ぼくらのみかた
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#1 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今あなたの目の前に立っている人物は味方と判断しますか?


それとも―


敵か味方か、判断できるのは自分しかいないのです―

――――――――――

†horror†を書いている輪廻です。
同時進行で更新していきます。

⏰:11/08/08 18:53 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#2 [輪廻◆j6ceQ96kak]
チャイムで目が覚めた。


教室内がざわめき始める。


どうやら退屈な授業が終わったようだ。


ひとときの夢を見ていたのにチャイムで現実へ引き戻されるとは俺もまだまだだな。


俺は高見 順一(たかみ じゅんいち)

高一の16才。


恋愛も勉強も興味なし。

この高校も偏差値が低かったからたまたま受かった。


恋愛に興味ない、消極的=草食系男子と世間は言う。


俺がその部類だろう。

⏰:11/08/08 19:06 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#3 [輪廻◆j6ceQ96kak]
草食系男子の反対である肉食系男子という言葉も存在するらしい。


最近、教室内では女子共がこれらの言葉をよく連発する。


『恋人にするなら草食系?肉食系?』

男を動物みたいに言わないでくれ、と言いたい所だが人間も立派な動物である事を理解している為、男子共は女子共に反発できない。


俺の学校では女子の方が圧倒的に多く、男子は不利になる状況もしばしあったりする。

⏰:11/08/08 19:15 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#4 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その為、この学校では女子が優勢。


男子は気が弱そうな奴らばかり。


逆に女子は気が強く荒っぽいのが多い。


だからこの学校で結ばれたカップルなんて見た事がない。


ほとんどの女子は別の学校の男子と付き合ったり、前略プロフィールと呼ばれるサイトで知り合い結ばれたという情報が多数。


そこまでして恋人が欲しいのか、と俺はよく疑問に思う。

⏰:11/08/08 19:21 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#5 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『恋人は自分を支えてくれるパートナー』

ある女子がそう言っていた。


ますます理解できない。

支えてくれるパートナーなら友達だけで十分じゃないか?


前略プロフィールと呼ばれるサイトとかで恋人同士になったとしてもさんざん遊ばれてすぐ捨てられたりするだろ、というのが俺の考えだ。


女子には、アンタの考えが理解できないと言われてしまったが。

⏰:11/08/08 19:26 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#6 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は運命的な出会いしか信じない。


例えば食パンを口に入れながら家を出る。


曲がり角で一人の男とぶつかる。


『大丈夫ですか?』

と手を差し伸べる男。


少女漫画などでよく見られるシチュエーションだ。


もっとも、そんな都合よい展開が何度もある訳ではない事は知っている。


でも俺はそういうのだけは嫌いじゃない。

⏰:11/08/08 19:30 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#7 [輪廻◆j6ceQ96kak]
手を差し伸べてきた男が、いわゆる草食系男子と呼ばれる奴だったら?


何の展開も期待できないだろう。


肉食系男子だとしても、見た目がチャラければ肉食系女子じゃない限りすぐに去っていくだろう。


草食系と肉食系の間は存在しないのだろうか?


と日々どうでもいい事を考えている次第だ。

⏰:11/08/08 19:36 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#8 [輪廻◆j6ceQ96kak]
休み時間だ。


いつものように大きな欠伸をしていると、友達の一人が俺の所にやってきた。


『よ。相変わらずのんびりした顔してんな』

お前に言われたくないと思った。

その言葉をそっくりそのままお返したい。


こいつも草食系だと俺は思っている。


俺と同じで彼女ができた事もないし、そういう意味では俺と気が合うのかもしれない。


少し悲しいが。

⏰:11/08/08 19:39 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#9 [輪廻◆j6ceQ96kak]
でも、俺を裏切るような言葉が奴から飛び出した。


『高見…お前だけには言っとくか。俺さ、彼女できたんだよね』


…は?

なんだこのいきなりすぎる展開は。


俺は苦笑いした。


『冗談はやめろよ』

思わずそう言ったけど、考えてみればこいつは嘘や冗談を言うような奴ではなかった。

⏰:11/08/08 19:43 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#10 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『いやマジで。前略プロフィールってあるだろ?』

…出た。


こいつは草食系と見せかけて、実は隠れた肉食系なのか?


俺は奴の顔をガン見した。


『な、なんだよ。信じてないならメール見てみるか?』

見たくはないけど、真意を知る為には見るを得なかった。


奴から見せられたメールには、その相手であろう女子からのアピール文章が書かれてあった。

⏰:11/08/08 19:47 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#11 [輪廻◆j6ceQ96kak]
なんだ。


こいつが女子を猛アピールしてたと思っていたらまさかの逆だった。


続いて別のメールを拝見。


『学校近いね あたしも彼氏いないので付き合っちゃいます?』

見知らぬ相手に単刀直入に付き合っちゃう?

…とかどうなんだろう。


ほとんどの男はそう言われて嬉しいだろうけど、俺は別だ。

⏰:11/08/08 19:51 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#12 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それは草食系だからとか、肉食系だからとかいう問題じゃない。


それ以前の問題だ。


突然メールで付き合おうなんて言われても、まずその時点で疑うべきだ。


おそらく奴とその女子はまだ直接会った事はない。


前略プロフィールとやらで知り合って何回かメールをやりとりした程度だろうと予測できる。

⏰:11/08/08 20:01 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#13 [輪廻◆j6ceQ96kak]
たかが数回メールをやりとりしただけで、本当にお互いがわかり合えるのだろうか?


いや無理だろう。


メールの文章で人を作り変えるなんて事はたやすい。


最悪な話…女になりすました男、もしくは逆なんてものも存在するかもしれない。


それでさんざん男を釣ってそろそろか、という時に音信不通にする。


そしてそいつは携帯電話片手にあざ笑っている訳だ。

⏰:11/08/08 20:08 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#14 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『なあ、お前それでOKしたの?』

一応聞いてみたが、さっき彼女ができたと言ってたから聞くまでもなかったか。


『もち。まさか俺に彼女ができるなんて思ってもみなかったよ!』

やけに自慢気に話しているが、その場合到底いつか両親に紹介する時がくる。


その時、サイトでたまたま知り合いましたなんて言ったらお互いの両親はなんて思うだろう。

⏰:11/08/08 21:29 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#15 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『その子、何歳なの?』

気になるのは年だ。

同い年くらいの場合、その子の親は心配するぞきっと。


父親としては、可愛い娘をそう簡単には渡したくないだろうし。


もっとも、こいつとその子の父親の気が合えば話は別かもしれないが。


だがこいつは俺の知ってる限りじゃ目上の人には人見知りするタイプだと思う。

⏰:11/08/08 21:34 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#16 [輪廻◆j6ceQ96kak]
よって頑固な父親だった場合は、あたふたするのは確実。


すると自動的に別れさせられるという展開は俺にも予想できている。


『名前は茜ちゃんって言って、俺の二つ下』

…は?


ちょっと待て。

二つ下という事は、中学二年生?


