悪魔と天使の暇潰し
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#347 [匿名]
それでいいと言う割には、母は嬉しそうに笑っていた。食べたかったのよねーと一人言を言っている。
さっきは私の顔を見てあんなに気まずい顔をしたのに、もうニコニコしている母を見て、頼もしく感じた。
母は何事も引きずらない。
悩みがあっても一晩寝れば忘れる人がいるが、母は一時間もあればケロッとしている。
そんな母の長所、私には受け継がれなかったみたいだ。
:11/09/17 00:41 :F06B :gmmz71IM
#348 [匿名]
朝食を食べ終え、私は自分の部屋に戻った。時間は十三時になっていた。
朝食だという気持ちで食べていたが、世間一般からすれば昼食だ。とどうでもいい事を考えながら、着替えを始めた。
三十分程で支度を終わらせ、私は家を出た。
行く場所は何となくしか決めていない。帰る前に駅前のロールケーキを買えば、それでいい。
空は晴天。
朝はくっきりと空に浮かんでいた雲が、いつの間にかうっすらとした雲に変わっていた。
守があそこにいたら落ちちゃうな、とくだらない事を考えながらゆっくりと歩いた。
:11/09/19 18:08 :F06B :ErJ50EgY
#349 [匿名]
何故か私の心は今までに無いくらい落ち着いていた。
母の言った、とりあえず、の意味も実際分からないままだったが、どうせ家に帰ったら分かる事だろうと、思考を一旦停止した。
ゆっくりと商店街を歩いていく。
駅で電車に乗り、二駅先で降りた。たったの二駅で時間も五分ちょっとしかかからないが、電車を降りるとガラリと雰囲気の違う町がある。
:11/09/19 18:09 :F06B :ErJ50EgY
#350 [隆平]
いつも楽しみにずっとまってます!
:11/09/20 17:35 :F09C :☆☆☆
#351 [匿名]
:11/09/20 23:03 :F06B :PRaZYkic
#352 [匿名]
私はその駅の近くにあるカフェが好きで、実家に帰るとよく行く。
近くにある本屋で適当に短めの小説を買い、カフェに入った。
入って一番奥の右端に通され、アイスコーヒーとフルーツが沢山乗ったタルトを頼んでから、本を開いた。
<君はきっと後悔しながら死んでいくんだ>
冒頭からショッキングな言葉を投げ掛けられ、胸が痛くなった。自然と眉間に皺が寄り、少しして目に疲労を感じた。
:11/09/20 23:05 :F06B :PRaZYkic
#353 [匿名]
その一行をずっと見ていたからだろう。
そしてすぐにアイスコーヒーとタルトが運び込まれた。
一口飲んで、一口食べて、を三回繰り返してから、もう一度本に視線を戻した。
続きを読み始める。
主人公は男子高校生で、虐めを苦に自殺を図ろうとした。校舎の屋上に上がり柵をよじ登る。後は身体を投げ出すだけという時に、担任の先生が現れる。
:11/09/20 23:08 :F06B :PRaZYkic
#354 [匿名]
その担任の先生は若くて熱くて一生懸命な、教師の鏡。
自殺を止めた先生と、心に傷を負った生徒。その二人の物語だった。
半分近くまで読んでも、私は何一つ共感出来る事がなかった。
最終的には生徒が立派に卒業し、先生に感謝をするんだろう。
二人で涙を流し、抱き合うかもしれない。そんな感動のラストが容易に想像できる内容だった。
:11/09/20 23:10 :F06B :PRaZYkic
#355 [匿名]
あまり深く考えずにただ文字を読んでいく。
ふと入り口の窓を見ると、ぼんやりとした私が写っていた。時計を見ると五時を少し過ぎていて、外は薄暗くなっていた。
通りで私が写るわけだ。
小説はあと十ページ程で終わる。アイスコーヒーを飲み、ケーキを食べきってから残りを全て読んだ。
私の想像通り、最後は涙涙涙の卒業式。
この小説に出会うのが遅すぎた。学生の頃なら、今よりは大分多くの感動をしたかもしれない。
今は何も感じなかった。
涙脆いはずの私の目からは一粒の涙さえ出なかった。
:11/09/20 23:14 :F06B :PRaZYkic
#356 [匿名]
本を鞄にしまい、氷が溶けきり、コーヒー風味の水になってしまった飲み物を頑張って飲み干した。
お金を払い外に出ると風が冷たくなっていた。
後は地元に戻りロールケーキを買って帰るだけだ。私はもう何もする事が無い。
空に雲は一つも無かった。守を近くに感じる事が出来る。
「あれ?幸子?」
空を眺める私の後ろから、誰かが声をかけてきた。
:11/09/20 23:16 :F06B :PRaZYkic
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