悪魔と天使の暇潰し
最新 最初 🆕
#295 [匿名]
「…大切な何かを、なくされた様ですね」

天使さんは少し黙ったあと、私の目を真っ直ぐ見てそう言った。

何故分かったんですか?
そう思ったのに、言葉が出ない。

「まもる、さん?」

何で、何で名前まで知っているの?

「泣かないでください」

「えっ」

また私泣いていたんだ。

⏰:11/08/25 19:54 📱:F06B 🆔:4gXk0VdA


#296 [匿名]
「僕にはそういう能力があって。あなたの辛さも、苦しみも分かります。…死にたいって思っている事も」

何だろう、この感情。
涙が止まらない。

「大丈夫です。あなたは大丈夫だから」

大丈夫という言葉が、とても力強く感じた。

「あなたは?」

「僕?えっと、人を救う仕事をしているんです」

私の勘は鋭かった。やっぱり彼は天使みたいに心の綺麗な人だ。

⏰:11/08/25 19:57 📱:F06B 🆔:4gXk0VdA


#297 [匿名]
そして私の涙が止まる頃、天使のような彼と別れ、私は会社に向かった。そしていつもと同じように仕事をする。


今日はいつも以上に忙しく、気が付くと夜の19時を過ぎていた。

もう帰ろう。
そう考えると、帰りたくない気持ちが出てくる。

このまま何も考えず、ただ目の前に山積みにされた仕事を、手際よくこなしているだけの日々だったら、楽なのに。

どうして現実は、こうも複雑なんだろう。

⏰:11/08/26 18:45 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#298 [匿名]
もっと単純で、人生がゲームと同じだったら、私は間違いなくリセットボタンを押す。

そうしたら、やり直せる。守が死なない様に調節出来る。
簡単に想像出来るのに、どうして戻れないんだろう。



暗闇の様な気持ちで歩いた帰り道、私は悪魔さんに会った。

「よぉ!」

馴れ馴れしい。
昨日ほんの少し話しただけなのに、旧友に会った様な態度に、私は臆する。

⏰:11/08/26 18:49 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#299 [匿名]
「やっぱお前元気ねぇな」

「…出ませんよ」

「何で?」

「何でもです」

言葉に出したら、私はきっと崩れ落ちる。立つ事が出来なくなって、目の前も見えなくなる。

「死んだんだろ?だーい好きだった男が」

言葉を失う。
どうして知っているの?朝の天使さんもそうだった。

この人達は何者なの?

⏰:11/08/26 18:51 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#300 [匿名]
「何で知ってるの?やめてよ!死んだって簡単に言葉にしないで!…って顔してんな?」

悪魔さんはふざけた態度で、私の心をえぐった。

私ってこんなに涙脆かったんだ。ポタポタと涙が垂れて、私の服を濡らす。


そういえば、今まで感動する映画やテレビを見て泣きそうになる時、いつも隣で私より先に守が泣いていたんだっけ。

その様子を見て、私は可笑しくなって笑っちゃうんだ。

⏰:11/08/26 18:52 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#301 [匿名]
だって鼻は真っ赤で鼻水も出てるし、そんな人が隣にいたら、感動なんてどっかに飛んで行っちゃう。

「泣きすぎ!」
って私が笑いながら言うと

「うるせぇ!」
って守は泣きながら言う。


涙脆い守が私は好きだった。こんなにも優しい心を持つ人が側にいると思うと、私は世界で一番幸せだって感じれたから。


守がいつも私より先に泣くから、私は自分が涙脆い事に今まで気が付かなかった。

⏰:11/08/26 18:55 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#302 [匿名]
「今日会ったんだよ。富永守っつう男に。お前の事心配してたぞー!早くその男に会いに行こうぜ?」

「何を言ってるんですか?」

ふざけているとしか思えなかった。守に会った?守は死んだの。会えるわけがない。

「嘘だと思うか?」

「当たり前じゃないですか!」

「じゃあ何で名前、知ってると思う?」

「…そ、そんなの調べればすぐに分かります!」

「ハハッ…断固として俺の言う事を信じねーんだな」

⏰:11/08/26 18:58 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#303 [匿名]
守は死んだ。
あの日から私は守に会えなくなった。声が聞きたくても、触れたくても、一切出来なくなった。

それなのにこの悪魔のような人間は、守に会ったなんて酷い事を言う。

「本当なら会わせて」

守に会いたい。

「だーかーらー!死んだら会えるっつーの!まだ神様への行列に並んだばっかだからな!」

「神様?行列?」

何言っているの悪魔さん。

「おう!だから死ななきゃ守っつう男には会えねぇ」

「…嘘ですよね?」

「はあ?」

⏰:11/08/26 18:59 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#304 [匿名]
「私が死んだら、あなたが何か得をするんですか?」

「得っつぅか、なんつーか…」

「守を使って、私を騙さないで下さい!」

守はもう何も言えない。それをいい事に、守を使うなんて酷い。

「ったく面倒くせぇ女だな!何でも信じやすいんじゃなかったのかよ!」


悪魔さんは目を細め、空を睨む様に見ながら言った。

「人を信じるのは素晴らしい事だけど、相手の素性を見極めろ!」

悪魔さんは私を指差し、怒った。それが守にそっくりで、私は何も言えなくなる。

⏰:11/08/26 19:01 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194