何考えてるんだこいつは。


年下がタイプなんて聞いた事もない。


これにはさすがに呆れた俺は柄にもなく忠告した。

⏰:11/08/08 21:39 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#17 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『お前、それやめた方がいいんじゃない?』

しかし奴は聞く耳を持たなかった。

それどころか反発してきた。


『俺の勝手じゃん。お前にどうこう言われる筋合いないわ』

これには俺の堪忍袋の尾が切れた。


頭の血管がプチンと切れたのと同時に


『何かあっても知らねーからな!』

俺の出した大声に教室の皆の視線が集中した。

⏰:11/08/08 21:45 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#18 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見…なした?』


『大きな声出さないでよ!』


『うるさいんだけど!』

ほとんどの女子から罵声を浴びせられた俺は恥ずかしくなって教室を飛び出した。


穴があったら入りたいとはまさにこの事だろう。


気がついたらトイレの個室に入っていた。


休み時間終了まではあと五分くらいだろうか。


教室に戻りたくなくなった。

⏰:11/08/08 21:49 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#19 [輪廻◆j6ceQ96kak]
高校は義務教育ではない。


このまま次の授業をサボる事を決めた。



…しまった。


ポケットをまさぐるが、あれが出てこない。


そう、携帯電話が。

机の上に置きっぱなしだ。


取りに戻らないと誰かに見られてしまう。


別にやましい事はないのだが、携帯電話はなぜかいつも手元にないと落ち着かない。

⏰:11/08/08 21:54 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#20 [輪廻◆j6ceQ96kak]
せめて電源を切っておけばよかったと後悔しても遅かった。


俺はしぶしぶ教室に戻る事にした。


携帯電話を見られるくらいなら、女子からの罵声と冷ややかな視線の方がマシかもしれない。


戻ろうかと思った矢先に次の授業の始まりのチャイムが鳴り響いた。


俺は血相を変えて早足で教室へ入った。


あいにく先生はまだきていなかった。

⏰:11/08/08 22:00 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#21 [輪廻◆j6ceQ96kak]
席に着くと同時に隣の席の女が俺を見てきた。


『なんだよ?』

静まり返った教室内で俺は小声で聞く。


女は小さく笑って何も答えずに前を向いた。


首を傾げていると数学の先生がやってきた。


一見すると頑固そうな親父だが、意外にも子供好きで優しかったりする。


見た目とは違って声も地味に高い。


その外見から立派な亭主関白っぽいが、家では実際妻の方が強そうだ。


妻の言う事をなんでもハイハイ聞いているようなイメージ。

⏰:11/08/08 22:10 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#22 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『45ページ開いてぇ』

先生が背を向け黒板に問題を書き始める。


その一瞬を見計らって携帯電話をいじる奴が多い。


そして先生が前を向くと、とっさに隠す。


なんという早技だろうかと感心している俺がいる。


俺はどこででも寝れるタイプらしく、欠伸が一回でも出るとすぐにパタリと寝てしまう事が多い。


それが俺の長所でもあり短所でもあった。

⏰:11/08/08 22:16 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#23 [輪廻◆j6ceQ96kak]
前の授業で寝たせいか、眠気はなかった。


だからといって授業も真面目に受けようとも思わない。


つくづく駄目人間なのだ。


だから積極性に欠けてるとか言われるのかもしれない。


そうこう考えてる内に授業は着々と進み、終わりのチャイムが鳴った。


『ねえ』

机に突っ伏している俺に話しかけてきたのは、クラスでも気が強い女子のトップ5に入っている野村可奈恵。

⏰:11/08/08 22:39 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#24 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そんな果てしなくどうでもランキングを誰が作ったのやら。


『彼女できたんだって?』

ニヤニヤしながら膝で俺の肩をツンツンして言った。


『は?』

俺は状況が全く掴めないでいた。


『久保から聞いたよ』

久保…俺が何をしたと言うんだ。


そんな身も蓋もない話をでっち上げやがって。


もしかしてさっきの恨みなのか?


俺はただ、友達として心配だからこそ忠告してやっただけなのに。

⏰:11/08/08 22:47 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#25 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『それ嘘だから』

とりあえず軽く言い放った。


でも野村はまだニヤニヤしている。


『隠さなくったっていいじゃん』

いや隠す以前に本当に彼女なんていませんから、とツッコミを入れたくなった。


さて、こうなった場合は非常に厄介だ。

⏰:11/08/08 22:54 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#26 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保を問い詰めるのは後回しだ。


今ここで問い詰めれば、奴の思うツボだ。


だからといって否定しても、恋愛話に目がない女子に通用するとも思えない。


言い訳した所でますます話が大きくなるだけだ。


ここは肯定も否定もせずにおとなしくしてるのがいいだろう。

⏰:11/08/08 23:05 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#27 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『どこの子?』


『何歳?』


『スミにおけないな!』

そう言って俺の周りに人が段々と群がってきた。


俺は終始無言で携帯電話をピコピコいじりながら質問を無視し続けた。


ふと久保の席を見ると、奴と目が合った。


その表情は…笑っていた。


まるで、ざまあみろと言わんばかりの嫌な笑み。

⏰:11/08/08 23:12 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#28 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>24 訂正

膝 ×
肘 〇
――――――――――


その時は目を反らすしか選択肢はなかった。


質問攻めは続く。


『ねえ何歳さ』


『高見くんって意外と肉食系…』


まずい。

このままでは違ったイメージを植え付けられてしまう。


何か打開策はないだろうか。

⏰:11/08/08 23:24 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#29 [輪廻◆j6ceQ96kak]
威張って言うほどの事ではないが、俺は友達がこれといって多い訳ではなく、いるとしてもクラスが違うのでフォローしてくれる人はこのクラスにはまずいないだろう。


友達だと思ってた奴にも、こうもあっさりとやられたわけで。


奴は嘘を言うような性格ではないと思っていたが、今日の事でその考えは撤回する。


『今度紹介してね』


『おめでとう!』

中にはいいコメントをしてくれる奴もいた。


しかし何度も言うが、彼女はできていない。

⏰:11/08/08 23:54 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#30 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ピンチはチャンスという言葉がある。


この場合、それを利用してみてはどうだろう。


つまり、あまり気は進まないが彼女ができたという事にしておく。


変に反論すると、更にややこしくなる。


奴は俺が必死に反論している情けない姿をどうしても見たいはずだ。


ここは冷静に…。


流れに身を任せてみようではないか。

⏰:11/08/09 00:02 📱:T004 🆔:2k340WRo


#31 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『どこで知り合ったの?』

女子が出したこの質問に俺は初めて答えた。


『前略プロフィール…』

そうポツリと言うと、拍手喝采が巻き起こった。


その中でどさくさに紛れて久保の方をチラ見した。


奴は…少し悔しそうな表情をしていた。


『勝った…』

そう思った。


俺の考えが正しければ、この後久保の奴は彼女ができたのは実は俺だった…なんて弁解するだろう。


それで俺のイメージは元に戻る。

⏰:11/08/09 00:18 📱:T004 🆔:2k340WRo


#32 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺にとっても奴にとっても得する話だ。俺の考えに狂いはない。


しかし俺が甘かった。


奴は…俺が不利になる状況を作り出す、まるで悪魔のような奴だったんだ―



〜prologue END〜

⏰:11/08/09 00:22 📱:T004 🆔:2k340WRo


#33 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode1■
『昨日の味方は明日の敵』



久保の奴が俺をハメてから一週間が過ぎた。


あれから奴とは口を聞いてない。


目も合わせない。


例の彼女とはどうなっているのか気になってはいたが、意地でも聞く事はなかった。


『よお、彼女とはどう?』

今まであまり話した事がなかった奴が、俺が彼女ができたとなってから、まるで手の平を返したように話しかけてくるようになった。

⏰:11/08/09 00:33 📱:T004 🆔:2k340WRo


#34 [輪廻◆j6ceQ96kak]
こういう時だけ都合がいいなと思いつつも適当に答えた。


『普通かな』


『なんだよそれ。キスとかしてないの?』

…キス?

