悪魔と天使の暇潰し
最新 最初 🆕
#254 [匿名]
「だけど俺は間違ってたんだよな?人を殺すヒーローなんていない。…本当その通りだ」

涙を拭い真っ赤になった目と、目が合う。さっきよりもさらに真っ直ぐで純粋な目だった。

「今まで気が付かなかった自分が恥ずかしいよ。もっと早くお前らみたいな奴に出会ってたら、まともな人生歩めてたかな?」

ターゲットが窓のある方へと歩いた。咄嗟に俺は立ち上がり、あいつは一歩ターゲットに近付いた。

ガラッと窓が開かれた。
冷たい風が一気に部屋へと入り、俺達に触れながら通り抜ける。

⏰:11/08/18 18:04 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#255 [匿名]
「俺は、ただ…」

ターゲットの上半身が窓の外に出る。

「…ヒーローに、なりたかった」

汚れの無い笑顔を見せ、ターゲットの重心は、完全に外へと向かった。

頭が見えなくなる。
肩が、背中が、ゆっくりと外の世界へと消えて行く。


俺に何も言わせないで、俺の目の前で死ぬ気か?

⏰:11/08/18 18:06 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#256 [匿名]
「糞野郎!」

俺は悪魔で、あいつは天使で、今飛び降りたのは人間。

ターゲットの足が宙に浮いた瞬間、俺とあいつはターゲットに駆け寄った。

死なせてたまるか!と心の中で叫んで。

二人でターゲットを掴む。脚とか腰とかを、二人共無茶苦茶な格好で掴み、無茶苦茶な力で引き上げた。

「悪りぃ。俺の依頼受けてくれんのは嬉しいんだけどよ、払う金がねぇんだわ!だから、キャンセルで!」

顔の前で手を合わせ、謝るように頭だけ下げた。

⏰:11/08/18 18:09 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#257 [匿名]
部屋の床に投げ付けられ、倒れたままのターゲットはポカーンとした顔で俺達を見ている。

「え?」

動揺するのも無理はない。死を覚悟し、自ら体を外へ放り投げ、後は体が地面に叩きつけられるのを待つだけだったはず。

それなのに叩きつけられたのは、自分の部屋。

ターゲットは今自分に起きた摩訶不思議な現象を必死に把握しようとしている。

「本当に君は素直じゃないね」

あいつが俺に言う。

⏰:11/08/18 18:10 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#258 [匿名]
「うるせぇ!」

あいつに言い返す。

だけどあいつはニヤッと笑っただけで、俺との言い合いを終わらせ、ターゲットに声をかけた。
むかつく。

「君は、死ぬ必要なんてない。正しい事に気付けたんだ。これからどれだけでも挽回出来るよ」

「俺は、生きてていいのか?」

その問いにあいつが深く頷いた。

ターゲットは顔をくしゃくしゃにして泣いた。歯を食い縛る事も、涙を手で隠す事もしない。隠さず泣いている。今まで溜まっていたものが、全て流れ出ている。

⏰:11/08/18 18:13 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#259 [匿名]
「泣いてんじゃねーよ!俺が助けたんだぞ!死んだら殺すからな!」

また訳の分からない言葉が出てきた。本当は、お前は悪くない、と言ってやりたかったが、やっぱりそんな事言えない。


暇潰しで、自分から負けを選ぶという悪魔失格な事をしておいて、変な所で意地を張ってしまう。

俺は馬鹿だ。
あいつが馬鹿にするのも無理はない。悔しいが。

⏰:11/08/18 18:16 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#260 [匿名]
「僕の勝ちだね。また君が悪魔である事を、放棄してくれたお陰だけど」

あいつが玄関へと向かいながら、俺に言った。

俺の負け。
だけど負けに対しては悔しくない。

「次は勝つ!」

「ああ。頑張ってくれ」

むかつく。

舌打ちをし、あいつが俺とターゲットから離れるのを見届けてからターゲットを見下ろした。

⏰:11/08/18 18:17 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#261 [匿名]
「お前は生きなきゃ駄目だ!自分の気持ちに正直に生きれば、それは絶対正しい」

そう、ターゲットにだけ聞こえる様に言った。あいつにはばれていない。だろう。


「何様だよ」


ターゲットが、泣きながら笑う。

⏰:11/08/18 18:20 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#262 [匿名]
...四年前




あれは冬の寒い夜だった。

高校二年生の彼は、居酒屋のアルバイトを終え、家に帰る途中。

雪こそ降っていなかったが、吐いた息が白い。マフラーを口まで隠し、凍えそうな手は制服のズボンのポケットに突っ込んだ。

誰も居ない公園を、足早に通り抜ける。近道だ。

だがその日、誰も居ないはずの公園に一つの人影が見えた。

⏰:11/08/20 21:45 📱:F06B 🆔:S7DQT51E


#263 [匿名]
その人影は右手に何かを掴み、それを思いっきり地面に叩き付けた。

それと同時に、ギャッともギュッともとれる変な音がした。

怪しい雰囲気に吸い込まれ、彼はそれを覗き込んでしまった。そしてその音が、動物の発する呻き声だと分かった。

猫が倒れている。

ピクピクとまだ動く猫を、その怪しい人影は、ヒッヒッと不気味に笑いながら見下ろしている。

⏰:11/08/20 21:48 📱:F06B 🆔:S7DQT51E


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194