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#325 [愛華]










あたし、何やってんだろ。

頭の中がガンガンする。



「お前は何もしなくていい。
俺の言うことだけ聞いてろ」

⏰:11/03/23 22:05 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#326 [愛華]
ごめんなさい。
ごめんなさい。



「あんたみたいなやつが
この高校に入れるわけない」



ごめんなさい。
ごめんなさい。




誰もあたしを見てくれない。
あたしを……信じてくれない。

⏰:11/03/23 22:08 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#327 [愛華]
「陽向さんっ!」


体がビクンと跳ねる。
慌てて手で涙をぬぐった。



「教室にいてって言ったでしょう何で屋上にいるんですか」

「………ごめんなさい」

「泣いてたんですか…?」

「ごめんなさい」

「陽向さん………」

「ごめんなさい」

⏰:11/03/23 22:12 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#328 [愛華]
沈黙が流れる。


どうすればいいかわからなくて
俯いていると、ふわっと
甘い花の香りがした。

あれ……。


顔を上げると、いつのまにか
すぐ目の前に天宮がいた。



「………な…に……」

「……………」

⏰:11/03/23 22:15 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#329 [愛華]
天宮はあたしの肩に手を添えて
顔をあたしの首に近づけた。

そして…………




ぺろっ





「んぎゃああああ!!」


ななななな!!
なにしてんのこいつ!!!

⏰:11/03/23 22:18 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#330 [愛華]
「き、き、傷なめ………」

「血出てたし痛そうだったので。消毒ですよ、消毒」


天宮はいたって真面目に
そう言ってあたしを見つめる。

心臓がバクバクする。

「お前は犬か!!」

「まぁ犬でもなんでもいいけど。とりあえずこっち向け」

「………!」

⏰:11/03/23 22:25 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#331 [愛華]
また体が強く脈打つ。


あたしは天宮の言葉に従って
背けていた体を天宮に向ける。


いきなり敬語じゃなくなるし。
………調子狂うよ……。


一度速まった鼓動は簡単には
収まらず、体温を上げてゆく。



……なんだろ、これ……。
熱あんのかな私………。

⏰:11/03/23 22:29 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#332 [愛華]
天宮はあたしの傷を見たあと、
抱きしめる形であたしの首に
顔を埋めた。


傷は天宮の唇の熱を感じて疼く。



「………天……宮…」

「すいませんでした。
側にいれなくて……」


天宮の抱きしめる手に力が入る。


あたしはこの温もりが
ほしかったんだと気づかされた。

⏰:11/03/23 22:34 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#333 [愛華]
「……あたし、最近すごい
不安だったんだよ……」


知らないうちに涙が流れる。
それは留まることを知らずに
天宮の制服をぬらしてゆく。


「学校にも慣れてきて……
ちょっとずつ人とも話せるようになってきたのに。
天宮はずっと不機嫌だし……」

「…………」

「天宮と一緒に喜びたかった
のに………寂しかったよ」

⏰:11/03/23 22:42 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#334 [愛華]
天宮の背中に手をまわして
その存在を確かめるように
抱きしめる。


「陽向さん……ごめんね」

「ううん。天宮が嫌なら……
あたし松矢君とは話さないよ。」

「え……」

「あたしにとっては。
松矢君より天宮が大事だから」


あたしがそう言うと、
天宮は少し何かを考えてから
体を引き離した。

⏰:11/03/23 22:50 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#335 [愛華]
それが少しさみしかった。


「……松矢と普通に話しても
大丈夫ですよ」

「天宮もう怒らない?」

「はい。」


あたしが微笑むと
天宮もゆっくり微笑んでくれた。


「あ……あともうひとつ
聞きたいことがあるの」

⏰:11/03/23 22:54 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#336 [愛華]
「なんですか?」

「その………あたしはもう。
天宮の家族になれたのか、な?」



確かめたかったこと。
天宮を信頼しはじめて。
家族になりたいと願った。

大事にしてくれてるのは
充分わかっているけれど
やっぱり不安でたまらなくて。


天宮にとって……あたしは何?