俺にとって縁がない言葉が出たものだ。


『してないよ。まだ会った事ないし』


『あ、そっか。前略で知り合ったんだもんな。でさ、ぶっちゃけどっちから告ったの?』

よくもまあ次から次へと質問が浮かんでくるものだ。

⏰:11/08/09 00:39 📱:T004 🆔:2k340WRo


#35 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ん〜覚えてないわ』


『なんだよつれないな…。あ、そうそう、違うクラスでも噂になってるよ』

んな大げさな。


草食系男子の俺に彼女ができたなんて確かに驚きだろうけど。


奴も俺が有名になりつつあるからさぞ悔しいだろうし、これはこれでよしとしておこう。


元はと言えばあいつ自身がまいた種だからな。


今更謝られても許す気はさらさらない。

⏰:11/08/09 01:03 📱:T004 🆔:2k340WRo


#36 [輪廻◆j6ceQ96kak]
まさに昨日の味方は明日の敵といった所だろう。


それから何事もなく平和な毎日が続いていった。


二年になったらクラス替えがあるので早く進級して奴と別のクラスになりたいと早くも思っていた。


それかもう一つの選択肢。

そう…留年だ。


俺にとってテストで赤点取るのは造作もない事だ。


やろうと思えばできる。


しかし…少し恥な気もする。

⏰:11/08/09 01:10 📱:T004 🆔:2k340WRo


#37 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここはあえてやめておこう。


奴とクラスが別れるまでは留年する訳にはいかない。


学校を辞める気もない。


これは一種の真剣勝負だ。


逃げない。


負けられない。


様々な気持ちを胸に、俺は心の中で久保の奴に宣戦布告をした。

⏰:11/08/09 01:15 📱:T004 🆔:2k340WRo


#38 [輪廻◆j6ceQ96kak]
翌日、俺が教室に入ると黒板の周りに人が集まっていた。


その中の一人の女子が俺に気がついて、駆け寄ってきた。


『高見くん…あれホント?』

俺は何が起こっているのかわからずポカーンと口を開けていた。


口を開いたまま黒板の方へ向かう。


人だかりが黒板から離れていき、チョークで書かれた文字が目に入った。

⏰:11/08/09 01:21 📱:T004 🆔:2k340WRo


#39 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それを見て開いた口が更に開いて、危うく顎が外れそうになった。


『高見順一 初カノは年下の中学生!?』

…とピンク色のチョークで大きく大々的に書かれているではないか。


それを見て、すぐこれを書いた犯人が久保である事がわかった。


あいつまたしても…。


久保の席を見る。


奴は満面の笑みを浮かべて俺を見ていた。

⏰:11/08/09 01:29 📱:T004 🆔:2k340WRo


#40 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見、ホントなの?』


『本当だったらすごい』


『でも恋愛に年なんて関係ないよ〜』

俺をフォローするような言葉も飛び交う。


俺はそういう言葉を聞いたからか、取り乱す事もなく冷静でいられた。


奴はまた俺の情けない姿を見れるとでも思っていたのだろうが、そうはいかない。


この勝負、また俺の勝ちのようだ。


策士、策に溺れるとは言うが、この場合は策士、策に外れるというべきだろう。

⏰:11/08/09 01:36 📱:T004 🆔:2k340WRo


#41 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保の小さい舌打ちが聞こえ、俺は奴に向けてドヤ顔を見せた。


どうせならこの文字、このまま残しておくか?


先生が来たら犯人を見つけてくれるだろう。


なんたって俺のクラスの担任は真面目だからな。


彼は理想と情熱を併せ持っているこの学校では数少ない逸材だ。


しばらくしてチャイムが鳴って担任が入ってきた。


『じゃあ日直、お願いします』

…え?

先生、黒板の文字は無視?


今明らかに黒板の方をチラ見しなかったか?

⏰:11/08/09 10:43 📱:T004 🆔:2k340WRo


#42 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺はその一瞬を見逃さなかったぞ。


何か言ってくれよ先生。


せめて、誰が書いたんだくらいは聞いてくれよ。


アンタはそんな人じゃないだろう?


俺も認める最高の担任なんだからアンタは。


その中で隣の席の女子から救いの言葉が…


『先生、黒板消さなくていいんですか?』

おお、君は神様か。

今まではおとなしく意味ありげにくすくす笑ってて変な奴と思ってた事を許してくれ。

⏰:11/08/09 10:48 📱:T004 🆔:2k340WRo


#43 [輪廻◆j6ceQ96kak]
みんなの視線が先生に向けられた。


先生は表情を一切崩さずにこう言った。


『高見、駄目ですよ。ふざけた事を書いては』

…はい?


俺は言葉を失った。


なぜそうなる?


俺は被害者なんですけど?


教室内がシーンとなった。


誰もフォローしてくれないまま、俺がなぜか久保が書いた文字を消すハメになった。

⏰:11/08/09 10:56 📱:T004 🆔:2k340WRo


#44 [輪廻◆j6ceQ96kak]
席に戻る際に久保の顔を見た。


奴は…さっきの俺以上のとびきりなドヤ顔を見せていた。


こいつ、俺が黒板の文字を残しておこうって考えを読んでたな?


俺とした事が、なんたる不覚。


俺と奴の裏での見えない心理勝負は今のところ互角。


次は何を仕掛けてくる?


この勝負、奴の考える更に先を考える必要があるようだ。


でなければさっきのような事にになる。

⏰:11/08/09 11:02 📱:T004 🆔:2k340WRo


#45 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保 太一


俺は必ずお前をギャフンと言わせてやる。


やられたらやり返すが俺のモットーなんでね。


色々と汚名を着せられるのもごめんだ。


その場合、まずは信頼できる味方を探さなければならない。


久保も俺と同じで友達が多い方ではない。


その点ではまず俺が先手を取る。


味方さえいれば怖くないんだよ!


