Stay with me...
最新 最初 🆕
#1 [愛華]
その日が来る前に、
を書かせて頂いていた愛華です。
2作目です。
よろしくお願いします!

前作
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/12041/

>>2 感想板
>>3 アンカー

⏰:11/02/15 23:56 📱:840SH 🆔:joGe9RtI


#2 [愛華]
感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4894/

⏰:11/02/15 23:57 📱:840SH 🆔:joGe9RtI


#3 [愛華]
アンカー

>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800
>>801-900
>>901-1000

⏰:11/02/16 00:00 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#4 [愛華]
1章-脱獄少女-

⏰:11/02/16 20:27 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#5 [愛華]
私は今、見知らぬ土地にいる。



大切なひとを探すために。






「…………あっついし。
っつーか本当にここかな……」


羽田陽向(はねだひなた)
15歳。

⏰:11/02/16 20:30 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#6 [愛華]
簡単に言うと家出。
まぁ色々わけありだけど
それはまたあとで。


故郷を遠く離れ、異国に等しい
ここに来たのにはわけがある。



あたしはお母さんに会うために
たったひとりでここに来た。



しかし色々問題があった。

お母さんの居場所を知らない。

⏰:11/02/16 20:37 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#7 [愛華]
「……うぁー……どうすりゃ
いいってんだよ……ってか
家出る時、気付けよ自分…」



家を出てから3日。
持っているのは少しの荷物と
バイトで稼いだそれなりのお金


若いころのお母さんの写真。




のみ。

⏰:11/02/16 20:48 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#8 [愛華]
3日間なにをすればいいか
わからないまま過ぎてしまった。


そんな自分が情けなくて、
あたしはひとり公園のベンチで
うなだれていた。


ジリジリと焼け付くような日差し
子供の笑い声 自転車のベルの音


その全てがあたしを焦らせる。

⏰:11/02/16 20:54 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#9 [愛華]
「あー…ホテル探さなきゃ…」


未成年のあたしが何日間も
同じホテルに泊まればさすがに
怪しまれる。警察なんかに
連絡されたらかなり困るので、
毎日違うホテルに泊まっていた。


今日も何もできないままか……


あたしはホテル探しのため
立ち上がろうとした。

その瞬間強烈な眠気に襲われた。

⏰:11/02/16 21:00 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#10 [愛華]
「うわ…………っと」


反射的にベンチにまた座りこむ。


あー…最近あまり寝れてないし…
てゆーか……寝てる場合じゃ…


必死に起き上がろうとするが
体が言うことをきかない。


どんどん夢の中に引き込まれる。

⏰:11/02/16 21:13 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#11 [愛華]
気がつくと眠りについていた。


相当疲れていたらしく、
あたしは夢を見なかった。
ぐっすりと眠れるのは
本当に久しぶりで。




夢を見ないことはありがたい。



お母………さん。


今、どこにいますか………?

⏰:11/02/16 21:39 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#12 [愛華]
'







触らないで。

お願いだからあたしに触らないで


あたしの心に入ってこないで。


あたしは一人で…大丈夫だから。

⏰:11/02/16 21:50 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#13 [愛華]
'









「………大丈夫、ですか?」

………うるさいな。

「風邪ひきますよ……」

わかってるよ。今起きるから。

⏰:11/02/16 21:56 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#14 [愛華]
「あの…………」


「だーっ!!うるっさいな!!
起きるって言ってんでしょ!?」


飛び起きると周りは真っ暗。

………あれ?
子供もいない。
耳障りな自転車のベルも。


いつのまにか太陽も沈んでいた。

⏰:11/02/16 22:00 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#15 [愛華]
あたしどのくらい寝てた…?
寝不足って怖いな………。




「……あの、すいませんでした」

「へ?」


隣を見ると見知らぬ男が。
いや、知ってるわけないけど…

けっこう背が高い。
余裕で185はあるんじゃないか。

⏰:11/02/16 22:13 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#16 [愛華]
暗くてよく見えないけれど、
心配そうな顔をしている。


「あ、お兄さんが起こして
くれたの?ありがとね」

「いえ。余計なことをしたかと
思ったんですが………」


あ、そうか。怒鳴っちゃった…
でも怒ってないみたいだ。


よく見ると、制服を着ている。
高校生……?
それにしては口調が………

⏰:11/02/16 22:45 📱:840SH 🆔:30baR7.c


#17 [愛華]
「あの、家に帰ったほうが…」

「え?あ、そうだね」


今どきの男ってみんなこんな
もんなんだろうか?
堅苦しいな………



「……あ、お兄さん。ついでに
ここらへんで安くていいホテル
ないかなぁ?」

「…………ホテル、ですか…?」

⏰:11/02/17 20:57 📱:840SH 🆔:SVPXtlTg


#18 [愛華]
なんかめんどくさそうなので
さっさとここを去ろうと、
あたしは荷物を持って立ち上がる

そんなあたしを男はつま先から
頭のてっぺんまで見回す。



「……なに?なんかついてる?」

「旅行………というよりは
家出って感じですね?」


わぉ。

⏰:11/02/17 21:02 📱:840SH 🆔:SVPXtlTg


#19 [愛華]
男は隣のベンチに腰を下ろした。
外灯のおかげで今ははっきり
顔が見える。

少し幼い感じの顔。
それでも男っぽい感じはする。



「………お兄さん、勘いいね。
ピンポーン。でもちょっと違う。
あたしは家出っていうよりも
逃げてきたの」

「君、名前は?」

⏰:11/02/17 21:15 📱:840SH 🆔:SVPXtlTg


#20 [愛華]
「人に名乗らせたいならまず
自分から、が基本でしょ?」


なんかめんどくさいことに
なっちゃったけど………
警察にでも連れていかれたら
こっちが困る。
適当にあしらってすぐに
この公園を出よう。


でもあたし自身、
この3日間、まともに人と
話していなかったから人の声が
恋しかったのかもしれない。

⏰:11/02/17 21:26 📱:840SH 🆔:SVPXtlTg


#21 [愛華]
「……俺は天宮滝(あまみやたき)
普通の高校1年生です」

「何歳?」

「15です」

「嘘、同い年じゃん。てゆか
なんでそんな喋り方?」

「知らない人には敬語を使う。
最低限のマナーですよ」


そういって天宮はにっこりと
笑った。

⏰:11/02/17 21:33 📱:840SH 🆔:SVPXtlTg


#22 [愛華]
高校生としては幼い顔。なのに
大人のような喋り方。

どれが本当の天宮なのか
わからなかった。


「天宮の趣味は?」

「趣味……料理とかですかね」

「料理?」

「まぁ色々あって親と喧嘩
しまして。ただ今一人暮らし中
なんですよ」

「ふーん……」

⏰:11/02/17 21:40 📱:840SH 🆔:SVPXtlTg


#23 [愛華]
この男は見ず知らずのあたしに
なんでこんなこと教えてくれるんだろうか?

趣味とか聞いてるあたしも
あたしだけれど。


「ではあなたの事を聞いても?」



時計を見ると午後8時。
そろそろ本当にホテル探さなきゃヤバいな………


あたしは荷物をもう一度
しょいなおした。

⏰:11/02/17 21:46 📱:840SH 🆔:SVPXtlTg


#24 [愛華]
「………天宮。多分もう
会うことはないだろうけど…
一応教えてあげるよ。


あたしは羽田陽向。
脱獄中の15歳だよ」


「だつ………ごく!?」

「あはは、違うよ。」


あたしは荷物の重さを肩で
感じながら入口へ歩きだす。

⏰:11/02/17 21:52 📱:840SH 🆔:SVPXtlTg


#25 [愛華]
入口まで歩いてくると、
まだベンチに座ったままの
天宮のほうを振り返った。

天宮はただあたしを見つめる。




「………地獄を脱する、で脱獄。
あたしは地獄から逃げてきたの。


さよなら、天宮」



これが、あなたとの出会いでした

⏰:11/02/17 21:58 📱:840SH 🆔:SVPXtlTg


#26 [愛華]
第2章 -落下物語-

⏰:11/02/18 20:19 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#27 [愛華]
「この女性、ここにいますか?
ここで働いてるって聞いて
きたんですが………」

「………えーと…すいません。
ここにはいませんが………
失礼ですが、お母様ですか?」

「あ、いえ!多分、場所を
間違えたんだと思います。
お手数おかけしました」


そういってあたしは素早く
お母さんの写真をしまうと
その建物からでていった。

家から逃げてきて10日。
今だお母さんとは会えない。

⏰:11/02/18 20:29 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#28 [愛華]
お母さんは介護福祉士の資格を
持っていたので、その系統の
仕事をしていると予想。

シラミ潰しに老人ホームや
介護施設をまわっている。


が、会えないまま…………。



「………ホテル暮らしにも
飽きてきたしなぁ………」


残りのお金も少なくなってきた。

⏰:11/02/18 20:39 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#29 [愛華]
第一情報が少なすぎる!!
この町にいるかどうかも定かじゃないし介護の仕事してるかも
わかんないし…………。



「………あーっ!!もう!!
イライラする!!イライラ!!

ってかそこのガキ!!そんな
見るな!!喧嘩売ってんのか!」


ごみ箱をけっとばして、
下校途中の小学生に八つ当たり。

⏰:11/02/18 20:45 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#30 [愛華]
我ながら最低なやつだと思う。



見つからないから諦める…?
そんなことできるわけない。
帰る場所なんてあたしにはない。


頼るひとはお母さんしかいない。
それまで、ひとりで。
頑張らなきゃいけないの。


あたしはお母さんに会うために
今まで生きてきたの。

⏰:11/02/18 20:51 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#31 [愛華]
「…………行かなきゃ」


あたしは立ち上がると、次の
施設に向かった。




頼るひとなんていない。
いらない。必要ない。邪魔。


それでも会うと決めたひとが
心にいるから。 だから


あたしは今日も歩いていける。

⏰:11/02/18 20:55 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#32 [愛華]
あたしは施設に入ると、ホールにいる女の人のもとへ向かった。



「すいません。ここでこの女性
が働いてると聞いたのですが…」

女の人はにっこり微笑むと、
優しくあたしに話しかける。


「お母様ですか?お名前は?」

「あ、羽田みちると言います」

⏰:11/02/18 21:02 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#33 [愛華]
「羽田みちるさん………
ここではそのような方は
いらっしゃいませんが……」


ここもか………。
いないならいい。

あたしはさっさと帰ろうと
振り返ると、そこには2人の
警官が立っていた。




………………は?

⏰:11/02/18 21:06 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#34 [愛華]
「………なんですか?」



大丈夫。落ち着け。
あたしが家出したってばれてる
わけじゃないんながら。
連れていかれるわけじゃない。

堂々としていなきゃ………。



それでも心臓は鳴り止まない。


「……君、お母様を探されてる
んですよね?」

⏰:11/02/18 21:15 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#35 [愛華]
「えっと…………」

「最近、色んな介護施設に女の子がお母さんを捜しに来ているって話を聞きましてね。

最近家出とかそういうもので
お母さん頼ってくる未成年の子が増えてまして…………」




………ちょっと、やばいかな?
いや、ちょっとじゃない。
コレかなりヤバいな。

⏰:11/02/18 21:20 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#36 [愛華]
髭の生えた二人の警官は
あたしに手を伸ばす。


あたしはそれを反射的に避ける。


「……家出なんかじゃないです」

「じゃあなぜお母さんを?」

「えっと………」


警官は顔を見合わせると、
あたしに1歩近づき、さらに
手をつかもうとした。

⏰:11/02/18 21:25 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#37 [愛華]
「話聞かせてもらえるかな?
君の力にもなれるからね」



………連れてかれる!!
そう思った瞬間。
聞いたことのある声がした。





「なにやってんだよ、夏子」


「……………は?」

⏰:11/02/18 21:28 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#38 [愛華]
その声のするほうを向くと、
やっぱり見たことのある顔。


天宮滝。



天宮はゆっくりあたしと警官の
ところに歩いてきた。



「………妹が、なにか?」

「そちらはお兄さんで……」

「はい。」

⏰:11/02/18 21:35 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#39 [愛華]
おいおい何いってんの?
つーかこの状況なに?
誰よ、夏子って。



「この子ね、お母さん捜しに
色んな施設まわってるんだって。お兄さん知ってた?」

「あー…知りませんでした。
うちは母子家庭なもので、母が
家を空けがちでして…………。
寂しかったんだと思います」

「お兄さんならしっかり妹さんの世話してあげないと。」

⏰:11/02/18 22:33 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#40 [愛華]
「はい、すいませんでした。
ほら夏子。お前も。」


だから夏子って誰。


でも天宮があたしを助けようと
してくれてるのはわかった。

警官たちも天宮の登場によって
今は1歩下がっている。


今はのっかったほうがいい。


「……すいませんでした」

⏰:11/02/18 22:38 📱:840SH 🆔:5o3u9M7Y


#41 [愛華]
あたしは頭を下げる。


あれ、あたしなんで謝ってんの?別に悪いことしてないのに。


それでもあたしが謝ると、警官は満足そうな顔をしていた。


「それじゃ帰るぞ、夏子」

「あ、はい!!」


天宮はあたしの手を引っ張る
ようにして歩いていく。

⏰:11/02/19 14:21 📱:840SH 🆔:VlElYrtI


#42 [愛華]
何も言わず歩き続ける天宮。
それに何も言えずついてくあたし


行き着いた先は公園だった。
天宮と出会った公園。





「…………ぶはっ!!」

あたしは緊張の糸が切れたことでたまらず吹き出してしまった。

⏰:11/02/19 14:49 📱:840SH 🆔:VlElYrtI


#43 [愛華]
「!なに笑ってんですか!!」

「だって!!夏子って誰!!
はははは!!お腹痛い!!」

「だって名前出すと困るかと…」

「ちょ、息できない……」


あたしがひーひー言ってる横で
怒ったような顔をしてる天宮。

こうしてはっきりと面とむかって話すのは初めてだ。

⏰:11/02/19 14:54 📱:840SH 🆔:VlElYrtI


#44 [愛華]
「…天宮はなんであそこに?」

「たまたま通りかかったら、
外から警官と女の子がもめてる
のが見えまして。よく見たら
陽向さんだったので………」

「そっか。助けてくれて
ありがとう。助かったよ」


あたしがそう言うと、天宮は
初めて会った時のように
ゆっくり微笑んだ。

よく見たらちゃんと男だ。
(当たり前だけど…。)

⏰:11/02/19 15:06 📱:840SH 🆔:VlElYrtI


#45 [愛華]
大人っぽくて……


幸せそうなひと。



「それじゃ、あたし行くね」

「行くってどこにですか?」

「それは天宮には関係ない」

「関係ないとかそういう問題
じゃないで…………しょっ」


「…………いった!」

⏰:11/02/19 16:21 📱:840SH 🆔:VlElYrtI


#46 [愛華]
天宮に持ち上げられたあたしの腕に激痛が走る。

長袖のTシャツからは血が
じんわりとにじんでいた。



「この暑いのに長袖なんか変
だと思ったんですよ。
どうしたんですか、これ?」

「だから関係ないってば…」

「家で手当してあげますから。
来てください」

「余計なお世話」

⏰:11/02/19 16:25 📱:840SH 🆔:VlElYrtI


#47 [愛華]
あたしがそう言うと、天宮は
悲しそうな目であたしを見る。


べ、別にあたし間違ったことは
言ってないし…………

そんな目で見ないでよ。



「………だ、だいたいなんで
あたしにそんなかまうの?
赤の他人でしょ?あたしたち」

「……………」

⏰:11/02/19 16:41 📱:840SH 🆔:VlElYrtI


#48 [愛華]
「家出娘がめずらしい?
なんかいやらしいことしようとか考えてんじゃないのー?」

「……………」


笑えよ、馬鹿。

天宮の無言の圧力が重い……。



「………手当だけですから。
させてもらえますか?」

「……………やだ」

⏰:11/02/19 16:49 📱:840SH 🆔:VlElYrtI


#49 [愛華]
「なにもしませんから」


あたしは自分の傷を見る。
治療道具なんかにお金なんか
使いたくないし…………。

頼るわけしゃない。
利用させて、もらうだけ。



「じゃあ………包帯だけもらう」

「………!!十分です」

天宮は満面の笑顔を浮かべた。

⏰:11/02/19 22:02 📱:840SH 🆔:VlElYrtI


#50 [愛華]
天宮って………変。
まぁいいや。包帯だけもらって
さっさとホテルに戻ろう。



天宮と一定の距離を保ちながら
一緒の道を歩く。


日は暮れはじめていた。

横から見る天宮はよく見ると
綺麗な顔立ち。
きっとモテるんだろうな。

学校でもこんな喋り方なのか?

………どーでもいいか。

⏰:11/02/19 23:38 📱:840SH 🆔:VlElYrtI


#51 [愛華]
「そこらへんに座って下さい」


そんなことを考えてるうちに
いつのまにか天宮の家についた。
そこまで広くはないけど、
一人暮らしには十分なマンション

知らない家の匂いがする。


あたしはふかふかのソファに
遠慮がちに腰を下ろした。

「……あれ、救急箱………」

⏰:11/02/20 12:32 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#52 [愛華]
「救急箱ないの?」

「いや、確かここに…あった!」

天宮は戸棚の中から白いケースを取り出した。
それを持つと、あたしの隣の椅子にゆっくり座った。


「…………手、出して下さい?」

「…………お願いします…」

天宮はちょっとだけ微笑むと
包帯を丁寧にほどいてゆく。

⏰:11/02/20 12:38 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#53 [愛華]
なんか……………変な感じ。

人にこんなに優しく触れられたのなんていつぶりだろうか?


「……ずいぶんずさんな包帯の
巻きかたですね……」

「悪かったね」

天宮は包帯を取ると、むきだしになっている傷に消毒していく。

「……新しい包帯だけくれれば
それでいいって言ったじゃん」

⏰:11/02/20 12:43 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#54 [愛華]
「そんなんだったら、ずっと
治らないままですよ!化膿してるじゃないですか………

見たところ切り傷ですけど…
どこでどうやってこれを?」

天宮は真剣な顔で聞く。

「……前の家でちょっとね」

あたしがそう言うと、天宮は
「そうですか」とだけ言った。

傷は綺麗なガーゼを当てられ、
綺麗な包帯で包まれていく。

⏰:11/02/20 12:51 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#55 [愛華]
天宮は器用だった。

手当が終わると、血で汚れた
あたしのTシャツを水で洗って
くれた。貸してもらった天宮の
Tシャツは甘い匂いがした。


知らない家の匂いにも慣れた頃。


「………さて。そろそろ
聞かせてもらえますか?」


紅茶を飲みながら天宮が言った。

⏰:11/02/20 14:39 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#56 [愛華]
「………聞くってなにを?」

「あなたの家出の理由です」

あたしは飲んでいた紅茶を
吹き出しそうになった。


「……だから天宮には関係ない!Tシャツ貸してくれたり
手当してくれて感謝してるよ。

でもそこまで話せる程、あたしはあんたのこと信用してない!」

「関係ない、ね………」

⏰:11/02/20 14:47 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#57 [愛華]
「Tシャツ乾いたら出ていく。
もう会う事なんてないんだから
話す必要なんてないよ。」

「手当して、警察から助けたのに関係ないってことはないでしょ」


天宮はずいっと顔を近づける。
真っすぐな天宮の目に吸い込まれそうになる。

……近い……それに
綺麗な目してるな………。


じゃなくて!!

⏰:11/02/20 14:54 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#58 [愛華]
「……俺が警察に言っても
いいんですよ?あなたのこと」

天宮はにっこり微笑む。
今はその笑顔がカンに障る。

「あんた………見かけによらず
嫌なやつだね。最悪」

「なんとでもどーぞ。さ、
話してくれますね?」


………隠すほどのことじゃない。話し終わったらすぐ帰ろう。

それでも思い出すのは嫌だな。

⏰:11/02/20 17:41 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#59 [愛華]
あたしは息を吐く。





「…簡単にいうと。家庭内暴力。お父さんからのね。っていっても本当のお父さんじゃないけど」

「………暴力……」


天宮は信じられない、といった
顔をした。当たり前だけど……

⏰:11/02/20 17:46 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#60 [愛華]
そう。
あたしはお父さんから暴力を
毎日のように受けていた。

お母さんが再婚した男性は
酔うと暴力を振るう男だった。
お母さんはそれに耐え兼ね、
お父さんと離婚した。

お母さんはあたしを引き取ると
いって聞かなかったけれど、
お父さんがあたしを引き取ることそれが離婚の条件だった。


暴力の対象はあたしになった。

⏰:11/02/20 17:50 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#61 [愛華]
傷にならないレベルの最高の暴力を毎日受けつづけた。


そしてあの日。




「……酔ったお父さんが刃物
持ち出して腕切り付けられたの。殺される、って思った。


それで急いで荷物まとめて
逃げてきたってわけ。」

あたしは辛い記憶は飛ばしながら天宮に過去を話した。

⏰:11/02/20 17:55 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#62 [愛華]
「これで満足?天宮」

「……………」


天宮は何もいわず下を向いたまま引かれたな、こりゃ。


あたしは乾いたTシャツを手にし家を出ようと立ち上がった。

すると天宮も急に立ち上がる。



「………わ!びっくりした。
急に立ち上がんないでよ…」

⏰:11/02/20 18:00 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#63 [愛華]
「………よし!決めた!」

「は?決めたって何を……」

天宮はさっきよりももっと
優しい笑顔を見せた。
そしてまた顔を近づける。


だから近いっつの!
おでこくっつくっつの!
それにしても綺麗な目……

じゃなくて!!


そんなことを考えていると、
天宮の目があたしの目を捕らえた

⏰:11/02/20 18:15 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#64 [愛華]
「………陽向さん」

「な、なに………」


天宮は甘くていいにおいがした。優しいお日様みたいなにおい。





「……ここで暮らしませんか?」

「……………は?」


それは天宮がお日様みたいな
人だったからかな。

⏰:11/02/20 18:31 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#65 [愛華]
いったんきります。
>>51-65
読んで下さってる方がいたら
感想下さると嬉しいです。

⏰:11/02/20 18:34 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#66 [ゆず]
読んでますとってもきになり…たのしみです
頑張って

⏰:11/02/20 19:38 📱:P03A 🆔:oJDWQc6I


#67 [愛華]
>>66 ゆず様
とても嬉しいです
ありがとうございます!!
感想板にもぜひ来てみて
下さいね(^-^)

⏰:11/02/20 20:57 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#68 [愛華]
第3章 -特別恋愛-

⏰:11/02/20 21:02 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#69 [愛華]
『家族』
それがどんなものかと聞かれたら
多分こんなものなんじゃないか。

あたしはそう思った。
あんたに会って、そう思った。



「陽向さーん。朝ですよー」

「眠い………」

「俺、学校あるんですから。
朝ごはん片付きませんよー…」

⏰:11/02/20 21:08 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#70 [愛華]
「わかったよ、うっさいな」

あたしは布団から出ると、
ドアの鍵を開けて、リビングに
出た。テーブルには天宮がいる。


「……おはようございます!」

「うん。おはよう」



天宮と暮らしはじめてから2週間
ドアの鍵は閉めたまま眠る。

⏰:11/02/20 21:12 📱:840SH 🆔:EuWhtOcA


#71 [愛華]
ほかほかのごはんに目玉焼き。
そのあたたかさが嬉しい。


「いただきまー……」

あたしが食べようとすると
天宮が皿をひょいっと取り上げる


「ちょっと、何すんの」

「さっき起こしてあげた時。
『うっさい』ってことは
ないんじゃないですか?」

「人間小さいよ、天宮」

⏰:11/02/21 22:58 📱:840SH 🆔:RLLSXJ5o


#72 [愛華]
「はい、ごめんなさいは?」

………お前は親父か。

「悪かったってば…あたしが
朝弱いの知ってるでしょ?」

「謝る時は目を見て!!」


天宮はあたしの顔をぐいっと
自分の顔に近づける。


だから近いっつの!!
天宮はたまになんのためらいも
なくこうやって顔を近づける。

天宮との距離数センチ。

⏰:11/02/21 23:03 📱:840SH 🆔:RLLSXJ5o


#73 [愛華]
「ごめ……なさ…い」

「はい、いいですよ!」

天宮はにっこり笑うと
水玉のエプロンを外して
朝食を食べ始めた。







天宮はたった2週間であたしの
心をときほぐしていった。

まるで本当の家族に接するような
そんなあたたかさで。

⏰:11/02/21 23:08 📱:840SH 🆔:RLLSXJ5o


#74 [愛華]
'






「一緒に暮らす?何言ってんの」

あたしは手当を終えたばかりの
腕をぎゅっと握りしめる。

「だって行くとこないんでしょ?ここなら部屋はありますし。
お母さんを探すのだって俺、
手伝いますから」

⏰:11/02/21 23:11 📱:840SH 🆔:RLLSXJ5o


#75 [愛華]
何言ってんの、この男。



「…………そんなことして。
あんたになんの得があんの?」

「そんなの考えてないです」

「じゃあ、同情?」

「残念、それも違います」

「じゃあ何が目的」

「なんだと思います?」

天宮は優しく笑った。

⏰:11/02/21 23:14 📱:840SH 🆔:RLLSXJ5o


#76 [愛華]
あたしの胸がきゅうっとなる。
しめつけられるような………


「………助けたい。だけです」


天宮はあたしをゆっくりと
同じ目線で抱きしめた。


あたしよりもずっと大人で
包みこんでくれるあたたかさ。


こんな温もりを忘れていた。
ずっと昔のどこかに置いてきて
しまっていたもの。

⏰:11/02/21 23:18 📱:840SH 🆔:RLLSXJ5o


#77 [愛華]
信用するわけじゃ、ない。


でも少しなら。
お母さんと同じにおいのする
このひとなら。

見知らぬ土地で出会った人。
だけどこのひとなら。


頼るわけじゃ、ない………。
利用するだけ…………。


あたしは天宮の背中に手を回す。
なぜかわからないけれど、
一粒だけ涙が流れた。

⏰:11/02/21 23:22 📱:840SH 🆔:RLLSXJ5o


#78 [愛華]
'






まぁそんな感じで始まった
あたしと天宮の2人暮らし。

あたしが一方的に居候してる
だけだけれども………。


この2週間で『天宮』という
人間の優しさにたくさん触れた。

⏰:11/02/21 23:25 📱:840SH 🆔:RLLSXJ5o


#79 [愛華]
それは強張ったあたしの心を
ほぐすのには十分な温かさで。


あたしは心のどこかで寂しかった
頼る人が誰もいない土地で
ただお母さんを心に想うことで
自分を保っていた。


完全に信用したわけじゃない。
でも。


天宮なら大丈夫なんじゃないか
あたしの何かがそう言ってる。

だから、それに従う。

⏰:11/02/21 23:29 📱:840SH 🆔:RLLSXJ5o


#80 [愛華]
「それじゃ、陽向さん。
行ってきますね。」

「掃除しといたほうがいい?」

「気が向いたらでいいですよ」

ぽん、と頭にのせられた手。
そこだけが熱くなる感覚。



「それじゃ」





ガチャン………

⏰:11/02/21 23:36 📱:840SH 🆔:RLLSXJ5o


#81 [愛華]
天宮が学校に行った後の部屋は
ひどく寂しくて、冷たい。



……ペットってこんな気持ち
なんだろうか………。

お兄ちゃんがいたら、
あんな感じなのかな?



