでよ。
理不尽かもしれないけど。


あまり優しくされちゃうと
ここがあたしの居場所だって
勘違いしてしまうから。


期限つきの家族になりたいなんて言ってしまったこと、
ちょっとだけ後悔してるの。



ただ、側にいてくれるだけで
よかったのに。
その先を求めてしまったから。

⏰:11/04/18 00:16 📱:840SH 🆔:boYxZINA


#421 [愛華]
そのせいでさよならが
辛くなってしまっても。




そんなの



自業自得だ。




大好きな甘い香りを側に感じて
あたしはゆっくりと夢へ旅立つ。

⏰:11/04/18 00:18 📱:840SH 🆔:boYxZINA


#422 [まぁ]
期待あげ(´ω`)

⏰:11/04/22 23:52 📱:SH01C 🆔:Z2oxuTsQ


#423 [愛華]
>>422 まぁ様

あげありがとうございます!!

⏰:11/04/24 23:05 📱:840SH 🆔:owZBWWLA


#424 [愛華]









歓声が体育館にあふれる。
鳴り響く笛とボールの弾む音。



「あいらぶ、要ー!!
がんばってー!!要ー!!」

「皐月、はずかしいよ……」

⏰:11/04/24 23:10 📱:840SH 🆔:owZBWWLA


#425 [愛華]
その中で一際目立つ応援の声。
メイクばっちりで昨日と同じ
学ラン姿の彼…じゃなくて彼女。



「なんでまだその格好なの?皐月次バレー試合じゃないの?」

「学ラン気に入ったから!
あたしがいなくても人数足りてるし要の応援したいの!

それに次はタッキーの試合だし」

そう言って袋から、今度は
天宮応援グッズを取り出す皐月。

⏰:11/04/24 23:15 📱:840SH 🆔:owZBWWLA


#426 [愛華]
体育祭二日目。


テニスで予選敗退したあたしは
今日は試合なし。
よって応援のみ。


昨日よりもさらに盛り上がりを
見せる円の熱い生徒たち。


その中であたしは無意識に
ひとりのひとを探していた。


ただ、言いたいことがあって。

⏰:11/04/24 23:19 📱:840SH 🆔:owZBWWLA


#427 [愛華]
朝から探しているけれど、
いまだに見つからない。

いつもはあっちから来ることの
ほうが多いのになぁ。



「ねぇ陽向!次タッキーの試合
見に行くでしょう?ソフト!」

「あ、うん………」

「あれ、乗り気じゃないの?」

「そーいうわけじゃないよ!
行こうか、グラウンドだよね」

⏰:11/04/24 23:26 📱:840SH 🆔:owZBWWLA


#428 [愛華]
もしかしたらグラウンドに
いるかもしれない。

そう考えて、あたしは
自分と天宮の上着を
持って皐月と体育館を出た。








で、その考えは的中。

⏰:11/04/24 23:30 📱:840SH 🆔:owZBWWLA


#429 [愛華]










「滝ー試合もうすぐだぞー」

「あれ、そうだっけ。んー
めんどくせー……。」

「めんどくさい言うなコラ。
じじいかお前は。若さがない!」

⏰:11/04/25 21:41 📱:840SH 🆔:BVqHC4d.


#430 [愛華]
「やかましいわ」


ペットボトルに残っている
水を一気に流し込むと、喉が
じんわりと潤っていった。


要の額には汗が光っていて、
湯気が出てきそうなほど
体から熱気を放っている。



「………陽向さんは?」

「体育館にいたよ。皐月と。
多分もう少しでこっち来るよ」

⏰:11/04/29 20:31 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#431 [愛華]
パタパタとタオルで顔をあおぎ
ながら要が言う。



「そんなに心配か?」

「なにが」

「とぼけんなよ。かわいくねーぞ素直にならないと」

「かわいくなくて結構だよ」


……相変わらずこいつは
ムカつく。なんでもかんでも
知ったよーな顔しやがって。


だから信頼できる訳でもあるが。

⏰:11/04/29 20:36 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#432 [愛華]
要は俺の隣に腰を下ろし、
長く息を吐く。








「…………お前のいうとおり。
やっぱ松矢、彼女いたよ」


言いづらそうに紡がれる言葉。


「いた……って過去形?」

⏰:11/04/29 20:40 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#433 [愛華]
「うん。中学で松矢と同じ
クラスだったやつに確認した。

