悪魔と天使の暇潰し
最新 最初 🆕
#245 [匿名]
五日目



19時半を過ぎ、辺りが暗くなった。ターゲットに動きはない。

待ちきれない。何かが起こってから行動するのは性に合わない。

そんな事を言うと、あいつに馬鹿にされるから俺は一人で下の世界に行こうとした。

行こうとしたのだが、気が付いたら隣にはあいつがいた。

「昨日の状況で、君に一人で行かせるわけないだろう?」

まただ。何でもお見通しだって顔で俺を見ている。

⏰:11/08/17 16:44 📱:F06B 🆔:vUQ050R2


#246 [匿名]
「うっぜぇなー」

「君だって僕が一人でターゲットへ助言しに行ったら怒るだろう?」

「そりゃそうだろ!」

「なら僕も一緒だ」

くそ!
返す言葉が見付からず、さらに苛立ちが増す。
こいつと一緒に居たら俺はストレスで早死にするんじゃないかと不安になる。

死なないけど。

⏰:11/08/17 16:46 📱:F06B 🆔:vUQ050R2


#247 [匿名]
そんなどうでもいい事を考えていると、ターゲットの家のドアが開いた。

「うるせぇんだよ!」

中から、スーツを着たターゲットが出てきたかと思うと、またすぐに中へと入ってしまった。

声なんて聞こえるはずないのに。

「今日は仕事なのか?」

ターゲットが黒いスーツを着ているので、疑問に思ったのだろう。中に入りながらあいつが聞いた

⏰:11/08/17 16:52 📱:F06B 🆔:vUQ050R2


#248 [匿名]
「あぁ」

あぁ、だと?

「俺の依頼はどうなったんだよ?今日はその為に来たんだ」

ソファーに座る。

「今日は俺の最後の仕事だ」

なんだと?

「俺の依頼は受けねぇで辞める気かよ!」

これからは真面目に生きていきます。とでも言うつもりか?

ターゲットは応えない。黙ってどっかを見つめている。

⏰:11/08/17 16:58 📱:F06B 🆔:vUQ050R2


#249 [匿名]
「死ぬ気なの?」

俺の言葉に反応しないターゲットを見て、あいつがため息混じりに問い掛けた。

死ぬ気?

「俺もいろいろ考えた」

ターゲットの表情は相変わらず無表情で、何を考えたのか、それは辛かったのか楽だったのか、何も伝わって来ない。

ただ真っ直ぐに何かを決心し、貫こうとしているのは分かる。

⏰:11/08/17 17:04 📱:F06B 🆔:vUQ050R2


#250 [匿名]
「考えたんだよ。今まで俺がしてきた事を、最初から最後まで」

最後?

「話、詳しく聞きたいんだけど」

あいつが言う。

ターゲットが自害しようとしていると、あいつは多分そう思っている。

「お前が調べた内容、図星すぎてびっくりしたよ」

ターゲットがあいつに言った。

⏰:11/08/17 17:09 📱:F06B 🆔:vUQ050R2


#251 [匿名]
「俺は、自分の力じゃ何も出来ない奴の代わりに、やっつけたかったんだ。自分勝手に弱者を傷付ける糞野郎共を!」

ターゲットの顔は無表情から怒りに満ちた顔に変わった。

「許せなかったんだよ!動物は喋れねぇし、子供は力が無い。それなのに自分勝手に傷付けたり、殺したり!…黙ってらんなかった」

ターゲットは悔しそうに拳を握る。


「そう思った事が、この仕事を始める切っ掛けになったのか?」

あいつが聞いた。

「そうだ」

ターゲットが頷く。

⏰:11/08/18 17:58 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#252 [匿名]
ターゲットの怒りに満ちた顔が、涙目に変わる。

「俺が殺すと、依頼人は泣いて喜ぶんだよ。仇をうってくれてありがとう、って泣くんだよ…」


俺とあいつは、ターゲットの言葉にただ耳を傾ける事にした。


「それが嬉しくてさ。誰かに、ありがとう、って言われる事がこんなに嬉しい事なんだって、人を殺して初めて知った」

ターゲットの目から涙が流れた。

「それで決めたんだ。俺は心に傷を負った人を助けようって。癒してあげようって。それが、殺す事に繋がった」

⏰:11/08/18 18:00 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#253 [匿名]
ターゲットは本当にヒーローになりたかったんだ。大切なものを亡くし、傷付いた人を放っては置けなかったんだ。

不器用なターゲットは、こういう形で人を救う事しか出来なかった。


「人を殺せば、救われる人が居る。俺に出来る事は、それしかなかった。それで良いと思った!…いや、思い込もうとしてただけなのかもしれない」

右手で両目を隠し、涙が見えない様にしている。だけど歯を食いしばって震えているからすぐに分かる。

⏰:11/08/18 18:02 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#254 [匿名]
「だけど俺は間違ってたんだよな?人を殺すヒーローなんていない。…本当その通りだ」

涙を拭い真っ赤になった目と、目が合う。さっきよりもさらに真っ直ぐで純粋な目だった。

「今まで気が付かなかった自分が恥ずかしいよ。もっと早くお前らみたいな奴に出会ってたら、まともな人生歩めてたかな?」

ターゲットが窓のある方へと歩いた。咄嗟に俺は立ち上がり、あいつは一歩ターゲットに近付いた。

ガラッと窓が開かれた。
冷たい風が一気に部屋へと入り、俺達に触れながら通り抜ける。

⏰:11/08/18 18:04 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194