悪魔と天使の暇潰し
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#330 [匿名]
だけど私の期待は虚しく打ち砕かれた。
目を開けると、そこには守がいた。辺りは白い空間で守の他には何も存在していない。
「幸子、結婚しよう!」
目の前の守が満面の笑みでそう言った。この状況に覚えがある。
「幸子って名前はさ、幸せな子になりますようにって両親がつけてくれたんだろう?」
守がそう続けた。私はコクリと頷く。
「俺はさ、大切な人を守れる、強くて優しい男になるようにって親父が守ってつけてくれたんだ。俺、初めて幸子に会った時こいつを一生守る為に産まれてきたんだって本気で思ったよ」
守の口調は照れ臭そうで、私まで顔が赤くなったのを覚えている。
:11/09/09 11:41 :F06B :xAuKkfjA
#331 [匿名]
「お前が幸せに生きていく為には、俺が守っていかなきゃ成り立たない!俺が幸せに生きていく為にもお前がいなきゃ駄目だ!」
守が深呼吸をする。
「……結婚しよう。俺がどうなろうと一生守ってやるから!お前から俺が見えなくなっても、ずーっと側にいてやるから!」
何度聞いても涙は溢れる。私は夢の中で何度も何度も頷いた。
守がいる。私の目の前にずっと会いたいと願った守がいる。
泣きながら私はありがとうと言った。あの日もそう言ったからだ。そうすると守が頭を撫でてくれる事を私は知っている。
:11/09/09 11:45 :F06B :xAuKkfjA
#332 [匿名]
ふと気が付くと朝だった。目の前には実家の天井が広がっている。
今日もまた守の夢を見た。昨日までの辛い夢だけではなく、キラキラと輝いたままの思い出が夢に出てきた。
懐かしく、微笑ましいプロポーズの思い出だ。あの日と一つも変わらない言葉で、守はもう一度プロポーズをしてくれた。
あんなに大切な一日だったのに、守がいなくなってから一度も思い出す事がなかったんだと、夢を見て気付き、悲しくなった。
:11/09/12 21:25 :F06B :EvVP.lUg
#333 [匿名]
私から守が見えなくなっても、守っていてくれる。
守がプロポーズをしてくれた日、私はその言葉に救われた。私に何が起ころうとも守がいてくれる、そう思うだけで怖いものはなくなった。
「守、見てる?」
カーテンを開け空を見上げてみるけど、返事は返って来ない。
ぼやける視界をどうにかしたくて目をこすった。そして涙が出ていた事に気が付く。
「見守っていてくれてる?私守がいなきゃ……生きてけないんだよ?」
改めて思いを言葉にした途端、涙がポロポロと流れた。
:11/09/12 21:29 :F06B :EvVP.lUg
#334 [匿名]
言葉にするとそれはもう誤魔化しが効かなくなり、私は崩れ落ちる様に膝を着き泣いた。
生きていけない。それと、生きている意味が無い。
「守に会いに行っていいかな?」
もう一度空を見上げる。あの雲の先に守がいるなら、こんな私に何て言うかな?
もういいよ、おいで。って手を差し出してくれるかな?
これ以上生きていても、心の底から笑える日なんて来るのかな?生きていて良かったなんて、もう二度と思えないよ。
守がいなきゃ、何も感じない。
:11/09/12 21:36 :F06B :EvVP.lUg
#335 [匿名]
「さっちゃーん起きてる?」
一階にある台所から二階の私の部屋まで届く大きな声で、母が私を呼んだ。朝御飯が出来たのだろう。
私は咄嗟にベッドに入り込み寝たふりをした。母が二階に上がって来る様子は無い。
ごめんなさい。何の期待にも答えられなくて、ただ心配ばかりをかけて。もう私の事で悩まなくてもいいようになるから。
目を瞑り布団を頭まで被ると、自然と睡魔が襲って来た。
:11/09/12 21:38 :F06B :EvVP.lUg
#336 [ぴろみ(・ω・)]
はい〜
終了〜(・ω・。)
19/♀/Eカップ/彼氏無
:11/09/13 00:15 :SH904i :mzwm3c5E
#337 [匿名]
―――
気が付くと目覚まし時計は十二時を示していた。あのまま私は寝てしまったんだ。一度起きてから三時間が過ぎている。
夢は見なかった。いや、見たのかもしれないが何も覚えていない。
起きて鏡を見る。
目の腫れた私がそこには写っていた。寝過ぎたと言えば、何も疑われないかもしれない。
重い脚と気持ちを必死に動かし、一階へと降り顔を洗いに行く。
:11/09/13 21:59 :F06B :IrBsaxh.
#338 [匿名]
冷たい水のお陰で目が覚めた。腫れた目がほんの少し元に戻った気がする。
居間へと向かうと、父と母が真面目な顔で何かを話していた。小さな声だったため、何を話しているのかは分からなかったが、溜め息混じりなのは分かる。
もしかしたら今話題の熟年離婚か?と不安になる。
もしそうだとしたら何とかして止めたい。私は二人が不器用な事を知っている。それが原因なら私が間に入れば、止められる気がした。
「どうしたの?」
二人は私が居間に入ろうとしていた事に気が付いていなかったらしく、声をかけると酷く驚いた。
:11/09/13 22:02 :F06B :IrBsaxh.
#339 [匿名]
「あ!さっちゃん、やっと起きたの?」
母が無理矢理笑顔を作ってそう言った。目は笑っていないし、口元はひきつっている。
「何か食べる?お味噌汁とか残ってるけど」
母は私を見ずに台所へと向かって行った。
「うん」
私は母の背中に向かって返事をした。聞こえているのかいないのか、母は何も答えず冷蔵庫から卵を取りだし、何かを作ろうとしている。
:11/09/13 22:05 :F06B :IrBsaxh.
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