天宮を信じたい。
でも、どこかで裏切られるのを
恐れている自分がいる。


天宮はあたしのこと、
どう思ってるんだろう………

⏰:11/02/21 23:41 📱:840SH 🆔:RLLSXJ5o


#82 [愛華]
見ず知らずのあたしにここまで
してくれるそんな天宮の気持ちがわからなくてこわい。

天宮はあたしを拾ってくれた。
それを後悔してないのかな……




あたしはいつものように
お風呂を洗ったり、掃除をしたりして1日を過ごした。

もう慣れたことだけど、
しばらく外に出てないなぁ…

⏰:11/02/22 23:53 📱:840SH 🆔:Ol2UrkHs


#83 [愛華]
贅沢は言えないけれど。
お母さんも探さなきゃいけない。


1人の時にふいに沸く孤独感。
それがたまらなくつらい。


あたしの居場所は……どこ?




そしてまた日がくれてゆく。
自分の在るべき場所に迷って
今感じているあたたかさに
戸惑いながら。

⏰:11/02/22 23:58 📱:840SH 🆔:Ol2UrkHs


#84 [愛華]
「ただいま……って暗っ!!」

「………んー……」



目がチカチカする……


「電気もつけないでまた寝て…
女の子がこんなとこで寝ちゃ
ダメですよ?」


目を開けると帰宅した天宮が
カーテンをしめていた。

「あ………おかえりなさい」

⏰:11/02/23 00:04 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#85 [愛華]
「はい。ただいま」

天宮はにーっと笑う。

あたし、いつのまにか
寝ちゃってたのか………。



天宮はちゃちゃっとパスタを
作り、あたしをテーブルに
つかせた。

天宮は『帰ってきたらまずご飯』をモットーとしている。

この2週間で気づいたことの1つ

⏰:11/02/23 00:08 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#86 [愛華]
出来立てのパスタはおいしい。
なにより誰かと食事を共にする
ことが最高に嬉しかったりする。



「ね、天宮。学校って楽しい?」

「そうですね。楽しいですよ」

「お友達とかいる?」

「もちろん」

「女の子も………いる?」

「……あ、ヤキモチですか?」

⏰:11/02/23 00:14 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#87 [愛華]
「違うよ、ばーか」

「なーんだ」


こうやって誰かと笑いながら
話せるなんて………
1人の時は思ってなかったな。


「あたし、友達いないからさ。
うらやましいなって思って」

「………学校、行きたい?」

「うーん、どうだろう…」

あたしが困ったように笑うと
天宮は悲しそうな顔をした。

⏰:11/02/23 00:18 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#88 [愛華]
あたしはそれに気づかない。


「……あ、陽向さん!!
今度の日曜日出かけません?」

天宮が思い出した様に言った。

「え、どこに?」

「陽向さんの服とか買いに。」

「そんなの………いいよ」


ただでさえ迷惑かけてるのに。
金銭面でも迷惑はかけられない。

⏰:11/02/23 00:48 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#89 [愛華]
「なにいってんですか!
お金のことなら気にしなくても
いいんですよ」

「でも…………」

「陽向さん」


天宮はフォークを置くと、
あたしを真っ直ぐに見つめる。


「………遠慮されると壁を
感じます。俺はそれがいやです。もっとわがまま言って下さい」

⏰:11/02/23 15:10 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#90 [愛華]
天宮の澄んだ目で見つめられるとあたしは何も言えなくなる。



「……あ、まみや…」

「はい?」

「あのね、1回しか話さないからちゃんと聞いていてね」

「……?はい。」


あたしは天宮の目は見れなくて
下を向いたまま声を出す。

⏰:11/02/23 15:18 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#91 [愛華]
「……あたし、天宮にはすごく
感謝してるんだ。行くとこない
あたしを拾ってくれて………

こんなに優しくしてくれて。
上手く表せてないかもだけど
ほんとに感謝してるの」

「……………」

「でも、今までが辛かったから
人を頼るのとか……信頼するの
とかにちょっと抵抗があって。


それが天宮にとって『壁』に
感じてるなら………ごめんね」

⏰:11/02/23 15:23 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#92 [愛華]
「陽向さん………」

「あ……たしは……。
天宮をちゃんと心から信頼
できるように……頑張るから」




………い、言えた……。
天宮はどう思ったかな……。

チラッと天宮を見ると、天宮は
いつもの笑顔であたしを見ていた

優しくてあたたかい笑顔。

⏰:11/02/23 15:28 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#93 [愛華]
「……陽向さん。ここおいで」

天宮はにっこり笑いながら
自分の膝を指さす。

「へ、ここ……って」

「こーこ!」

あたしは手をぐぃっと引っ張られ
気がつくと天宮の膝の上にいた。


「……ちょ、なにすんの!」

「はい、ぎゅー」

⏰:11/02/23 15:31 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#94 [愛華]
そう言ってあたしを抱きしめる
天宮はまるでお兄ちゃん。
同じ年なんだけどなぁ……

てか何も知らないひとがこれを
見たら勘違いするような……


まぁいっか……
だって嬉しいんだもん。



あたしも同じように天宮に
ぎゅーっとした。
天宮はそれに驚いたようで
手の力が少しだけ緩む。

⏰:11/02/23 15:39 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#95 [愛華]
サラサラの天宮の髪。
甘いにおい。そして
意外と広い肩幅。がっしりした手やっぱり天宮は男なんだと
実感したりする。



「……頑張らなくていいです」

「え?」

「陽向さんに信頼してもらえる
ように頑張らなきゃいけないのは俺なんですから。ね?」

「………うん。」

⏰:11/02/23 15:47 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#96 [愛華]
1人の部屋は寒いけれど
2人ならあたたかい。

忘れていた幸せがここにある。
それをくれた天宮を信じたい。
天宮にも幸せを感じて欲しい。


あたしはどうすればいいかな…?







そして日曜日。

⏰:11/02/23 20:21 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#97 [愛華]
「陽向さーん!起きてー!」

「……うぁーい……」



いつもの天宮の声。
あたしはいつものように鍵を開けリビングに出る。


時計を見ると、午前11時。


「陽向さん、よく寝ますね…
具合でも悪いんですか?」

「ん?大丈夫だよ」

⏰:11/02/23 20:30 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#98 [愛華]
あたしは、あくびをしながら
頭をボリボリとかいた。

「ほんとですか?ちょっと
こっちむいてください」

天宮のそんな言葉とともに
次に目を開けると、目の前には
天宮の心配そうな顔。



「………ぬぉっ!!」

「あ、顔色は普通ですね。
むしろ赤い感じだし……」

「近いんだっつの!!
あんたそれ無意識なわけ!?」

⏰:11/02/23 20:39 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#99 [愛華]
「?なにがですか?」

「だ、だからなんでそんなに
顔をち、かづけ………」

「なに?きこえませんよ」


そういってまた顔を近づけようとする天宮に顔が熱くなる。
このやろ〜……


ドゴッ!


「だからその癖なおせボケ!!」

⏰:11/02/23 20:47 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#100 [愛華]
あたしは天宮を一発殴ると
着替えるために部屋に戻る。



後ろから天宮のクスッと笑う
声が聞こえた気がした。


ほてった顔を冷ますように
手で扇ぎながら鏡を見つめる。







今日は、天宮とお出かけです。

⏰:11/02/23 21:11 📱:840SH 🆔:cnjmFwTM


#101 [愛華]
澄み渡るような青空
あたたかい陽射し
それはあたしには眩しすぎた。





「天宮ー!!はやくはやく!」

「はいはい」


誰かと出かけるなんて
何年ぶりのことなんだろう。

あたしは久しぶりの世界に
目を輝かせていた。

⏰:11/02/24 20:01 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#102 [愛華]
「陽向さん、あまりはしゃぎ
すぎると疲れますよ……」

「疲れない疲れない!」


そういうあたしと天宮の手には
服や日常品などの荷物がいっぱい
といっても選んだのはほとんど
天宮なんだけれど……
下着などはさすがにひとりで
選んだ。


初めてすることのように新鮮で
嬉しくて楽しくてワクワクする。

⏰:11/02/24 20:20 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#103 [愛華]
「ちょっと休みましょう、
陽向さんも疲れたでしょう?」

「えー疲れてないのに……」

「飲み物買ってきますから!
荷物お願いしますね」


天宮はそういってにっこり笑うと荷物を置いて走っていった。


……行っちゃった。
てか天宮が疲れてたんだな(笑)

道行くひとたちを見つめる。

⏰:11/02/24 20:41 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#104 [愛華]
'






笑いながら、歩くひとたち。


幸せそうだなぁ。

これからの予定とか、ご飯を
何食べるのか、とか。

そんなことを話しながら
笑いあってるのかな……。

⏰:11/02/24 20:55 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#105 [愛華]
それは日常に溢れてるけれど
あたしには手にできない
欲しくてももらえないものだった







あれ。声、が………。





ヒナタ………ドコニイル…?

⏰:11/02/24 20:58 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#106 [愛華]
「………………っ」




「おーぃ、陽向さん!」



聞いたことある、声。
あたしを安心させる声。
あの人では…………ない。



大丈夫だよ、陽向………。
安心していいんだよ。
ここにあいつはいないんだよ。

⏰:11/02/24 21:01 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#107 [愛華]
「………どうかしました?」


天宮はあたしの顔をひょいっと
覗きこむ。


「なんでもない!あ、コーラ
大好き。ありがとね」

「どういたしまして」


天宮はあたしにコーラを渡すと
隣の荷物をよけて座った。


「……何みてたんですか?」

⏰:11/02/24 21:04 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#108 [愛華]
「ん、人を見てたの。
幸せそうだなって思って」

「そうですか………」

「ね、天宮」

「はい」

「あたしの名前ね、お母さんが
つけてくれたんだ……」

「……………」


あたしは空を見上げる。
そこにはいつだって太陽が
輝いている。見えなくたって
いつもそこにいる。

⏰:11/02/24 21:10 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#109 [愛華]
「陽がいつもあたしに向かう
ように。あたしをいつも
照らしてくれるように、って」


毎日夢に見る。
お母さんが笑顔であたしを
迎えに来てくれる夢。


あいつから逃げるため……
そんなことよりも先に。
お母さんに会いたかったんだ。


「…陽は…向かわない日の
ほうが多いけれど………」

⏰:11/02/24 21:17 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#110 [愛華]
「そんなことないですよ」


照り付ける陽射しに天宮が
重なる。
逆光で表情が見えない。



「…………いい名前ですね」




あ。笑ってた………。
天宮の笑顔はあたしをほわって
あたたかくさせる。

⏰:11/02/24 21:32 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#111 [愛華]
ここにいるのは………天宮。
天宮だけ。だから大丈夫。




「…………ありがと」

あたしが微笑むと、天宮も
それに答えるように微笑む。


「ね、天宮の名前の由来は?」

「俺ですか?」

「うん、滝ってめずらしいし…」

⏰:11/02/24 21:37 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#112 [愛華]
「んー…なんですかね?聞いた
ことないしわかんない」

「ふぅん……」


そういえば親と喧嘩してるん
だっけ………でも生活費は?
どうして喧嘩したんだろう…



あたし、天宮のこと知らない。
なにも、知らない………。



胸がちくんと痛んだ。

⏰:11/02/24 21:50 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#113 [愛華]
「………天宮、あのさ…」

「はい?」

「天宮の家族って………その、
なんで喧嘩したの……?」

「あぁ…………それね」


天宮はすぅっと息を吐く。


「どーでもいい親子喧嘩ですよ」



線をひかれた気がした。

⏰:11/02/24 21:59 📱:840SH 🆔:BPvwoRDc


#114 [愛華]
なにかはわからないけれど


天宮とあたしの間にひとつの
壁があるような…………


当たり前、か。
知り合って間もないあたし達に
壁があるなんて当たり前。



どうすれば天宮のことを
心から信頼して、信頼して
もらえるようになるのかな…

あたしには、難しいよ………。

⏰:11/02/25 20:50 📱:840SH 🆔:.jQ6zlYk


#115 [愛華]
人を信頼するのに
時間は必要なんだろうか?


短い期間で築いた信頼関係は
浅いものでしかないのかな。

触れたら崩れ落ちるような。



だとしたら天宮を信頼したいと
願うあたし

お母さんに会いたいと願うあたし


どちらの願いが先に叶う?

⏰:11/02/25 23:43 📱:840SH 🆔:.jQ6zlYk


#116 [愛華]
あるいは…………


どちらも叶わない…………?













ヒナタ…………。

⏰:11/02/25 23:44 📱:840SH 🆔:.jQ6zlYk


#117 [愛華]
またあなた。

どうしてあたしを苦しめるの?




ごめんなさい。謝るから。
もう痛いのは嫌だよ………





ごめんなさい……ごめんなさい…


あたしの名前を呼ばないで。

⏰:11/02/25 23:46 📱:840SH 🆔:.jQ6zlYk


#118 [愛華]
ヒナタ………………







嫌だ……………



逃げなきゃ。






「………………いやぁっ!!」

⏰:11/02/25 23:48 📱:840SH 🆔:.jQ6zlYk


#119 [愛華]
飛び起きると、あたりは
真っ暗だった。



ここ………どこ?


あたしどうしてベッドに……


汗で体がベタベタする。




そうだ…………逃げなきゃ。

⏰:11/02/25 23:49 📱:840SH 🆔:.jQ6zlYk


#120 [愛華]
逃げなきゃ。逃げなきゃ。




ガチャン!





「………陽向さん、どうしたん
ですか?今2時ですよ…?
眠れないんですか?」


言葉の意味を理解できない。

⏰:11/02/25 23:52 📱:840SH 🆔:.jQ6zlYk


#121 [愛華]
あたしを見て驚いた顔をしてる。この男の人は…………




誰?





ガチャン!



「!!陽向さん、どこ行くの!」

⏰:11/02/25 23:54 📱:840SH 🆔:.jQ6zlYk


#122 [愛華]
逃げなきゃいけない。
その恐怖だけがあたしを支配する


ここはどこ?
あなたはだれ?


どうでもいい。
あいつが来る。逃げなきゃ。



「逃げなきゃいけないの!」

「陽向さん…!」

⏰:11/02/25 23:58 📱:840SH 🆔:.jQ6zlYk


#123 [愛華]
玄関を開けようとしたあたしの
手を男は必死で掴む。


「離してよぉ!!」

「陽向さ………」

「嫌ぁ!ごめんなさい…
ごめんなさ……ごめんなさい…」

「こっちむいて下さい!!」

あたしの顔を男は自分のほうに
向かせようとするけれど
あたしの体がそれを拒否する。

⏰:11/02/26 00:03 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#124 [愛華]
男の腕の中で暴れ続けるあたしはいつのまにか泣いていた。


「離して!いやぁ!!」




「…………俺を見ろよ!!」



体の震えが止まる。


男と視線が交わる。

⏰:11/02/26 00:08 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#125 [愛華]
不安そうな瞳であたしを強く
見つめるその人の頬には
あたしが引っかいたであろう
傷から血が流れていた。



この人を……知ってる。



あたしは知ってる。





「………………天宮…」

⏰:11/02/26 00:10 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#126 [愛華]
「……そうです。天宮ですよ」


天宮は微笑んだ。



「……はぁっはぁっはぁっ」

「大丈夫ですか!?」


呼吸が上手くできない。
やば………………まただ。



天宮はあたしを抱きかかえると
丁寧にリビングにつれてゆく。

⏰:11/02/26 00:13 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#127 [愛華]
天宮はあたしをソファに下ろすと
コップに水を汲んであたしの
もとに持ってくる。



「………飲めますか?」

「はっ……や……薬………」

「薬?薬があるんですか!?」

「部屋………」

意識が朦朧とする中で必死に
天宮に伝える。

⏰:11/02/26 12:17 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#128 [愛華]
'






あたし、なにやってんだろ。

一人で勝手に苦しんで……



天宮は…………



こんなあたしは嫌い……?

⏰:11/02/26 12:19 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#129 [愛華]
そこにいるのは誰?



お母さんなの?



違う………この匂い……


甘くてあたたかいにおい。


この知らない町であたしに
安らぎをあたえてくれた。

⏰:11/02/26 12:26 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#130 [愛華]
誰でもよかったわけじゃない。


優しそうに笑うあなただから
抱きしめてくれたあなただから


「わがままを言ってもいい」


そう言ってくれたあなただから。



あたしは………

⏰:11/02/26 12:30 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#131 [愛華]
「……………ん…」

「陽向さん…俺ですよ。
わかりますか………」


目を開けるとそこには天宮の顔。



「天宮……だよね…」

「はい」

「ひざ枕……恥ずかしい…」

「今さら何言ってんですか」

⏰:11/02/26 12:36 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#132 [愛華]
安心したように笑う天宮。
それがあたしを安心させる。


時計を見ると2時半。
30分しか経っていなかった。



「薬……いつから飲んでたの?」

「半年くらい前………から
たまに。こうなった時に…」

「そうですか………」

「黙っててごめん………」

⏰:11/02/26 12:44 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#133 [愛華]
あたしは天宮の頬についた傷に
ゆっくりと触れる。
触れた瞬間、天宮が少しだけ
ピクッと反応した。


「………引っ掻いてごめん…」

「こんなのどーでもいいです」


握られるあたしの手。
近くで見る天宮はすごく綺麗な
顔をしていて不謹慎にも
かっこいいと思ってしまった。


あたし………は。

⏰:11/02/26 12:51 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#134 [愛華]
「天宮………?」

「なんですか?」

「あたしのこと、変だって
思った?おかしいやつだって」

「思うわけないでしょ」

「よかった………」


涙が自然に流れていく。

安心したのか、嬉しかったのか
自分でもわからないけれど……

⏰:11/02/26 12:56 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#135 [愛華]
「……陽向さん………」


天宮のおでことあたしのおでこがくっつく。
いつもなら怒るけれど、今は
それが嬉しい。



「………どっか行ったり
しないでくださいね……」

「はい…………」


天宮がいるという安心感から
だんだん眠くなってくる。

⏰:11/02/26 15:21 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#136 [愛華]
「天宮………あたし…ね」

「はい」



「天宮の………家族になりたい」

「……………」

「お母さんが見つかるまで。
その後は忘れたっていい。
天宮の……家族でいたい……


できるなら、忘れてほしくは
ないけれど………」

⏰:11/02/26 15:24 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#137 [愛華]
「………」

「天宮…ダメ………かなぁ…」


意識が夢の中へと飛んでゆく。
今なら………眠れる。



「……ダメなわけないだろ…
でも俺は…………」




スースー……

⏰:11/02/26 15:28 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#138 [愛華]
'








…………寝てるし……。


体の力が一気に抜けてゆく。


あどけない顔で眠る
俺の膝の上の小さな女の子。

⏰:11/02/26 15:30 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#139 [愛華]
頬にそっと手を触れると
驚くほど冷たかった。


彼女の心の傷は
俺が思ってるよりももっと
深いところにあって。



『家族になりたい』

それは俺を信頼しはじめた証。

なのに俺は面白くなく
思ってしまった。

⏰:11/02/26 15:35 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#140 [愛華]
「……馬鹿じゃねーの……」




もう一度彼女の額に頭をのせる。
いつか、伝わるだろうか。





「……………好きなんだよ…」




もうじっとなんてしてられない。
もう………我慢なんてできない。

⏰:11/02/26 15:39 📱:840SH 🆔:f7sdRQ1I


#141 [愛華]
第4章 -桃色革命-

⏰:11/02/27 00:08 📱:840SH 🆔:liply4fo


#142 [愛華]
きらめき出した日々は幸せで
あたしをいつも知らないところへ連れていってくれる。


初めてのことばかりで
そのどれもが嬉しかったけど。



1番嬉しかったのは
そこに天宮がいてくれたこと。





なんだよ。

⏰:11/02/27 10:16 📱:840SH 🆔:liply4fo


#143 [愛華]
「じゃーん!!」

「…………なにこれ……」




とあるいつもの日曜日の朝。
目の前には女子用の制服。


と、天宮の満面の笑顔。


これは………。


「……天宮、そーゆー趣味
あったなんて知らなかった…」

⏰:11/02/27 10:24 📱:840SH 🆔:liply4fo


#144 [愛華]
「はい?」

「コスプレとかそういう…」

「ち・が・い・ます!!これは俺じゃなくて陽向さんが着るの!」


そういってもう一度バッと制服を見せる天宮。
よく見ると胸のところに天宮の
制服と同じ校章がついている。


「学校……行きましょう!」

「はぁぁぁ!?」

⏰:11/02/27 10:31 📱:840SH 🆔:liply4fo


#145 [愛華]
「俺と同じ高校ですよ!不安なら俺がずっと側にいますし」

「いやいや…そんな問題じゃ
ないでしょ!あたし家出して
きてるんだよ?

保護者だっていないし
身分証明書だってないし……」

「それなら問題ないですから」

「問題ありまくりだってば!」

「陽向さん………」


う……なぜ悲しそうな顔をする!

⏰:11/02/27 13:55 📱:840SH 🆔:liply4fo


#146 [愛華]
「………俺を信じて?」

「う………あ……」



天宮は汚くなった。
こんなウルウル顔でこんなこと
言われて……断れるわけない。
それを天宮はよーく知ってる。



「で……でもなんで今さら?
あたし中学もまともに行って
ないのに………」

⏰:11/02/27 13:58 📱:840SH 🆔:liply4fo


#147 [愛華]
「それでも陽向さん、勉強
できるじゃないですか。よく
俺の宿題手伝ってくれるし…」


確かにあたしは前の家にいた頃
中学校には行かずずっと家にいた
それでも勉強はしたかったので
家事の合間をぬって一人で
勉強していた。そのおかげか、
それなりに勉強はできる。


「で………でも…」

「学校行きたいでしょ……?」

⏰:11/02/27 16:23 📱:840SH 🆔:liply4fo


#148 [愛華]
学校。友達。
それはいつだってあたしの
夢で、憧れで………。




「………うん…行きたい…」



「……じゃあ行きましょう!」



あたしがそう言うと
天宮はにっと笑った。
本当に嬉しそうだなぁ……。
天宮が嬉しそうだとあたしも
嬉しくなってくるから不思議。

⏰:11/02/27 16:49 📱:840SH 🆔:liply4fo


#149 [愛華]
それにしても学校かぁ……。
なんか緊張するなぁ……
でも天宮がつくってくれた機会
を無駄にするわけにはいかない。



「天宮ありがとうね。学校にまでいかせてくれて………」

あたしは自分の制服をぎゅっと
胸に抱きながら言った。



「……半分は、俺の為なんで」

「え?」

⏰:11/02/27 16:56 📱:840SH 🆔:liply4fo


#150 [愛華]
「……昼間、さびしいでしょ!」




さびしい?誰が?