他中の子だったみたいだ。
かなり仲よかったらしいよ」

「…………」


人の過去を探ったりするのは
あんまり好きじゃない。


でも今回は別。

どうやら俺は
あの子が絡むと冷静では
いられなくなるらしい。

⏰:11/04/29 20:44 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#434 [愛華]
「そんなに仲よかったのに、
なんで別れたんだよ?」

「いや………そこまで
わからないけど。でも確実に
言えることは………。


松矢はまだその子が好きだよ」


確信に近い要の冷静な口調。
急に肌寒くなった気がした。


「なんでわかんのそんなこと」

「………言いづらいんだけどさ。これ、見てみろよ」

⏰:11/04/29 20:49 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#435 [愛華]
目の前に差し出された写真。
そこにはひとりの女の子。


「………松矢の元、彼女。
どうやって手に入れたかは
聞くなよ。」


俺はその写真に釘付けになった。


見慣れた………女の子。
いや、違う。
見たことない女の子だ。
でもこの子を知ってる。



なんだ、これ。

⏰:11/04/29 20:54 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#436 [愛華]
髪が長くて、ちょっとだけ
幼い顔立ち。
写真に写る笑顔は、
幸せに満ち溢れている。



…………似てる。
笑顔が。雰囲気が。




陽向さんに……………。



松矢が重ねていた彼女は
色あせることなく今は
俺の、隣にいたんだ。

⏰:11/04/29 21:13 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#437 [愛華]











「れーんっ!れんちゃんっ!」



忘れたはずの声がする。
今もずっと側で。耳元で。

呪いを刻むんだ。
君を忘れないように。

⏰:11/04/30 21:09 📱:840SH 🆔:LtBipa2.


#438 [愛華]
忘れようとした。

そしてひとりになった。


誰かを想ったり
そういうのがめんどくさくて
ならひとりがいいと思った。



なのに今
君によく似た女の子が現れて


気づかされる。


忘れてなんかいなかった。

⏰:11/04/30 21:13 📱:840SH 🆔:LtBipa2.


#439 [愛華]
転入生のことを聞いて
どんなやつか気になった。


あの階段で会ったとき


今まで必死に守ってきたものが
壊れた気がした。



似てるんだ。
なにもかもが。


興味が沸いて、話しかけた。

⏰:11/04/30 21:17 📱:840SH 🆔:LtBipa2.


#440 [愛華]
そしてまた気づく。


君もひとりなのだと。


俺と同じように別れを経験し
闇を抱えているのだと。



最初は好奇心だけのつもりだっただけど時間を重ねるごとに…



俺は、どうしたいんだ……?

⏰:11/04/30 21:20 📱:840SH 🆔:LtBipa2.


#441 [愛華]
ぼーっと昔のことを思い出して
いると、グラウンドに響く
応援の声が歓声に変わった
ことに気づいた。



……あ、やっと終わった。
もう試合ないし帰るかな。


なんとなく気分が優れない。
多分昨日のことが原因か。


最近、陽向に対する自分の
気持ちがよくわからなくて
接しかたに迷っていた。

⏰:11/04/30 21:27 📱:840SH 🆔:LtBipa2.


#442 [愛華]
多分、罪悪感もあったのかも。
自分でも気づいてたから。

自分にもこんな優しい一面が
あったなんてびっくりした。




「……よい、しょっと」


重い腰を上げ、ぱんぱんと
ごみをはらう。動いていない
からか、少し肌寒く感じた。



「あ、いた!」

⏰:11/04/30 22:05 📱:840SH 🆔:LtBipa2.


#443 [愛華]
「んぁ?」

「松矢くん!」


今では聞き慣れた声に振り向くと
そこには悩みの元凶の女の子が
笑顔でひらひらと手を振っていた



………タイミング悪っ!


「あ、教室もどるの?」

「いや……べつに……」

⏰:11/05/01 09:51 📱:840SH 🆔:6owxnX3s


#444 [まぁ]
期待あげ

⏰:11/05/10 22:45 📱:SH01C 🆔:Yo/QkqYc


#445 [愛華]
>>444 まぁ様
あげありがとうございます!

