悪魔と天使の暇潰し
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#361 [匿名]
「今有給休暇中で、一週間休みだったの!まあ、今日で休みは終わりなんだけどね」

残念さが里美から滲み出ている。

「そっか。じゃあ本当今日会えたのって偶然なんだね」

「そうだよね。なんか、嬉しいね!」

「うん!」

それから私達は、お互いが知らない約二年間の出来事について話し出した。

⏰:11/09/24 11:39 📱:F06B 🆔:FDlPqY22


#362 [匿名]
里美はまだ結婚していないが、サラリーマンの彼氏がいるらしい。付き合って一年ちょっとだが、お互い忙しくてなかなか会えないみたいだ。

「でも二週に一回ペースが楽でいいかも。毎回、会うのが久しぶり!ってなると、会える嬉しさ倍増するんだよねー。燃えるよ!燃える」

高校生の時の里美は、毎日の様に彼氏と過ごしていた。同じ学校に彼氏がいたからかもしれないが、飽きる事なくベタベタしていた。

そんな事を思い出し、里美に教えてあげると、

「いやーあの頃は若かった!彼氏がいればそれでいいと思ってたからねぇ」

としみじみし出した。

その会話の流れで、話題は高校時代の思い出話へと移り、私達の気持ちはあの頃に簡単に戻れた。

⏰:11/09/24 11:43 📱:F06B 🆔:FDlPqY22


#363 [匿名]
ホッとした。

里美は私と守の事を良く知っている。守が交通事故に遭った事も知っている。

どうしても抜けられない仕事の都合で、里美は守の葬式には来られなかったが、心配をして、メールをくれたりもした。


もし今この場で、守の話になったら、私は笑えなくなってしまう。大切な友人である里美に心配をかけてしまう。

話題が高校生の頃の馬鹿な話になって良かった。

もしかしたら里美は気を使ってくれたのかもしれない。そう思うと、感謝の気持ちと同時に、いたたまれない気持ちになった。

⏰:11/09/24 11:47 📱:F06B 🆔:FDlPqY22


#364 [匿名]
笑って、驚いて、苦しくなって、恥ずかしくなって、怒りが込み上げて来て、微笑ましくなった。

私の高校三年間は、今思い出すと、こんな感じだ。
そのどの感情を思い出しても、近くに里美がいた。


ふと腕時計を見ると、二十三時を過ぎていた。

「もうこんなに時間経ってる!」

私がそう言うと、確認する様に里美も腕時計を見た。

「早い!私達ずっと語ってたんだ」

二人して笑いが込み上げて来た。今の私は自然に笑えたのかな?

⏰:11/09/24 11:49 📱:F06B 🆔:FDlPqY22


#365 [匿名]
「明日仕事でしょ?そろそろ行こうか」

「あぁ、そうだ、仕事だ。明日早いんだ…ごめんね、行こうか」

「私も仕事だし!お互い頑張ろう!」

私は何も考えずにそう言った。

この場所でこの時間まで飲み、今から実家に帰るつもりのくせに。
明日仕事へ行く気など、全く無いくせに。

⏰:11/09/24 11:50 📱:F06B 🆔:FDlPqY22


#366 [匿名]
「じゃあ私自転車があるから!また、近い内に絶対に会おうね!」

そう言って里美は駅の前で、改札を抜けようとする私に言った。

「……うん」

出来るだけ精一杯の笑顔で笑った。

さっきまでは自然に笑えたのに、色々と考えてしまうと、どうもひきつる。

「幸子!」

里美が言う。

「幸子は一人じゃないよ!幸子は皆に愛されてるよ!少なくとも私は、大好きだよ!何かあったらすぐ助けに行くからさ!…守君みたいにはいかないけど、親友として、支えるから!…だから幸子も助けてよ!私にピンチが降りかかっても、飛んできてよね!」

⏰:11/09/25 12:45 📱:F06B 🆔:geZHgiX2


#367 [匿名]
里美がニカーッと笑い、満足そうに胸を張った。

そして私の返事も何も聞かずに、走って行ってしまった。

こんな状況で一人にしないでよ、里美。
涙が止められなくて、恥ずかしいよ。

お酒を飲んだせいかな?
里美の不思議な力のせいかな?

私の気持ちはぐるぐる回り始めた。

とにかく今日は帰ろう。
涙を必死に隠しながら、人気の少ない車両に乗り、実家に向かった。

⏰:11/09/25 12:48 📱:F06B 🆔:geZHgiX2


#368 [匿名]
五日目




「ただいま」

小さな声で呟き、実家の玄関へと入った。

里美と別れてから、電車を待ち、コンビニに寄って帰ったら意外と時間がかかった。玄関にある時計は長針も短針も<12>を指していた。

もう父も母も寝ていると思い、足音を立てない様に階段を登ろうとした時、居間の電気が点いているのが見えた。

そして気が付いた。
ロールケーキを買い忘れた事を。

⏰:11/09/26 18:03 📱:F06B 🆔:.Lu5CvxE


#369 [匿名]
謝らないと。きっと母は起きて、私の帰りを待っていたのだろう。いや、待っていたのは私ではなくロールケーキだ。きっとそうだ。

複雑な気持ちで居間に入ると、朝と同じ様な光景があった。

父と母が深刻そうな表情で俯いている。

「ただいま。ごめん、ロールケーキ売り切れてた」

嘘をついた。

「ああ、さっちゃん…お、おかえり」

母が私の目を見ない。
ロールケーキの事を怒らない。

⏰:11/09/26 18:05 📱:F06B 🆔:.Lu5CvxE


#370 [匿名]
重たい空気に、私は何も言えなくなってしまった。三人の間に沈黙が走る。

今までに経験した事が無い沈黙だった。重すぎて、苦しくて、空気が薄くなっている気がした。

どれだけの間黙っていたのか分からないが、私には一時間、いや二時間くらいに感じた。


「幸子、座ってくれ」

一番最初に口を開いたのは父だった。私は素直に従った。父と母が座っているソファーに対面して、床に正座をした。

時計を見たら十分しか過ぎていない。

⏰:11/09/26 18:10 📱:F06B 🆔:.Lu5CvxE


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