………あ、あたしか!
昼間淋しがってるあたしを
気遣ってくれたんだ……。

天宮、やっぱり優しいな。



「……うん、昼間ひとりで
寂しいんだよね。だから
学校行けて嬉しい!!」

⏰:11/02/27 17:04 📱:840SH 🆔:liply4fo


#151 [愛華]
「……………」

「…?天宮どうしたの?」

「陽向さん、わかってない…」

「え?わかってるよ!気遣って
くれたんだよね?

……………違うの?」

「いや、いいですいいです!!
さ、朝ご飯にしましょう!」


天宮は何かをふっ切るように
凄まじいスピードで朝ごはんを
作り始めた。

⏰:11/02/27 17:08 📱:840SH 🆔:liply4fo


#152 [愛華]
味噌汁のいいにおいがしてきた頃
後ろから天宮のため息と共に

「道のりは長いなぁ……」

という言葉が聞こえた。


その言葉の意味をあたしは
まだ、知らない。






学校生活が始まります。

⏰:11/02/27 17:12 📱:840SH 🆔:liply4fo


#153 [愛華]
'










「天宮!!どう、似合う?」

着るのに少し時間がかかった制服でくるっとまわって見せる。

ちょっとだけ大人になれた気分。

⏰:11/02/27 21:53 📱:840SH 🆔:liply4fo


#154 [愛華]
「うん、よく似合ってますよ」

「ちゃんと見てないじゃん〜」

「見てますって!」



焼きたてのパンをかじると
鏡の自分を見つめる。


「緊張しますか? 」

「んー特にしてないよ?」

「あれ、意外ですね…」

「だって天宮がいるもん」

⏰:11/02/27 22:05 📱:840SH 🆔:liply4fo


#155 [愛華]
そう言って振り向くと、天宮の
顔が少しだけ赤くなっていた。


「……そーゆーかわいいこと、
学校で他のやつに言わないで
くださいね」


……かわいい?
単に天宮がいると安心 って意味で言っただけなんだけど。


「天宮以外の人に言うわけ
ないじゃん、そんなこと」


「〜〜陽向さん、それどういう
つもりで言ってんですか!?」

⏰:11/02/27 22:11 📱:840SH 🆔:liply4fo


#156 [愛華]
天宮がずいっと顔を近づける。


はい、きた。この距離。
しかも後ろにはソファで
逃げられないときた。


「だから近いんだってば!
何回言ったらわかんの!?」

「………あの夜は怒んなかった
くせに………」


天宮がチッと舌うちする。
……なんかキャラ違くない?

⏰:11/02/27 22:16 📱:840SH 🆔:liply4fo


#157 [愛華]
「ちょ、何あの夜って……」

「『家族になりたい』って
言ってくれたあの夜は、近づいたって怒んなかったのに、
今日は怒るんですか!?」

な、なんかいつもと違う…


「あ、あの時はあの時でしょ!
いいから離れろ!!」



ドゴッ!!


気持ちいい朝に気持ちいい
衝撃音が響いた。

⏰:11/02/27 22:23 📱:840SH 🆔:liply4fo


#158 [愛華]
なりゆきで決まった高校転入。


それは嬉しかったけれど
それよりも…………


『天宮がおかしい』。


学校行きを言い出したことも、
最近の態度も………

ただの気のせいかな?


そんなことを考えてるうちに
今日は初登校の朝です。

⏰:11/02/27 22:39 📱:840SH 🆔:liply4fo


#159 [愛華]
今日の更新分です。
>>141-159

⏰:11/02/27 22:42 📱:840SH 🆔:liply4fo


#160 [愛華]
駅から歩いて5分。
そこに『円(まどか)高校』はある
天宮が毎日通う高校だ。




「で、デカイ高校だね……」

ずーんとたたずむその高校は
威風堂々といったかんじで
迫力っていうかオーラがある。


「どこもこんなもんですよ。
建ってからかなり経ちますけど」

⏰:11/02/28 19:26 📱:840SH 🆔:u./89UKY


#161 [愛華]
「え、校舎は綺麗だけど……」

「一回建て替えてるんです。
裏に旧校舎があるんですけど
あまり近寄らないで下さい」



天宮があたしの前を歩きながら
言う。………機嫌悪いなぁ。
今朝からずっとだ。
殴ったこと怒ってんのかな…




広い廊下に二人の足音が響く。
その音がなんか淋しかったり。

⏰:11/02/28 19:30 📱:840SH 🆔:u./89UKY


#162 [愛華]
「………天宮ぁ、怒ってる?」


そう聞いた瞬間、
天宮の足がピタッと止まる。


「……俺が?どうして?」

「なんか最近おかしかったしさ。………あたしなんかした?」

「………」

「学校行くの決めたのも……
なんかあたしが気をつかわせっ」

「んなわけないでしょ馬鹿」

⏰:11/02/28 19:42 📱:840SH 🆔:u./89UKY


#163 [愛華]
あたしの言葉はさえぎられ、
それと同時に天宮の手により
あたしの頬がみょんと伸びた。



「あまみひゃ……いひゃひ…」

「陽向さんが学校行きたいん
じゃないかなって俺が勝手に
おせっかいやいただけ!
最近変だったのは……

まぁ俺の個人の事情だから!
わかった?ほら行きますよ」

「へぁ………」

⏰:11/02/28 20:09 📱:840SH 🆔:u./89UKY


#164 [愛華]
あたしの頬はしゅるしゅると縮み
今度は天宮の手があたしの手に
伸びた。
ぎゅっと手が握られる。


「…これから校長にあいさつに
行きますから。」

「校……長?」

「陽向さんをこの高校に入れる
のを認めてくれた人ですよ」


校長先生があたしを?
………っていうか。

⏰:11/02/28 20:16 📱:840SH 🆔:u./89UKY


#165 [愛華]
「天宮、手………」

「陽向さんフラフラどっか
行きそうだからね」


フラフラって………
猫じゃないんだから。



繋いだ手から伝わる天宮の体温は
あたしをひどく緊張させる。


今日から1日じゅう天宮が
一緒なんだ………。

⏰:11/02/28 20:23 📱:840SH 🆔:u./89UKY


#166 [愛華]
「こ、校長ってどんなひと?
あたしの事情知ってるの?」

あたしが焦ったように聞くと、
天宮が少し顔を歪めた。


「あー…一応話しましたよ。
どんなひとかっていうと……
まぁ会えばわかりますよ…」


……ん?なんか……昔から
よく知ってるみたいな雰囲気。



「…………天宮校長、滝です。
失礼します。」

⏰:11/02/28 20:31 📱:840SH 🆔:u./89UKY


#167 [愛華]
天宮………校長………



『天宮』ぁ!?



ガチャ………



「おーよく来たね。滝。それと
…………陽向ちゃん、だね」


「へ…………は……」

⏰:11/02/28 21:57 📱:840SH 🆔:u./89UKY


#168 [愛華]
優しそうな瞳に低い声。
少しだけヒゲが生えてるけど…
でもそっくりだ。この人は……



「陽向さん、紹介しますね。
円高校校長の天宮篠。
俺の父さんでもあります。」

「滝がお世話になってまっす!
ささ、座って座って!!」


天宮父に誘導され、お客用の
椅子に滝とふたり並んで座る。


校長って……天宮のお父さん
だったのか………。

⏰:11/02/28 22:05 📱:840SH 🆔:u./89UKY


#169 [愛華]
それにしても似てるな……
鼻とか目とか。


「…えーっと…羽田陽向ちゃん。転入テストは合格です。
今日からよろしくね!」

「転入テスト……ってこの前
家で受けたやつ……?」

「そうそう!それそれ!
陽向ちゃん学力的になんの
問題もないってことだから!」


そういって天宮父は笑った。
この人が………あたしを…。

⏰:11/03/01 16:54 📱:840SH 🆔:jrKBKrFM


#170 [愛華]
「……あ、の…………
ありがとうございました。」

「へ?」

「こんなあたしが……学校に
入るのを認めてくださって。
天宮…くんにも……いつも
すごくお世話になってます」


天宮父がキョトンとあたしを
見つめる。



……あれ?あたしなんか
変なこと言ったかな……!?

⏰:11/03/01 16:57 📱:840SH 🆔:jrKBKrFM


#171 [愛華]
「………そっかぁ…君が……」

「え?」

「あ、いやいやなんでもない!」

天宮父は笑いをこらえるように
下を向いている。



「……父さん、陽向さんの
クラスは……」

「あ、うん。お前のいうとおり
同じクラスにしといたから」

「ありがとうございます」

⏰:11/03/01 17:01 📱:840SH 🆔:jrKBKrFM


#172 [愛華]
天宮が頭を下げたので、
あたしも慌てて頭を下げる。



……なんか、親子って感じが
あまりしないな……。
どっちかというと、天宮が
それを拒んでいるような……。



「はは、お礼なんていいよ。
あ、そういえば陽向ちゃんさぁ
滝に変なことされてない?」


「「は?」」

⏰:11/03/01 17:06 📱:840SH 🆔:jrKBKrFM


#173 [愛華]
天宮とあたしの声が重なった。


「へ、変なことって……」

「いやー滝はこう見えて
すごい僕に似てるからねぇ。」


こう見えて…って見たまんま
そっくりですけど。


「滝が小学生の頃もさぁ、
僕が必死にエロ本隠しても
滝いっつも見つけちゃうの」

「………はい!?」

⏰:11/03/01 17:12 📱:840SH 🆔:jrKBKrFM


#174 [愛華]
「だから陽向ちゃんも、なにか
盗られてるかもしれないよ?
例えば……………

下着と「はは、何言ってんですか」



天宮が天宮父の言葉に被せる
ようにして笑った。



あ、冗談……?
でも滝の笑い声がなんか
冷たいような……気のせい?

⏰:11/03/01 17:19 📱:840SH 🆔:jrKBKrFM


#175 [愛華]
「陽向さん、俺少し校長と話が
あるので学校好きに見て
回ってて下さい」

「あ、うんわかったよ」

「では、またあとで」



あたしはもう一度天宮父に
礼をして、校長室を出た。





ふー……なんか緊張したなぁ。

⏰:11/03/01 17:26 📱:840SH 🆔:jrKBKrFM


#176 [愛華]
それにしても、天宮のお父さんがこの高校の校長だったとは。

あたしは少しだけ寒い廊下を
歩きながら天宮父を思い出す。


……顔は似てるけれど、中身は
正反対だよね………。


だって天宮は普段あんな冗談
言ったりしないし。
いつだって真面目だし。


あれ、そういえば天宮って………
確か家族と喧嘩して家出したって言ってたよね………?

⏰:11/03/01 17:36 📱:840SH 🆔:jrKBKrFM


#177 [愛華]
見た感じ、喧嘩してる雰囲気は
なかったけど………。



じゃあ何が原因で天宮は
家を出たんだろうか……?





廊下を行くあてもなく進んで
いると、授業開始のベルが
学校中に響き渡った。

⏰:11/03/01 17:43 📱:840SH 🆔:jrKBKrFM


#178 [愛華]
'










「いやぁ、陽向ちゃんは
純粋ですごくいい子だ……」


「………いい子だ………


じゃねぇ!!くそ親父!!」

⏰:11/03/01 17:46 📱:840SH 🆔:jrKBKrFM


#179 [愛華]
「うひゃぁ、恐いねぇ〜」


俺はこれでもかって程に
親父をにらみつける。


「つーか俺、あんたのエロ本の
隠し場所なんか知らねぇし!
勝手に話をつくって話すな!」

「えー嘘じゃないのに〜」


甘えたように声を出す。
これが自分の父だなんて……
情けなくて仕方がない。

⏰:11/03/01 17:52 📱:840SH 🆔:jrKBKrFM


#180 [愛華]
コーヒーを1口飲むと、
その苦味が怒りを少し中和した。




「………礼は言っとく。
陽向さんのことありがとうな」

「はは、そりゃあね。他でもないお前の頼みですから。
ちょっとは無理しますよ」

「ん。ありがとう」

「どういたしまして」

⏰:11/03/01 17:59 📱:840SH 🆔:jrKBKrFM


#181 [愛華]
にっこり笑いながら紅茶を
すする。父さんは甘党だ。



「……しかしねぇ。家飛び出して
何やってんのかと思ってたら…
まさか女の子と一緒に
暮らしてるなんてなぁ……」

「……………」

「その様子だと、まだ手は
出してないみたいだな?」

「………は?何いって…」

⏰:11/03/02 14:48 📱:840SH 🆔:HjyICsOQ


#182 [愛華]
「あ、正しくは『出したいけど
出せない』……って感じか?」

「なんであんたにそんなこと
言わなきゃなんないんだよ!」

「はは、図星だな!やるなぁ滝!
女の子見る目あるよお前」

「黙れクソ親父!!」


ムカつく!!なんだかんだ
言ってもやっぱ父なわけで。

離れていても考えてることは
お見通しなわけで……。

⏰:11/03/02 15:03 📱:840SH 🆔:HjyICsOQ


#183 [愛華]
父さんは椅子に座ったまま
のけ反るように天井を見上げる。



「……でもそれはちょいとさ、
陽向ちゃんにとっちゃ酷
なんじゃないの?」

「…………酷?」

俺が聞き直すと、俺を見ないまま父さんは続ける。


「だって陽向ちゃんは滝のこと
家族みたいに思ってるんでしょ」

⏰:11/03/02 15:09 📱:840SH 🆔:HjyICsOQ


#184 [愛華]
グサッ…………



「陽向ちゃんからしたらさぁ、
滝の気持ちはいい迷惑じゃん。

てゆーか滝の気持ち知ったら
安心して一緒にいれないよね」


グサグサッ…………


自分が今まで見ないふりを
していたことを見事に
撃ち抜かれた気がした。

⏰:11/03/02 15:13 📱:840SH 🆔:HjyICsOQ


#185 [愛華]
『家族になりたい』


陽向さんはそう言った。
つまりそれは………
俺を『そういう目』でしか
見れないということ。


それを根本から覆すにはそれ
相応の努力が必要なわけで。



「…………はぁ〜……」


俺はため息をつきながら
机に頭をコツンとつける。

⏰:11/03/02 15:18 📱:840SH 🆔:HjyICsOQ


#186 [愛華]
「なに?落ち込んでんの?」

「違う。後悔してる。
間違えた………」

「間違えた?なにを?」


父さんは興味津々というように
身を乗り出して俺の言葉を待つ。


「…………出会った頃。
とにかく怖がらせないように、
信頼してもらえるように…って
そればっか考えて接したこと。

………をすげぇ後悔してる」

⏰:11/03/02 15:26 📱:840SH 🆔:HjyICsOQ


#187 [愛華]
「ふぅん……」

「家族として接したことなんか
一回もないんだけどなぁ…」


そこまで話してハッとした。
なんでこんなこと話してんだ。



「まぁ父さんは応援するよ。
愚痴りたくなったらおいで」

「もう来ないし。」


ハハハッと笑いあう。

⏰:11/03/02 15:31 📱:840SH 🆔:HjyICsOQ


#188 [愛華]
「……………母さん、元気?」


俺が静かにそう聞くと、父さんは
少し悲しそうな顔をして

「元気すぎて迷惑なくらいだよ」

と笑った。


元気すぎて迷惑って。
意味わかんないし。

でも一応笑っておいた。

⏰:11/03/02 15:36 📱:840SH 🆔:HjyICsOQ


#189 [愛華]
コーヒーが飲み終わったのと
ほぼ同時に授業終了のベルが
なったので俺は立ち上がった。


「あ、授業出るの?」

「いや、陽向さん迎えに行って帰る
明日から授業はいるわ」

「わかった。またな」

「うん」


陽向さん、どこにいんのかな…

⏰:11/03/02 15:45 📱:840SH 🆔:HjyICsOQ


#190 [愛華]
そんなことを考えながら
ドアに手をかけると、後ろから
父さんに呼び止められる。



「………滝!」

「ん?まだなんかある?」


「……陽向ちゃん、可愛いから
ボケッとしてるともってかれる
かもよ。学校には敵なんか
いくらでもいるんだからな」



「…………余計なお世話だ」

⏰:11/03/02 15:50 📱:840SH 🆔:HjyICsOQ


#191 [愛華]
ガチャン………



ドアを閉める音が響いた。


今の言葉が
あながち間違いではないような
気がしてならない。


そんな俺の不安がすぐに
当たることになるなんて


この時は知る由もなかった。

⏰:11/03/02 16:07 📱:840SH 🆔:HjyICsOQ


#192 [愛華]
'








「…………ここはどこだ…」


あっちこち見て回っていたら
校長室がどこなのか忘れて
しまった。第一、この学校
広すぎ…………。

⏰:11/03/03 19:49 📱:840SH 🆔:9/37jmN2


#193 [愛華]
教室もいくつか見たけれど、
中では当たり前のように生徒
たちが勉強していて、
あたしもそこに加われるんだって思うとなんだか嬉しかった。





「……確か2階だったっけ…」



お城にあるような螺旋状の階段をゆっくりと上がっていく。
慣れるまで時間かかりそ……。

……天宮、話終わったのかなぁ…

⏰:11/03/03 20:00 📱:840SH 🆔:9/37jmN2


#194 [愛華]
そんなことを考えながら階段を
上り終え、角を曲がると
遠くに人が座っているのが見えた


あれ?今授業中なのに……



天宮………じゃないよね。



その人は体育座りで膝に顔を
埋めていて表情が見えない。


どうやら女の子みたいだ。

⏰:11/03/03 21:23 📱:840SH 🆔:9/37jmN2


#195 [愛華]
そぉーっと近づく。
あたしには気づいてないみたい。



「……………あの……」

「んぁっ!」

「ひっ!!」


女の子はガバッと立ち上がった
と思うと、あたしに
抱き着いてきた。

その間、わずか2秒。

⏰:11/03/03 21:27 📱:840SH 🆔:9/37jmN2


#196 [愛華]
「ちょっ、なにすんですか!」


び、びっくりしたぁ!
寝ぼけてんの、このひと!?


あたしは腕を離そうとするけど
力がハンパなく強い!
全然離れないし!!


「は、離れてよ!!てゆーか…」

「見ない顔だね。転校生?」

⏰:11/03/03 21:31 📱:840SH 🆔:9/37jmN2


#197 [愛華]
女の子が顔をあげる。


か………かわいい……。



フワフワの髪に綺麗な目。
いかにも女の子って感じ。




でも、あれ…………?
なんかさっき違和感が………。


…って今はそれどこじゃなくて!

⏰:11/03/03 21:34 📱:840SH 🆔:9/37jmN2


#198 [愛華]
「……あ、の……とりあえず
離れてもらっても………」

「あ、ごめんね!あたしさぁ
誰にでも抱き着いちゃうクセ
あってさぁ!ほんとごめん!」


す、すごいクセだな………。


やっと離れた女の子をじっくり
見ても、やっぱりかわいい。

色白いし……モテそう……。


「……あの、名前は……」

⏰:11/03/03 21:43 📱:840SH 🆔:9/37jmN2


#199 [愛華]
「東谷皐月(あずまやさつき)。
あなたの名前は?」

きょるんとした目で聞く。


「あたしは、羽田陽向。んと、
今日からこの学校でお世話に…
なることに、なりまして……」


な、なんか同じくらいの歳の
女の子と話すのなんか久しぶりで話しかたがわからない……。
合ってんのかな、これで……?


「フフッ。陽向ちゃん今日から
よろしくね!」

⏰:11/03/03 21:52 📱:840SH 🆔:9/37jmN2


#200 [愛華]
「よ、よろしくね!」


皐月ちゃんがにっこり笑いながら右手を差し出したので、
あたしは戸惑いながら握る。


うわぁ、嬉しいなぁ……。
あくしゅなんて初めて……。

あたしが感動に浸っていると、
あたしの手を握ったまま、
笑顔で皐月ちゃんがつぶやく。



「…………C♪」

⏰:11/03/03 21:56 📱:840SH 🆔:9/37jmN2


#201 [愛華]
「…………へ?」


C………ってなにが……?
首を傾げていると、さらに
皐月ちゃんは続ける。


「陽向、Cカップでしょ?
さっき抱き着いた時気付いた!」

「………はい!!?」

「いいなぁ、あたし小さいから
うらやましいなぁ………。
ね、触ってもいーい?」

⏰:11/03/03 21:59 📱:840SH 🆔:9/37jmN2


#202 [愛華]
うるんとした瞳で近づく。
え、あれだけでわかったの!?


「皐月ちゃん!ちょっと待っ…」

「女の子だからいーじゃん♪」


そ、そーゆー問題なの!?
世の女の子たちは初対面の
女の子の胸を触るもんなの!?
(触りません)


「え、え、あの…………!!」

⏰:11/03/03 22:06 📱:840SH 🆔:9/37jmN2


#203 [愛華]
あたしがパニックに陥りかけた
瞬間。ものすごい音があたりに響いた。



ゴォォォォン!!




「皐月ゴルァ!陽向さんに
なにやろうとしてんだよ!」

「天宮!」

「いったぁ!なにすんのよぉ!」

⏰:11/03/03 22:10 📱:840SH 🆔:9/37jmN2


#204 [愛華]
後ろを振り向くと、スリッパを
持ったまますごい怒った顔で
立っている天宮が。


スリッパでたたくなんて……
漫画みたいだなぁ……

なんて妙に感心する自分がいた。


………じゃなくて!


「陽向さん!何もされてない
ですか!?大丈夫!?」

⏰:11/03/04 19:40 📱:840SH 🆔:VQeFxD3A


#205 [愛華]
「だ、大丈夫だけどアンタ、
何してんの!?女の子の頭
スリッパでたたくとか!」

オロオロ心配そうに聞く天宮に
あたしがそう言うと、
天宮は自分のスリッパをじっと
見つめたあと、さらに皐月ちゃんをじっと見つめた。


そして一言。


「…………女……?」

「は?天宮なにいって……」

⏰:11/03/04 19:47 📱:840SH 🆔:VQeFxD3A


#206 [愛華]
「陽向さん騙されてます……」


………は?

皐月ちゃんの方を見ると、
テヘッとでもいうように舌を出し微笑む彼女の姿が。


彼女……じゃなくて彼……?
え?え?どういうこと?
でも、さっきあった違和感…




「…陽向さん。皐月は男です。」

⏰:11/03/04 19:52 📱:840SH 🆔:VQeFxD3A


#207 [愛華]
……………。




「おとこぉぉぉ!!??」

「ちょっとタッキーなんで
ばらしちゃうの!!ひどい!」

「お前調子にのりすぎ」


男……皐月ちゃんが……!?
そっか、さっき感じた違和感って
抱き着かれた時感じた
胸板の固さ………。

⏰:11/03/04 19:57 📱:840SH 🆔:VQeFxD3A


#208 [愛華]
胸小さいとかの問題じゃなくて
最初からないんじゃん!!


「ま、体は男だけと心は女
だから!仲良くしてね!!」


そういって笑顔で改めて握手を
求める皐月ちゃんは男になんて
全然見えなくて………。


「よ、ろしくね………」


あたしは思わずそれに応えた。
皐月ちゃんの手は、大きかった。

⏰:11/03/04 20:10 📱:840SH 🆔:VQeFxD3A


#209 [愛華]
'









「まさか皐月ちゃんが男だった
なんて……びっくりした…」

「でも悪いやつじゃないです。
仲良くしてやってくださいね」


駅へ向かう帰り道。
天宮と並んで歩く。

⏰:11/03/04 20:16 📱:840SH 🆔:VQeFxD3A


#210 [愛華]
あれ、天宮は前から皐月ちゃんと親しかったのかな……。
皐月ちゃんも『タッキー』って
呼んでたし。


……いつか教えてもらえたら


いっか。



「そういえば天宮。校長となに
話してたの?」

「あー…まぁ世間話を色々と…」

⏰:11/03/04 20:30 📱:840SH 🆔:VQeFxD3A


#211 [愛華]
「世間話…?」

「我慢話といいますか……」

「ふぅん……」


よくわからなくて首を傾げて
いると、それを見て天宮が
プッと吹き出した。

………?何笑ってんだろ。


「陽向さん今夜は入学祝いです。なにか食べたいものありますか?なんでもつくりますよ」

⏰:11/03/04 20:34 📱:840SH 🆔:VQeFxD3A


#212 [けーち]


(*^ω^)

⏰:11/03/04 20:36 📱:L01A 🆔:DrTDUMeo


#213 [愛華]
「じゃあハンバーググラタン!」

「わかりました!陽向さんも
手伝ってくださいね」

「うん!」

「じゃ買い物していきましょう」


晩御飯の相談をしながら
天宮と歩く帰り道は楽しくて。

『普通』の日常に自然に笑みが
こぼれた。

⏰:11/03/04 20:50 📱:840SH 🆔:VQeFxD3A


#214 [愛華]
久しぶりに友達もできたし。


あ、そういえば……。
天宮が皐月ちゃんをスリッパで
叩いた時。スリッパとは思えないような音が出てた気が……

天宮、どんだけ力強いんだよ…



ちらっと横目で天宮を見る。


まだ知らないことのほうが多い。
天宮のこと………知りたいな。
ゆっくりでいいから、もっと。

そんなことを強く、思った。

⏰:11/03/04 21:00 📱:840SH 🆔:VQeFxD3A


#215 [愛華]
>>212

ありがとうございます(*^_^*)

⏰:11/03/04 21:01 📱:840SH 🆔:VQeFxD3A


#216 [愛華]
第5章 -愛情尺度-

⏰:11/03/05 11:45 📱:840SH 🆔:siaveVn.