今なら女子の言う事も理解できそうな気がする今日この頃―



〜episode1 END〜

⏰:11/08/09 11:08 📱:T004 🆔:2k340WRo


#46 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode2■
『口は災いの元、沈黙は金なり』



奴と勝負を始めてから、俺が授業中に寝る事はなくなった。


ある意味感謝したい所だ。


俺は休み時間、普段話さないような奴らに積極的に話しかけるように心がけた。


久保の奴はずっと携帯電話をいじっている。


俺と同じ行動は起こさないようだ。


味方が増えればその分フォローしてくれる人も増えるという事だ。

⏰:11/08/09 11:18 📱:T004 🆔:2k340WRo


#47 [輪廻◆j6ceQ96kak]
奴が次の作戦に入るまでに何とか味方を作りまくる。


俺は話しかけるだけじゃなく連絡先も聞いたりした。


何かあったらメールや電話で相談できるからだ。


それこそ本当の仲間。


なんと素晴らしい事だろう。


味方もできるし積極性も上がるし一石二鳥ではないか。

⏰:11/08/09 11:26 📱:T004 🆔:2k340WRo


#48 [輪廻◆j6ceQ96kak]
沈黙は金なりとは言うが、黙っていては何も始まらない。


自分から動き出さないと意味がないんだ。


相変わらず恋人は作る気はないが、友達作りにはとにかく熱中した。


いつしか、休み時間には俺の席の周りに沢山の人が集まってくる。



…と思っていた俺が甘かったのか。

⏰:11/08/09 11:31 📱:T004 🆔:2k340WRo


#49 [輪廻◆j6ceQ96kak]
またよからぬ噂が飛び交ったのは数日後の事。


まただ…朝学校に来たら黒板の周りに人だかり。


どうせまた奴が何か書いたんだろう。


軽い気持ちで黒板の文字を見にいった。



『高見順一 人に番号やアドレスを聞き回って個人情報収集!?』


俺は愕然とした。


でもこれまた身も蓋もない事だし、みんなもわかってくれるだろう…そう思った。

⏰:11/08/09 11:37 📱:T004 🆔:2k340WRo


#50 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかし、みんなが俺を見る視線がいつもと違う。


まるで怪しい人を見るような目つき、疑いの眼だ。


俺はさすがにこれは否定せざるを得なかった。


『ちょっと待ってよ! こんなの嘘に決まってるしょ!』

シーンとなる教室。

この空気、どうやら誰も信用していないようだ。


一人の女子が長い沈黙を破ってポツリとこう言ったんだ…


『やけに色んな人に話しかけてると思ってたらこんな事してたんだ…最低』

俺はその一言で、弾丸が体を貫通したような感覚で体が固まった。

⏰:11/08/09 11:45 📱:T004 🆔:2k340WRo


#51 [輪廻◆j6ceQ96kak]
続けて男軍団も俺に言葉の弾丸を放っていった。


『お前収集マニアだったのかよ、きめえ』


『お前なんかに教えなきゃよかったよ。あ〜あ…番号とアドレス変えなきゃな』


『さいなら』

一気に離れていく人だかり。



終わった…直感でそう思った。

⏰:11/08/09 11:50 📱:T004 🆔:2k340WRo


#52 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もう久保の顔を見る気も起きなかった。


しかし一瞬だけ見てみた。


奴は…笑ってないしドヤ顔もしていない?


普通に携帯電話をいじっている?


なぜだ?


お前は俺の情けない姿を見たいのではないのか?


奴はまるで何事もなかったかのように携帯電話とにらめっこしていた。

⏰:11/08/09 11:55 📱:T004 🆔:2k340WRo


#53 [輪廻◆j6ceQ96kak]
まさかこれも奴の手の内なのか?


久保が何を考えているのか一瞬にしてわからなくなった。


黒板の文字を消して、とぼとぼと席戻る。


いつものようにチャイムが鳴って担任がやってくる。


勝負に燃えていた俺はもういなかった。


言うまでもなく、それからの日々は地獄だった。


誰が漏らしたのか全クラスに俺の噂が行き届き、廊下を歩いているだけで男子、女子から嫌な視線を向けられる。

⏰:11/08/09 12:02 📱:T004 🆔:2k340WRo


#54 [輪廻◆j6ceQ96kak]
こそこそ話をしているグループもいるが、こそこそ話しするならもっと小さい声で言えよと言いたくなるほど大きな声で俺の事を言ってる奴らもいた。


積極的に味方を作ろうと思っていたのが全てアダになった訳だ。


全ての元凶は当然、久保の奴だろう。


しかし奴の態度に違和感があるのも確かだ。


一つ目の黒板事件の時はフォローしてくれた人もいたし、久保も笑っていやがった。

⏰:11/08/09 12:07 📱:T004 🆔:2k340WRo


#55 [輪廻◆j6ceQ96kak]
でも二つ目の黒板事件の時はそれとは逆だった。


フォローしてくれる人もいなかったし、久保も俺は関係ないと言わんばかりの態度。


誰か教えてくれ。


一体、俺はどうしたらいいんだ?


もう俺に味方は一人もいないのか?


そう思っていた矢先、俺は信頼できると思われる別のクラスの肉食系男子と出会ったんだ―



〜episode2 END〜

⏰:11/08/09 12:15 📱:T004 🆔:2k340WRo


#56 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode3■
『草食&肉食の化学反応』



『なあ、お前ここで何してんの?』

俺が学校の屋上で仰向けになりながら空を眺めていると、目の前に見た事もない男が現れたではないか。


『…誰ですか?』

見た目はチャラく年上っぽいので先輩だと思って思わず敬語を使った。

⏰:11/08/09 12:19 📱:T004 🆔:2k340WRo


#57 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『はあ〜、なんで敬語なのよ?』

男は残念そうな顔をした。


それは敬語を使ったからではなくて年上だと思われた事が嫌だったのか?


『お前A組の高見っしょ?』

やけに馴れ馴れしい口調だが、それを言うとどんな目に合わされるかもわからないだろう。


『え…それで君は?』

同い年で同じ学年とは思えないほど背が高く、ワックスでガチガチに固められたその髪型からチャラさが醸しでている。

よく見るとミントのガムを噛んでていかにも不良だ。

⏰:11/08/09 12:26 📱:T004 🆔:2k340WRo


#58 [輪廻◆j6ceQ96kak]
平和主義者の俺にとってはあまり関わりたくない人材だ。


『C組の吉田だけど、お前の噂聞いてるよ?』

なんだこの人も興味本位で俺に近づいてきたのか。


ため息をついて仰向けから起き上がって屋上を後にしようとしたが…


『ちょい待ち』

吉田と名乗る男が俺の足を止めた。

⏰:11/08/09 12:33 📱:T004 🆔:2k340WRo


#59 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…なんですか?』

…しまった。


またつい敬語を使ってしまった。


同い年とはいえこの人にタメ口を使うのはものすごい違和感を覚える。


『俺の事は吉田でいいわ。まあ座れよ』

面倒とは思いつつも言われるがまま彼の隣に腰をおろした。

⏰:11/08/09 12:38 📱:T004 🆔:2k340WRo


#60 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『いきなり聞くけど、彼女できたってホントなの?』

彼だけには否定しても信じてもらえる気がした。


『い、いないけど』

まだ使うのがなかなか慣れないタメ口。


すると男は途端にアハハと笑い出した。


俺、今何か面白い事を言っただろうか?


『な、なに!』

笑い声を無理やり遮るように大声を出して言った。

⏰:11/08/09 12:46 📱:T004 🆔:2k340WRo


#61 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『だよな? だよな? 俺でさえまだいないってのにお前にいるわけないわな!』

…失礼な物言いだ。


だが、信じてくれた事だけには感謝しよう。


『お前面白いわ!』

いや、そう言われても別に面白いキャラをしているつもりはない。


それについては否定する気も起きなかった。

⏰:11/08/09 12:49 📱:T004 🆔:2k340WRo


#62 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『んじゃあもう一つ。お前ってアドレス収集マニアなの?』

そう直接言われると心にグサリとくるだろ。


この件については否定しても信じてもらえない気がしたので…


『ご想像にお任せするよ』

…と適当に言った。


するとまた笑い始めた。


実に感情豊かな人だと思っていたら、なぜか俺もその笑いにつられて気がついたら俺自信も笑っていた。

⏰:11/08/09 12:55 📱:T004 🆔:2k340WRo


#63 [輪廻◆j6ceQ96kak]
こんな青春漫画であるようなシチュエーションが現実にあるとは思ってもみなかったから驚いた。


『とりあえずアドレス交換しようぜ』

この人は俺の事を信じているのか?