⏰:11/05/14 16:57 📱:840SH 🆔:V3VvcS7s


#446 [愛華]
俺がそう言うと、まだここにいるという意味にとったらしく、
陽向は近くの石段に腰を下ろした



「疲れたねぇ。あたし昨日で
負けちゃったから今日はなんも
してないんだけどさ」

「じゃあなんで疲れんだよ」

「んー……雰囲気??」

「なんだそれ」


気のせいなのか、いつもより
陽向の笑顔が優しい。

⏰:11/05/15 09:27 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#447 [愛華]
あいつのことを考えている時に
来たから、ちょっと焦る。


でも大丈夫。上手く笑える。




「天宮の応援は?」

「うん、これから行くんだ」

「そっか」


大丈夫。   笑、える……

⏰:11/05/15 09:32 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#448 [愛華]
「………その前にね、
松矢君に言いたいことがあって」



「俺に?えーなになに?
愛の告白?だったら嬉しいな」

「真面目に聞いてよね」



あぁ………なんで君は。
こんなにあいつに似てるんだ。


茶化す俺をあしらったり
優しく諭すように笑ったり

⏰:11/05/15 09:35 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#449 [愛華]
いなくなった君がそこにいる。
それが少し嬉しかった。



ちょっとずつ、ちょっとずつ、


心を開いていってくれた。
『友達』と言ってくれるように
なった。




笑ってくれるだけで
心が救われた気がした。

⏰:11/05/15 09:40 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#450 [愛華]







「………無理に笑わないで」

「え………?」





「あたしは松矢君の友達でしょ。友達の前では作り笑いとか
しないものなんじゃないの?」

⏰:11/05/15 09:42 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#451 [愛華]
そして、どこまでも真っ直ぐ。


大事なことには鈍感で
でも痛みには敏感で



あいつとは正反対のはずなのに。




「なんか、丸くなったね陽向」

「え…あたし太った!?」

⏰:11/05/15 09:46 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#452 [愛華]
「いや、そーじゃないよ。
なんか雰囲気がさ」

「そうかな…」

「うん。だって最初のころは
『あんたとは仲良くしたくない』みたいなこと言われたし」

「えっ……そうだっけ」

「うん。めちゃ傷ついた」

「ご、ごめん………でも今は
友達だからね!」

⏰:11/05/15 09:50 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#453 [愛華]
友達か。



「……うん、ありがとう」


俺は小さな声で呟いた。
ちょっと泣きそうだったから。
どんだけ弱ってんだ、俺。



「あ、あとね」

「うん」


そこから先の言葉は出ずに、
陽向はもじもじとしている。

⏰:11/05/15 09:55 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#454 [愛華]
「なに、言ってよ」


俺がそう言って微笑むと、
陽向はたっぷり間をとって
俺を見つめた。





「あたしは、松矢君の大切だった人にはなれないから。

あたしはあたしとして
松矢君に接するからね!」

「は?」

⏰:11/05/15 10:02 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#455 [愛華]
「それだけっ」

「え、それだけ?」

「それだけだよ!」



陽向は恥ずかしそうに言う。



なんだ、言いたいことって
それかよ………。



なんか、笑えてきた。

⏰:11/05/15 10:07 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#456 [愛華]
「はははっ」

「な、なんで笑うの!」



だって、だってさ。
多分陽向のことだから
きっとこのことでいっぱい
悩んでたんだろうな。


ちょっとでも俺のこと
考えてくれてた。


なんでこんなに嬉しいんだ。


そんなのもう決まってる。

⏰:11/05/15 10:12 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#457 [愛華]
「………陽向」

「はい?」

「好きだよ」

「え?」


風に押されるように手を伸ばし
ゆっくりと抱きしめ、
罪悪感の中で温もりを確かめる。



もう、どっちでもいいや。

⏰:11/05/19 07:36 📱:840SH 🆔:GO.aHjsg


#458 [愛華]
「ま…………つやくん」

「嘘。冗談だよ。でも
ちょっとだけこのままでいい?
疲れて少し具合悪いんだ」



そう言って力を腕にこめる。


きっと陽向は困った顔してる。
それがわかっていながらも
離そうとは考えない。


我ながらひどい男だ。


それでも。

⏰:11/05/19 07:41 📱:840SH 🆔:GO.aHjsg


#459 [愛華]
「松矢君……具合悪いの?
じゃあ保健室に……」

「ん、いいから」

「だって人が来るかもしれな…」

「いいんだってば」



それでも、ただ欲しい。



難しいなら考えなくていい。
ただ本能に従えばいい。

⏰:11/05/20 19:46 📱:840SH 🆔:wuKfRNF2


#460 [愛華]
あいつに似ているのか
似ていないのか


もう、どうでもいい。






ただ君が欲しいんだ。




心の中に浮かぶのはあいつでは
なくて全部陽向の笑顔だった。

⏰:11/05/20 19:50 📱:840SH 🆔:wuKfRNF2


#461 [愛華]