#217 [愛華]
「ね、転入生どんな子!?」

「あーなんかマシュマロみたいな感じだったような……」

「てゆーかずっと天宮の後ろに
隠れてるんだよね……」

「天宮…?」

「ほら、校長の一人息子だよ。
なんかワケアリで天宮の家に住んでるんだって!!転入の理由もなんかワケアリらしいよ」

「え、てことはさ………

そういうツテで転入したって
こと………?」

⏰:11/03/05 11:55 📱:840SH 🆔:siaveVn.


#218 [愛華]
'





様々なウワサが飛び交う
円高校の昼休み。


まだ半日しかたってないのに、
どっからそんな情報が………。



「ねぇ、天宮いいの?あたしと
2人暮らししてること知られちゃっても。」

⏰:11/03/05 11:58 📱:840SH 🆔:siaveVn.


#219 [愛華]
屋上でのお昼ご飯。
あたしと、天宮と皐月ちゃん。
そして………


「いや、滝が一人暮らししてるの知ってるのは皐月と俺だけ
だから!!」

「え、そうなんだ……」

「うん、だから安心していいよ」


天宮の親友である
酒田要(さかたかなめ)さん。

⏰:11/03/06 13:53 📱:840SH 🆔:l62WpSoY


#220 [愛華]
要君も皐月ちゃんも、あたしの
事情を知っていて理解してくれているらしい。天宮の友達なら
大丈夫なんじゃないか、と
思ってはいる。



「そっかー。なんか色々ウワサ
立ってるから、天宮と二人暮らしなんてみんなに知れたら、
またどんなウワサたつか……」

「表向きは俺の遠い親戚って
ことになってますからね。
陽向さん余計なことで口を
すべらせないように!」

⏰:11/03/06 13:58 📱:840SH 🆔:l62WpSoY


#221 [愛華]
「はいはい」

「はは、なんか二人とも
兄妹みたいでいいねー!」

要君が白い歯を見せながら笑う。茶色の髪が光に透けて光っていたのが綺麗だった。


……兄妹かぁ……そう見てもらえるのなんか嬉しいなぁ。


「天宮、兄妹だって!!」

そう言って天宮を見ると、
なんか面白くなさそーな顔。

⏰:11/03/06 14:04 📱:840SH 🆔:l62WpSoY


#222 [愛華]
「あ、天宮どうしたの?」

「ん?いやなんでも!ほら、
はやくご飯食べましょう」


な、なんか………あたしと
兄妹に見られるの嫌なのかな。
それはつまり、あたしをまだ
家族としては認めていない、
という意味なわけで……。


『家族になりたい』って言った
のはあたしなんだから。
あたしが頑張らなきゃ。

ちょっとだけ傷ついた心に
言い聞かせるように心で呟く。

⏰:11/03/06 14:08 📱:840SH 🆔:l62WpSoY


#223 [愛華]
「ねぇ要!あたしと要も
兄妹みたいに見えるかなぁ?」

「いや、『兄妹』じゃなくて
『兄弟』だろ?」

「要ひどっ!」

「間違いは正さなきゃな!」


プゥと頬を膨らませる皐月ちゃんの頭を笑いながらなでる要くん


二人は兄妹というよりも……

⏰:11/03/06 14:16 📱:840SH 🆔:l62WpSoY


#224 [愛華]
「……ね、天宮」

「どうしたんですか?
そんな小さい声で………」

「皐月ちゃんと要君ってさ、
もしかして恋人どおし?」

「はぁ?まさか。いい友達って
だけですよ」

「そうなんだ……なぁんだ…」

「急にどうしたんですか?」

「いや、仲良さそうにする二人が恋人みたいに見えたから…」

⏰:11/03/06 14:20 📱:840SH 🆔:l62WpSoY


#225 [愛華]
ちょっとガッカリしながら
天宮お手製のコロッケを頬張る。
次の卵焼きに箸を伸ばそう
とした時。


「………自分のことには鈍感な
くせに周りには敏感に反応する
んですね………チッ」


………ん?


「天宮、今のどういう意味?
しかも舌打ちしたでしょ」

⏰:11/03/06 14:27 📱:840SH 🆔:l62WpSoY


#226 [愛華]
「なんのことですか?」

「……いや、ばっちり聞こえて
たから。アンタたまに性格
変わるよね……なんで?」

「さーぁね」


ぷいと顔を背けてお昼ご飯を
再開する天宮。
後ろでは要君と皐月ちゃんが
楽しそうに話している。



………あんな風になりたいな。
ていうか本当に恋人みたいだ。

⏰:11/03/06 14:32 📱:840SH 🆔:l62WpSoY


#227 [愛華]
天宮は………どうなんだろう?
学校での天宮を知らないから…。


好きなひとはいるのかな?
彼女がいたりするのかな?


あたしにしてくれたみたいに


強く、抱きしめたりするのかな。



胸がキュッと締まった気がした。

⏰:11/03/06 14:35 📱:840SH 🆔:l62WpSoY


#228 [愛華]
「あ、陽向!あたしたち次
家庭科だよ。早く行かなきゃ」

「え?あ、うん!」


あたしは最後のひとくちを
口に入れると、慌ててお弁当を
包みはじめた。


「次家庭科なんですか?」

「うん、ケーキつくるんだ」

「つくったやつ、下さいね」

「へ?」

⏰:11/03/08 21:52 📱:840SH 🆔:Cm3N/Fw6


#229 [愛華]
「甘いの好きなんで」

「へぇー知らなかった。
いいよ。天宮にあげるよ」

「期待してます」



「陽向ー!はやくー!」

「はぁい!」


急かす皐月ちゃんに返事をして
扉に走り出した。

⏰:11/03/08 21:56 📱:840SH 🆔:Cm3N/Fw6


#230 [愛華]
'







甘くていいにおいが調理室に
立ち込める。
こんがりと焼けたケーキに
甘さ控えめの生クリームを絞り
仕上げにイチゴを飾る。


「ふわぁー陽向上手だねぇ」

「料理は慣れてるんだー」

⏰:11/03/08 21:59 📱:840SH 🆔:Cm3N/Fw6


#231 [愛華]
我ながら上手くできたケーキを
眺めて少し嬉しくなった。

家出してきてからは天宮が料理
つくってたから不安だったけど…


横にある皐月ちゃんのケーキを
見ると、生クリームが皿に
飛び出し、ケーキが生のまま
だった。


「さ、皐月ちゃんスゴイね…」

「失礼なっ!」

⏰:11/03/08 22:06 📱:840SH 🆔:Cm3N/Fw6


#232 [愛華]
皐月ちゃんはそう言うと、
真剣な眼差しでスプーンを使いケーキの修正を始めた。


……見れば見るほど女の子だなぁ
かわいいし男の子には見えない。



「……ねぇ、皐月ちゃん」

「うん?なぁに?」

ケーキから目を離さずに
返事をする皐月ちゃん。

⏰:11/03/08 22:17 📱:840SH 🆔:Cm3N/Fw6


#233 [愛華]
「皐月ちゃんって昔から
そうなの?」

「へ?」

「あ、だから…その、女の子として生きてきたのかなぁって」

「あぁ…そーいうわけじゃない。中学生からかなぁ……」

「へぇ……そうなんだぁ…」


皐月ちゃんはケーキを見つめた
まま、話を続ける。

⏰:11/03/08 22:21 📱:840SH 🆔:Cm3N/Fw6


#234 [愛華]
「…でもさ、周りって冷たいの。みんなあたしを気持ち悪がって離れていっちゃった」

「………え…」

「離れていかなかったのは
滝と要だけ。あたしにはあの
二人がいればそれでいいの。
すごく………感謝してる」


悲しそうに笑う皐月ちゃんは
さっきの女の子らしい雰囲気とはまるで違って。

すごく綺麗な女の人だった。

⏰:11/03/08 22:27 📱:840SH 🆔:Cm3N/Fw6


#235 [愛華]
「この学校であたしを男だって
知ってるのは滝と要と陽向だけ!だからね……
陽向と友達になれたのすっごい
うれしかったんだよ?」

「…………ありがとう…」

「さ、ケーキ仕上げちゃお」


隣から皐月ちゃんの鼻歌が
聞こえる。


……あたし今。
嬉しくて泣きそうだった。

⏰:11/03/08 22:31 📱:840SH 🆔:Cm3N/Fw6


#236 [愛華]
そっかぁ。
天宮はやっぱり昔から
誰にでも優しかったんだね。
なんだか少し誇らしくなる。


天宮、ケーキ喜んでくれるかな。


あたしがラッピングにケーキを
包んでいると、隣の班から
声が聞こえた。


「……だ、大丈夫かなぁ…」

「大丈夫だよ!天宮優しいもん」

⏰:11/03/08 22:38 📱:840SH 🆔:Cm3N/Fw6


#237 [愛華]
「甘いもの好きかなぁ…」

「受けとってくれるよ!」


友達から励まされながら
輪の中心にいる女の子は頬を
赤く染めながら俯いていた。




……あの子。天宮が好きなんだ。



だから、ケーキを渡すんだ。

⏰:11/03/08 22:44 📱:840SH 🆔:Cm3N/Fw6


#238 [愛華]
天宮を、好き。
天宮にもいつか彼女ができて。
その娘を抱きしめて。


キスをして。

あたしが邪魔になって……。




「あ!ねぇねぇ、皐月ちゃんに
陽向ちゃん。二人天宮と仲いい
じゃん?天宮って甘いもの
好きかな?」

「滝は好きだと思うけど…。
ね、陽向!」

⏰:11/03/08 22:50 📱:840SH 🆔:Cm3N/Fw6


#239 [愛華]
「あ……うん。多分…」

「本当?よかったぁ。あのさ、
羽田さんって天宮の家に住んでるんだよね?なんで?」

「え………」


な、なんでって言われても…
本当のことなんて言えないよ。


「許嫁とか、そんなかんじ?」

「ま、まさか!!違うよ!!」

⏰:11/03/12 00:36 📱:840SH 🆔:0WJzdUcA


#240 [愛華]
あたしが咄嗟にすごい勢いで
否定すると、その様子をキョトンとした目で皆が見つめる。


「……え、えっとあの………
遠い親戚みたいな感じで。
天宮は……家族っていうか…」

「そうなんだ!よかったぁー」


喜びながら赤くなる女の子は
本当にかわいくって。


あぁ…本当に天宮が好きなんだ。

⏰:11/03/12 00:39 📱:840SH 🆔:0WJzdUcA


#241 [愛華]
あ………まただ。
この胸がしまる感じ。

多分あたし、妬いてる。
家では天宮の優しさを独り占め
できているのに、学校では
知らない天宮が多すぎて。

同じような優しさを他の女の子
にも見せているのかな、とか
思うと心がモヤモヤする。


大好きなお兄ちゃんに
妹が妬くような。


そんなつまらない独占欲。

⏰:11/03/12 00:45 📱:840SH 🆔:0WJzdUcA


#242 [愛華]
「あ、陽向!そのケーキ滝に、
渡すんでしょう?」

手をたたきながら、思い出した
ように皐月ちゃんが言った。

い、今言う!?それ!!
当然のように女子たちがあたしをすごい目で見る。

「え……羽田さんそうなの?」

「ち、違うよ!うん、違う!
食べるの!自分で食べる!」

「ふぅん……」


女の子って……怖いな…

⏰:11/03/16 19:48 📱:840SH 🆔:Bf5.KdGs


#243 [愛華]
あたしは女子たちの視線を
背中に感じながら、チャイムが
鳴るのと同時に教室を飛び出した
なんとなく、あの空気が嫌で。


後ろで皐月ちゃんが何かあたしに言ってたような気がするけど
多分、聞こえてなかった。





「はーぁ……なんだかなぁ…」

手の中にあるのはケーキ。

⏰:11/03/16 20:03 📱:840SH 🆔:Bf5.KdGs


#244 [愛華]
天宮を見る目。
あの女の子とあたしは違う。


あの子は『男子』として。
あたしは『家族』として。

たかがケーキひとつでも
そこに宿る想いは全然違う。



「………これどうしよう…」


屋上に向かう階段に座り、
膝に顔を埋める。

⏰:11/03/16 20:07 📱:840SH 🆔:Bf5.KdGs


#245 [愛華]
あたしは何がそんなにショック
だったのかな。わかんないや…



「……なに、してるの?」

「………?」


男の声。
顔を上げるとそこには
知らない男子。


制服を着てるから生徒だ。


「………誰ですか?」

⏰:11/03/16 20:10 📱:840SH 🆔:Bf5.KdGs


#246 [愛華]
「俺はあんたを知ってるよ。
今日転校してきた羽田陽向。
天宮滝と同居中。」


いや、あたしが誰だって
聞いてるんだけどな………


ここの階段はめったに誰も来ないから一人になりたい時に来たら
いいって天宮が言っていたのに。


…………天宮の嘘つき。

⏰:11/03/16 20:15 📱:840SH 🆔:Bf5.KdGs


#247 [愛華]
男は白い歯を見せて笑うと、
あたしの顔を覗き込む。
壁にある窓から差し込む光が
男の茶色い髪を金色に光らせた。


「俺は3組の松矢蓮。今さ、
なんでこんなとこに人が来るんだって思ったでしょ?」

「……まぁね。ここは人来ないって聞いてたから」

「残念。俺もたまに来るの。
帰りのHR始まるけどいいの?」

「多分、友達がなんとかしてくれてると思うし……」

⏰:11/03/16 20:28 📱:840SH 🆔:Bf5.KdGs


#248 [愛華]
「ふぅん……」

松矢はそう呟いて、あたしの
隣に腰を降ろした。


「……なんか嫌なことでも?」

「それをあんたに話す義理は
米一粒ほどもない」

「冷たいなぁ。仲良くしようよ」

「仲良くしたくない」


知らない男と初対面で打ち解け
られるほどあたしは人間が
できていない。

⏰:11/03/16 20:37 📱:840SH 🆔:Bf5.KdGs


#249 [愛華]
松矢はあたしをじーっと
見つめる。そして視線をあたしの手の中のケーキに移した。


「………ははぁん。なるほど」

「なるほどってなにが?」

「それ、天宮にあげるつもり
だったんだ?」

「………!?」

「でも、あいつはライバル多い
からねぇ……それで落ち込んでるんでしょ。……当たり?」

⏰:11/03/16 20:41 📱:840SH 🆔:Bf5.KdGs


#250 [愛華]
な、な、なにこいつ!!
まるで見てたみたいに……


「俺の家、心療内科の病院。
なんとなーく人の考えてること
わかっちゃうんだよね。」

「………なに、それ…」

「あはは、ごめんね。そっか、
陽向ちゃんは天宮が好きなんだ」

「いや、違うよ」

「そーなの?まぁいーや。
ねぇケーキいらないなら
食べていい?腹減っちゃった」

⏰:11/03/16 20:48 📱:840SH 🆔:Bf5.KdGs


#251 [愛華]
なんかこの人……変。
つかみどころがないってゆーか。

あたしは天宮にあげるつもり
だったケーキを松矢の膝の上に
そっと乗せた。

松矢は鼻歌を歌いながら、
ラッピングをといてケーキに
かぶりつく。

「……あ、おいしい。へー
ケーキ作るの慣れてるの?」

「いや、そうでもない」

「嘘。すごいね。」

⏰:11/03/16 20:56 📱:840SH 🆔:Bf5.KdGs


#252 [愛華]
「別に………」


松矢はにーっと笑って
ケーキを口に運んでいく。


………敵では、なさそう。
でも油断はできない。


「……はい、ごっそさん。じゃあ俺行くね。ケーキありがと」

「うん、さよなら」

「あ、それからさ…」

⏰:11/03/16 20:59 📱:840SH 🆔:Bf5.KdGs


#253 [愛華]
口についた生クリームをぺろっとなめる。その仕草が妙に
色っぽかった。



「……次、会う時は。もう少し
くだけた態度だと嬉しいな」

「………は?」

「なんか色々辛いことあったん
だろ。警戒するのはわかるけど
俺は敵じゃないから安心して。
なんかあったら相談してよ。
強制はしないけどね」


その笑顔は、柔らかかった。
そして、温かかった。

⏰:11/03/16 21:29 📱:840SH 🆔:Bf5.KdGs


#254 [愛華]
天宮と初めて会ったときも、
確かこんな目をしていた。
「君はひとりじゃないよ」って
安心させてくれる。




「…………ばいばい」

「ばいばい、陽向ちゃん」


ドアが閉まる音とチャイムの音が重なった。


今まで感じたことのない、
不思議な気持ちだった。

⏰:11/03/17 11:16 📱:840SH 🆔:IxilAXrk


#255 [愛華]
いつもどおりの天宮との帰り道は今日はずっとお説教。



「……ったく!急にいなくなる
なんて心配するでしょう?」

「うん、ごめんね」

「本気で悪いと思ってます?」


天宮ははぁーっとため息をついてあたしの頭をなでる。

「……黙っていなくならないで」

⏰:11/03/17 11:21 📱:840SH 🆔:IxilAXrk


#256 [愛華]
「………わかった」


あたしがそう言うと、天宮は
満足そうに笑ってなでていた手をあたしの前に差し出した。


「………ケーキ。下さい?」

「……あ、違う人にあげたよ。
天宮にあげる人がクラスにいた
から2つもいらないかなって
思ってさ……」

「違うひと……?」

「うん。ともだちだよ」

⏰:11/03/17 11:26 📱:840SH 🆔:IxilAXrk


#257 [愛華]
「ともだちって……男ですか?」

「うん、そうだよ」

「ふーん………」



あ、不機嫌になった。
ケーキあげなかったのがそんなに
嫌だったのかな……。
でも、さっきの女子が天宮に
ケーキをあげているはず。
2つなんていらないじゃん…


「天宮、怒ってんのか」

「別に?珍しいなって思って」

⏰:11/03/17 11:29 📱:840SH 🆔:IxilAXrk


#258 [愛華]
「珍しい?なにが?」

「だって教室では俺の後ろに
隠れてばっかだったのに。
俺がいないとこで男の友達が
できるなんて思ってなかった」

「……天宮がいなきゃなにも
できないってわけじゃないよ」

「なにより。初対面の男に気を
許してるってとこが驚きです」

気を許してるわけじゃないん
だけどなぁ。でもあのひとは。
悪い人ではない気がするんだ。

てゆーかまた天宮の機嫌悪く
なってるし………全くもう。

⏰:11/03/17 11:34 📱:840SH 🆔:IxilAXrk


#259 [愛華]
「……天宮、ごめんね?」

「なんで謝るんですか?」

「ケーキそんなに好きだった
なんて知らなかったからさ」

「…………」

「今度つくるから。ね?」

あたしは天宮の顔を覗き込む。


……怒ってるというより……
呆れ顔?なんで?

⏰:11/03/19 19:55 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#260 [愛華]
もう本当に訳わからん………。


あたしは大袈裟にため息をついて天宮から視線を外そうとしたけど、それを天宮が許さなかった。


天宮の手があたしの顔を優しく
包み込む。



「……なに、天宮」

「……陽向さんて目綺麗ですね」

「え、そう?……ていうか
今そんな話だっけ……」

⏰:11/03/19 20:20 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#261 [愛華]
あたしの言葉と同時に、天宮の
顔があたしの顔に近づく。


………え、これって……。


「天宮、あの………!?」

「……………」


天宮の息がすぐそこに近づく。
え!?え!?なに!?

パニックのまま、なんとなく
そうした方がいい気がして
目をぎゅっとつぶった。

⏰:11/03/19 20:34 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#262 [愛華]
するとすぐ目の前に近づいていた息はあたしの耳元に移動した。


「………ひやっ……」

ゾクリとする感覚。

温かい風を耳に感じて反射的に
目を開けると、目の前には
意地悪そうに笑っている
天宮の顔があった。




「………キスされると思った?」

⏰:11/03/19 20:46 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#263 [愛華]
「……はっ……なっ!?」

言葉にならない声。
顔に熱が帯びてゆくのがわかる。


してやったり、と微笑む天宮を
見てやっと、からかわれていた
ことに気づいた。


「さいってい!!」

「あはは、顔真っ赤ですよ」

「黙れ、馬鹿やろー!!」

⏰:11/03/19 20:52 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#264 [愛華]
ポカポカと天宮の頭を叩こうと
するけれど、それをことごとく
避けられてしまう。


「ちょっとした罰です、罰」

「なにそれ!!」

「約束を破った罰ですよ」


こいつ、意外と根に持つタイプ
だな………。
天宮との約束は破らないほうが
身のためだ、とあたしの心に
新しくインプットされる。

⏰:11/03/19 20:56 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#265 [愛華]
バクバクする心臓に手を当てて
必死に落ち着こうとする。


……あたし、さっき何を
考えてたんだろうか………。


2歩先を歩く天宮の背中を
見つめて、胸が痛くなる。


ほんと、何考えてたんだろ……


顔の熱が下がらない。
頭がぼーっとする。なのに。


嫌いじゃない。この気持ち。

⏰:11/03/19 21:16 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#266 [愛華]
第6章 -勝負始発-

⏰:11/03/19 21:25 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#267 [愛華]
「羽田さんっ」

「羽田さんいる?」

「羽田さん呼んでくれる?」



学校にも大分慣れてきた頃。
隣の不機嫌絶好調の天宮が
黒いオーラを放っています。

このところほぼ毎日のように。


多分、あいつが私に妙に
かまってくるようになってから。

⏰:11/03/19 23:14 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#268 [愛華]
「松矢君、おはよう」

「あ、羽田さんここにいた!
おはよう。さっき先生が
探してたよ、羽田さんを」

「ほんと?ありがとう」


あたしがそういうと
松矢くんは本当に嬉しそうに
笑った。それと反比例するように
隣の黒いオーラは深さを増した。


「えっと……天宮も、来る?」

⏰:11/03/19 23:31 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#269 [愛華]
「呼ばれたのは陽向さん
でしょう?なんで俺まで
行かなきゃいけないんですか」

「う……そうなんだけ、ど…」

「先に教室行ってますね」

天宮はにっこり笑ってあたしを
残し教室に入っていった。


うーんと……今日は……


「……30点……ってとこかな」

「え、なにそれ?」

⏰:11/03/19 23:35 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#270 [愛華]
あたしの呟きに疑問を感じた
松矢君が、聞き返す。

「いや、最近ずっと天宮の機嫌
悪いからさ。毎日天宮の機嫌点数つけてるの。100点満点で」

「ふーん。今日は30点か」

「平均して20点くらいだから
今日はいいほうかな。」

「うーん。……ごめんね。
多分それ、俺のせいだよね」

「何が?確かに天宮の機嫌が
悪くなりだしたのは、松矢君と
話すようになってからだけど
別に松矢君のせいじゃないよ。」

⏰:11/03/19 23:42 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#271 [愛華]
「え、っていうか……」

「なに?」

「羽田さん、天宮があんなに
機嫌悪い理由わかんないの?」

「へ?松矢君わかるの…?
あたしわかんなくて、毎日
困ってるんだけど」

「ふーんそっかぁ………
天宮、災難だねそりゃ」

「え?なになに?教えてよ!」

「はは、内緒だよ」

⏰:11/03/19 23:47 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#272 [愛華]
「なにさ、それー!」


学校でたくさんの人と過ごす内に
人との打ち解け方もなんとなく
だけどわかってきた。


人を信じることが怖かった。
触れられることが怖かった。
限られた自分だけの空間があればそれで安心できると思った。


でも、そんなに難しいことじゃ
ないんだよね。

⏰:11/03/19 23:52 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#273 [愛華]
きっとそれはすごく簡単なこと。
ひとを疑わなければいけない。
ここではそんな必要はない。