それとも久保みたいに何か嫌な事を考えてたりして…。


『サブアドでいい?』


『なんだよ、もしかして悪用されるとか考えてんの?』

ちょっと思っていたなんて言えない。

⏰:11/08/09 13:00 📱:T004 🆔:2k340WRo


#64 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『安心しな、俺そういうのに興味ねえし。俺が興味あんのは可愛い女の子だけ』

なんという自信に満ち溢れた態度だろう。


彼こそは正真正銘、肉食系男子と呼ばれる人材ではないか。


草食系の俺と肉食系の吉田。


一見、気が合わなそうだがこれはこれで面白い化学反応が起こるかもしれない。


どうやら本当の味方を見つけたようだ。


見た目はチャラいが、心は意外としっかりしているように思える。

⏰:11/08/09 13:06 📱:T004 🆔:2k340WRo


#65 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼の存在は久保にとって大きな弱点になるはずだ。


俺でさえ彼を年上だと思ったんだ。


目上の人にはペコペコするタイプの奴だったら彼には服従するしか選択肢はないだろう。


久保 太一


どこからでも来やがれ。


こっちには、一人でも信じてくれる味方がいるんだ。


なにも大勢の人に信じてもらわなくたっていい。


一人でもそういう人がいる事がどれだけ素晴らしい事だとわかった。

⏰:11/08/09 13:12 📱:T004 🆔:2k340WRo


#66 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかし久保はそれから何かを仕掛けてくる事はなかった。


俺は奴の試合放棄だと勝手に判断しておいた。


いや、もしかしたら何か大きな計画を着々と準備している可能性がある。


一応用心しておくに越した事はないだろう。


やっと久しぶりに平和な学校生活が送れそうだ。


人の噂も75日とは言うが、その日数はさすがに長すぎるだろうと思った俺であった―



〜episode3 END〜

⏰:11/08/09 13:19 📱:T004 🆔:2k340WRo


#67 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode4■
『決戦はクリスマス』



早くも12月。


高校に入ってから8ヶ月が過ぎた。


残念ながら俺の地方では雪が降らないので冬という実感がわかない。


ただ風が尋常じゃない冷たさになったら、それが冬がきたという合図なのだ。


そして12月上旬といえば…

そう、俺の嫌いな期末試験の日がやってくる。


その後は冬休みだが、何も予定がない為に憂鬱だった。

⏰:11/08/09 13:33 📱:T004 🆔:2k340WRo


#68 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そんな時だ、まさかの俺にお誘いが入ったのは。


しかもそれはあろうことか俺の隣の席の女子からではないか。


『ねえ高見くんってクリスマス何か予定とかある?』

こんな誘いを受けるのは初めてだったから、何と返せばいいのか戸惑った。


『ないけど?』

そうサラッと言うと、その女子は何やらもじもじと下を向いている。

⏰:11/08/09 13:38 📱:T004 🆔:2k340WRo


#69 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それを見た俺はなぜか顔が赤くなってきた。


なんだろう、この感じ。


今まで感じた事もない感覚が俺を襲う。


胸に手を当てる。


心臓がばくばく鳴って動いている。


なぜそんなに鳴る必要がある?


まさか、これが恋という感覚なのか?

⏰:11/08/09 13:42 📱:T004 🆔:2k340WRo


#70 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そんな初めての感覚に興奮してきた俺はなるべく心の内を悟られないように真顔を保った。


しばらくしてその女子がこう言った。


『じゃあ、付き合ってくれない?』


『…は?』

今、何と言った?


よく聞こえなかったぞ。


いや、聞こえてたけど聞き間違いっていう可能性もある。

⏰:11/08/09 13:46 📱:T004 🆔:2k340WRo


#71 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『今なんて言ったの?』

改めて聞き返してみる。


『だから、付き合ってくれない?』

やっぱり聞き間違いではなかったようだ。


さて、どうしたもんか。


ここは一度、彼に相談してみるのはどうか?


いや、そんな報告をしたら彼は裏切られたと思うだろう。


厄介な事になるのは目に見えている。


せっかくできた味方だ。


信頼は時間をかけてじっくり築き上げるものだが、無くすのは一瞬だと聞いた事がある。

⏰:11/08/09 13:51 📱:T004 🆔:2k340WRo


#72 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あのさ、なんで俺なの?』

恐る恐る聞いてみた。


『え? 力ありそうだからいいかな、と思って』

なんだそりゃ。


力あれば誰でもいいんかい、とツッコミたい気分だ。


『力ある奴なら他にもいると思うけど?』


『他の人とはあんま話した事ないから。駄目ならいいよ』

だからなんじゃそりゃ。

答えになってないような気がする。

⏰:11/08/09 13:59 📱:T004 🆔:2k340WRo


#73 [輪廻◆j6ceQ96kak]
前から変わった奴だとは思ってたが、間違いではなかったようだ。


悪いけど前の撤回を更に撤回させてもらおう。


しばらくしてその女子の友達数人がやってきて、俺は信じられない会話を彼女達から聞く事になる。


『荷物係は見つかった?』


『見つかったよ。高見くんが付き合ってくれるって』

…はい?


俺はすかさずその女子の顔を見た。

⏰:11/08/09 14:05 📱:T004 🆔:2k340WRo


#74 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女は…満面の笑みを浮かべてやがった。


『高見っちありがとう』


『さっすがー!』

なんだこの展開。


変なあだ名もつけられているし。


そもそもなんだ。

あの黒板事件の時は俺を冷ややかな目で見ていたのに、この変わりようは…。

⏰:11/08/09 14:14 📱:T004 🆔:2k340WRo


#75 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今更断る訳にもいかず、なぜか俺は彼女らの買い物の荷物係に選ばれてしまった。


『付き合う』の意味を問い正さなかった自分を恨んだ。


苦の期末試験が終わって、冬休みが始まり12月25日のクリスマス当日を迎えた。


女複数に男一人というなんとも悲しいクリスマス。


しかもよりによって荷物係とは…。

⏰:11/08/09 14:21 📱:T004 🆔:2k340WRo


#76 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見っち何してんの、こっちこっち!』

街のど真ん中で大声でその呼び方はやめていただきたい。


次々と店を入っては出て服やら雑貨やらを買いあさっていく女達。


それはある意味、恐ろしい光景であった。


買った袋を次々と俺の腕に引っ掛けていく。


俺は物ではないのだが…。


だが彼女らの楽しそうな顔を見ていると、仕方ないなという気持ちがこみ上げてきた。

⏰:11/08/09 14:31 📱:T004 🆔:2k340WRo


#77 [輪廻◆j6ceQ96kak]
レディーファーストという言葉があるらしい。


俺は嫌な気持ちを忘れて積極的に彼女らをエスコートした。


荷物を言われる前に持ってあげたり、店を出る際にドアを開けてあげたり。


彼女らは楽しめたようだ。


時間はあっという間に過ぎていった。


『高見くん、今日はありがと。助かったよ』

俺は柄にもなく照れ笑いをした。

⏰:11/08/09 14:41 📱:T004 🆔:2k340WRo


#78 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『これお礼だよ』

そう言って女子が俺に差し出したのは、2000円くらいはするであろう金色の招き猫のストラップ。


『さ、サンキュー』

…やばい。


また心臓がばくばく鳴り始めた。


その音は今にも彼女らに漏れそうだった。

⏰:11/08/09 14:45 📱:T004 🆔:2k340WRo


#79 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その音をなんとか聞かれないようごまかそうと、大きな咳払いを何度もした。


『大丈夫? 風邪?』

心配そうに女子が言って、手を平を俺の額に当ててきた。


『……!!』

別の意味で気絶しそうになった。


女子のこういう優しい気遣いに男心がくすぐられてしまうのだろうか?