⏰:11/03/23 22:57 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#337 [愛華]
「………家族になるには、
血の繋がりが必要です。でも
そんなものがなくたって……

俺にとって陽向さんは
ただひとりの大切な人です」

「…………!!」


「今までどんなに陽向さんが
辛かったのか、頑張ってきたか。

自惚れかもしれませんが
俺が1番わかっているつもりです

……だから泣くのは俺の前で
だけにしてくださいね」

⏰:11/03/23 23:01 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#338 [愛華]
胸のくもりが晴れてゆく。
あたしのことをちゃんと、
わかってくれる人がいる。


なんて心強い、そして安心する。



お母さんに向かう気持ちとは
ちょっとだけ違う。

優しくて、心地好くて、
ちょっとだけ切なくなったり
胸が苦しくなるこの気持ち。


なんて名前の気持ちなのかな。

⏰:11/03/23 23:06 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#339 [愛華]
ふと上を見ると、太陽は西に
傾き空を赤く染めていた。


「……さ、帰りましょうか。
陽向さんの傷の手当しなきゃ」

「お願いします……。
あ、そういえばさっき女子たちと何話してたの?」

「あーちょっと怒りました。
多分噂もじきに消えますよ!」

「よかったぁ……」


あたしがホッとしていると
天宮がにっこり笑いながら
あたしの頭をなでる。

⏰:11/03/23 23:14 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#340 [愛華]
あ……今気づいた。


天宮の甘いにおいって
あの裏庭の花のにおいだ。


鞄を取りに行ってくる、と
言い残して教室に戻った天宮。

さっきまで天宮がいた場所は
やっぱり甘い香りがした。

……裏庭に通おうかな。


ってあたし変態みたいだ……。

ひとりで自己嫌悪している間も天宮の甘い香りは消えなかった。

⏰:11/03/23 23:24 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#341 [愛華]








教室で鞄をとって陽向さんを
迎えに行こうとした時。

階段にあまり今会いたくない
人物を見つけた。


「………松矢……」

「あれ、天宮まだ居たんだ」

⏰:11/03/23 23:26 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#342 [愛華]
そう言ってニッと笑う松矢は
男の俺から見ても男前。


「……誰か待ってるのか?」

「んー別に。」

「そっか。じゃあな」

それだけ言って松矢を通り過ぎ
階段を降りはじめると、
上からまるで図ったような
松矢の言葉が聞こえた。


「……陽向ちゃんには俺のが
合ってると思うけど」

⏰:11/03/23 23:31 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#343 [愛華]
その言葉にピタリと階段を
降りる自分の足が止まる。


「………は?」

「予想以上に面白いんだよね。
陽向ちゃんにかまうのって。」

「松矢に陽向さんは無理だ」

「それはどうだろ?」


ピリピリと空気が震える。
相変わらず微笑んだままの
松矢は何を考えてるのか
全くわからない。

⏰:11/03/23 23:35 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#344 [愛華]
「………それにさ。スタートの
差ってデカいと思うよ」

「スタートの差……?」

「うん。
『家族』からのスタートと
『他人』からのスタート。


どっちが有利かなぁ」


松矢はその言葉を残すと
笑顔を崩さないまま
階段を降りていった。

⏰:11/03/23 23:38 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#345 [愛華]
スタートの、差。

あまりのんびりしてられないの
かもしれないな………。


距離が近すぎてもダメなんだ。
相手の意識を変えるには
ある程度の距離が必要なのかも
しれない。


でも今さら自分は。
その距離に耐えられるのか…?


2人分の鞄は妙に重かった。

⏰:11/03/23 23:45 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


#346 [愛華]
今日の更新分
>>325-346

感想板にて、よければ
感想待っています。

⏰:11/03/23 23:48 📱:840SH 🆔:gWV8zvo6


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