悪魔と天使の暇潰し
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#312 [匿名]
電車に乗り、一時間かけて地元についた。

先週も来たから懐かしさは感じない。でもやっぱり安心感がある。駅を出てすぐ正面にある商店街は、小さな頃から何も変わらない。

その商店街を抜けて信号を右に曲がると実家が見えてくる。どこにでもある一軒家。

「あれ?」

ただ真っ直ぐ実家を目指していた私の隣には、昨日会った天使さんが並んで歩いていた。

「やっぱりあなたでしたか」

そう言われて天使さんの存在に気付く。

⏰:11/08/30 23:17 📱:F06B 🆔:2sQh1hF.


#313 [匿名]
「あ!昨日の方。どうしてここに?」

偶然の再会に、私は素直に驚いた。

「今日は仕事の関係で、初めてここに来まして」

「あ、そうなんですか」

「あなたはどうしてここに?」

「ここ私の地元で、今日は実家に帰って来たんです」

「そうなんですか!偶然ですね」

天使さんは爽やかに笑う。

⏰:11/08/30 23:18 📱:F06B 🆔:2sQh1hF.


#314 [匿名]
私は天使さんにつられて、無意識に微笑み頭だけ下げた。

「そんな事より、大丈夫ですか?昨日泣かれてたから、ずっと心配していたんです」


優しい言葉と口調に、私の心が穏やかになっていく。大丈夫です。という意味を込めて頭を下げた。


「…あ、そういえば、私に死ぬ事を進めてくる男性がいて…」

何故か私は、天使さんに悪魔さんの事を話さなければいけないと思った。

⏰:11/08/30 23:20 📱:F06B 🆔:2sQh1hF.


#315 [匿名]
「ああ、それなら気にしない方がいいですよ」

天使さんの笑顔は崩れない。
人に死を進める人なんて、遠回しだが殺人者と変わらない。それなのに、驚いたり不気味だと感じたりしていないみたいだ。

「その人、死んだ旦那の事を知っていて」

「どこかで聞いたんでしょう、きっと」

「旦那しか知らない事も知っていて」

「情報っていうのは流れますから」

⏰:11/08/30 23:22 📱:F06B 🆔:2sQh1hF.


#316 [匿名]
「その人の事、もしかして知っているんですか?」

私にはそう感じた。相手にしなければ何の問題も無いと分かっている様な。

「え…知らない、ですよ?今あなたに初めて聞いて知りました」

「そうですか」

とだけ返事をしたが、もやもやした物が心に残った。この天使さんがあの悪魔さんとぐるだったら、私は人を信じられなくなりそう。


「でも本当に、気にしない方がいいですよ。くだらない悪戯だと思いますから」

天使さんが微笑む。

⏰:11/08/30 23:23 📱:F06B 🆔:2sQh1hF.


#317 [匿名]
「ありがとうございます」

私はお礼をした。すると天使さんは少し堅い表情になった。

「…やっぱり、死にたいと思いますか?」

「死にたいか?」

「はい」


天使さんの問いに私は答えられなかった。たとえ死にたいと言っても、天使さんはそれを許してはくれないだろう。

きっと優しい言葉で、私の暗い気持ちをうやむやにしてくれる。
だけど、いつか私は気が付く。どうしてあの時死ななかったんだろう、と。

⏰:11/08/30 23:25 📱:F06B 🆔:2sQh1hF.


#318 [匿名]
そんな事を考えてしまうなんて、本気で私は、死にたいと思っているのかもしれない。


今は何の為に生きているのか分からない。

守が居た頃は、雨が止むだけで嬉しかった。朝食の目玉焼きが綺麗に焼けるだけで、今日一日絶対良い事が起こる!そう思えた。

守が側で笑っているだけで無敵だって思えたし、優しく、そして強くなる事が出来た。

⏰:11/08/30 23:30 📱:F06B 🆔:2sQh1hF.


#319 [匿名]
それなのに今は――


「守さんの声、僕が変わりに聞いてきます!」

黙って下を向いてしまった私に、天使さんは力強く言った。

「聞く?」

「はい!それからでも遅くないと思いますから、だから、その…死ぬなんて今は考えないでください!…明後日!明後日に伝えに来ますから!」

「はい」

天使さんの必死さに圧倒されてしまった。

⏰:11/08/30 23:32 📱:F06B 🆔:2sQh1hF.


#320 [匿名]
「またすぐ意味わかんねぇ話信じて!ちょっと考えれば怪しいって思うだろうが、普通!」
そう怒鳴る守が頭に浮かぶ。

そう言われる度にシュンとして、そうだよね。と落ち込むのが私だったけれど、何故か今回は、でも!と反論出来る気がする。

私は信じる準備をしていた。
守の言葉を、私はすぐに守だと確信出来る。
守じゃない他の誰かの言葉なら、すぐに見抜く自信がある。

私は、守をただ信じて生きてきた。

⏰:11/08/30 23:34 📱:F06B 🆔:2sQh1hF.


#321 [匿名]
気が付くと、天使さんは居なくなっていた。きっと仕事に向かったのだろう。

そして天使さんの変わりに、悪魔さんが居た。

「あいつに騙されんなー」

そう言ってきた。

「やっぱ、知り合いなんですか?」

「…いや、知らねぇけど」

「そうですか」

「おう。ただ俺はあいつが嫌いだな!」

「何でですか?」

⏰:11/09/01 21:31 📱:F06B 🆔:.omrXM3k


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