それなら恋人も悪くないと一瞬思ってしまったのは言うまでもない。

⏰:11/08/09 14:51 📱:T004 🆔:2k340WRo


#80 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は彼女から貰った招き猫ストラップを右手に握ったまま夜の街を後にしていった。


悪くないクリスマスだった。


そしてもう一つ。

俺はこの日を境に初めて彼女に対して恋というものが芽生えた。


やはり恋人なんてものはネットとか、そんな上辺だけのようなやりとりから始めて作るものではないと勉強になった日でもあった―



〜episode4 END〜

⏰:11/08/09 14:56 📱:T004 🆔:2k340WRo


#81 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode5■
『脱・草食系男子』



やっと冬休みが終わった。


普通の奴なら『やっと』ではなく『もう』と思うだろう。


だが俺は、これといった予定がなかったし退屈だったからこれはこれでよかった。


なにより、彼女に会えるのが楽しみで仕方がなかった。


まさかこの俺が人を好きになるなんて、俺と俺の家族だって想像はしていなかっただろう。

⏰:11/08/09 15:04 📱:T004 🆔:2k340WRo


#82 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼女から貰った招き猫ストラップは携帯電話につけて重宝している。


久しぶりの学校、そして教室へと足を運んだ。


誰もまだ登校していない。


一番乗りのようだ。


そういえば昨日まで彼女の事ばかり考えてたせいか、久保の事をすっかり忘れていた。


何か計画を練っているに違いないだろうが、俺は立ち向かってみせる。

⏰:11/08/09 15:10 📱:T004 🆔:2k340WRo


#83 [輪廻◆j6ceQ96kak]
席に座ってストラップを眺めていると、突然携帯電話の着信音が響いた。


ディスプレイを見ると、あのチャラい吉田からだ。


あまり出たくはなかったが、後々怖いのでしぶしぶ電話に出る事にした。


『はい?』


『吉田だけど』

…え?

なんだろう、この果てしなく低い声は。


朝のせいか、テンションが低い気がする。


もしくは…機嫌が悪い?

⏰:11/08/09 15:14 📱:T004 🆔:2k340WRo


#84 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ど、どうしたの?』

嫌な予感がする。

この緊迫したムードはなんだろう。


そして予感は的中したのだ。



『お前さ、今どこにいる?』


『どこって…教室だけど…』

その瞬間、通話がブチっと切られ廊下からバタバタと走ってくる音が聞こえた。

⏰:11/08/09 15:17 📱:T004 🆔:2k340WRo


#85 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は同時に血の気が引いた。


そしてドアが乱暴に開かれると、眉をしかめた吉田が近づいてきた。


『お前、雪乃と付き合ってんの?』


『…え?』

雪乃といえば…俺の隣の席の子で、ストラップをくれた俺の初恋の女子の名前ではないか。


『お前のクラスの久保って奴から聞いたけど、クリスマスの日に一緒にいたんだって?』

この彼の威圧感に、今にも飲み込まれそうな勢いだった。

⏰:11/08/09 15:26 📱:T004 🆔:2k340WRo


#86 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保…。

どこまで俺を苦しめたら気が済むんだ。


これはどう言い訳をしたらいいのか…。


『ん? そのストラップ…』

吉田が招き猫に気がついてしまった。


しかし実際付き合っているわけではない。


…そうだ。

彼女らが登校してきたら彼に納得する説明をしてもらえばいいんだ。

⏰:11/08/09 15:29 📱:T004 🆔:2k340WRo


#87 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それまで何とか俺自身の言葉で少しでも彼をなだめなければならない。


『ちょっと落ち着いて…』


『あ? タメ口かよ』


…え?

なんですかそれ。

同い年に同じ学年のはずだろう?

⏰:11/08/09 15:33 📱:T004 🆔:2k340WRo


#88 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『え? なに? もしかして同い年とか思ってる?』

同じ学年だからそうではないか。


しかし、その言葉を根底からくつがえす言葉を彼は放った。


『同じ学年だけど、俺がいつお前と同い年だって言った?』

…なんだって?


じゃあ…残された可能性は―


『留年?』

⏰:11/08/09 15:36 📱:T004 🆔:2k340WRo


#89 [輪廻◆j6ceQ96kak]
つい口に出して言うと、彼の顔が真っ赤になった。


…俺、殺される?


そんな言葉が脳裏をよぎった。


『お前…ふざけんなよ?』

…怖いんですけど。


この怒り様、幽霊や心霊現象が可愛く見えてくるように思えた。

⏰:11/08/09 15:42 📱:T004 🆔:2k340WRo


#90 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それにしても、久保の奴は吉田にどうやって連絡したのだろうか。


奴と彼には何の接点もないはずだ。


全くタイプの違う二人がどこかで繋がっていたとでもいうのだろうか。


考えても仕方がなかった。


『よ、吉田さん落ち着いてください…』

非常に情けないが、声が震える。


こんな所を女子達に見つかってしまったら俺のイメージががた落ちだ。

⏰:11/08/09 15:46 📱:T004 🆔:2k340WRo


#91 [輪廻◆j6ceQ96kak]
いや、今はそんな事を気にしている場合ではないだろう。


『もう一回聞くわ。雪乃と付き合ってんのかって?』


『付き合ってません付き合ってません!』

そう言って首を横にぶんぶんと振りまくった。


『じゃあそれ、誰から貰った?』

彼の指先には、雪乃ちゃん自身から貰った招き猫ストラップ。

⏰:11/08/09 15:54 📱:T004 🆔:2k340WRo


#92 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここで本当の事を言ってしまったら、修羅場になる事はまず間違いはない。


『え、ええと…11月の誕生日の日に友達から貰いました…』

嘘をついてしまった。

後でどうなるかなんて想像したくもない。



『へえーそれはすごい。フライングゲットできたんだな』


…え?

フライングゲット?


それは、あのハンバーガーショップにある…


いやそれはフライポテトとチキンナゲットだろう。

⏰:11/08/09 16:06 📱:T004 🆔:2k340WRo


#93 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『それさ、俺も雪乃から貰ったんだよね。12月限定発売なんだってよ』


『そ、それは奇遇ですね』

…いや、待て。


今何て言った?


12月限定発売?


…しまった。

大事な所で墓穴を掘ってしまうなんて。

⏰:11/08/09 16:09 📱:T004 🆔:2k340WRo


#94 [輪廻◆j6ceQ96kak]
言うまでもないが、その後本当の事を白状すると彼から大きな一発パンチをくらった訳で…。


俺の頬は真っ赤に腫れ上がったのだ。


脱・草食系男子を目指そうと思っていたが、やはりこのままでいいと思った。


彼のような野蛮人にはなりたくない。


俺はやはり草食系でいる事と草食系の人と関わる方がよっぽど平和だと改めて実感した日であった―



〜episode5 END〜

⏰:11/08/09 16:18 📱:T004 🆔:2k340WRo


#95 [我輩は匿名である]
†horror†も読んでます!こちらも今日読んでハマりました♪
更新頑張ってください☆

⏰:11/08/10 08:41 📱:P03A 🆔:3icoSHyk


#96 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>95さん

そんな嬉しいお言葉…
私にはもったいないです。

ありがとうございます。

2つの作品はジャンルが全く異なるので切り替えが難しいですが、まったり頑張ります☆

⏰:11/08/10 12:30 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#97 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode6■
『一難去ってまた一難』



無念だー


あれから雪乃ちゃんから貰った招き猫ストラップは吉田の奴に取り上げられてしまった。


それもこれも全部…

久保、お前のせいだ。


吉田…アンタもアンタだ。

初めて俺と会った時は彼女なんていないと言っていたのに。


全部罠だったのだ。


久保の奴が先回りして吉田に色々と…。


あくまで俺の想像なのだが。

⏰:11/08/10 13:00 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#98 [輪廻◆j6ceQ96kak]
おかげで俺の初めての恋は塵のごとく消え去った訳で。


まあいいだろう。


仮に雪乃ちゃんに彼氏がいなくて告白したとしてもOKの返事を貰える訳はないと思っていたし。


それよりも疑問に思うのは、彼女みたいなおとなしく変わった子と吉田のような年上肉食系男子がどういう経緯で恋人同士になったのかだ。


全くタイプの違う二人ではないか。


あんなチャラい男…雪乃ちゃんにいつか捨てられてしまえばいいんだ。

⏰:11/08/10 13:09 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#99 [輪廻◆j6ceQ96kak]
うん、捨てられるだろう。


…と、なんとか自分に言い聞かせる毎日。



『おい高見』

今日もか…。


あれから休み時間になると度々吉田が俺を呼びにくる。


その吉田の隣には、まるで腰巾着のように張り付く久保の姿もあった。


この二人が以前から手を組んでいたとは、さすがの俺も予想外だった。

⏰:11/08/10 13:15 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#100 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『下の自販機でコーラ買ってきてや、二人分な』

…はいはい。


金はまた俺が出すんだろうな。


これじゃあまるでパシリだ。


俺がパシリにされる?