少しずつだけど。
「疑う」ことよりも
「信じる」ことのほうが
ちょっと勇気はいるけれど


すごく素敵なことなんだって
わかってきたの。


あたしの周りにいる人たちは
みんないい人なんだって。
そう信じたい。

⏰:11/03/19 23:59 📱:840SH 🆔:6u.1D6jM


#274 [愛華]








「……………」

「滝、うっす」

「おー要か。はよ」

「何見てんの?」

要は滝の視線の方向に目を向ける

⏰:11/03/20 11:21 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#275 [愛華]
そこにはぎこちなそうに、でも
楽しそうに話す陽向と
松矢蓮の姿があった。


「………なるほど…」

「なぁ要。俺って嫌なやつ?」

滝が視線を窓にずらして呟く。
要は言葉の意味がわからない、
とでも言うように首を傾げる。


「……陽向さんが人に慣れる
ように、って学校に入れたのに
俺から離れてくみたいですげぇ
嫌だ。……全然優しくできない」

⏰:11/03/20 11:26 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#276 [愛華]
「そんなもんだろ、みんな。
っつーかお前は陽向ちゃんの
前でもっと自分出していいと
思うよ」

「…………」

「前から思ってたけど、なんで
敬語使ってるわけ?」

「あれは、ちょっとした反抗」


俺は家族なんかじゃない。
家族として見ないでくれ。


そんな意味を込めた、反抗。

⏰:11/03/20 11:29 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#277 [愛華]
でも、それが逆に陽向との間に
壁を作っているのでは………
と思ったけれど、それを口には
出さず、要はただ滝を見つめた。







円高校は学食のおいしさで
有名は高校でもある。

でもそれをいまだ口にしたこと
はなかった。
毎日天宮がお弁当をつくって
くれるから。

⏰:11/03/20 11:33 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#278 [愛華]
天宮がかなり器用だ。
縫ってもおかしくなかった
あたしの腕の深いケガも
天宮の丁寧な治療のおかげで
傷痕は残ったものの、今は
しっかりと治っている。

あたしも料理は上手い方だけど
到底天宮には敵わないと思う。

お昼ご飯はあたしの至福の時、
でもあるのに…………。



最近のお弁当はひどいものだ。

⏰:11/03/20 11:38 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#279 [我輩は匿名である]
「………なんじゃこりゃ」

9割白米1割おかず。
簡単に言うと嫌がらせです。



「陽向ちゃんってご飯食い?」

「いや、そういうわけじゃ……


っていうかなんでここにいるの
松矢君………」


物珍しそうに隣であたしの
お弁当を見つめる松矢君。

⏰:11/03/20 18:38 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#280 [愛華]
「言ったじゃん、俺もたまに
ここ来るんだって。

今日、天宮たちは?」

「皐月ちゃんは生徒会の仕事。
要君は職員室。天宮は校長に
呼び出されたから今日はひとりで
お昼ご飯なんだ」

「そうなんだー」


そういいながらあたしの一つ下
の階段に腰を降ろした松矢君。

弁当の包み解き始めてるし。

⏰:11/03/20 18:43 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#281 [愛華]
「松矢君、ここで食べるの」

「俺と一緒のお昼は嫌?」

「そういうわけじゃないけど」


気持ちのいい風が少し高い
位置にある窓から入ってくる。


この場所は、学校の中でも
お気に入りの場所。


……それにしても、天宮の機嫌はどうやったら治るのか……。

⏰:11/03/20 19:01 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#282 [愛華]
あたしは最近の悩みを胸に秘め
ながら、白米を口に運ぶ。


そういえば………


「天宮なんで校長に呼び出されたのかなぁ……」

「あ、そういえば天宮って
校長の息子なんだよな?」

「うん、そうだよ」

⏰:11/03/20 19:09 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#283 [愛華]
「そのことでさ……まぁ今日
聞こうと思ってたんだけど…」

「なに?」

松矢君は言いづらそうにして
弁当の箱を開けた。


「天宮は校長の息子で。陽向
ちゃんは天宮の遠い親戚であり
今は天宮の家に住んでいる。

そうだよね?」

「う、うん………」

「それを快く思わない
人達がいるんだ」

⏰:11/03/20 21:03 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#284 [愛華]
「………は?」

「今かなり噂になってるけど
陽向ちゃん知らないの?」

「噂?もしかして、あたしと
天宮が付き合ってるとかいう
やつ?

それを快く思わない人達って…
天宮そんなにモテるの?」

「いや、天宮がモテるかどうか
なんて俺は知らないけど…

っていうかそんな噂じゃないよ」

⏰:11/03/20 21:07 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#285 [愛華]
お弁当の中のミートボールが
松矢君の口に消えてゆく。

「……噂って?」


「……陽向ちゃんが。校長に
頼み込んでこの高校に転入した
らしい……っていう噂」

「はぁ?なにそれ?」

「円高校は県内でも有名な…
簡単に言えばエリート高校だから知らないところで反感を
買ってるかもしれないよ」


嫌な汗が流れた。
この感覚………私、知ってる。

⏰:11/03/20 21:18 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#286 [愛華]











「……陽向さんが?不正に
転入した……だって?」

「うん。今そんな噂がね。
流れてるらしいよ」

⏰:11/03/20 22:03 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#287 [愛華]
紅茶をすすりながら肩がこって
いるのか首を傾げる天宮校長。


「そんな馬鹿な。陽向さんは
ちゃんと転入テストを受けて…」

「まぁそうなんだけど。この
高校はお前も知ってる通り
学力が高い生徒達が集まる
進学校だ。我ながら素晴らしい
生徒達が集まった、ね。


必死に勉強して死ぬ思いで
この学校に入った生徒達もいる。

⏰:11/03/20 22:09 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#288 [愛華]
その生徒達からしたら……」

「陽向さんの転入は納得が
いかない………ということ?」

「そういうことだ」

「そんな奴らほっとけばいい」

「ところがそうもいかない。
中には気性の荒い人達もいるから陽向ちゃんに直接なにかする
かもしれないね。

簡単に言えばイジメってやつ」


ニッコリ笑う我が父に、
どうしようもない怒りを覚えた。

⏰:11/03/20 22:14 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#289 [愛華]
「だからね、お前が側にいて
守ってやんないとさ」

「……父さんからそいつらに
不正転入なんてしてないって
言ってやれば済む話だろ」

「うーん、変に僕がかまって
陽向ちゃんと親戚なんかじゃないってばれても困るしね……

僕もけっこう危ない橋渡ってる
んだからさ。わかってよ」



ため息がもれた。
確かに最初に無理なお願いを
したのは自分だ。

⏰:11/03/20 22:20 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#290 [愛華]
とは言っても、最近陽向さんとの仲はあまり良くない。
寧ろ、最悪と言っていい。


自分のつまらない嫉妬が原因。
そんなこと誰に言ったって
どうしようもないことだ。


松矢蓮……だっけ。
確か隣のクラス。
そういえばいつも一人でいる。
友達がいないのか?


………どうでもいいけど
気に食わない!!

⏰:11/03/20 22:26 📱:840SH 🆔:MoUUCc1A


#291 [愛華]
少し長くなったので…
今日の更新分
>>274-291

感想下さると嬉しいです(^-^)

⏰:11/03/21 00:51 📱:840SH 🆔:F7MCsyEo


#292 [MOMO]
 
この小説大好きです!更新頑張ってください♪

⏰:11/03/21 07:06 📱:W65T 🆔:JYyFQMt.


#293 [愛華]
>>292 MOMO様

ありがとうございます!!
がんばりますね(^-^)/

⏰:11/03/21 14:58 📱:840SH 🆔:F7MCsyEo


#294 [愛華]
>>290


今朝の陽向さんと松矢の姿を
思い出すと無性にイライラする。

よく陽向さんは、俺を大人だ
と言うけれど……それは違う。


身勝手でわがままで自己中で。
きっとずっと………子供だ。


「………陽向さん、今頃ひとりで
弁当食べてるのかな……」

⏰:11/03/21 15:04 📱:840SH 🆔:F7MCsyEo


#295 [愛華]
どんな顔であの弁当を
食べてるのか……。

考えるとちょっと笑えてくる

あんなつまらない意地悪を
してしまう自分に自己嫌悪。
相当余裕なかったのかな……。




大事にしたいのに
側にいてくれるだけでいいのに

たまに壊したくなる。


ひとりで歩く廊下は寒かった。

⏰:11/03/21 15:36 📱:840SH 🆔:F7MCsyEo


#296 [愛華]









結局お弁当は3分の1も
食べられなかった。

天宮の嫌がらせのせいなんか
ではなくて。ましてや、その
嫌がらせに対する報復のような
ものなんかでもなくて。


ただ、なんとなく。
松矢君の話を聞いてから……。

⏰:11/03/21 23:48 📱:840SH 🆔:F7MCsyEo


#297 [愛華]
あたしの不正転入疑惑。
みるみるうちに噂は広まり、
今ではクラスメイトの視線も
かなり痛かったりする。


「ねぇ、陽向!駅前にね、
おいしいケーキ屋があるの♪
今日そこに4人で行こうよ!」

「うん、皐月ちゃん。今
正直それどころじゃない……」

「噂なんかほっとけばぁ?
そのうちなくなるってば!」

そんな話をしていると、教室の
後ろから怠そうに欠伸をした
要君と天宮が入ってきた。

⏰:11/03/21 23:53 📱:840SH 🆔:F7MCsyEo


#298 [愛華]
教室が一瞬ざわめいたけど、
すぐにざわめきは収まって
それは疑いの視線となり天宮の
背中に降り注いだ。


「………やっかいですね……」


天宮はふーっと息をつくと、
あたしの隣の席に腰を降ろした。

天宮はまだ噂の事を知らない。

「……天宮、実はね。松矢君から聞いたんだけど……」

⏰:11/03/21 23:57 📱:840SH 🆔:F7MCsyEo


#299 [愛華]
「知ってます。校長から
昼休みに聞きましたから」

「あ、呼び出された理由って…」

「その噂のことですよ。
放っておいてもそのうちなくなると思いますけど、なるべく
俺から離れないようにね」


……天宮から、離れないように?


「…………どうして?」

「どうしても」

⏰:11/03/22 00:59 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#300 [愛華]
即答かい。
天宮のあたしに対する過保護
具合は今に始まった
ことではないけどさ。

今の段階では………


「……45点……かな」

「陽向さん、何か言いました?」

「いえ、こっちの話です」


少なくとも朝より機嫌は
いいみたいだなぁ。
よかったよかった。

⏰:11/03/22 01:04 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#301 [愛華]
「……そういえば陽向さん。
松矢から噂のこと聞いたって
言いましたね。いつですか?」


ギク。
ここで松矢君とお昼ご飯
一緒に食べましたー なんて
言ったら………。


あたしは黙って俯く。


「……陽向さん?聞いてます?」


聞いてます。
答えられないだけです。

⏰:11/03/22 01:07 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#302 [愛華]
……っていうか。
どうして天宮はあたしと松矢君が親しくするのを嫌うのかな…


天宮は松矢君があまり
好きじゃないみたいだ。

松矢君はそんなに悪そうな人には見えないけどなぁ……。


「……あ、のね」

「はい」

「お昼ご飯一緒に食べて……
その時に聞いたの」

「…………へぇ…」

⏰:11/03/22 01:11 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#303 [愛華]
……まずい、20点に下がった。

天宮の周りの空気が冷たい。
それに気づいたのか、隣で
談笑していた要君と皐月ちゃんの動きもピタリと止まる。



「……で、でもね。
天宮は松矢君のことあまり
好きじゃないみたいだけど。
あの人、あまり悪い人じゃない
みたいだよ。多分……」


あたしは焦ったように弁解する。

⏰:11/03/22 01:15 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#304 [愛華]
「……多分、でしょう?
いいやつだっていう確信はない」

冷たい、天宮の言葉。



たまに天宮は冷たい。
いつもは優しいけど……

あれも本当の天宮なの?


「……あたし……は。
天宮の嫌いな人とは仲良く
しちゃダメなの………?」

⏰:11/03/22 01:18 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#305 [愛華]
「…………」

「天宮が心配してくれるのは
わかるよ。別に嫌じゃない。
でも、どんな人と関わっていくかは自分で決めたいよ……」


ただ、真っ直ぐに天宮を見つめる


あたし今どんな顔してるかな……
きっとすごく不細工だ。


心配してくれてる天宮に
こんなこと言うのは……
きっと恩知らずなこと。

⏰:11/03/22 12:36 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#306 [愛華]
先に目をそらしたのは天宮。



まるで、「もういい」って
言ってるみたいで。


見捨てられたような気になった。




お母さんが出ていった時と
似てる。 この感覚。

⏰:11/03/22 12:40 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#307 [愛華]
「……ごめん、ちょっと
今日は先に帰るね……」

「え、陽向……HRは…」

「上手く言っておいて」




あたしはカバンも持たずに
教室を出た。


天宮の顔は見なかった。
見たくなかった。


あたしは……天宮の考えてること
全然わかんないよ。

⏰:11/03/22 12:45 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#308 [愛華]
心配はしてくれるのに
『家族』にはなりきれない。

いっぱい感謝してるのに
たまにどうしようもなく冷たい。



天宮にとってあたしは何?
家族じゃないなら………






「…………あれ」

⏰:11/03/22 12:48 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#309 [愛華]
フワッと香る甘い香り。
天宮の………香り。

なんだろ、この香り。

香りにつられて普段使わない
階段の横のドアから外に出ると
そこはまだ来たことのない裏庭。


色とりどりの花が咲いている。
……このにおいだったんだ。


誰かが手入れしてるみたいで
花は全部元気に風に揺れてる。

………綺麗だなぁ。

⏰:11/03/22 12:59 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#310 [愛華]
あたしはそっと花に触れた。


「……かわいいね」


天宮が隣にいるならきっと。
黙って微笑んでくれるのかな。


そんなことを考えていると、
あたしがさっき出てきたドアから話し声が聞こえてきた。



誰か、来た?

⏰:11/03/22 13:02 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#311 [愛華]
ガチャッ



「あははは、マジで?」

「そうそう………」


出てきたのは女の子3人。
見たこともない顔だ。

そのうちの一人と目が合う。



「………あれ、あんた……」

「こいつじゃん、羽田って」

⏰:11/03/22 13:05 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#312 [愛華]
「え………この女なの?」


舐めるようにあたしを見回す
3人の女子生徒。
その視線が気持ち悪い。


「あの………なにか?」

「あんたさぁ、羽田陽向でしょ」

「そうだけど……」

「不正転入したってほんと?」


体がドクンと脈打った。

⏰:11/03/22 20:26 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#313 [愛華]
この人たちは………噂を
信じているんだ。

わかってはいたけど目の前で
言われるとやっぱり辛い。



「……そんなの嘘だよ」

「とぼけないでよ。あんた
天宮校長の親戚なんでしょ?
あんたみたいなやつ、この
高校に入れるわけないじゃん」

「なに、それ………」

⏰:11/03/22 20:36 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#314 [愛華]
「努力もなしにこの高校にコネで入ったとか恥ずかしくないの?
笑えないんだけど」




この人たちは。


あたしの何を知ってるんだろう。



何も言えなかった。
全てが否定された気がした。

⏰:11/03/22 22:55 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#315 [愛華]
毎日ただ家の中で過ごす日々。
暴力に耐えながら必死で毎晩
勉強した。ただ、ひたすら。

それをいつか活かせるのか、
なんて見えない未来に怯えて。




そんなあたしの、
何を知ってるというんだろう。




「……………」

「なんとか言いなさいよ!」

⏰:11/03/22 22:58 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#316 [愛華]
ガリッ!



「………った……」

一人の女子があたしを突き飛ばす
突き飛ばされた拍子に、
爪があたしの首に刺さったようで血が飛び散った。


「………あ、やば……」


白いブラウスが赤く染まった。
……天宮に後で謝らなきゃ。

⏰:11/03/22 23:03 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#317 [愛華]
「……そろそろ行こうよ。
なんかちょっとまずいし…」


女子たちはパタパタとドアに
走ってゆく。


あたしはそれを見ることもなく
ただ手でぎゅっと首を抑える。


すると、ドアが開く音と共に
ついさっきまで頭に想い浮かべて
いた人の声がした。


「なにがまずいんですか?」

⏰:11/03/22 23:07 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#318 [愛華]





…………え。




「あ、ここにいたんですか」

「天宮……なんで……」


天宮はあたしの質問には答えずに
あたしから女子たちに視線を
移した。

⏰:11/03/22 23:10 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#319 [愛華]
「……あんたら、2組の女子
だよな。陽向さんに何か用?」

「いや、あの………」


天宮はもう一度あたしに視線を
移した。いつもの、微笑み。



「……陽向さん、教室に
戻ってて?俺もすぐ行くから」

「………わかっ……た」


あたしは首から手は離さずに、
ドアとは反対の方に走った。

⏰:11/03/22 23:14 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#320 [愛華]
どうして、来たんだろう……。
首のケガ見えてしまったかも
しれない。


さっきいつもの微笑みの後に
一瞬見えた冷たい目。


あれは天宮が怒っている証拠。


さっき教室で言ったことを
怒ってるのかもしれない。
というかそれしか考えられない。


目が熱くなってきた気がした。

⏰:11/03/22 23:18 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#321 [愛華]










俺はふーっと長い息をはく。


怒りを吐き出すように。
心を、落ち着けるように。


「……で?陽向さんになんの用」

⏰:11/03/22 23:20 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#322 [愛華]
「……噂が、本当かどうか
確かめようかと思って……」

「陽向さんの首やったのも
あんたたちか?」

「わざとじゃなくて………」



俺は頭をかいた。
まさかこんなに早く
事態が動くとは………。


「結論から言うと噂は嘘だ。
陽向さんはちゃんと転入テストを受けて円に入った。」

⏰:11/03/22 23:24 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#323 [愛華]
女子たちはもじもじとして
早くここを立ち去りたい、
というバツの悪そうな顔を
している。


「……他に聞きたいことは?」


俺がそう聞くと、女子たちは
顔を見合わせ首を横にふる。


「……陽向さんに、変なこと
しないようにね。もしまた
ケガさせたりしたら何するか
わかんないよ」

⏰:11/03/22 23:29 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#324 [愛華]
「え……羽田さんが?」

「いや俺が。」



女子たちは一瞬だけ固まって
引きつった笑顔を浮かべると
一目散にドアに駆け出した。



…俺そんなに怖い顔してたかな。
まぁいっか。あれぐらいで。


教室に行こうと足を進めると
さっきまで気がつかなかった
花の香りが鼻をかすめた。

⏰:11/03/22 23:34 📱:840SH 🆔:1HSINVcg


#325 [愛華]










あたし、何やってんだろ。

頭の中がガンガンする。



「お前は何もしなくていい。
俺の言うことだけ聞いてろ」

⏰:11/03/23 22:05 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#326 [愛華]
ごめんなさい。
ごめんなさい。



「あんたみたいなやつが
この高校に入れるわけない」



ごめんなさい。
ごめんなさい。




誰もあたしを見てくれない。
あたしを……信じてくれない。

⏰:11/03/23 22:08 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#327 [愛華]
「陽向さんっ!」


体がビクンと跳ねる。
慌てて手で涙をぬぐった。



「教室にいてって言ったでしょう何で屋上にいるんですか」

「………ごめんなさい」

「泣いてたんですか…?」

「ごめんなさい」

「陽向さん………」

「ごめんなさい」

⏰:11/03/23 22:12 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#328 [愛華]
沈黙が流れる。


どうすればいいかわからなくて
俯いていると、ふわっと
甘い花の香りがした。

あれ……。


顔を上げると、いつのまにか
すぐ目の前に天宮がいた。



「………な…に……」

「……………」

⏰:11/03/23 22:15 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#329 [愛華]
天宮はあたしの肩に手を添えて
顔をあたしの首に近づけた。

そして…………




ぺろっ





「んぎゃああああ!!」


ななななな!!
なにしてんのこいつ!!!

⏰:11/03/23 22:18 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#330 [愛華]
「き、き、傷なめ………」

「血出てたし痛そうだったので。消毒ですよ、消毒」


天宮はいたって真面目に
そう言ってあたしを見つめる。

心臓がバクバクする。

「お前は犬か!!」

「まぁ犬でもなんでもいいけど。とりあえずこっち向け」

「………!」

⏰:11/03/23 22:25 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#331 [愛華]
また体が強く脈打つ。


あたしは天宮の言葉に従って
背けていた体を天宮に向ける。


いきなり敬語じゃなくなるし。
………調子狂うよ……。


一度速まった鼓動は簡単には
収まらず、体温を上げてゆく。



……なんだろ、これ……。
熱あんのかな私………。

⏰:11/03/23 22:29 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#332 [愛華]
天宮はあたしの傷を見たあと、
抱きしめる形であたしの首に
顔を埋めた。


傷は天宮の唇の熱を感じて疼く。



「………天……宮…」

「すいませんでした。
側にいれなくて……」


天宮の抱きしめる手に力が入る。


あたしはこの温もりが
ほしかったんだと気づかされた。

⏰:11/03/23 22:34 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#333 [愛華]
「……あたし、最近すごい
不安だったんだよ……」


知らないうちに涙が流れる。
それは留まることを知らずに
天宮の制服をぬらしてゆく。


「学校にも慣れてきて……
ちょっとずつ人とも話せるようになってきたのに。
天宮はずっと不機嫌だし……」

「…………」

「天宮と一緒に喜びたかった
のに………寂しかったよ」

⏰:11/03/23 22:42 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#334 [愛華]
天宮の背中に手をまわして
その存在を確かめるように
抱きしめる。


「陽向さん……ごめんね」

「ううん。天宮が嫌なら……
あたし松矢君とは話さないよ。」

「え……」

「あたしにとっては。
松矢君より天宮が大事だから」


あたしがそう言うと、
天宮は少し何かを考えてから
体を引き離した。

⏰:11/03/23 22:50 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#335 [愛華]
それが少しさみしかった。


「……松矢と普通に話しても
大丈夫ですよ」

「天宮もう怒らない?」

「はい。」


あたしが微笑むと
天宮もゆっくり微笑んでくれた。


「あ……あともうひとつ
聞きたいことがあるの」

⏰:11/03/23 22:54 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#336 [愛華]
「なんですか?」

「その………あたしはもう。
天宮の家族になれたのか、な?」



確かめたかったこと。
天宮を信頼しはじめて。
家族になりたいと願った。

大事にしてくれてるのは
充分わかっているけれど
やっぱり不安でたまらなくて。


天宮にとって……あたしは何?

⏰:11/03/23 22:57 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#337 [愛華]
「………家族になるには、
血の繋がりが必要です。でも
そんなものがなくたって……

俺にとって陽向さんは
ただひとりの大切な人です」

「…………!!」


「今までどんなに陽向さんが
辛かったのか、頑張ってきたか。

自惚れかもしれませんが
俺が1番わかっているつもりです

……だから泣くのは俺の前で
だけにしてくださいね」

⏰:11/03/23 23:01 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#338 [愛華]
胸のくもりが晴れてゆく。
あたしのことをちゃんと、
わかってくれる人がいる。


なんて心強い、そして安心する。



お母さんに向かう気持ちとは
ちょっとだけ違う。

優しくて、心地好くて、
ちょっとだけ切なくなったり
胸が苦しくなるこの気持ち。


なんて名前の気持ちなのかな。

⏰:11/03/23 23:06 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#339 [愛華]
ふと上を見ると、太陽は西に
傾き空を赤く染めていた。


「……さ、帰りましょうか。
陽向さんの傷の手当しなきゃ」

「お願いします……。
あ、そういえばさっき女子たちと何話してたの?」

「あーちょっと怒りました。
多分噂もじきに消えますよ!」

「よかったぁ……」


あたしがホッとしていると
天宮がにっこり笑いながら
あたしの頭をなでる。

⏰:11/03/23 23:14 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#340 [愛華]
あ……今気づいた。


天宮の甘いにおいって
あの裏庭の花のにおいだ。


鞄を取りに行ってくる、と
言い残して教室に戻った天宮。

さっきまで天宮がいた場所は
やっぱり甘い香りがした。

……裏庭に通おうかな。


ってあたし変態みたいだ……。

ひとりで自己嫌悪している間も天宮の甘い香りは消えなかった。

⏰:11/03/23 23:24 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#341 [愛華]








教室で鞄をとって陽向さんを
迎えに行こうとした時。

階段にあまり今会いたくない
人物を見つけた。


「………松矢……」

「あれ、天宮まだ居たんだ」

⏰:11/03/23 23:26 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#342 [愛華]
そう言ってニッと笑う松矢は
男の俺から見ても男前。


「……誰か待ってるのか?」

「んー別に。」

「そっか。じゃあな」

それだけ言って松矢を通り過ぎ
階段を降りはじめると、
上からまるで図ったような
松矢の言葉が聞こえた。


「……陽向ちゃんには俺のが
合ってると思うけど」

⏰:11/03/23 23:31 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#343 [愛華]
その言葉にピタリと階段を
降りる自分の足が止まる。


「………は?」

「予想以上に面白いんだよね。
陽向ちゃんにかまうのって。」

「松矢に陽向さんは無理だ」

「それはどうだろ?」


ピリピリと空気が震える。
相変わらず微笑んだままの
松矢は何を考えてるのか
全くわからない。

⏰:11/03/23 23:35 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#344 [愛華]
「………それにさ。スタートの
差ってデカいと思うよ」

「スタートの差……?」

「うん。
『家族』からのスタートと
『他人』からのスタート。


どっちが有利かなぁ」


松矢はその言葉を残すと
笑顔を崩さないまま
階段を降りていった。

⏰:11/03/23 23:38 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#345 [愛華]
スタートの、差。

あまりのんびりしてられないの
かもしれないな………。


距離が近すぎてもダメなんだ。
相手の意識を変えるには
ある程度の距離が必要なのかも
しれない。


でも今さら自分は。
その距離に耐えられるのか…?


