悪魔と天使の暇潰し
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#382 [匿名]
父はソファーに座り新聞を読んでいた。
「おう、おはよう。何か手紙が届いてたぞ」
「おはよう。手紙?」
私は父の言葉を聞きながらテーブルに座り、母の作ってくれた朝食を食べようとしていた。
母と同様、父もいつもと変わらない態度で接してくれた。
きっと二人は私が寝ている間にいろいろと話したんだろう。
「ほら」
父が私の所まで手紙を持ってきてくれた。
:11/10/04 00:23 :F06B :qunnOhr.
#383 [匿名]
それは<幸子へ>とだけ書かれた真っ白な封筒だった。その他には何も書いていなく、差出人は不明。
「ありがとう」
私はその手紙を受け取り、朝食に取りかかった。甘い卵焼きとワカメの味噌汁。納豆にはネギが入っていた。
「今日は何時に帰るの?」
「朝食食べて支度したら帰る」
「そう。気をつけて帰るのよ?着いたら連絡してね」
「うん、分かってるよ」
:11/10/04 00:24 :F06B :qunnOhr.
#384 [匿名]
二人につられて、私はすぐにいつもの私になれた。笑えたし、冗談も言えた。
もうこれ以上、二人に心配をかけたくない。二人の悲しい涙なんて二度と見たくない。
そう考えながらふと手紙を見た。よく見れば見るほどその<幸子へ>という文字に、見覚えがある。
ただ、癖を隠そうと出来るだけ丁寧に書いた様な気配がして、実際のその人の文字が分からない。
どこで見たのだろう?
誰だか分からない人からの手紙を両親に見られるのは気が引けたので、部屋に戻ってから見る事にした。
:11/10/04 00:25 :F06B :qunnOhr.
#385 [匿名]
<幸子へ
久しぶりだな。元気か?>
封筒を開け、中に入っている手紙を読んだ。書き始めを見た途端、すぐに記憶が甦った。
丸いようなかくばっている独特な文字は、昔良く見た文字だった。懐かしく、一気に暖かい気持ちにさせてくれる。
目が熱くなっていく。歯に力が入って、息が上手く吸えなくなった。
その途端、涙が大雨の様に溢れた。
:11/10/04 22:31 :F06B :qunnOhr.
#386 [匿名]
その手紙は、私の事をよく理解していないと書けない内容だった。
いつも注意されていた事が、文章となっていた。泣きながら笑えたりもした。
涙が視界をぼやけさせ、何度も何度も涙を拭いながら、ゆっくりと丁寧に読んでいく。
読み終わり、私はカーテンを開け空を見上げた。
今なら笑える。
毎日笑ってみせる。
笑っていれば幸せになれるなら、あなたがそう言うなら、私はずっと笑っていようと思う。
:11/10/04 22:33 :F06B :qunnOhr.
#387 [匿名]
それから私はすぐに支度を済ませて家を出た。
父と母は笑顔で送り出してくれた。だけどその笑顔の中に、不安の色が見えた。
「また来週来るから。夕飯、ハンバーグがいいな」
おどける私を見た二人は、さっきとは違う穏やかな笑顔になった。
素直じゃない私は、これ以上の言葉は言えなかった。でもきっと十分だったと思う。
そして私は天使さんと悪魔さんを探す事にした。二人に会って話さなければならない事がある。
:11/10/04 22:37 :F06B :qunnOhr.
#388 [匿名]
二人が何処にいるのか分からないくせに、焦りは無かった。何故か、絶対に会える自信があった。
いつか会えるという曖昧な考えではなく、今日絶対会うという、確実な考えだ。
何の根拠も無いのに。
そしてすぐに私は、その二人に会う事が出来た。
偶然会えたのに、驚きすら無かった。後から考えてみると、不思議な感覚だ。
私が通る公園に天使さんと悪魔さんはいた。
:11/10/05 15:42 :F06B :4riuNcnw
#389 [匿名]
「お手紙読んでいただけました?」
天使さんが言う。
「はい、ありがとうございました」
「手紙?なんだそれ。お前が書いたのか?」
「僕じゃなくて、守さん」
「いつ書かせたんだよ!てめぇ卑怯だなー」
「卑怯の使い方間違ってるよ。僕は真剣に、二人の為を思ってやった事だ」
二人は知り合いじゃないはずなのに、仲良く喧嘩をしている。もう、そんな事はどうでもいいんだけど。
:11/10/05 15:45 :F06B :4riuNcnw
#390 [匿名]
「んな事はどーでもいいんだ!お前どうすんだ?今日までだぞ」
悪魔さんが私に言う。
「はい。お二人に伝えたい事があって。……私は守が大好きです。これからもずっと守を愛し続けます」
二人は無言で私の話を聞いてくれている。
「……守に会いたいです。守とずっと一緒にいたいです」
これが私の答えだった。
悪魔さんが笑う。
「じゃあ俺の手伝いを受けんだな?」
「………」
天使さんは真剣な顔で私を見ている。
:11/10/05 15:47 :F06B :4riuNcnw
#391 [匿名]
「はい。そう思っていました。…昨日の夕方までは」
私が答えると悪魔さんの顔がひきつる。
「…決めました。私は生きて、毎日守の為に笑って、守が見守っているという言葉を信じて、ちゃんと日々を過ごします」
私が言い終わると、天使さんは笑ってくれた。
「……んだよ、それ」
悪魔さんがまた子供のようにふてくされた顔をしている。私はまた可笑しくなって笑ってしまった。
「てめぇ!この間笑うなっつったよなー!なんも面白くねぇっつんだよ」
ムキになる悪魔さんは可愛い。
:11/10/05 15:48 :F06B :4riuNcnw
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