結局、陽向さんは応援には
来なかった。
皐月の話によると、いつのまにかいなくなったらしい。

まぁ陽向さんが急にいなくなる
のは今に始まったことじゃない。

⏰:11/05/20 19:53 📱:840SH 🆔:wuKfRNF2


#462 [愛華]
でもやっぱり心配だ。
松矢の話を聞いてから……。


もしかして陽向さん、
松矢に会いにいったのかも。



ふいに階段を上る足が止まる。
同時に心に広がるモヤモヤした
黒くて重いなにか。



「………重症だな俺……」

⏰:11/05/20 19:56 📱:840SH 🆔:wuKfRNF2


#463 [愛華]
自分の独占欲の強さに少し
呆れながら、頭を抱えてまた
階段を上り始める。


………ん?誰だ?



人の気配を側に感じ、顔を上げる

松矢と俺って、階段に縁が
あるのかもしれないと思った。



「……松矢……」

⏰:11/05/25 07:19 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#464 [愛華]
怠そうにどこか一点を見つめ、
階段に座ったまま動かない。

でも俺の声で我にかえったのか、
ゆっくりと視線だけをこっちに
向けた。


真っすぐで曇りのない。
まるで何かを決心したかのような

そんな目。



「陽向なら、庭にいるよ」

⏰:11/05/25 21:09 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#465 [愛華]
「……なんでんなこと……」

「さっきまで一緒だったから」


そう言って微笑む松矢。


色々言いたいことあるけど
一言で言えば……


ムカつく。




「あ、そう。ありがとう」

「どーいたしまして」

⏰:11/05/25 21:12 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#466 [愛華]
「…………」

「なに、まだなにか?」

「いや、てゆーかさ。


お前になにがあったかなんて
知らないしどーでもいいけど。

お前が陽向さんを陽向さんとして見てないなら。

俺は負ける気しないから」


松矢の目が少しだけ、
ほんの少しだけ鋭くなった。

⏰:11/05/25 21:19 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#467 [愛華]
「負けるってなに?なんの話?」

「しらばっくれんなよ」


「あぁ、そうか。天宮は
勝負のつもりなんだね。

だとしたら何?
陽向は勝った時の景品って訳?」

「………なんだと?」


陽向さんが景品………?
んなわけないだろうが。

⏰:11/05/25 21:24 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#468 [愛華]
そう言いたかったけど、
言葉にならなかった。


松矢が勝ち誇ったような目で
俺を見つめていたから。



「俺は勝負してるつもりない。
ただ欲しいものの為に頑張る。

俺なりのやり方で」



松矢はそれだけ言うと
やっぱり怠そうにしながら
階段を下りていった。

⏰:11/05/25 21:27 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#469 [愛華]
「…………天宮……?」


沈黙を破る小さな声。顔を
上げると、階段の上から不安そうに俺を見る陽向さんがいた。



……嘘つきやがったな松矢。



「陽向さん、こんなとこで
何してるんですか?みんな
ソフトの決勝見にいってますよ」

「そっか、だから校内に誰も
いないんだ……忘れ物を教室に
取りに来たんだ。

⏰:11/05/25 21:33 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#470 [愛華]
天宮こそなにしてるの?
今、松矢君の声が聞こえた気がしたんだけど………」

「あぁ、ちょっと世間話を」

「え、いつのまにそんなに
仲良くなったの?」

「俺と松矢が仲良く?
気持ち悪いこと言わないで下さい
全く逆ですから」

「本当に松矢君嫌いなんだね…」

⏰:11/05/25 21:38 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#471 [愛華]
陽向さんは呆れたように呟くと
階段に腰を下ろした。


どうやらソフトの決勝を
見に行く気はないらしい。
加えて、思い詰めたような顔。


たいてい陽向さんがこんな顔を
する時は何か言いたいことが
あったり、不安な時。



「……何かあったんですか?」

「いや、あの………」

⏰:11/05/25 21:43 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#472 [愛華]
「俺に言えないようなこと?」

「………じゃあ聞く。


男の子ってどんな時に
誰かを抱きしめたくなるの?」



はい?
抱きしめたくなる……?
男が、誰かを?