2人分の鞄は妙に重かった。

⏰:11/03/23 23:45 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#346 [愛華]
今日の更新分
>>325-346

感想板にて、よければ
感想待っています。

⏰:11/03/23 23:48 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#347 [愛華]
第7章 -自惚前線-

⏰:11/03/24 21:02 📱:840SH 🆔:nJH7gHns


#348 [愛華]
最初は好奇心だった。

傷ついてることがわかったから

なんとなく興味が沸いただけ。

いつからだろう。


君はあいつと同じ目をしていると気づいたんだ。


綺麗なのに深い闇を潜めて
世の中の何かを憎みながら
心の在りかを探している。

そんな君に惹かれていった。

⏰:11/03/24 21:09 📱:840SH 🆔:nJH7gHns


#349 [愛華]
「陽向さん!起きて下さい!」

「ん〜…まだ6時じゃん……」

「今日、体育祭ですから早く
行かなきゃダメなんですよ!」

「いーやーだー…」

「………ったく……」


駄々をこねるように布団に包まる
その向こうで天宮の呆れたため息が聞こえた。


いつも通りの、朝。

⏰:11/03/24 21:20 📱:840SH 🆔:nJH7gHns


#350 [愛華]
学校に行くようになってからも
早起きは本当に苦手。
あたしは朝がめっぽう弱い。


朝はあたしと天宮の意地の戦い。



「……陽向さん。最後です。
起・き・て・ください」

「いーやーだ!ってば!」

「そうですか……」


…あれ?いつもならここらへんで布団を天宮が引っ張るのに。
今日は来ないな………。

⏰:11/03/24 21:27 📱:840SH 🆔:nJH7gHns


#351 [愛華]
不思議に思って布団から
頭を出そうとした瞬間。


のしっ




「ぎゃぁぁ!!天宮!!
重い!重いからどいて!」

「最後だっていったでしょ」


布団の上に天宮が座っている
らしく、天宮の全体重が
あたしにのしかかる。

⏰:11/03/24 21:37 📱:840SH 🆔:nJH7gHns


#352 [愛華]
おまけに布団の両端を押さえて
いるようで、顔が布団から出せず息が出来ない!!


「バカバカバカバカ天宮!!
どけこのやろー!息できない!」

「そんな口のききかたで
いいんですか〜?」


必死に暴れてもやはり男と女。
力の差は歴然。

面白そうに天宮が笑っているのが聞こえてくる。

……絶対こいつドSだ!!

⏰:11/03/24 21:49 📱:840SH 🆔:nJH7gHns


#353 [愛華]
「ごめんなさい〜!ギブ!!
ギブアップだってば!!
ギブアンドテイク………」

訳のわからない英単語が
出てきた途端、布団がガバッと
引っぱがされた。


あたしは水を得た魚のように
酸素をめいっぱい吸い込む。



………こ、殺されるとこだった…


ぜぇぜぇ息をしていると、
頬に天宮のひんやりした手が
添えられた。

⏰:11/03/24 21:55 📱:840SH 🆔:nJH7gHns


#354 [愛華]
ふと横を見ると、そこには
天宮のドアップの笑顔。


「………ちょ、な……に…」

「息苦しいんでしょ?
人工呼吸してあげようかと。」

「なっ………にを……!!」


天宮はあたしの言葉を
聞いてもいないような様子で、顔を近づけると優しく
額にキスを落とした。

⏰:11/03/24 22:01 📱:840SH 🆔:nJH7gHns


#355 [愛華]
額が少しだけひんやりした。

でもそれは一瞬のことで
すぐに全身が熱くなってゆく。


「………はい、陽向さん。
おはようございます!」


にーっと満足したように
微笑む天宮。
それも超至近距離。

でもそれを突っ込む気力もない。


……あたし一生
天宮には勝てない気がする……。

⏰:11/03/24 22:09 📱:840SH 🆔:nJH7gHns


#356 [愛華]
そんなことを真剣に考えながら
脱力して俯く。


「……卑怯だ、あんなの……」

「作戦ですよ、作戦!!
まぁちょっと楽しみましたけど」

「楽しむな馬鹿!!てゆーか
最後のキスは必要ないだろ!」

「そういえばそうですね」

「絶対わざとじゃん!」

⏰:11/03/24 22:18 📱:840SH 🆔:nJH7gHns


#357 [愛華]
あたしがどんなに怒鳴っても
天宮はそれをスルリとかわす。


今日の朝の勝負、完敗。
これで8連敗………。



最近天宮は優しくなった。
けれどそれと比例するように
すごく意地悪になった。


まぁ意地悪なのは前からだけど…
最近は度を越してひどい。

⏰:11/03/24 22:23 📱:840SH 🆔:nJH7gHns


#358 [愛華]
さっきみたいにキスをしたり。
不意に顔を近づけたり。
(↑これは前からだけど……。)


あたしをからかうのを
楽しんでいるみたいだ。
それに素直に反応してしまう
自分がすっごく悔しい。



いつか絶対ぎゃふんと
言わせてやる。


と、たくらんでいる今日この頃。
なかなか上手くいかないけど。

⏰:11/03/24 22:37 📱:840SH 🆔:nJH7gHns


#359 [愛華]
「おはよう陽向にタッキー♪」

「皐月、おはよう!」

「タッキーはよせ、皐月」


学校に着くと、ブカブカの
学ランを着てはちまきを巻いた
皐月がお迎えをしてくれた。


「どう?似合う?」

「うん、かわいーよ皐月!」

「やっぱり?でっしょー!」

⏰:11/03/25 15:50 📱:840SH 🆔:gyuZj19U


#360 [愛華]
微笑みながらくるっと回る
皐月は本当にかわいい。


ここで初めてできた、友達。
呼び捨てはまだ慣れないけど…



「…さて。陽向も着替えようか」

「…………は?」


キョトンとするあたしと天宮。


「陽向も着るの!ほら行くよ!」

⏰:11/03/25 15:54 📱:840SH 🆔:gyuZj19U


#361 [愛華]
「え!?だって体育祭だよ?
走れないじゃんか!」

「あれ、滝話してないの?
陽向あのね、午前中は円恒例の
応援合戦だからクラスそれぞれ
こうやって着替えて応援するの」

「俺も知りませんでした」


天宮が驚いた顔をする。

天宮も知らなかったのか。
………てゆーかこの企画。
100%天宮校長の趣味だ……。

という確信に近い考えは
胸に留めておいた。

⏰:11/03/25 17:58 📱:840SH 🆔:gyuZj19U


#362 [愛華]
全員が着替えたところで
大撮影会が始まる。


……といってもほとんどは。


「皐月ちゃんこっち向いて!」

「こう?」

「最高ですっ!!」


凄まじいシャッター音と
フラッシュの光。


まぁ皐月はかわいいから
しょうがないとは思う。

⏰:11/03/25 23:12 📱:840SH 🆔:gyuZj19U


#363 [愛華]
溢れる笑顔。
響く笑い声。


あぁ…………あたし。




「…陽向さん?どうしました?
すごいぼーっとしてましたよ」

「いや、なんていうか……」




今あたし。すごく楽しいなぁ。

⏰:11/03/25 23:16 📱:840SH 🆔:gyuZj19U


#364 [愛華]
前までは人の笑い声とか。
笑顔とか。

そんなものは苦痛でしかなくて。

我ながら捻くれてたと思う。

でも幸せそうな人たちを見ると
妬まずにはいられなくて
そんな自分が嫌でしかたなかった



私はどうして苦しいんだろう。
どうして笑えないんだろう。

ただ心から笑いたいだけなのに。

⏰:11/03/27 00:46 📱:840SH 🆔:H13WwXZw


#365 [愛華]
毎日鏡の前で泣いた。
声を押し殺して泣いた。



今あたしは
心から笑えているだろうか。


過去の自分が羨ましくなるくらい
笑えているかな。



「…………嬉しいなぁ」


ふいに口を突く言葉。

⏰:11/03/27 01:02 📱:840SH 🆔:H13WwXZw


#366 [愛華]
「嬉しいって何がですか?」

不思議そうに首を傾げて
天宮が聞く。


「今あたし幸せだなって。
ここにいれることが嬉しいの」

「………………」



毎日が幸せの連続で夢のよう。
それをつくってくれたのは…



カシャッ

⏰:11/03/27 01:05 📱:840SH 🆔:H13WwXZw


#367 [愛華]
「ぬぁっ!天宮なんで
あたし撮ってんの!?」

「いや、なんか可愛かったから」

「はぁ?いーから消してよそれ」

「嫌です。待受に決定。」

「ちょっ……消してってば!」


それをつくってくれたのは
まぎれもなくあなたなんです。


でも、たまに迷うんだ。

⏰:11/03/27 01:10 📱:840SH 🆔:H13WwXZw


#368 [愛華]
居心地が良すぎて
今ある居場所に満足してしまう。


あたしのいるべき場所は
ここじゃないのに。

ここにいるべきではないのに。


あたしが今いなくなったって
天宮はいつもどおりの朝を
明日も迎えるだろう。


でもあたしは違うの。
きっと1日も生きてゆけない。

⏰:11/03/27 01:14 📱:840SH 🆔:H13WwXZw


#369 [愛華]
居場所に依存してゆく。
そんなことあってはいけない。



『天宮の家族になりたい。
お母さんが見つかるまででいい。
その後は忘れてくれて構わない』




お母さんが見つかったとき。
あたしは笑顔で天宮に
さよなら、と言えるのかな。

⏰:11/03/27 01:18 📱:840SH 🆔:H13WwXZw


#370 [愛華]
深くはいりこみすぎて
離れられなくなりは
しないだろうか。


それがあたしは怖い。




幸せを感じるたびに考えるの。





あたしは本当に

ここにいていいんだろうか……?

⏰:11/03/27 01:21 📱:840SH 🆔:H13WwXZw


#371 [愛華]
「ふわぁ〜疲れたねぇ〜」

「疲れたって………皐月はただ
写真撮られてただけじゃん」

「べつに撮られたくて撮られてたわけじゃないもーん。
みんな勝手に撮るんだもん」


午前中の応援合戦が終わり、
お昼休みに入ると、みんな
我先に、とばかりに購買や
学食になだれこむ。

あたしたちお弁当組には
関係ないことだけれど、
こうしてゆっくりお昼を
食べれるのはすごくありがたい。

⏰:11/03/28 01:17 📱:840SH 🆔:d2TRB.q6


#372 [愛華]
「でも要君のパフォーマンス
すごいかっこよかったよ!!
いつ練習してたの?」

「俺バスケ部入ってるからさ。
部のみんなで練習してたんだ。

陽向ちゃんにそう言って
もらえると嬉しいもんだね」


そう言うと要君は微笑みながら
ちらっと天宮を見た。


「………なぜ俺を見る?」

「いや、なんとなく……」

⏰:11/03/28 01:22 📱:840SH 🆔:d2TRB.q6


#373 [愛華]
「俺はそこまで器の
小さい男じゃない」

「何も言ってないだろ……」


……?何の話してんだろ?
天宮もパフォーマンスに
出たかったのかなぁ?


あたしは天宮のパフォーマンスを想像しながらお茶を飲もうとして
それを買い忘れていたことに
気がついた。

⏰:11/03/28 01:28 📱:840SH 🆔:d2TRB.q6


#374 [愛華]
「………あ、お茶わすれた」

「あたしも行こうか?」

「ううん、大丈夫。急いで
買ってくるねー」


皐月の誘いを断るとあたしは
飲み物を買いに教室を出た。







「………滝、なにしてんの」

⏰:11/03/28 01:31 📱:840SH 🆔:d2TRB.q6


#375 [愛華]
「ん?陽向さんのご飯に
ソースで落書きを……」

「………何歳だよ、お前…」


要は呆れながらそれを見つめる。

陽向ちゃんの方もたいがい素直じゃ
ないけどそれに負けないくらい
天宮も強情だからなぁ……

……ってうかあの鈍感さは
もはや罪といってもいい。

⏰:11/03/28 23:21 📱:840SH 🆔:d2TRB.q6


#376 [愛華]
天宮に八つ当たりされる俺の
身にもなってほしいな……。


……そういえば松矢蓮。
確か同じ中学だったけど、中学
の時は彼女いたような……。

滝は周りにあまり興味がなかったから覚えてないだろうけど。



まぁ過去の話……か。


改めて心の中で滝にエールを送る要だったが、今だにソースで
落書き中の滝を見ると
やっぱりため息は隠せなかった。

⏰:11/03/28 23:30 📱:840SH 🆔:d2TRB.q6


#377 [愛華]







ガチャンッ


鈍い音を立ててお茶が落ちた。


………あれ。


「………やべ、しくった」

⏰:11/03/28 23:36 📱:840SH 🆔:d2TRB.q6


#378 [愛華]
ペットボトルを押したつもり
だったのにどうやら間違って
缶を押してしまったらしい。

これじゃ開閉ができない。



「………かえたげよっか?」


優しくて甘い声。
あたしの心を見透かすような……


「……心の中読まないでよね。
松矢君もお茶買ったの?」

⏰:11/03/28 23:40 📱:840SH 🆔:d2TRB.q6


#379 [愛華]
松矢君は汗をかいているのか、
首にタオルをかけていた。

何もしていないのに妙に
色気があるというか………。

いつ見ても女として
敗北感を感じてしまう。



「ペットボトルがいいんでしょ?俺、口つけてないから
かえたげるよ」

「あ、いいの?やったー」

⏰:11/03/28 23:50 📱:840SH 🆔:d2TRB.q6


#380 [愛華]
「はは、どーぞどーぞ」


にっこり笑う松矢君から
お茶をうけとると、あたしは
近くの階段に腰掛けた。


その様子を松矢君は
不思議そうに見つめる。


「天宮んとこ戻んないの?」

「んー歩くの疲れちゃったし
昼休みは長いから平気だよ」

「そう?」

⏰:11/03/28 23:54 📱:840SH 🆔:d2TRB.q6


#381 [愛華]
「うん。松矢君も座りなよ」


あたしは自分の隣を指差す。
それを見た松矢君は遠慮がちに
腰を下ろした。



「…最近、天宮の機嫌はどう?」

「普通かな?」

「それはよかった」

「あたしもよかった。松矢君も
あたしの友達なんだもん」

⏰:11/03/28 23:58 📱:840SH 🆔:d2TRB.q6


#382 [愛華]
涼しい風が廊下に吹き抜ける。
もう秋のにおいがする。
家を出てから……3ヶ月、か。



「……松矢君って一匹狼?」

「はは、なにそれ?」

「友達あたし以外にいないの?
他の人といるの見たことない」

「うーん、群れるのが苦手
なんだよね。めんどくさいし」

「ふぅん。っていうかあたしは…

⏰:11/03/29 00:03 📱:840SH 🆔:FS3Myf2Y


#383 [愛華]
………他の人に触れるのを
嫌がってるように見える。

壁をつくってる、みたいな」



誰も、寄せつけない。
前までのあたしのよう。


そっか、あたしがずっと
松矢君に感じてたものって……



「………さみしくないの?」

⏰:11/03/29 00:08 📱:840SH 🆔:FS3Myf2Y


#384 [愛華]
「…………さみしくないよ」



そう言った松矢君の目は
言葉とはまるで正反対で。

さみしくない、という言葉は
まるで自分に言い聞かせている
ようで。



あたしは何も言えなくなった。


その瞳の奥に何があるのか
あたしにはわからなくて

怖くなった。

⏰:11/03/29 00:15 📱:840SH 🆔:FS3Myf2Y


#385 [愛華]
「信頼できる人と一緒にいる
ことはめんどくさくなんかない。

……松矢君も、そんなひとに
会えるといいね」



多分、このひとも。
色々な悲しみを背負ってる。

それは不本意に探っていいような
安っぽいものじゃない。

そんな気がした。

⏰:11/03/29 00:23 📱:840SH 🆔:FS3Myf2Y


#386 [愛華]
松矢君は瞳に色を戻すと
ちょっとだけ微笑んだ。


「……アトバイスありがと」

「え!?や、そんなつもり……
ていうか偉そうなこと言って
ごめんね……」

「んーん。うれしかったよ」



……今考えるとあたしほんとに
何偉そうに言ってたんだろ…

恥ずかしい。恥ずかしい!!

⏰:11/03/29 00:29 📱:840SH 🆔:FS3Myf2Y


#387 [愛華]
ぱたぱたと顔をあおぎながら
ペットボトルで頬を冷やす。


「陽向ちゃんは天宮を
すごく信頼してるんだな」

「うん、まーね。でも
優しくされると少し苦しい」

「え、なんで?」

「いつか、天宮と別れなきゃ
いけない時が来たら……

自分はどうなるんだろう、って
考えるとすごく苦しくなる」

⏰:11/03/29 11:46 📱:840SH 🆔:FS3Myf2Y


#388 [愛華]
「…………」


松矢君は黙ったまま。
やば、絶対引かれたよ……。

ていうか、あたしもあたしで
何ペラペラしゃべってんの。
今日はいらないことをたくさん
しゃべってしまってる気がする。



「……ごめん、今の忘れて!
気にしなくていいからさっ!」

「え?あぁ………」

⏰:11/03/30 00:13 📱:840SH 🆔:qJJkXGRo


#389 [愛華]
「お茶ありがとう!!午後から
がんばろーね!ばいばい!」


あたしは松矢君の返事を待たず
逃げるように階段を上がって行く
するとすぐに松矢君の声が
あたしに向かって飛んできた。


「………陽向!!」

「はい!!……え、呼び捨て…」

条件反射で振り向いて返事をしたけれどいきなりの呼び捨てに
ペットボトルを落としそうになる

⏰:11/03/30 00:18 📱:840SH 🆔:qJJkXGRo


#390 [愛華]
その様子を見て松矢君は笑うと
小さな声でつぶやいた。



「………陽向ってさ。


俺の大事だった人に似てる。」

「え?」



「俺が陽向の考えてることを
わかっちゃうのってさ、
それが原因なのかもしんない」


無邪気そうに、懐かしそうに、
でも悲しそうに、笑う。

⏰:11/03/30 00:26 📱:840SH 🆔:qJJkXGRo


#391 [愛華]
「………そう?」

「うん。そっくりだ」

「そっか。でもどんなに似てても
あたしはその人じゃないよ」

「うん。」



………どうしてそんな顔するの。



再び階段を上る。
足が鉛のように重かった。

⏰:11/03/30 22:09 📱:840SH 🆔:qJJkXGRo


#392 [愛華]








「おまたせー」

「遅かったね、陽向」

「え?あぁ………うん」


なんとなく天宮と目を合わせ
ずらくて俯いたまま席につく。

⏰:11/03/31 22:08 📱:840SH 🆔:z/QxPonw


#393 [愛華]
再び箸に手をつけようとした。


時。



「……天宮?これやったの」

「俺なわけないでしょう」

「嘘つけ。にやけてんじゃん」


半分以上残っている白米には、
中農ソースで馬がかかれていた。
意外と上手いのがムカつく。

⏰:11/03/31 22:19 📱:840SH 🆔:z/QxPonw


#394 [愛華]
「これ、コロッケ用のソース
じゃん!なんで白米に!」

「かわいいでしょう?」

「かわいいけど!
ぶっちゃけ少し感動したけど!
今はそこじゃないでしょ!」

「まぁまぁ陽向ちゃん。天宮は
すごい楽しんでたみたいだから
多めに見てやってよ」

「要君は天宮に甘すぎだよ…
あたしは楽しくないっつの!」

「あはは」

「何がおかしいんだ天宮」

⏰:11/03/31 22:30 📱:840SH 🆔:z/QxPonw


#395 [愛華]
天宮は意外と子供なのかも、と
思いながら突っ込む気力も
失せたので再びお昼再開。



「………なんか、ありました?」


物足りない味のコロッケを
口に運ぶと天宮があたしの
顔を心配そうに覗き込んだ。


あたしは手を止めることなく
その質問に答える。

⏰:11/03/31 22:45 📱:840SH 🆔:z/QxPonw


#396 [愛華]
「別になんもない」

「嘘つくの下手すぎです」

「下手じゃないもん」

「ほら嘘だって認めてんじゃん」


しまった、やられた。
口では天宮には勝てない……
ていうかあたしが天宮に勝る
ものなんてあるんだろうか。


「陽向ータッキーに隠し事とか
したらタッキー怒るよぉ?」

⏰:11/03/31 22:49 📱:840SH 🆔:z/QxPonw


#397 [愛華]
う………
皐月の言葉に詰まってしまう。
確かにさっき天宮は敬語じゃ
なかった。経験からすると
あれは怒ってる証拠であり……


ていうかなんで隠し事してるってわかるんだろ。
透視でもできるんだろうか…


「陽向ちゃん〜天宮の怒りは
廻りに廻って俺に来るんだからささっさと話してよ〜」


か、要君まで………。

⏰:11/03/31 23:01 📱:840SH 🆔:z/QxPonw


#398 [愛華]
松矢君と話してもいいとは
言われているけど、やっぱり
言うのは少し抵抗がある。


「か、帰って話す」

「……家でじっくりね。」

「なんか滝変態っぽいぞ」

「それはお前が変態だからだ。


………陽向さん。家でちゃんと
話してください、ね?」


口調は優しいのに、あたしには
悪魔の囁きみたいだよ……。

⏰:11/03/31 23:18 📱:840SH 🆔:z/QxPonw


#399 [愛華]
なんだかんだで午後の競技も
終わり…結局我らが1−3は
初日の時点で総合2位となった。


1番印象的だったのは午前の
応援合戦を校長室の窓から
ひっそり覗いていた天宮校長。

天宮も将来あんな風になったら
どうしようと本当に不安になった




で、現在。

⏰:11/04/01 00:25 📱:840SH 🆔:5cR3Yg52


#400 [愛華]
「ふぃーいいお湯でしたー」


運動のあとのお風呂は
やっぱりいい!!
心休まる。



「天宮ぁ、髪のびちゃったから
今度切ってくれる?」

「それはいいですけど」

「アイスある?」

「ありますけど」

⏰:11/04/03 11:29 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#401 [愛華]
「やったーハーゲンダッツ!」

「ハーゲンダッツですけど。

………わかりましたから。
ほら、こっち来て」


こいこい、と手を招く天宮。
隣に座るとやっぱり甘くて
いいにおいがした。


「お昼、何かあったんですか?
なんかいつもと様子違って
ましたけど………」

「うん………」

⏰:11/04/03 11:35 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#402 [愛華]
あたしが言葉につまると、
天宮は首にかかっていた
タオルであたしの髪を
わしゃわしゃとなで始めた。


「………ちょ、自分で!
自分でふけるからっ!」

「………」


無視かい!


なんだろう。この手に
抱きしめられたこともあるのに。

なんか今さらすごく緊張する…

⏰:11/04/03 11:43 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#403 [愛華]
緊張するけど、心地好い。
なんかホッとする……。




「……天宮はさ、もし自分が
大切なひとに似てるって
言われたらどうする?」

「なんですか、それ?」

「例えばの話。そうだなぁ……
要君にさ、『滝は昔の俺の親友にそっくりだ』って言われたら
天宮はどう思う?」

「…………」

⏰:11/04/03 12:25 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#404 [愛華]
「それは『光栄なことだ』って
喜べばいいの?でもその人には
なりきれない。悲しめばいい?


あたし……よくわかんなくて」


あの時の松矢君の目。
あたしに誰を重ねていた?
あんなにも哀しい瞳で
誰を見つめていた?


