悪魔と天使の暇潰し
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#385 [匿名]
<幸子へ
久しぶりだな。元気か?>
封筒を開け、中に入っている手紙を読んだ。書き始めを見た途端、すぐに記憶が甦った。
丸いようなかくばっている独特な文字は、昔良く見た文字だった。懐かしく、一気に暖かい気持ちにさせてくれる。
目が熱くなっていく。歯に力が入って、息が上手く吸えなくなった。
その途端、涙が大雨の様に溢れた。
:11/10/04 22:31 :F06B :qunnOhr.
#386 [匿名]
その手紙は、私の事をよく理解していないと書けない内容だった。
いつも注意されていた事が、文章となっていた。泣きながら笑えたりもした。
涙が視界をぼやけさせ、何度も何度も涙を拭いながら、ゆっくりと丁寧に読んでいく。
読み終わり、私はカーテンを開け空を見上げた。
今なら笑える。
毎日笑ってみせる。
笑っていれば幸せになれるなら、あなたがそう言うなら、私はずっと笑っていようと思う。
:11/10/04 22:33 :F06B :qunnOhr.
#387 [匿名]
それから私はすぐに支度を済ませて家を出た。
父と母は笑顔で送り出してくれた。だけどその笑顔の中に、不安の色が見えた。
「また来週来るから。夕飯、ハンバーグがいいな」
おどける私を見た二人は、さっきとは違う穏やかな笑顔になった。
素直じゃない私は、これ以上の言葉は言えなかった。でもきっと十分だったと思う。
そして私は天使さんと悪魔さんを探す事にした。二人に会って話さなければならない事がある。
:11/10/04 22:37 :F06B :qunnOhr.
#388 [匿名]
二人が何処にいるのか分からないくせに、焦りは無かった。何故か、絶対に会える自信があった。
いつか会えるという曖昧な考えではなく、今日絶対会うという、確実な考えだ。
何の根拠も無いのに。
そしてすぐに私は、その二人に会う事が出来た。
偶然会えたのに、驚きすら無かった。後から考えてみると、不思議な感覚だ。
私が通る公園に天使さんと悪魔さんはいた。
:11/10/05 15:42 :F06B :4riuNcnw
#389 [匿名]
「お手紙読んでいただけました?」
天使さんが言う。
「はい、ありがとうございました」
「手紙?なんだそれ。お前が書いたのか?」
「僕じゃなくて、守さん」
「いつ書かせたんだよ!てめぇ卑怯だなー」
「卑怯の使い方間違ってるよ。僕は真剣に、二人の為を思ってやった事だ」
二人は知り合いじゃないはずなのに、仲良く喧嘩をしている。もう、そんな事はどうでもいいんだけど。
:11/10/05 15:45 :F06B :4riuNcnw
#390 [匿名]
「んな事はどーでもいいんだ!お前どうすんだ?今日までだぞ」
悪魔さんが私に言う。
「はい。お二人に伝えたい事があって。……私は守が大好きです。これからもずっと守を愛し続けます」
二人は無言で私の話を聞いてくれている。
「……守に会いたいです。守とずっと一緒にいたいです」
これが私の答えだった。
悪魔さんが笑う。
「じゃあ俺の手伝いを受けんだな?」
「………」
天使さんは真剣な顔で私を見ている。
:11/10/05 15:47 :F06B :4riuNcnw
#391 [匿名]
「はい。そう思っていました。…昨日の夕方までは」
私が答えると悪魔さんの顔がひきつる。
「…決めました。私は生きて、毎日守の為に笑って、守が見守っているという言葉を信じて、ちゃんと日々を過ごします」
私が言い終わると、天使さんは笑ってくれた。
「……んだよ、それ」
悪魔さんがまた子供のようにふてくされた顔をしている。私はまた可笑しくなって笑ってしまった。
「てめぇ!この間笑うなっつったよなー!なんも面白くねぇっつんだよ」
ムキになる悪魔さんは可愛い。
:11/10/05 15:48 :F06B :4riuNcnw
#392 [匿名]
「お二人に会ってからの数日間は、なんだか不思議な気分でした。お二人が裏でいろいろとしてくれたお陰で、大切な物が沢山見えました」
悪魔さんが両親に話してくれたり、天使さんが手紙を届けてくれたから、今私は生きようと思えた。
笑おうと誓った。
「本当にありがとうございました」
「僕らのお陰なんかじゃないですよ。きっと僕らがいなくても幸子さんは気付けたはずだ。あんなに素敵な友人だっている」
「…え?…里美の事も?」
:11/10/05 15:50 :F06B :4riuNcnw
#393 [匿名]
天使さんが優しく微笑む。
「はい。彼女に幸子さんの事を話したら凄く心配していて、力になりたい!と言ってくれたんですよ」
そうだったんだ。だから里美は最後にあんな事を言ったんだ。
「そっか」
嬉しくて、死ななくて良かったと思った。
生きていればいろんな物が見えて来る。今まで私は見ないようにしていたのかもしれない。
「次死にてぇと思っても、絶対手伝ってやんねぇからな!」
「もう、思いませんよ!」
:11/10/05 15:52 :F06B :4riuNcnw
#394 [匿名]
手紙...
「幸子へ
久しぶりだな。元気か?
こんな風に手紙を書くのは初めてかもしれない。
何だか恥ずかしいけど、幸子に伝えたい事が山ほどあるんだ。もう直接言う事は出来ないから、手紙にします。あの天使に感謝しよう。
まず幸子に謝りたい。おじいちゃんとおばあちゃんになっても一緒に居ようって約束、守れなくてごめん。
突然居なくなってごめん。悔しいし、やりきれないし、幸子の事が心配で仕方がない。
幸子が俺の事を考えて、悩んで泣いて苦しんでいる事を聞いて、俺まで辛くなった。抱き締めてやりたくなった。
:11/10/05 15:55 :F06B :4riuNcnw
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