陽向さんの言葉を頭で繰り返す。

⏰:11/05/25 21:50 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#473 [愛華]
抱きしめ………

ていうか。


「………抱きしめられたの?」

「………!」


陽向さんの顔が強張る。
唇をきゅっと結んだまま。


「松矢、ですか」

「………天宮、怒ってる?」

⏰:11/05/25 21:53 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#474 [愛華]
「怒ってはいないです」

「嘘、声が怒ってる」


怒ってないってば。
ただ今ここに松矢がいたら
間違いなく地獄送り。


なるほど、あの勝ち誇った目は
こういう訳か………。



なんか全部繋がった気がした。


そして次に沸くのは
どうしようもない嫉妬。

⏰:11/05/25 21:57 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#475 [愛華]
「陽向さん」


俺が名前を呼ぶと、びくっと
肩を震わせる。

そんなに俺、怖い顔してる?



「怒ってないからこっち向いて」


そういって笑いかけると
少し戸惑いながらも
陽向さんは俺のほうを向いた。

⏰:11/05/26 23:00 📱:840SH 🆔:i6rKneow


#476 [愛華]
「男はね、陽向さんが思ってる
よりも恐い生き物なんですよ」

「恐い……?」

「そう。悪いこと考えてる男も
いっぱいいるんです。だから
簡単に抱きしめられたり、
そんなに油断しちゃダメです。
もっと警戒してください」

「警戒…………」


陽向さんは、よくわからない、
というような顔をして首を傾げる

⏰:11/05/26 23:05 📱:840SH 🆔:i6rKneow


#477 [愛華]
外からソフトの応援の声が
聞こえる。もう体育祭も終わり。



「そ……っか。確かにね、
ちょっと怖かったんだよね。
松矢君、いつもと違ったし。」

「そうなんですか」

「うん……………ねぇ。



天宮も、そうなの?」

⏰:11/05/26 23:10 📱:840SH 🆔:i6rKneow


#478 [愛華]
あぁ…………そっか。



俺は。



家族としてじゃなくて
ただ男として


警戒して欲しかったんだ。



俺はゆっくり陽向さんの腕を引き自分の腕の中に収めた。

⏰:11/05/26 23:14 📱:840SH 🆔:i6rKneow


#479 [愛華]
「あまみや………?」

「…………」




離したくない。


誰にも、渡したくない。



どうしたら、

家族なんかじゃなくて
男として見てくれる?

⏰:11/05/28 21:08 📱:840SH 🆔:ob2eumJY


#480 [愛華]
抱きしめた腕、背中に回された
陽向さんの腕から温もりが伝わる



「天宮………どうしたぁ?」

「なんもないですよ。ね、


今も恐いですか?」

「なにが?」

「今の状況」

⏰:11/05/28 21:13 📱:840SH 🆔:ob2eumJY


#481 [愛華]
「怖くないよ。天宮なら」

「そうですか」



嬉しいのに嬉しくない。
俺は最低かもしれない。



「………世の中、俺みたいな
男ばっかじゃないんですよ」

「え?」


俺だって。

⏰:11/05/28 21:17 📱:840SH 🆔:ob2eumJY


#482 [愛華]
頭の中がぐるぐるして、
正常な判断ができない。



「俺だって、男だから。

同じなんですよ」

「え、なに言っ……」



自分でも何をしたのか、


わからなかった。

⏰:11/05/28 21:21 📱:840SH 🆔:ob2eumJY


#483 [愛華]
ただ我慢できなくて

何かを証明するみたいに



陽向さんにキスをした。




奪うように
自分のものにするように



後戻りできない

もう、家族には戻れない。

⏰:11/05/28 21:33 📱:840SH 🆔:ob2eumJY


#484 [我輩は匿名である]
この小説大好き
頑張ってください

⏰:11/05/30 02:09 📱:SH01C 🆔:QdhPLFQY


#485 [愛華]
>>484

そう言って頂けて嬉しいです!
なかなか更新できていませんが
頑張ります!