俺の高校生活は、ただ普通に平和に目立たず過ごす…そう決めていたのに。


俺が吉田なんかと出会わなければ、こうなる事なんてなかった。


…辞めたい。


不良の餌食になるくらいなら学校なんて辞めたい。

⏰:11/08/10 13:21 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#101 [輪廻◆j6ceQ96kak]
不良もタチが悪いが、その不良に更にオマケがついている事が何より嫌だ。


そう、久保というオマケが。


もうこれは辞めるしかないのだろうか。


ドラマなどでは主人公がそういう事に勇気を持って立ち向かうものが多いが、そんな主人公のような奴は俺の知る限り現実にはそういないだろう。


この学校にはまずいないだろうな。


それは、何円賭けてもいい…それくらい自信持って断言できるぞ。

⏰:11/08/10 13:30 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#102 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『はい、どうぞ』


『サンキュー! あ、お前今日放課後時間空けとけよ』

…とほほ。


今度は何をさせるのだろうと、これから授業を受けるのも憂鬱になる。


『吉田さん、コーラご馳走さんです』

おい、久保。


金払ったのは俺だぞ。


礼を言うなら俺にだろ、俺に。

⏰:11/08/10 13:41 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#103 [輪廻◆j6ceQ96kak]
まあ人の顔色ばかり伺ってベタベタ張り付いてるお前なんかよりは、俺のがマシかな。


そう思う事にした。


それからの授業はなぜか時間の経過が早く感じた。


時計のやつ、こんな時だけ早く進みやがって。


ただでさえ吉田に何を付き合わされるのかビクビクしてるってのに。


運命のチャイムが鳴り響き、早くも帰りの号令。

⏰:11/08/10 13:47 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#104 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保が、礼を終えると同時に鞄を持って駆け足で廊下へ出ていった。


行く先はわかりきっている。


できればこのまま帰りたい。


早く帰ってニンテンドー3DSをやりたいんだよ俺は。


不良なんかに付き合ってる暇なんてないのだ。


そう思ってるそばから…


『高見ちゃん〜』

吉田の1オクターブ高い声が背後からした。

⏰:11/08/11 00:00 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#105 [輪廻◆j6ceQ96kak]
振り返ると予想通り久保が吉田の隣にいた。


『早く来いよ』

吉田がそう言うと、久保も続いて


『高見。吉田さんが待ってんだから早く来いよ!』

…お前、いつか覚えてろよ。


吉田と一緒にいると、途端に調子に乗りやがって。


こういう奴は将来ロクな大人にならないだろう。

⏰:11/08/11 00:08 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#106 [輪廻◆j6ceQ96kak]
仕方なく、しぶしぶ二人の元にきてやった。


『よおし、じゃあ荷物持ちジャンケン。負けた奴は俺の家まで荷物持ちな』

…小学生かよアンタは。


まあいい、それくらいなら軽いもんだ。


廊下のど真ん中で三人一斉にジャンケンした。


吉田はパー。

久保はチョキ。

そして俺もチョキ。


…まさかの勝ちだ。

⏰:11/08/11 00:17 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#107 [輪廻◆j6ceQ96kak]
言い出しっぺが負けるとは、かなりの恥だろう。


とりあえず安心と思っていたのだが…。


『悪ィ悪ィ! 今の練習って言うの忘れてたわ』

…なんだそりゃ。


どう考えても自分が負けた事に納得できない事の言い訳だろう。


『ってな訳で本番行くぜ、本番』

卑怯だ、卑怯すぎる。


これでまた負けたら、これも練習だったなんて言うんだろどうせ。

⏰:11/08/11 00:23 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#108 [輪廻◆j6ceQ96kak]
アンタ見た目は大人びいてるが、中身は子供だろ。


見た目は大人、頭脳は子供って訳か。


…似たようなフレーズをどこかで聞いた事がある気がする。


『よし、ジャンケンしょいっ!』

再度のジャンケンの結果は…


俺はグー。

吉田もグー。

そして久保はチョキ。


残念だったな、久保。


これは本番なのだ。


でも自分の荷物は自分も持つのが安全だから、お前には持たせないでおいてやる。

⏰:11/08/11 00:31 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#109 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺が心の中でガッツポーズをしていると、吉田がまさかの発言をした。


『今のは久保の練習だな。ちゃんと練習って言わねえとダメだぞ?』


『すみません吉田さん!』


…は?


まるで久保をフォローするかのような発言。


吉田の次は久保の練習?


って事は、次は俺の練習って事になる訳か?


もう意味わからないぞ。

⏰:11/08/11 00:38 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#110 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃあ次こそ本番な』

おいおい、アンタさっき言った自分の言葉忘れたのか?


これってもしかしてもしかすると、俺が負けるまで続けるパターンか?


こいつらならやりかねないだろう。


なら意地でも負ける訳にはいかないな。


『ジャンケンしょいっ!』

人が少なくなった廊下に吉田の掛け声だけが響く。


『どうもうまくいかねえなぁ…』

おい、ちょい待ち。


今の発言は矛盾しているぞ吉田。

⏰:11/08/11 00:47 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#111 [輪廻◆j6ceQ96kak]
このジャンケンってうまくいったとかいかないの問題じゃないだろ。


アンタが言った通り荷物持ちを一人決めるジャンケンだぞ。


普通なら相子が出ない限り一回で済むジャンケンを、何回やるんだよ。


吉田か久保が負けると、練習だとか言いがかりをつけて再びやるとか。


それなら素直に、俺に荷物を持ってくれと言ってくれた方がスッキリする。

⏰:11/08/11 00:52 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#112 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もう俺が負けるまでジャンケンを続けるくらいなら自分から荷物持ちを立候補してやるよ。


『あの、俺が持ちますよ』

どうせ俺がそう言うのを待っていたんだろうさ。


『え、マジで? お前って人がいい奴だな!』

…なんか一言というか一文字多い気がする。


俺は吉田、久保の鞄を肩にかけて三人で学校を後にした。


卑怯なジャンケンで思わぬ時間を無駄にしてしまった。


荷物持ちは吉田の家までという事だが、その肝心の家はどこにあるのだろう。

⏰:11/08/11 01:01 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#113 [輪廻◆j6ceQ96kak]
なるべく近い所にあってくれと願いながら、吉田と久保の後ろを歩く。


5分…10分…15分…20分。


一体どこまで歩くつもりだ。


そろそろ鞄の重さで体力に限界がきていた。


…息切れしそうだ。


俺の激しい息づかいに気がついたのか、吉田が振り返って俺の方を見た。

⏰:11/08/11 01:07 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#114 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見、ファイトだ!』

その言葉自体は嬉しいのだが、その一方でバカにしたような目をしているのは気のせいだろうか。


『久保も応援してやれ!』


『はい吉田さん!』

こいつら…絶対俺の事見下してるだろ。


『高見、ファイト一発!』

…もうツッコミを入れる気も起きない。

⏰:11/08/11 01:12 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#115 [輪廻◆j6ceQ96kak]
更に5分…10分…15分くらい歩いた所で、吉田がマンションの前で足を止めた。


やっと着いたらしい。


吉田の住んでいると思われるそのマンションは、軽く10階以上はありそうだ。



『高見、俺の部屋まであと少しだ』

…え?


