悪魔と天使の暇潰し
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#221 [匿名]
「運がいいなー俺ら。何もねー古いビルにこんな新しい忘れ物があるなんて」

ターゲットは血を拭き、着替えだした。俺も急いで服を着替えた。


そして何もなかったように、俺達はビルを出た。
想像通り人は一人も居なく、辺りは静かな風の吹く音だけ聞こえてくる。


そういえば、時間を全く気にしていなかった。腕時計を見るとターゲットに会ってから一時間半が経っている。

車での移動距離などを抜くと、このビルでの殺し合いは約三十分ほどだった。

短いのか長いのか、判断がつかない。

⏰:11/08/02 14:07 📱:F06B 🆔:G6A90LOs


#222 [匿名]
残り三十分。

「つーかあんな虐殺現場をそのまんまにして帰っていいのか?いつかばれるだろうし、ばれたらお前の指紋や血液を調べられて捕まっちまうんじゃねーか?」

あれが一生ばれないなんて奇跡が起こるわけがない。

「大丈夫だ。警察じゃ、俺に辿り着けねーよ。それに…」

「ん?」

ターゲットが空を見上げた。

「その頃には、俺はもう星になってるかもしれねーしな」

「…全然かっこよくねーぞ?」

「かっこつけてねーから!」

⏰:11/08/02 14:44 📱:F06B 🆔:G6A90LOs


#223 [匿名]
ターゲットは誰かに殺されると思っているのか?それとも、俺の依頼を受ける気か?

「じゃあ、俺帰るからよ。お前は殺されねぇように帰れよ」

手をひらひらと振り、ターゲットの行く方向とは逆に歩き始めた。角を曲がってターゲットから俺が見えなくなったら上へ帰る。


俺は気が付かなかった。
ターゲットが俺の後ろ姿を見る、覚悟を決めた目に。

⏰:11/08/02 14:46 📱:F06B 🆔:G6A90LOs


#224 [匿名]
上へ上がるとすぐにあいつに会った。

「お、おう!ターゲットについて調べたか?」

何も言われていないのに、あいつの顔を見て居心地が悪くなり、目を反らした。

「何を焦っているんだ?」

あいつの冷たい口調が聞こえた。

「は?な、なにがだよ!」

「何故僕の顔を見ない?やましい事でもあったのか?」

「ね、ねーよ!んなもん!」

「そうか」

「おう」

危ない。ばれるところだった。

「てっきり人間を沢山殺しちゃった事が、後ろめたいと思っているのかと思ったよ」

「…てめぇ」

くそ、ばれてたのか。

⏰:11/08/03 08:49 📱:F06B 🆔:tsVl/s/o


#225 [匿名]
「まあ、君が殺していなかったら、ターゲットは殺されていたかもしれないから、今回は責めたりしないよ」

淡々と話すものだから、それが本心なのかすら分からない。

「ああ、そりゃどうも」

「その服も君に似合うよ」

あいつは俺の作業着を指差した。

「これか?たまたまあったんだよ。血まみれだったから助かったぜ」

「たまたま?それは僕が用意しておいたんだ。普通に考えてみて、あの場所にその服だけが置いてあるわけないだろ?」

腹立たしい。
そう言われればそうじゃないか。ターゲットも薄々、何かに感ずいていたのかもしれない。

⏰:11/08/03 08:50 📱:F06B 🆔:tsVl/s/o


#226 [匿名]
「別にこれがなくても俺は逃げられたけどな!」

ムキになり舌打ちをした。

「ああ、そうだね」

また馬鹿にされた。

「それより、ターゲットの事いろいろ調べたよ」

「おう。何が分かった?」

「殺し屋になった理由だよ。まぁまだ憶測にすぎないんだけど、確実ではあると思う。ターゲットは――」

あいつが調べた情報を聞いて、ターゲットの純粋な心が見えた気がした。
少年のような真っ直ぐな正義は、どうして歪んでしまったのだろう。

⏰:11/08/03 08:52 📱:F06B 🆔:tsVl/s/o


#227 [匿名]
四日目



あいつが、調べた事が正しいかターゲットに確認しに行くと言うから、俺も一緒に行く事にした。

俺がいない間にターゲットの犯罪を正当化されたら困るからな。


ターゲットの部屋に女が訪れたのは21時だった。

「依頼に来たわ」


部屋のドアの前で携帯電話を取りだし、女がそう電話をしだした。

すると少し経って、中からターゲットが出てきた。

「またあんたかよ」

眉間に皺を寄せ、明らかに機嫌の悪い顔をしながらも、ターゲットは女を中に入れた。

⏰:11/08/09 15:21 📱:F06B 🆔:GMHiLOkQ


#228 [匿名]
その様子を見て、すぐに下へ向かった俺に、あいつは呆れた顔でついて来た。

ターゲットの部屋のインターホンを鳴らす。すぐにターゲットは出てきた。さっき女に見せた顔よりも、明らかに嫌な顔をしている。


近くで顔を見ると昨日の生々しい傷が所々にあった。だが思ったより傷はひどくなく、あまりスーツ男達にやられていなかったんだなと思えた。


「入れろよ」

「嫌だね」

「美人がいるからか?」

「…見てたのか?」

「ああ。お前が女を連れ込む様子をな」

⏰:11/08/09 15:24 📱:F06B 🆔:GMHiLOkQ


#229 [匿名]
女はサングラスをかけ、つばの広い帽子を被っていたので顔は見えなかったが、ぴっちりとした黒いジャケットに、ぴっちりとした黒いミニスカート姿、高いヒールに真っ赤な口紅。

スーツのようだったが胸元がばっくり開いていた。こんな大胆な格好は自分に自信が無くては出来ないだろう。

と、さっきあいつが言っていた。


こんな暗い夜にサングラスをかけているのは、顔を見られたくないから。きっとターゲットと同じ、非合法的な仕事でもしているのだろう。

と、これもまたあいつが言っていた。

⏰:11/08/09 15:26 📱:F06B 🆔:GMHiLOkQ


#230 [匿名]
「…そう。一発ヤっちゃおうと思ってんだよ。同じ男なら分かんだろ?邪魔しねーで帰ってくれ」

ターゲットはシッシッと猫を追い払う様な仕草をした。

「嘘つけ」

ドアが閉まる前に、あいつが言った。

「その眉間の皺、僕達を見てからついたものではなくて、あの女性を見た時にはもうついていたものだ。今から楽しみのある人間が、眉間に皺なんて作らないよ」

お前は探偵か!

だがその探偵のような言葉にターゲットは促されたのか何なのか、何も言わずに中へ入って行った。鍵をかけずに。

⏰:11/08/09 15:37 📱:F06B 🆔:GMHiLOkQ


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