悪魔と天使の暇潰し
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#151 [匿名]
「二人は協力してくれんだ。俺だけじゃ集めきれないターゲットの情報も、調べてくれる。」
「へぇ、仲間がいたんだな。」
そんな話をしていると、美人が酒を持って現れた。
緑と透明の二種類のグラデーションのカクテルが三つ並んだ。
「ジンベースのカクテルなの。いつも濃いめに作ってるけど、二人は大丈夫?」
美人は、さっきと同じツンとした表情で聞いてきた。駄目なんです。なんて言ったら、目の前のカクテルをぶっかけられそうな迫力がある。
:11/06/27 23:20 :F06B :DzZSXfcA
#152 [匿名]
俺達は酒を飲んでも酔わない。だからどんなに強い酒でも、どんなに大量に飲んでも何も変わらない。
「大丈夫です。」
あいつが返事をすると、美人は眉毛を少し上げただけで、去っていった。
「早速だけど、お前は何で俺に死んで欲しいわけ?」
カクテルをカラカラと軽く混ぜ、一口飲むと、ターゲットは俺にそう言った。
「俺のターゲットがお前だからだ。」
「誰かに俺を殺せって頼まれたのか?」
「さあ?どうだろうな。」
「誰だよ!」
「そんな事誰が言うかよ。」
:11/06/29 00:14 :F06B :A75d7Lp6
#153 [匿名]
本当はそんな奴いない。
ただターゲットを自殺させるには、誰かに恨まれていると思わせていたほうが、効果がある気がした。
「まあ、言う訳ねーよな。」
ターゲットは笑った。
「こんな仕事をしてんだから、恨みは相当かってるよ。誰かに狙われる事は、想定してる。」
ターゲットはもう一口飲みながらそう言った。
「お前らも俺と同じような事をしてんだろ?詳しく聞かせてくれよ。」
そうだなあー、と隣に座っているあいつが考え出した。天使と悪魔です。なんて言えないから、何て嘘をつこうか悩んでいるのだろう。
「俺は悪魔で、こいつが天使だ。」
目の前のカクテルを飲みながら、あいつよりも先に俺が答えてやった。
口の中に、アルコールと柑橘類の香りが広がった。
:11/06/29 00:18 :F06B :A75d7Lp6
#154 [匿名]
想像通り、ターゲットは笑った。
はあ?と馬鹿にした後、腹を抱えて笑った。
こいつもこんな風に笑っていると、普通の若者なのになと思った。
「お前は変な奴だとは思ってたけど、こんな事言うほど頭が可笑しいとはな!」
「うるせぇなー」
本当の事を言うと、いつもこうなる。人間は俺達の名を知っているくせに、存在しないと勝手に決めつけている。
:11/06/30 17:22 :F06B :AjWxtfLw
#155 [匿名]
「悪魔だったらさ、自殺なんて強要しなくても、俺の事なんて簡単に殺せんだろ?」
そう、俺はターゲットが殺し屋だと知り、ターゲット自身を殺してくれと、依頼した。
「そうだな。だけど俺は人を自分の手で殺すんじゃなくて…」
そう言ってから、それを想像して笑みが溢れるのが自分で分かった。不気味だ。
「自分の目の前で、人間が自ら命を絶つ瞬間を見るのが、たまらなく好きなんだ。…悪魔みたいだろ?」
:11/06/30 17:25 :F06B :AjWxtfLw
#156 [匿名]
「悪趣味だな。」
ターゲットも俺と同じように、不気味に笑った。
「お互い様だろ?」
「俺はそんな趣味ねーよ。」
「だけどお前笑ってたぞ。さっきのチンピラターゲットを殺った時。」
「そりゃあ人を殺すだけで、大金が手に入るんだからな。笑いたくもなる。」
それは本心にも感じたし、偽りの言葉にも聞こえた。
:11/07/02 11:46 :F06B :n90j9dzo
#157 [匿名]
「君は依頼を全て受けるわけじゃないと言ったよね?例えばどんな人は殺さないの?」
あいつがいきなり核心的な質問をした。
「…何も悪い事をしてないやつだ。」
ターゲットは少し考えてから答えた。
「でも依頼人に恨まれてるんだから、何かしら悪い事はしてんじゃないのかな?」
あいつは続けて、また核心をついた。
「…俺の中の物差しがあんだよ。」
ターゲットは一瞬、考えるように目を反らした。
:11/07/05 12:18 :F06B :UHeZx4Ck
#158 [匿名]
「そうか。」
あいつがいつも通りの笑顔を向けた。
「今までどれくらいの人間を殺ったんだ?」
俺は聞いた。
「いちいち数えてねーからなぁ。」
そう言いながらも指を折って数えながら、
「50人以上かな〜。」
と、ターゲットは答えた。
それは多いのか少ないのか、俺には分からない。
「いつからこの仕事を?」
次はあいつが聞いた。
:11/07/05 12:19 :F06B :UHeZx4Ck
#159 [匿名]
「高2の時からだ。」
それは早いのか遅いのか、またしても俺は判断出来なかった。
「どうしてこの仕事をしようと思ったの?」
「金が欲しかったんだよ。」
「お金のためだけに、こんな危険な仕事を?」
「…ああ」
「よくやるねー!」
あいつは心から感心しているみたいだった。
「手っ取り早いし、俺には向いてる」
ターゲットは投げやりにそう言った。
:11/07/05 12:21 :F06B :UHeZx4Ck
#160 [匿名]
それからターゲットの酒を飲むペースが早くなってきた。
俺らもターゲットにつられて、何杯も飲んでしまった。
陽気になったターゲットは仕事の話は一切せず、俺達の事も深く追求しなくなった。そして無駄な話が続いた。
そうなると時間が過ぎるのは早くなり、気が付くと二時間が過ぎようとしていた。
どうでもいい話を人間とするのは、もう何十年ぶりだろう。病気の女をターゲットにした時の事を思い出した。
その時も俺はターゲットを追い込むどころか、毎日無駄な会話をしてしまった。
:11/07/05 12:25 :F06B :UHeZx4Ck
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