⏰:11/05/30 23:13 📱:840SH 🆔:ty0fX3qA


#486 [我輩は匿名である]
あげ
頑張ってください

⏰:11/06/04 00:00 📱:SH01C 🆔:LPAhazoE


#487 [愛華]
>>486


ありがとうございます!!
更新がんばります!

⏰:11/06/04 21:33 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#488 [愛華]
第8章 -欲望距離-

⏰:11/06/04 21:35 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#489 [愛華]
きっとあたしは愛に飢えていた。

今までその温かいものを
お母さんにしかもらったことが
なかったから。


お母さんはあたしの全てで。




誰もいらない。
他のひとなんていらない。


あたしに愛をくれる
お母さんだけいればいい。

⏰:11/06/04 21:37 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#490 [愛華]
だからびっくりしたの。



冷たく、そして硬い。
氷のようなあたしの心を
まるごと包み込んでくれて


「いなくならないで」って
言ってくれた。


涙が溢れるほどの温もりと
愛をあたしに注いでくれた。


ほんとうに、嬉しかった。

⏰:11/06/04 21:40 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#491 [愛華]
あなたがあたしにとって
2人目の大切な人になった。


たまの意地悪や
毎日の優しさや笑顔。


全部があたしを満たしていった。


お母さんとは違う、
温かくて幸せな気持ち。


その気持ちの名前は分からない。

⏰:11/06/04 21:44 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#492 [愛華]
分からないまま、側にいることを望み続けていた。
それは正しいことなのか
ずっと迷いながら。



側にいたいのに
もうひとりのあたしが言うの。


「あたしと天宮は家族なんかじゃない。あたしがいるべき場所はここじゃない」って。


天宮。

あたしは天宮の家族、でしょ?
そう言ってくれたよね?

⏰:11/06/04 21:49 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#493 [愛華]
だって『家族』としてしか。
天宮の側にはいられないの。

『家族』としてでしか
天宮との繋がりは持てないの。



なら壊さないで。
まだ離れたくなんかないから
『家族』のままで……。


そうやってもうひとりの
自分に言い聞かせてきたの。

⏰:11/06/04 21:54 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#494 [愛華]
そんなあたしの想いは今



目の前にいる天宮によって
まるでドミノが倒れるみたいに


ぱた、ぱたと



収拾がつかなくなるくらいに




崩されて…………。

⏰:11/06/04 21:58 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#495 [愛華]











「…………あまみっ……」


言葉を紡ごうと唇から出した声も
天宮のそれによって塞がれた。

⏰:11/06/04 22:00 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#496 [愛華]
なにが起こったの。


ただ気がついたら目の前に
天宮がいて………キスされた。



「………っ……ん……」


顔を背けようとしても
天宮の手によって頭も固定されて身動きがとれない。


顔が熱を帯びていくのがわかる。
天宮は今どんな顔してる?
でも目も開けられない。

⏰:11/06/04 22:04 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#497 [愛華]
息が苦しくなり、
拳でどんどんと天宮の胸を
叩くけれどびくともしない。


『俺も男なんですよ』


そんな天宮の声がこだまする。





やっと唇が解放されると
天宮のものか自分のものか
どちらのものともとれない
甘くて熱い息が漏れた。

⏰:11/06/04 22:09 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#498 [愛華]
体に力が入らなくなり、
そのまま後ろの壁によしかかる。


ようやく言葉が出たのは
荒い呼吸が落ち着いて
惚照っていた体が今の状況により冷めてきた頃。



「…………なんで……?」



それしか、出なかった。

⏰:11/06/04 22:15 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#499 [愛華]
天宮は床に落としていた視線を
あたしに向けて呟く。

その目はいつも通りの天宮のもの


「………なんで……って?」

「なんでキスなんてしたの…?」

「キスしたかったから」

「理由になってないよ」

「嫌でしたか?」

「そういう問題じゃない!」

⏰:11/06/04 22:20 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#500 [愛華]
あたしが怒鳴ると、天宮は
自嘲気味にクスッと笑い
あたしをただ見つめる。


「……陽向さん、無防備すぎ。
さっきも言ったでしょ?
何も知らない、じゃ済まない話も世の中いっぱいあるんです。


わかった?今みたいなことを
平気でする男もいるってこと」

「なに、それ………」

「……………」


言葉が、出ない。

⏰:11/06/05 13:20 📱:840SH 🆔:dJ3XR0RI


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