「誰かに言われたんですか?」

「……松矢君、に。昔大事だった人に似てるって言われた…」

⏰:11/04/03 12:31 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#405 [愛華]
「………」

「黙らないでよ」

「………」


結局黙ってるし。
松矢君と話しても怒らないって
言ったのに。嘘つき。
どんだけ松矢君嫌いなのよ……



あたしも何も言えなくなって
ただひたすらにアイスを食べて
いると、天宮はゆっくりと
立ち上がり、あたしがもたれて
いたソファに座った。

⏰:11/04/03 12:35 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#406 [愛華]
そのまま上から、またあたしの
頭をふきはじめる。



「……そんなに気にすること
なんですか?軽く流せばいい話
じゃないんですか?」

「うん…………。でもさ、
なんかあまりにも悲しそうな
目してるから。



悪いことしてるわけじゃないのに
謝りたくなっちゃったの。

その人じゃなくてごめんなさい
………って。」

⏰:11/04/03 18:42 📱:840SH 🆔:evjaXgCs


#407 [まぁ]
あげ\(^^)/

⏰:11/04/10 01:08 📱:SH01C 🆔:nmZ49yzs


#408 [かこ]
主さんお忙しいでしょうが、更新されるの待ってます!\(^ー^)/

⏰:11/04/10 19:58 📱:SA002 🆔:./.7oq1Q


#409 [愛華]
>>407
>>408

ありがとうございます!!
最近忙しさがピークで全然
更新できていなくて本当に
申し訳ないです(ノ_・。)


今週末には落ち着くと思われますので、更新を再開したいと
思っています。

待っていてくださると
嬉しいです!!

⏰:11/04/11 22:29 📱:840SH 🆔:KHn.mgRU


#410 [,]
頑張って下さい
更新待ってます

⏰:11/04/16 00:37 📱:F05C 🆔:emjRMazM


#411 [愛華]
>>410

ありがとうございます!!
今日から更新再開します(^-^)

⏰:11/04/16 13:22 📱:840SH 🆔:r6CJTZ8o


#412 [愛華]
>>406



松矢君が初対面から優しく
してくれていたのは……


『あたし』じゃなくて、
あたしに重ねた『誰か』。


そう思うとすごく悲しくて。
怒りたくもなったけど、なぜか


謝りたくなってしまったんだ。

⏰:11/04/16 13:30 📱:840SH 🆔:r6CJTZ8o


#413 [愛華]
なんとなく誰かに甘えたくなって
後ろに座っている天宮の膝に
顔を埋めた。


そんなあたしの頭をぽんぽんと
なでる手はいつもより優しくて。



「……天宮、いいにおいするー」

「そうですか?どんなにおい?」

「んとね、甘くておいしそうな
ほわーってしたにおい」

⏰:11/04/16 13:36 📱:840SH 🆔:r6CJTZ8o


#414 [愛華]
「んーなんだろ?シャンプー?」

「わかんないけど、なんか
ほっとするにおい……」

「えー?」


天宮は自分で自分のにおいを
かぐけどピンときていない様子。


「んーわかんないですね……」

「別にいーよわかんなくても」

⏰:11/04/16 19:38 📱:840SH 🆔:r6CJTZ8o


#415 [愛華]
あたしだけがわかれば。



その言葉は飲み込んだ。



今日のあたしはなんか変だな。
妙に甘えたい気分だ。
やっぱり松矢君のことが
ショックだったのかな………。


天宮の膝に顔を埋めたまま
すぐ側にある温もりに安心を
感じていた。

⏰:11/04/16 19:42 📱:840SH 🆔:r6CJTZ8o


#416 [愛華]
「なんか今日変ですね陽向さん。松矢のせいですか?」


お、するどい。
でもあたしはあえて答えない。


「俺、動けないんですけど……」

「いーやーだ。ここにいて!」


あたしは天宮が席をたたないよう膝に手をまわして抱き着く。

我ながらなんてわがまま。

⏰:11/04/16 19:53 📱:840SH 🆔:r6CJTZ8o


#417 [愛華]
でもそんなわがままを聞いて
くれる優しい天宮。


きっと、あたしのことを
「手のかかる妹」ぐらいにしか
思ってないんだろうな。




そう思うとちょっとだけ胸が
ちくりと痛んだ気がした。


「………ん?」

「どうかしました?」

⏰:11/04/18 00:01 📱:840SH 🆔:boYxZINA


#418 [愛華]
「いや、別に……んー?」



なんだ?今の。
なんか面白くない気分だった。



あたしは頭を捻りながら
ゆっくり立ち上がると、天宮の
隣に腰を下ろした。


「アイス溶けてますよ」

「天宮にあげるよ。
あたしは優しいから」

「溶けたからいらないだけでしょ責任持って食べなさい」

⏰:11/04/18 00:06 📱:840SH 🆔:boYxZINA


#419 [愛華]
ちょっとだけ怒った声。
隣の天宮をそっと盗み見すると
そこには穏やかな天宮の顔。



あぁ……なんて幸せなんだろう。
なんて温かいんだろう。



誰かが側にいてくれる。
こんなふうに笑顔で接して
頭を撫でてくれる。


でも、でもね。

⏰:11/04/18 00:11 📱:840SH 🆔:boYxZINA


#420 [愛華]
あまり優しくしすぎないでよ。
理不尽かもしれないけど。


あまり優しくされちゃうと
ここがあたしの居場所だって
勘違いしてしまうから。


期限つきの家族になりたいなんて言ってしまったこと、
ちょっとだけ後悔してるの。



ただ、側にいてくれるだけで
よかったのに。
その先を求めてしまったから。

⏰:11/04/18 00:16 📱:840SH 🆔:boYxZINA


#421 [愛華]
そのせいでさよならが
辛くなってしまっても。




そんなの



自業自得だ。




大好きな甘い香りを側に感じて
あたしはゆっくりと夢へ旅立つ。

⏰:11/04/18 00:18 📱:840SH 🆔:boYxZINA


#422 [まぁ]
期待あげ(´ω`)

⏰:11/04/22 23:52 📱:SH01C 🆔:Z2oxuTsQ


#423 [愛華]
>>422 まぁ様

あげありがとうございます!!

⏰:11/04/24 23:05 📱:840SH 🆔:owZBWWLA


#424 [愛華]









歓声が体育館にあふれる。
鳴り響く笛とボールの弾む音。



「あいらぶ、要ー!!
がんばってー!!要ー!!」

「皐月、はずかしいよ……」

⏰:11/04/24 23:10 📱:840SH 🆔:owZBWWLA


#425 [愛華]
その中で一際目立つ応援の声。
メイクばっちりで昨日と同じ
学ラン姿の彼…じゃなくて彼女。



「なんでまだその格好なの?皐月次バレー試合じゃないの?」

「学ラン気に入ったから!
あたしがいなくても人数足りてるし要の応援したいの!

それに次はタッキーの試合だし」

そう言って袋から、今度は
天宮応援グッズを取り出す皐月。

⏰:11/04/24 23:15 📱:840SH 🆔:owZBWWLA


#426 [愛華]
体育祭二日目。


テニスで予選敗退したあたしは
今日は試合なし。
よって応援のみ。


昨日よりもさらに盛り上がりを
見せる円の熱い生徒たち。


その中であたしは無意識に
ひとりのひとを探していた。


ただ、言いたいことがあって。

⏰:11/04/24 23:19 📱:840SH 🆔:owZBWWLA


#427 [愛華]
朝から探しているけれど、
いまだに見つからない。

いつもはあっちから来ることの
ほうが多いのになぁ。



「ねぇ陽向!次タッキーの試合
見に行くでしょう?ソフト!」

「あ、うん………」

「あれ、乗り気じゃないの?」

「そーいうわけじゃないよ!
行こうか、グラウンドだよね」

⏰:11/04/24 23:26 📱:840SH 🆔:owZBWWLA


#428 [愛華]
もしかしたらグラウンドに
いるかもしれない。

そう考えて、あたしは
自分と天宮の上着を
持って皐月と体育館を出た。








で、その考えは的中。

⏰:11/04/24 23:30 📱:840SH 🆔:owZBWWLA


#429 [愛華]










「滝ー試合もうすぐだぞー」

「あれ、そうだっけ。んー
めんどくせー……。」

「めんどくさい言うなコラ。
じじいかお前は。若さがない!」

⏰:11/04/25 21:41 📱:840SH 🆔:BVqHC4d.


#430 [愛華]
「やかましいわ」


ペットボトルに残っている
水を一気に流し込むと、喉が
じんわりと潤っていった。


要の額には汗が光っていて、
湯気が出てきそうなほど
体から熱気を放っている。



「………陽向さんは?」

「体育館にいたよ。皐月と。
多分もう少しでこっち来るよ」

⏰:11/04/29 20:31 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#431 [愛華]
パタパタとタオルで顔をあおぎ
ながら要が言う。



「そんなに心配か?」

「なにが」

「とぼけんなよ。かわいくねーぞ素直にならないと」

「かわいくなくて結構だよ」


……相変わらずこいつは
ムカつく。なんでもかんでも
知ったよーな顔しやがって。


だから信頼できる訳でもあるが。

⏰:11/04/29 20:36 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#432 [愛華]
要は俺の隣に腰を下ろし、
長く息を吐く。








「…………お前のいうとおり。
やっぱ松矢、彼女いたよ」


言いづらそうに紡がれる言葉。


「いた……って過去形?」

⏰:11/04/29 20:40 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#433 [愛華]
「うん。中学で松矢と同じ
クラスだったやつに確認した。

他中の子だったみたいだ。
かなり仲よかったらしいよ」

「…………」


人の過去を探ったりするのは
あんまり好きじゃない。


でも今回は別。

どうやら俺は
あの子が絡むと冷静では
いられなくなるらしい。

⏰:11/04/29 20:44 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#434 [愛華]
「そんなに仲よかったのに、
なんで別れたんだよ?」

「いや………そこまで
わからないけど。でも確実に
言えることは………。


松矢はまだその子が好きだよ」


確信に近い要の冷静な口調。
急に肌寒くなった気がした。


「なんでわかんのそんなこと」

「………言いづらいんだけどさ。これ、見てみろよ」

⏰:11/04/29 20:49 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#435 [愛華]
目の前に差し出された写真。
そこにはひとりの女の子。


「………松矢の元、彼女。
どうやって手に入れたかは
聞くなよ。」


俺はその写真に釘付けになった。


見慣れた………女の子。
いや、違う。
見たことない女の子だ。
でもこの子を知ってる。



なんだ、これ。

⏰:11/04/29 20:54 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#436 [愛華]
髪が長くて、ちょっとだけ
幼い顔立ち。
写真に写る笑顔は、
幸せに満ち溢れている。



…………似てる。
笑顔が。雰囲気が。




陽向さんに……………。



松矢が重ねていた彼女は
色あせることなく今は
俺の、隣にいたんだ。

⏰:11/04/29 21:13 📱:840SH 🆔:yAoOpRWI


#437 [愛華]











「れーんっ!れんちゃんっ!」



忘れたはずの声がする。
今もずっと側で。耳元で。

呪いを刻むんだ。
君を忘れないように。

⏰:11/04/30 21:09 📱:840SH 🆔:LtBipa2.


#438 [愛華]
忘れようとした。

そしてひとりになった。


誰かを想ったり
そういうのがめんどくさくて
ならひとりがいいと思った。



なのに今
君によく似た女の子が現れて


気づかされる。


忘れてなんかいなかった。

⏰:11/04/30 21:13 📱:840SH 🆔:LtBipa2.


#439 [愛華]
転入生のことを聞いて
どんなやつか気になった。


あの階段で会ったとき


今まで必死に守ってきたものが
壊れた気がした。



似てるんだ。
なにもかもが。


興味が沸いて、話しかけた。

⏰:11/04/30 21:17 📱:840SH 🆔:LtBipa2.


#440 [愛華]
そしてまた気づく。


君もひとりなのだと。


俺と同じように別れを経験し
闇を抱えているのだと。



最初は好奇心だけのつもりだっただけど時間を重ねるごとに…



俺は、どうしたいんだ……?

⏰:11/04/30 21:20 📱:840SH 🆔:LtBipa2.


#441 [愛華]
ぼーっと昔のことを思い出して
いると、グラウンドに響く
応援の声が歓声に変わった
ことに気づいた。



……あ、やっと終わった。
もう試合ないし帰るかな。


なんとなく気分が優れない。
多分昨日のことが原因か。


最近、陽向に対する自分の
気持ちがよくわからなくて
接しかたに迷っていた。

⏰:11/04/30 21:27 📱:840SH 🆔:LtBipa2.


#442 [愛華]
多分、罪悪感もあったのかも。
自分でも気づいてたから。

自分にもこんな優しい一面が
あったなんてびっくりした。




「……よい、しょっと」


重い腰を上げ、ぱんぱんと
ごみをはらう。動いていない
からか、少し肌寒く感じた。



「あ、いた!」

⏰:11/04/30 22:05 📱:840SH 🆔:LtBipa2.


#443 [愛華]
「んぁ?」

「松矢くん!」


今では聞き慣れた声に振り向くと
そこには悩みの元凶の女の子が
笑顔でひらひらと手を振っていた



………タイミング悪っ!


「あ、教室もどるの?」

「いや……べつに……」

⏰:11/05/01 09:51 📱:840SH 🆔:6owxnX3s


#444 [まぁ]
期待あげ

⏰:11/05/10 22:45 📱:SH01C 🆔:Yo/QkqYc


#445 [愛華]
>>444 まぁ様
あげありがとうございます!

⏰:11/05/14 16:57 📱:840SH 🆔:V3VvcS7s


#446 [愛華]
俺がそう言うと、まだここにいるという意味にとったらしく、
陽向は近くの石段に腰を下ろした



「疲れたねぇ。あたし昨日で
負けちゃったから今日はなんも
してないんだけどさ」

「じゃあなんで疲れんだよ」

「んー……雰囲気??」

「なんだそれ」


気のせいなのか、いつもより
陽向の笑顔が優しい。

⏰:11/05/15 09:27 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#447 [愛華]
あいつのことを考えている時に
来たから、ちょっと焦る。


でも大丈夫。上手く笑える。




「天宮の応援は?」

「うん、これから行くんだ」

「そっか」


大丈夫。   笑、える……

⏰:11/05/15 09:32 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#448 [愛華]
「………その前にね、
松矢君に言いたいことがあって」



「俺に?えーなになに?
愛の告白?だったら嬉しいな」

「真面目に聞いてよね」



あぁ………なんで君は。
こんなにあいつに似てるんだ。


茶化す俺をあしらったり
優しく諭すように笑ったり

⏰:11/05/15 09:35 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#449 [愛華]
いなくなった君がそこにいる。
それが少し嬉しかった。



ちょっとずつ、ちょっとずつ、


心を開いていってくれた。
『友達』と言ってくれるように
なった。




笑ってくれるだけで
心が救われた気がした。

⏰:11/05/15 09:40 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#450 [愛華]







「………無理に笑わないで」

「え………?」





「あたしは松矢君の友達でしょ。友達の前では作り笑いとか
しないものなんじゃないの?」

⏰:11/05/15 09:42 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#451 [愛華]
そして、どこまでも真っ直ぐ。


大事なことには鈍感で
でも痛みには敏感で



あいつとは正反対のはずなのに。




「なんか、丸くなったね陽向」

「え…あたし太った!?」

⏰:11/05/15 09:46 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#452 [愛華]
「いや、そーじゃないよ。
なんか雰囲気がさ」

「そうかな…」

「うん。だって最初のころは
『あんたとは仲良くしたくない』みたいなこと言われたし」

「えっ……そうだっけ」

「うん。めちゃ傷ついた」

「ご、ごめん………でも今は
友達だからね!」

⏰:11/05/15 09:50 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#453 [愛華]
友達か。



「……うん、ありがとう」


俺は小さな声で呟いた。
ちょっと泣きそうだったから。
どんだけ弱ってんだ、俺。



「あ、あとね」

「うん」


そこから先の言葉は出ずに、
陽向はもじもじとしている。

⏰:11/05/15 09:55 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#454 [愛華]
「なに、言ってよ」


俺がそう言って微笑むと、
陽向はたっぷり間をとって
俺を見つめた。





「あたしは、松矢君の大切だった人にはなれないから。

あたしはあたしとして
松矢君に接するからね!」

「は?」

⏰:11/05/15 10:02 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#455 [愛華]
「それだけっ」

「え、それだけ?」

「それだけだよ!」



陽向は恥ずかしそうに言う。



なんだ、言いたいことって
それかよ………。



なんか、笑えてきた。

⏰:11/05/15 10:07 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#456 [愛華]
「はははっ」

「な、なんで笑うの!」



だって、だってさ。
多分陽向のことだから
きっとこのことでいっぱい
悩んでたんだろうな。


ちょっとでも俺のこと
考えてくれてた。


なんでこんなに嬉しいんだ。


そんなのもう決まってる。

⏰:11/05/15 10:12 📱:840SH 🆔:XXvk60PI


#457 [愛華]
「………陽向」

「はい?」

「好きだよ」

「え?」


風に押されるように手を伸ばし
ゆっくりと抱きしめ、
罪悪感の中で温もりを確かめる。



もう、どっちでもいいや。

⏰:11/05/19 07:36 📱:840SH 🆔:GO.aHjsg


#458 [愛華]
「ま…………つやくん」

「嘘。冗談だよ。でも
ちょっとだけこのままでいい?
疲れて少し具合悪いんだ」



そう言って力を腕にこめる。


きっと陽向は困った顔してる。
それがわかっていながらも
離そうとは考えない。


我ながらひどい男だ。


それでも。

⏰:11/05/19 07:41 📱:840SH 🆔:GO.aHjsg


#459 [愛華]
「松矢君……具合悪いの?
じゃあ保健室に……」

「ん、いいから」

「だって人が来るかもしれな…」

「いいんだってば」



それでも、ただ欲しい。



難しいなら考えなくていい。
ただ本能に従えばいい。

⏰:11/05/20 19:46 📱:840SH 🆔:wuKfRNF2


#460 [愛華]
あいつに似ているのか
似ていないのか


もう、どうでもいい。






ただ君が欲しいんだ。




心の中に浮かぶのはあいつでは
なくて全部陽向の笑顔だった。

⏰:11/05/20 19:50 📱:840SH 🆔:wuKfRNF2


#461 [愛華]












結局、陽向さんは応援には
来なかった。
皐月の話によると、いつのまにかいなくなったらしい。

まぁ陽向さんが急にいなくなる
のは今に始まったことじゃない。

⏰:11/05/20 19:53 📱:840SH 🆔:wuKfRNF2


#462 [愛華]
でもやっぱり心配だ。
松矢の話を聞いてから……。


もしかして陽向さん、
松矢に会いにいったのかも。



ふいに階段を上る足が止まる。
同時に心に広がるモヤモヤした
黒くて重いなにか。



「………重症だな俺……」

⏰:11/05/20 19:56 📱:840SH 🆔:wuKfRNF2


#463 [愛華]
自分の独占欲の強さに少し
呆れながら、頭を抱えてまた
階段を上り始める。


………ん?誰だ?



人の気配を側に感じ、顔を上げる

松矢と俺って、階段に縁が
あるのかもしれないと思った。



「……松矢……」

⏰:11/05/25 07:19 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#464 [愛華]
怠そうにどこか一点を見つめ、
階段に座ったまま動かない。

でも俺の声で我にかえったのか、
ゆっくりと視線だけをこっちに
向けた。


真っすぐで曇りのない。
まるで何かを決心したかのような

そんな目。



「陽向なら、庭にいるよ」

⏰:11/05/25 21:09 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#465 [愛華]
「……なんでんなこと……」

「さっきまで一緒だったから」


そう言って微笑む松矢。


色々言いたいことあるけど
一言で言えば……


ムカつく。




「あ、そう。ありがとう」

「どーいたしまして」

⏰:11/05/25 21:12 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#466 [愛華]
「…………」

「なに、まだなにか?」

「いや、てゆーかさ。


お前になにがあったかなんて
知らないしどーでもいいけど。

お前が陽向さんを陽向さんとして見てないなら。

俺は負ける気しないから」


松矢の目が少しだけ、
ほんの少しだけ鋭くなった。

⏰:11/05/25 21:19 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#467 [愛華]
「負けるってなに?なんの話?」

「しらばっくれんなよ」


「あぁ、そうか。天宮は
勝負のつもりなんだね。

だとしたら何?
陽向は勝った時の景品って訳?」

「………なんだと?」


陽向さんが景品………?
んなわけないだろうが。

⏰:11/05/25 21:24 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#468 [愛華]
そう言いたかったけど、
言葉にならなかった。


松矢が勝ち誇ったような目で
俺を見つめていたから。



「俺は勝負してるつもりない。
ただ欲しいものの為に頑張る。

俺なりのやり方で」



松矢はそれだけ言うと
やっぱり怠そうにしながら
階段を下りていった。

⏰:11/05/25 21:27 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#469 [愛華]
「…………天宮……?」


沈黙を破る小さな声。顔を
上げると、階段の上から不安そうに俺を見る陽向さんがいた。



……嘘つきやがったな松矢。



「陽向さん、こんなとこで
何してるんですか?みんな
ソフトの決勝見にいってますよ」

「そっか、だから校内に誰も
いないんだ……忘れ物を教室に
取りに来たんだ。

⏰:11/05/25 21:33 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#470 [愛華]
天宮こそなにしてるの?
今、松矢君の声が聞こえた気がしたんだけど………」

「あぁ、ちょっと世間話を」

「え、いつのまにそんなに
仲良くなったの?」

「俺と松矢が仲良く?
気持ち悪いこと言わないで下さい
全く逆ですから」

「本当に松矢君嫌いなんだね…」

⏰:11/05/25 21:38 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#471 [愛華]
陽向さんは呆れたように呟くと
階段に腰を下ろした。


どうやらソフトの決勝を
見に行く気はないらしい。
加えて、思い詰めたような顔。


たいてい陽向さんがこんな顔を
する時は何か言いたいことが
あったり、不安な時。



「……何かあったんですか?」

「いや、あの………」

⏰:11/05/25 21:43 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#472 [愛華]
「俺に言えないようなこと?」

「………じゃあ聞く。


男の子ってどんな時に
誰かを抱きしめたくなるの?」



はい?
抱きしめたくなる……?
男が、誰かを?


陽向さんの言葉を頭で繰り返す。

⏰:11/05/25 21:50 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#473 [愛華]
抱きしめ………

ていうか。


「………抱きしめられたの?」

「………!」


陽向さんの顔が強張る。
唇をきゅっと結んだまま。


「松矢、ですか」

「………天宮、怒ってる?」

⏰:11/05/25 21:53 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#474 [愛華]
「怒ってはいないです」

「嘘、声が怒ってる」


怒ってないってば。
ただ今ここに松矢がいたら
間違いなく地獄送り。


なるほど、あの勝ち誇った目は
こういう訳か………。



なんか全部繋がった気がした。


そして次に沸くのは
どうしようもない嫉妬。

⏰:11/05/25 21:57 📱:840SH 🆔:UzPnpCiE


#475 [愛華]
「陽向さん」


俺が名前を呼ぶと、びくっと
肩を震わせる。

そんなに俺、怖い顔してる?



「怒ってないからこっち向いて」


そういって笑いかけると
少し戸惑いながらも
陽向さんは俺のほうを向いた。

⏰:11/05/26 23:00 📱:840SH 🆔:i6rKneow


#476 [愛華]
「男はね、陽向さんが思ってる
よりも恐い生き物なんですよ」

「恐い……?」

「そう。悪いこと考えてる男も
いっぱいいるんです。だから
簡単に抱きしめられたり、
そんなに油断しちゃダメです。
もっと警戒してください」

「警戒…………」


陽向さんは、よくわからない、
というような顔をして首を傾げる

⏰:11/05/26 23:05 📱:840SH 🆔:i6rKneow


#477 [愛華]
外からソフトの応援の声が
聞こえる。もう体育祭も終わり。



「そ……っか。確かにね、
ちょっと怖かったんだよね。
松矢君、いつもと違ったし。」

「そうなんですか」

「うん……………ねぇ。



天宮も、そうなの?」

⏰:11/05/26 23:10 📱:840SH 🆔:i6rKneow


#478 [愛華]
あぁ…………そっか。



俺は。



家族としてじゃなくて
ただ男として


警戒して欲しかったんだ。



俺はゆっくり陽向さんの腕を引き自分の腕の中に収めた。

⏰:11/05/26 23:14 📱:840SH 🆔:i6rKneow


#479 [愛華]
「あまみや………?」

「…………」




離したくない。


誰にも、渡したくない。



どうしたら、

家族なんかじゃなくて
男として見てくれる?

