ぼくらのみかた
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#178 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode9■
『勝利の女神』



木下先生との勝負を明日に控え、俺はニヤけながら授業を受けていた。


でもそのニヤけ顔にストップをかけたのは、帰りの号令の時に先生が言った衝撃的な言葉だった。


『みんな落ち着いて聞いて欲しい。さっき久保の両親から電話があって、久保が…自殺未遂をしたと…』

それを聞いた皆は一瞬だけ静まり、そしてすぐに大騒ぎした。


…久保が自殺未遂?


俺は確認するようにそう思った次の瞬間、廊下まで普通に聞こえる悲鳴のような大声を張り上げた。

⏰:11/08/14 00:34 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#179 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もちろんそれから教室内は大混乱の渦。


担任が『静かに!』と叫ぶように連呼しても、当然だけどこればっかりには一向に収まる気配はなかった。


騒ぎを聞きつけた他のクラスの奴らも、野次馬のように俺達の教室内を廊下から見物していた。


…無理もない。


これで、木下先生の娘である女子中学生と知り合い交際し、謹慎処分を受けたのが久保である事がほぼ知れ渡る事になるだろう。

⏰:11/08/14 00:46 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#180 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保がそんな事をするなんて…。

それもこれも全て木下先生、アンタのせいだ。


教師が生徒を自殺未遂に追い込んだなんて知られたら大問題になる。


例の女子中学生が木下先生の娘だって事はまだ知られていないみたいだ。


その事実を知っているのは俺の知る限りじゃあ、俺と担任と久保と吉田の四人。


吉田の性格上、この騒ぎを知ったら嬉しそうにその事実をぶちまけるに違いないだろう。


そうすれば久保の自殺未遂は木下先生が原因である事が自然と立証される。

⏰:11/08/14 01:00 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#181 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それで先生に処分が下されれば嬉しい所だ。


時限爆弾がいつ爆発するか…少し楽しみになってきた。



すでに下校時間が過ぎた。


だが教室内にはまだほとんどの人が残っていて久保の話題で持ちきり状態。


俺は、しどろもどろになっている担任の元へ向かった。


『あの、久保の事…心配なので様子見に行ってきてもいいですか?』


『あ、ああ…。今は3条通りにある病院にいるから行ってあげてくれ…』

⏰:11/08/14 01:15 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#182 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺がすぐに向かおうと廊下へ出ようとすると…


『高見くん…』

後ろからした声に振り返ると、雪乃ちゃんが不安そうな表情で立っていた。


『私も行っていいかな』


『うん、行こう』

そう言った時、俺は反射的に彼女の手をひいて走り出していた。


とにかく久保の事が心配で仕方がなかった。

⏰:11/08/14 01:27 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#183 [輪廻◆j6ceQ96kak]
学校から10分ほど走った所で、久保が搬送された病院に到着した。


受付で病室の番号を聞き、2階の203号室へと急ぐ。


『久保太一 様』

と名前の書かれたプレートがついた部屋をコンコンとノックすると、しばらくしてから母親が出てきた。


『あの、久保と同じクラスの高見といいます』


『私も久保くんと同じクラスの松下雪乃です』

俺達が名前を言うと久保の母親は無言で、部屋に入るよう誘導した。

⏰:11/08/14 02:07 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#184 [輪廻◆j6ceQ96kak]
病室の奥に向かうとベッドに仰向けの状態で、頭に包帯が巻かれた久保の姿があった。


『久保くん…』

雪乃ちゃんがものすごい心配そうに呟く。


少しの沈黙の後、ずっと無言だった久保の母親がやっと口を開いた。


『来てくれてありがとう。太一、さっきまで目は覚めてたのよ。でも…』


…でも?

俺は母親のその言葉がとてつもなくひっかかった。


だが、それ以上は下を向いたままで何も言う事はなく時間だけが静かに過ぎていった…。

⏰:11/08/14 02:18 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#185 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保…


目を開けてくれよ…


どうしちゃったんだ…?


寝たフリでもしてるのかよ?


お前はそんなキャラじゃないだろ?


心の中で久保に問いかけるように言い続けた―


『太一!』

俺と雪乃ちゃんがずっと下を向いていた時、母親の突然出した大きな声でハッとしてから久保の方を見た。

⏰:11/08/14 02:28 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#186 [輪廻◆j6ceQ96kak]
奴は…うっすらとだけど目を開けていた。


視線は天井を見ていたが、やがて俺達に気がついたのか視線をゆっくりと天井から俺、そして雪乃ちゃんへと順に追うように見てきた。


『久保!』


『久保くん!』

俺達は座っていた椅子から同時に立ち上がった。


『久保! よかったぁ…』

こういう場合は奴の手を両手で握りしめながら言うべきなのだろうけど、どうも照れくさくてできなかった。

⏰:11/08/14 02:39 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#187 [輪廻◆j6ceQ96kak]
とりあえず一安心だ。


さっき母親が『でも…』と言っていたから、まさかの最悪な展開になるかと思っていた。


目を覚めたのはいいけど、久保は視線を再び天井に戻し一言も喋りかけてはくれなかったので俺達は母親に頭を下げてから帰った。


明日くらいになれば口を利けるようになるだろう。


部屋を去る際に久保に『また明日来るから』と伝えて帰宅した。

⏰:11/08/14 14:39 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


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