悪魔と天使の暇潰し
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#301 [匿名]
だって鼻は真っ赤で鼻水も出てるし、そんな人が隣にいたら、感動なんてどっかに飛んで行っちゃう。

「泣きすぎ!」
って私が笑いながら言うと

「うるせぇ!」
って守は泣きながら言う。


涙脆い守が私は好きだった。こんなにも優しい心を持つ人が側にいると思うと、私は世界で一番幸せだって感じれたから。


守がいつも私より先に泣くから、私は自分が涙脆い事に今まで気が付かなかった。

⏰:11/08/26 18:55 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#302 [匿名]
「今日会ったんだよ。富永守っつう男に。お前の事心配してたぞー!早くその男に会いに行こうぜ?」

「何を言ってるんですか?」

ふざけているとしか思えなかった。守に会った?守は死んだの。会えるわけがない。

「嘘だと思うか?」

「当たり前じゃないですか!」

「じゃあ何で名前、知ってると思う?」

「…そ、そんなの調べればすぐに分かります!」

「ハハッ…断固として俺の言う事を信じねーんだな」

⏰:11/08/26 18:58 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#303 [匿名]
守は死んだ。
あの日から私は守に会えなくなった。声が聞きたくても、触れたくても、一切出来なくなった。

それなのにこの悪魔のような人間は、守に会ったなんて酷い事を言う。

「本当なら会わせて」

守に会いたい。

「だーかーらー!死んだら会えるっつーの!まだ神様への行列に並んだばっかだからな!」

「神様?行列?」

何言っているの悪魔さん。

「おう!だから死ななきゃ守っつう男には会えねぇ」

「…嘘ですよね?」

「はあ?」

⏰:11/08/26 18:59 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#304 [匿名]
「私が死んだら、あなたが何か得をするんですか?」

「得っつぅか、なんつーか…」

「守を使って、私を騙さないで下さい!」

守はもう何も言えない。それをいい事に、守を使うなんて酷い。

「ったく面倒くせぇ女だな!何でも信じやすいんじゃなかったのかよ!」


悪魔さんは目を細め、空を睨む様に見ながら言った。

「人を信じるのは素晴らしい事だけど、相手の素性を見極めろ!」

悪魔さんは私を指差し、怒った。それが守にそっくりで、私は何も言えなくなる。

⏰:11/08/26 19:01 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#305 [匿名]
「お前過去、悪徳業者に騙されて五十万取られそうだったんだろ?守って奴が言ってたぞ?幸子にそう伝えて下さい!って。まぁ頼まれたのは俺じゃねぇんだけど、言っちゃった」

守しか知らない事。悪魔さんは、それを守から聞いてきたように喋る。

もしかしたら、嘘なんか一つも付いていないのかもしれない。


「守って奴の忠告無しでも、ちゃんと疑う心を持ち始めたんだな!…正しいよ。俺は聖者じゃないから」

そう言った悪魔さんの顔が、一瞬切なく見えた。悪魔にならなくてはならない!と必死に演じる天使のようで、私は悪魔さんの言葉を信じてみたくなる。

⏰:11/08/26 19:05 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#306 [匿名]
「俺がお前に協力してあげれんのは、あと三日間しかねーんだ。だからよーく考えろ」

悪魔さんは鋭い目付きで私を見た。

「もし、もし本当なら守は私にどうして欲しいと思っているんですかね?」

「そんなの、死んで同じ世界でまた一緒に居たいって、思ってるだろ?」


そう言い、悪魔さんは風の様に去って行った。

守も、私とまた一緒に居たいと思ってくれているのかな?

守は私に会いに来れないから、私が行くしかない。

⏰:11/08/26 19:06 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#307 [匿名]
三日目




私は守の会社から一番近くにある大学病院の前に居た。

ここまでどうやって来たのか何も覚えていない。
病院を前にして一気に脚が重くなり、一歩も前に出なくなった。

「さっちゃん!」

後ろから勢いよく声をかけられた。
振り向くと私の母が険しさと戸惑いの入り交じった表情で立っていた。

「お母さん…」

母の顔を見たとたん、どんどん視界がぼやけていった。

⏰:11/08/29 16:36 📱:F06B 🆔:Tm.8msg6


#308 [匿名]
私の目に涙が溜まっていくのを見て、母は何も気にせず私を抱き締めた。

懐かしい母の温もりを感じ、私の緊張の糸は簡単に切れてしまった。

「大丈夫?」


その母の問いにも答えられないくらい、私は泣いた。

声を上げて泣いた。

母はそんな私の背中を何度も何度も撫でてくれて、私が泣き止むまでずっとその場で、抱き締めてくれた。


守が車に跳ねられ、運ばれた病院の前。

⏰:11/08/29 16:37 📱:F06B 🆔:Tm.8msg6


#309 [匿名]
ハッとし、目が覚めた。
目覚まし時計が鳴っている。

昨日の夢の続きを見た。
守が運ばれた病院の前で、私は中に入れずにいた。母が居なかったら、私はずっと守に会いに行けなかったと思う。

警察からの電話があってから、私はすぐに母に電話をしたらしい。全く覚えていないけど、無意識に母を頼ってしまったみたいだ。


時計の針が八時を指していて一瞬寝坊かと焦ったが、すぐに今日は休みだと気付いた。

あんなに待ち遠しかった休みの日なのに、守の死があってから、大嫌いになった。

⏰:11/08/29 16:38 📱:F06B 🆔:Tm.8msg6


#310 [匿名]
守の事しか考えられなくなるから。


実家に行こうか、掃除をしながら悩み、終わる頃に行く事を決意した。

明日も会社は休みで予定は何も無いから泊まっちゃおう。私は二日間の予定をたてた。

実家は私の家から電車で一時間の距離。
戻ってくれば?という母の優しさに上手く甘えられず、週末になると実家に帰るという日々を送っている。

こんな私でも、これ以上心配はかけられないと思っていた。

⏰:11/08/29 16:40 📱:F06B 🆔:Tm.8msg6


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