⏰:11/05/28 21:08 📱:840SH 🆔:ob2eumJY


#480 [愛華]
抱きしめた腕、背中に回された
陽向さんの腕から温もりが伝わる



「天宮………どうしたぁ?」

「なんもないですよ。ね、


今も恐いですか?」

「なにが?」

「今の状況」

⏰:11/05/28 21:13 📱:840SH 🆔:ob2eumJY


#481 [愛華]
「怖くないよ。天宮なら」

「そうですか」



嬉しいのに嬉しくない。
俺は最低かもしれない。



「………世の中、俺みたいな
男ばっかじゃないんですよ」

「え?」


俺だって。

⏰:11/05/28 21:17 📱:840SH 🆔:ob2eumJY


#482 [愛華]
頭の中がぐるぐるして、
正常な判断ができない。



「俺だって、男だから。

同じなんですよ」

「え、なに言っ……」



自分でも何をしたのか、


わからなかった。

⏰:11/05/28 21:21 📱:840SH 🆔:ob2eumJY


#483 [愛華]
ただ我慢できなくて

何かを証明するみたいに



陽向さんにキスをした。




奪うように
自分のものにするように



後戻りできない

もう、家族には戻れない。

⏰:11/05/28 21:33 📱:840SH 🆔:ob2eumJY


#484 [我輩は匿名である]
この小説大好き
頑張ってください

⏰:11/05/30 02:09 📱:SH01C 🆔:QdhPLFQY


#485 [愛華]
>>484

そう言って頂けて嬉しいです!
なかなか更新できていませんが
頑張ります!

⏰:11/05/30 23:13 📱:840SH 🆔:ty0fX3qA


#486 [我輩は匿名である]
あげ
頑張ってください

⏰:11/06/04 00:00 📱:SH01C 🆔:LPAhazoE


#487 [愛華]
>>486


ありがとうございます!!
更新がんばります!

⏰:11/06/04 21:33 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#488 [愛華]
第8章 -欲望距離-

⏰:11/06/04 21:35 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#489 [愛華]
きっとあたしは愛に飢えていた。

今までその温かいものを
お母さんにしかもらったことが
なかったから。


お母さんはあたしの全てで。




誰もいらない。
他のひとなんていらない。


あたしに愛をくれる
お母さんだけいればいい。

⏰:11/06/04 21:37 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#490 [愛華]
だからびっくりしたの。



冷たく、そして硬い。
氷のようなあたしの心を
まるごと包み込んでくれて


「いなくならないで」って
言ってくれた。


涙が溢れるほどの温もりと
愛をあたしに注いでくれた。


ほんとうに、嬉しかった。

⏰:11/06/04 21:40 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#491 [愛華]
あなたがあたしにとって
2人目の大切な人になった。


たまの意地悪や
毎日の優しさや笑顔。


全部があたしを満たしていった。


お母さんとは違う、
温かくて幸せな気持ち。


その気持ちの名前は分からない。

⏰:11/06/04 21:44 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#492 [愛華]
分からないまま、側にいることを望み続けていた。
それは正しいことなのか
ずっと迷いながら。



側にいたいのに
もうひとりのあたしが言うの。


「あたしと天宮は家族なんかじゃない。あたしがいるべき場所はここじゃない」って。


天宮。

あたしは天宮の家族、でしょ?
そう言ってくれたよね?

⏰:11/06/04 21:49 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#493 [愛華]
だって『家族』としてしか。
天宮の側にはいられないの。

『家族』としてでしか
天宮との繋がりは持てないの。



なら壊さないで。
まだ離れたくなんかないから
『家族』のままで……。


そうやってもうひとりの
自分に言い聞かせてきたの。

⏰:11/06/04 21:54 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#494 [愛華]
そんなあたしの想いは今



目の前にいる天宮によって
まるでドミノが倒れるみたいに


ぱた、ぱたと



収拾がつかなくなるくらいに




崩されて…………。

⏰:11/06/04 21:58 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#495 [愛華]











「…………あまみっ……」


言葉を紡ごうと唇から出した声も
天宮のそれによって塞がれた。

⏰:11/06/04 22:00 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#496 [愛華]
なにが起こったの。


ただ気がついたら目の前に
天宮がいて………キスされた。



「………っ……ん……」


顔を背けようとしても
天宮の手によって頭も固定されて身動きがとれない。


顔が熱を帯びていくのがわかる。
天宮は今どんな顔してる?
でも目も開けられない。

⏰:11/06/04 22:04 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#497 [愛華]
息が苦しくなり、
拳でどんどんと天宮の胸を
叩くけれどびくともしない。


『俺も男なんですよ』


そんな天宮の声がこだまする。





やっと唇が解放されると
天宮のものか自分のものか
どちらのものともとれない
甘くて熱い息が漏れた。

⏰:11/06/04 22:09 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#498 [愛華]
体に力が入らなくなり、
そのまま後ろの壁によしかかる。


ようやく言葉が出たのは
荒い呼吸が落ち着いて
惚照っていた体が今の状況により冷めてきた頃。



「…………なんで……?」



それしか、出なかった。

⏰:11/06/04 22:15 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#499 [愛華]
天宮は床に落としていた視線を
あたしに向けて呟く。

その目はいつも通りの天宮のもの


「………なんで……って?」

「なんでキスなんてしたの…?」

「キスしたかったから」

「理由になってないよ」

「嫌でしたか?」

「そういう問題じゃない!」

⏰:11/06/04 22:20 📱:840SH 🆔:synHVUKs


#500 [愛華]
あたしが怒鳴ると、天宮は
自嘲気味にクスッと笑い
あたしをただ見つめる。


「……陽向さん、無防備すぎ。
さっきも言ったでしょ?
何も知らない、じゃ済まない話も世の中いっぱいあるんです。


わかった?今みたいなことを
平気でする男もいるってこと」

「なに、それ………」

「……………」


言葉が、出ない。

⏰:11/06/05 13:20 📱:840SH 🆔:dJ3XR0RI


#501 [愛華]
じゃあ天宮も………
天宮も、『家族』だって思ってる人に平気でキスできるような

そんな男のひとなの?



「天宮……はそんな人じゃ…」


言い聞かせるように呟くと
天宮がまるで力が抜けたように
ポスッと額をあたしの肩に乗せた


心なしか、天宮が小さく見えた。

⏰:11/06/05 13:28 📱:840SH 🆔:dJ3XR0RI


#502 [愛華]
「天宮………?」

「ごめんね」



小さな声。
悪戯をした子供のような
そんな謝りかた。



「でもね、お願いだから。
お願いだから警戒して。

『家族』だからって俺に心を
許しすぎないで」

「…………」

⏰:11/06/05 13:33 📱:840SH 🆔:dJ3XR0RI


#503 [愛華]
「わかってる?
俺は陽向さんを…………」


そう言うと天宮はあたしの頭を
ぐっと引き寄せ、耳元で呟く。







「……いつだって壊せるくらいに近くにいるんですからね」


何かが、変わっていく。

⏰:11/06/05 13:41 📱:840SH 🆔:dJ3XR0RI


#504 [愛華]
横目で見た天宮は
いつもの『優しい天宮』じゃないただひとりの『天宮滝』という男のひとで。

それにたまらなく動悸が上がった




『家族』だと思っていたのは誰?
天宮?それともあたし?


どちらにしたってもう遅い。


囁かれた耳が熱を持ったまま
あたしを、堕としてゆく。

⏰:11/06/05 13:47 📱:840SH 🆔:dJ3XR0RI


#505 [我輩は匿名である]
更新されてる
頑張ってください

⏰:11/06/06 00:22 📱:SH01C 🆔:orMaXp5w


#506 [愛華]
>>505
ありがとうございます!
がんばります(*^_^*)

⏰:11/06/07 22:58 📱:840SH 🆔:y5iv6b02


#507 [愛華]
こんにちは愛華です。
いつも読んで下さってる方
ありがとうございます!


読者の方からの要望で、
読みやすいようにするために
ORDERを設定しましたので
感想がありましたら、
愛華感想板にお願いいたします。


これからも愛華を
よろしくお願いします!


感想板
>>2

⏰:11/06/07 23:03 📱:840SH 🆔:y5iv6b02


#508 [愛華]
第9章 -本音捜索-

⏰:11/06/19 20:36 📱:840SH 🆔:292N.W/M


#509 [愛華]
嵐のようだった体育祭から一週間



部屋の鍵は、以前のように
閉めたまま眠るようになった。





「あ、陽向それちょーだい」

「やだよ。天宮のコロッケ
美味しいんだもん」

「皐月自分の弁当あるだろ。
陽向さんの取るなよ」

⏰:11/06/19 20:40 📱:840SH 🆔:292N.W/M


#510 [愛華]
「タッキー厳しい!
しょーがない。要のコロッケ
もらうかなぁ」

「あげるわけないだろ馬鹿」



いつも通りの昼ごはん。
いつも通りのメンバーで
いつも通りの他愛ない会話。



なのに、あたしと天宮の間には
見えない薄い壁ができてしまった

⏰:11/06/19 20:46 📱:840SH 🆔:292N.W/M


#511 [愛華]
『お願いだから警戒して下さい』


そう言ってあたしにキスした
あの体育祭の後。


あれからいくら考えても、
天宮があたしに何を伝えたかったのか全然わからない。

何のためにキスしたのかも。


ただ、なんとなく怖くなった。


天宮はいつも通りにあたしに
接しているけれど、本当は
どんな気持ちであたしに
向かっているのか
わからなくなってしまったから。

⏰:11/06/19 23:32 📱:840SH 🆔:292N.W/M


#512 [愛華]
「陽向さん、箸止まってますよ」

「へぁ?あぁ……うん」


天宮の声で我にかえり、
次は何を食べようかと弁当に
目を戻すと、端っこに入っているヤツの存在に気づいた。


「む…………」


あたしはそれをひょいっと掴み
隣の要君の弁当に紛れこませる。

⏰:11/06/19 23:38 📱:840SH 🆔:292N.W/M


#513 [愛華]
要君は何事もなかったかのようにそれを黙って口に運ぶ。


「かーなーめー…?」


が、それを天宮が
見逃すはずもなく。


「陽向さんを甘やかすな!」

「えーこれ、俺のせいかよ…」

「陽向さんも!ピーマンぐらい
食べれるでしょ!いい加減要に
頼るのやめて下さい!」

⏰:11/06/19 23:43 📱:840SH 🆔:292N.W/M


#514 [愛華]
「だってマズイもん。要君、
ピーマン好きでしょ?」

「うーん、好きか嫌いかで言うと普通だけどね〜」

「ね?ほら!」

「なにが、ほら!なんですか?
晩御飯抜きにしますよ」


天宮がじとっとした目で
あたしを見つめる。

⏰:11/06/20 07:45 📱:840SH 🆔:UpmhJRIM


#515 [愛華]






あ。これだ…………。




「……か、要君は優しいから。
食べてくれるよね?」

「俺は食べてあげたいけど、
滝に怒られるのは俺なんだ
けどねぇ…………」

⏰:11/06/26 11:27 📱:840SH 🆔:3bKqr/YU


#516 [愛華]
あたしはさりげなく天宮から
視線を外し、弁当に目を戻した。


以前と変わったことのひとつ。
天宮の視線に耐えられなくなった



前は天宮が見つめてくれるだけであたしの存在を認めてくれて
いるようで安心できたのに。


今は天宮の目を見る度に
あの日のことを思い出して
心臓の音に心が乱される。

⏰:11/06/26 11:33 📱:840SH 🆔:3bKqr/YU


#517 [愛華]
「………陽向、次体育だよ!
食べるの遅すぎ。もう行くよ」

「え?ちょ、待って皐月!」


呆れたような皐月の声に
慌てて答えると、まだ食べ終えていない弁当にフタをした。


……あぁ、また自分の世界に
入るとこだった。




あたしはため息をついた後、
皐月と共に屋上を出た。

⏰:11/06/27 20:23 📱:840SH 🆔:ZExqMvxU


#518 [愛華]






「やれやれ……………」


まるで妹を見送るような目線で
扉を見つめる要。



あの日から1週間。
何も変わらないはずなのに。


変わったのは俺と陽向さん。
どっちなんだろうか?

⏰:11/07/01 07:25 📱:840SH 🆔:0m7ARGzo


#519 [愛華]
「………つーかそろそろ話せよ」

「んぁ?」

「陽向ちゃんと何があったか。
お前ら、あきらか様子変だろ」

「………はは、なーんでも
ばれちゃうね。要君には」

「茶化すなっての」


別におかしいことなんてない。


当然の結果だ。
俺のつまらない独占欲がまねいた当然の結果。

⏰:11/07/10 16:01 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#520 [愛華]
「………近づきすぎた。」

「は?なにが?」


要は訳がわからないという顔で
俺の次の言葉を待つ。


近すぎては駄目。
ある程度の距離が必要。
そうわかっていたはずなのに


近づいて、 壊した。


「馬鹿だなー……俺。」


ま、後悔しても遅いんだけど。

⏰:11/07/10 17:35 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#521 [愛華]
「……言いたくないならいいけどあんま溜め込むなよな」

「ん、ありがと。」

「で、どーするわけ。
このまんま放置?」

「そうもいかないだろ。


近づきすぎてこうなった。


だから…………一回離れる」



それが陽向さんを
苦しめるとしても。

⏰:11/07/10 17:38 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#522 [愛華]









「わーすごいご馳走だ!!
なになに?今日なんかあった?」

目の前にずらーっと並ぶのは
天宮特製のあたしの大好物たち。

いいにおいが部屋中に立ち込める

⏰:11/07/10 17:42 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#523 [愛華]
「余り物片付けたかったので。
さ、食べましょうか。食後に
ケーキもありますから」

「やったぁ!!天宮どしたの?
今日は太っ腹だね!」

「たまたまですよ」


そう言ってにっこり微笑む天宮の隣に座ろうと立ち上がると
天宮にそっと肩を抑えられた。


「ん?なに?」

「隣じゃなくて
向かい合わせがいいな」

⏰:11/07/10 17:47 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#524 [愛華]
「……?なんで?」

「隣だと顔見えないでしょ?」


そう言った天宮は
どこか淋しそうで。


どうしてだろう?
顔なんていつでも見れるよ?


だっていつも一緒じゃない。


なんで………
そんな顔するの?

⏰:11/07/10 17:51 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#525 [愛華]
「……うん、わかった」


よくわかんないけど、
嫌な予感がした。


それでもあたしはそれに
気づかないフリをして天宮の
向かい側に座った。



天宮の顔が、表情が、目が。


すぐ目の前にあることが
どうしてこんなに緊張するのかな

⏰:11/07/10 18:06 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#526 [愛華]
今考えると、家を飛び出してから

楽しい出来事の近くにはいつも
天宮の笑顔があった。


それだけで幸せだった。



なのに今はね。


天宮と目が合うだけで
あの日のことがフラッシュバックして
胸がきゅーっと苦しくなる。

⏰:11/07/10 18:20 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#527 [愛華]
苦しくて、熱くなって。
天宮の目が見れなくなった。



もしかしたら天宮は
そんなあたしに気づいていたの
かもしれない。





「ご馳走様でした!!やっぱり
天宮の料理は美味しいね〜」

「そう言ってもらえると
嬉しいですね」

⏰:11/07/10 18:24 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#528 [愛華]
料理を食べている間、天宮と
会話をしながらさっき天宮が
見せた淋し気な表情の意味を
考えていたけれど、
結局こたえは見つからなかった。


「ね、ケーキ食べよう!」

「あ、はい。その前に……。」





こたえは見つからなかった?

違う。

見つからないことを望んでいた。

⏰:11/07/10 18:32 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#529 [愛華]
なぜなら気づいていた。
向かいに座るように促す
さっきの天宮の表情に隠された

なんとなくでしかない、一瞬の

でも見逃すはずのない


別れのサイン。




「………大事な話があるんです」


心臓がわしづかみにされたみたいに息ができなくなった。

⏰:11/07/10 18:42 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#530 [愛華]







「大事な………はな、し?」

「はい。だからね、ココ!」


そう言って天宮は床に座ると
自分の前をポンポンと叩く。


その動作が何を意味するか、
あたしは知ってる。
前のあたしなら笑顔でそこに
向かったんだろうな。

⏰:11/07/10 18:58 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#531 [愛華]
なのに今は………怖いよ。



あたしは俯いたままゆっくりと
天宮の前に座る。

すると天宮はあたしを引き寄せ
後ろから抱きしめるようにして
腕をあたしの前で組んだ。


天宮の体温と心音が
直にあたしに伝わってくる。

⏰:11/07/10 19:01 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#532 [愛華]
「………陽向さんいいにおい」

「天宮のヘンタイ」

「それにあったかいね」

「無視ですか」


肩に乗ってる天宮の顎が
心なしか震えてる気がした。


「……話ってなに?」

「あ、うん。あのね。


陽向さん、一人暮らしは嫌?」

⏰:11/07/10 19:06 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#533 [愛華]






イマ、ナンテ?


ヒトリグラシ?ダレガ?



「あたし………が?」


しばらくの沈黙の後に出た自分の声は驚くほどかすれていた。

⏰:11/07/10 23:09 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#534 [愛華]
「はい。陽向さんも年頃ですし。
一人暮らしの方が気が楽でしょ?
実はもう部屋も……」

「嫌だよ!聞いてないよ!!」


天宮の手を振りほどいて、
振り返りながら叫ぶ。



嫌、だ。

どうして?どうして?


頭が真っ白だ。

⏰:11/07/10 23:14 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#535 [愛華]
「………陽向さん。俺は…」


「あたしの………せい?」


天宮の目が大きく見開かれる。


「あたしが……天宮が警戒しろって言ったのにしないから?」

「違う……」

「天宮に頼ってばっかで……」

「違う……」

⏰:11/07/10 23:23 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#536 [愛華]
腕に力が入らなくなってきた。
視界がぼやけてゆく。


「あたしが……天宮に依存
しすぎてるから……?」

「……………」


「あたしのこと嫌いになっ……」


その続きは、天宮があたしを
強く抱きしめたことで遮られた。


「そんなわけない………」

⏰:11/07/10 23:27 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#537 [愛華]
嫌。
ひとりは嫌。



もう、戻りたくない。
ひとりぼっちの夜は辛すぎるよ。きっと耐えられない。


天宮がいなきゃ………
あたしは、あたしじゃなくなる。



「………じゃ、なんで……?」

⏰:11/07/10 23:30 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#538 [愛華]
「……陽向さん。俺たちは
『家族』であると同時に、
ただの男と女でもあるんです。

このままじゃダメなんです」

「いみ……わかんなっ…」


涙のせいで上手く言葉が
繋がらない。
天宮はゆっくり体を引き離すと、あたしを哀しそうに見つめる。




「依存してるのは、俺なんです」

⏰:11/07/10 23:39 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#539 [愛華]
あたしの頬を包む優しい両手の
掌は、あたたかかった。



「会えなくなるわけじゃない。
学校でも会えますし。

だから、もう泣かないで」


そう言うと、天宮は
涙で濡れたあたしの瞳にキスを
落とした。

次に頬、耳、額、首。


天宮の熱が刻まれる。

⏰:11/07/10 23:47 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#540 [愛華]
「……天宮ぁ……」

「だから泣くなっつの。

そんな顔されたら揺らぐだろ」


天宮は吐息がかかるほど近い
距離でそう呟いた。


敬語じゃないのに優しい口調。




もう、わからない。
天宮の本音がどこにあるのか。

⏰:11/07/10 23:52 📱:840SH 🆔:JPLGslaw


#541 [愛華]
あたしはただ天宮の側にいたい。
天宮がいてくれればいい。



でも天宮は違うの?

キスしたり、抱きしめたり
それで簡単に離れてゆく。
なのに哀しそうな目で呟く。
依存しているのは自分だと。




天宮は、本当は…………


あたしのことどう思ってるの?

⏰:11/07/14 07:45 📱:840SH 🆔:D5xQpm0Q


#542 [愛華]
「うっ……ふぇっ……」


泣くな、泣くな。
天宮が困っちゃうじゃん。


そう言い聞かせても涙は溢れて
天宮のTシャツを濡らしてゆく。



「陽向さん」

「………ふぇっ…」

「大好きだよ」

⏰:11/08/10 21:32 📱:840SH 🆔:AMDq/Sfw


#543 [愛華]
『大好き』


それはずっと昔お母さんが
あたしにくれていた気持ち。


言葉で注がれる愛。
絶対的な、安心。





「あたしの、ほう、が………
天宮すきだ、もん」

「いーえ。俺ですね」

「あたしだもん」

⏰:11/08/10 21:37 📱:840SH 🆔:AMDq/Sfw


#544 [愛華]
そう言ってあたしは天宮の胸から
顔を上げ、天宮を睨んだ。



「……ふっ」

「なんで笑うの!」

「あのね、睨んでも意味ない。
可愛いだけですから」

「………なっ…」


まるでこの場に似合わないような甘い言葉に、顔が赤くなるのが自分でもわかる。

⏰:11/08/10 21:46 📱:840SH 🆔:AMDq/Sfw


#545 [愛華]
「また、そんなこと言っ…」


天宮に文句を言おうとして
ふ、と天宮の肩が目に入る。
そこはあたしの涙と鼻水で
ぐしゃぐしゃになっていた。



「………ごめんなさい」


文句の変わりに出た謝罪の言葉に天宮は首を傾げる。


「なにが?」

「や、あの、肩……」

⏰:11/08/10 21:54 📱:840SH 🆔:AMDq/Sfw


#546 [愛華]
「あぁ、気にしてないですよ」

「ご、ごめんね……」


もう一度謝って天宮を見つめる。するとどちらからともなく
微笑みがこぼれた。


空気が暖かくなってゆく。



不安なことには変わりない。
なのにさっきまでにはない
暖かさが胸を満たしている。

⏰:11/08/10 21:59 📱:840SH 🆔:AMDq/Sfw


#547 [愛華]
「さみしくなったら
帰っておいで」

「………ん」




そっか。

これは天宮なりの「決別」。
天宮なりの「優しさ」。


いつか来る別れの時に
笑顔でさよならが言えるように

前を向いて、ひとりで
歩いていくための準備。

⏰:11/08/10 22:06 📱:840SH 🆔:AMDq/Sfw


#548 [愛華]
「天宮」

「はい」

「大好きだよ。天宮は?」

「…………俺もです」



天宮の気持ちがわからなくて
不安なのは今も同じ。

だけど大好きな人が
大好きでいてくれている。


それがわかっただけで
充分すぎるほどの安心が
胸に流れこんでくる。

⏰:11/08/10 22:21 📱:840SH 🆔:AMDq/Sfw


#549 [愛華]
「今日一緒に寝ていい?」

「今日だけね」




天宮がいなくても
ひとりでも
夜を越えられるように


強さを下さい。


これから始まる孤独が
あなたなりの優しさならば

あたしは喜んで受け入れる。

⏰:11/08/10 22:31 📱:840SH 🆔:AMDq/Sfw


#550 [愛華]







そして願わくば
君の「大好き」が
俺のそれと重なってくれるよう。


家族としてしか側に
いられないなら

それを壊しても
側にいられるように。


それまで



誰のものにもならないで。

⏰:11/08/10 22:56 📱:840SH 🆔:AMDq/Sfw


#551 [愛華]
第10章 -過去転来-

⏰:11/08/27 22:11 📱:840SH 🆔:SY8Dy8iA


#552 [愛華]
まだ新しい部屋のにおい。
天宮のアパートから駅3つ。



いつになったら慣れるかな?



まだ1日目なのに
もう先が見えなくなってきた
自分が本当に情けなくなった。


荷物は全部で
段ボール4つ。

そのうちの3つには
天宮と暮らすようになってから
増えたものが入っている。

⏰:11/08/27 22:16 📱:840SH 🆔:SY8Dy8iA


#553 [愛華]
天宮に選んでもらった服や
学校帰りに買ってもらった小物
UFOキャッチャーで取ってもらったぬいぐるみたち。



あぁ、あたし天宮に甘えて
ばっかだったんだなぁって
改めて実感してみたり。


時計を見ると、短い針は
8と9のちょうど真ん中。



「もう寝ようかなぁ……」

⏰:11/08/27 22:22 📱:840SH 🆔:SY8Dy8iA


#554 [愛華]
あ、独り言。
これから多くなりそうでやだな。




『寂しくなったら戻っておいで』




………ダメだ。
ちゃんと自立しないと。

頭に浮かんだ言葉を振り切る。

ほんとに………揺らぐのが
早過ぎるっつーの自分。

⏰:11/08/27 22:28 📱:840SH 🆔:SY8Dy8iA


#555 [愛華]
以前より少し柔らかいベッド。
天宮の甘いにおいは、しない。



明日。明日すぐ会えるよ。



ベッドのすぐ横の窓からは
まだ明るい街の灯たちが見える。



おやすみなさい。


新しい毎日が始まります。

⏰:11/08/27 22:33 📱:840SH 🆔:SY8Dy8iA


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194