もうここで終わりなんじゃないの?


まさか部屋まで運べと?


『あの、吉田さんの部屋は何階ですか?』


『13階。んじゃ後は頼んだ。俺はこれから雪乃と制服デートだから』


…そんな無責任な。

⏰:11/08/11 01:25 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#116 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あ、そうそう。俺のが終わったら久保の荷物も家まで運んでやれよ』

…何様ですかアンタは。


それにしても、久保の家は全くの逆方向ではないか。


ここから向かうとなると、普通に20分以上はかかる。


しかもこいつと二人きりだなんて気まずすぎる。

⏰:11/08/11 01:29 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#117 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃあまた明日な〜』

そう言って手を振ると、やがて街中へと消えていった。


明日なんて来なければいいのに。


吉田がいなくなってからシーンとなり始める。


俺は奴と目を合わさずに吉田のマンションの部屋に荷物を置きにいった。


彼の母親は申し訳なさそうに俺にペコペコと謝った。


それから久保の一歩前を歩いて、早足で奴の家へと向かった。

⏰:11/08/11 01:39 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#118 [輪廻◆j6ceQ96kak]
まったく。


吉田がいなくなった途端、拾った犬みたいにおとなしくなりやがって。


20分ほど歩いて奴の家の前にきた。


『ここでいいだろ』

持っていた奴の荷物を地面に乱暴に叩きつけてやった。


俺はすぐに退散したくて奴に背を向けて帰ろうとした。


だが…

俺の後ろで奴はポツリと言った。


『高見、俺を助けてくれ』

…え?

今何と?

⏰:11/08/11 10:26 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#119 [輪廻◆j6ceQ96kak]
一瞬聞き間違いをしたかと思ったが、確かに奴は言ったな。


助けてくれ?


…馬鹿か?


もう俺とお前は助け合うなんて義理はないんだよ。


しかし何を助けてほしいのか気になりもしていた。


『なんだよ』

奴に背を向けたまま言ってみた。

⏰:11/08/11 10:30 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#120 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見、今まで悪かった』

え、今更何ですか?


それも何かの作戦の内ですか?


『馬鹿じゃねーの? 何考えてんのか知らんけど、その手には乗らねーよ』

さすがに頭に来た俺はそう言い放って、走ってその場を後にした。


悪いけど俺はそこまでお人好しじゃないんでね。


その後奴がどういう表情で家に戻っていったのかはわからない。


どうせあざ笑っているんだろうと俺は勝手に解釈したが。

⏰:11/08/11 10:38 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#121 [輪廻◆j6ceQ96kak]
次の日。


次は何をされるのだろうと憂鬱に思いながらも登校した。


久保…奴は席にポツンと座っていた。


何を考えているのか全くわからないオーラが出ている。


『高見くん、おはよ』

あれから隣の雪乃ちゃんに話しかけられるとビクッとする。


そして辺りに吉田の気配がないか気になって仕方がない。


まさに挙動不審だ。

⏰:11/08/11 10:50 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#122 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん。そういえばさ、私があげたストラップちゃんと持っててくれてる?』


『げっ!』

思わず声をあげてしまった。


雪乃ちゃん…そんなわかりきった質問を俺に聞くのはNGだろう。


当然吉田から聞いているであろうし。


わざとそういう質問をして俺が持ってると答えると『おかしいな〜』とか言い出すんだろ?


この子もある意味吉田に似ているじゃないか。


おとなしい分、彼女の方が数倍マシだが。

⏰:11/08/11 10:56 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#123 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここは直接言ってやるか。


『あ〜あれね。そういう自分がよくわかってるんじゃないの?』


『…ん?』

この女…まだとぼけるつもりか?


強く言い過ぎて泣かれたりすると後から吉田に呼び出されるだろうから、ここからはやんわりといこう。

⏰:11/08/11 11:04 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#124 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『吉田さんから聞いてるんでしょ?』


『吉田って…優斗くんのこと?』

いや、下の名前は聞いた事ないからわからないが間違いはないだろう。


『…そう。俺がその…吉田さんにストラップ取られた事、聞いてるんでしょ?』


『え、もしかしてあれ優斗くんに取られちゃったの?』

彼氏とはいえ年上を君付けで呼ぶとは…。


それにしても、さすがにとぼけすぎだろう。

⏰:11/08/11 11:15 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#125 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここいらで白状すればいいものを、どこまでしらを切るつもりだ。


『え、なんで取られちゃったの?』

…まだ言うかこの女。


俺のあの情けない出来事を俺自身の口から話せと?


そろそろ限界だ。


頭の血管がブチっと切れそうだ。


『わかってる事、今更聞いてくんじゃねーよ!』

よせばいいのについ声を荒げ、しかも女の子相手にキツく言ってしまった。

⏰:11/08/11 11:23 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#126 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺の声を聞いてか、彼女の友達の女子などが周りに集まってきた。


果てしなく嫌な予感…。

そして額からコメカミにかけて、朝から尋常じゃないほど大量の冷や汗。


『雪乃、どうしたの?』

下を向いてうつむく彼女に心配そうに話しかける友達。


…まずい。

これはまずい。

⏰:11/08/11 11:30 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#127 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今すぐこの場から逃げたい。


だが足が震えて動かない。



『ねえ、高見。アンタ雪乃に何した?』

…出た。

クラスの気が強い女子トップ5に入る野村可奈恵。


この女はおそらく、吉田に対抗できる唯一の存在だと俺は思う。

⏰:11/08/11 11:35 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#128 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女子達の視線が俺が集中した。


『え…ええと…』

…言葉が全く出てこない。


かつてフォローしてくれたりストラップをくれたりした彼女にいつかお礼をしたいと思っていたのだが、それをまさかアダで返す事になるなんて。


『ちょっと聞いてんの?』

野村のこの視線とプレッシャーにビクビクする俺。


もう終わったと思ったその時だった―

⏰:11/08/11 11:43 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#129 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見は…悪くない』

俺達は突然したその声の元を視線でたどった。


視線が行き着いた先には久保がいた。


…まさか正義の味方気取りで綺麗事でも言ってポイントを稼ごうという気か?


…いや、こいつはそういうキャラではないか。


それは俺がよく知っている。

⏰:11/08/11 11:50 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#130 [輪廻◆j6ceQ96kak]
野村が俺に背を向けて久保の元へ向かった。


『どういう事?』


『高見は、松下さんと吉田さんが付き合ってるなんて知らなかったんだよ』


『は? それ何の話してんの?』

容赦なく野村が言う。


久保の奴…どういうつもりだ?


作戦のようにも見えるが、何かの作戦だったら奴の性格上こんな大勢の前で直接言ったりはしないだろう。

⏰:11/08/11 11:57 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#131 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>128 訂正
俺が集中した ×
俺に集中した ○

――――――――――


まさか本心で俺をかばう気なのか?


昨日も、突然助けてくれだなんて言い出すし…

奴は本当に改心するつもりなのか?


いいや、まだわからないぞ。


俺は半信半疑な気持ちで久保を見ていた。

⏰:11/08/11 12:03 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#132 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『松下さん、高見を許してやってくれよ』


…なに!?

こいつが人の為に、人に頭を下げている?



まさか本当の本当の本当に…本気なのか?


俺の事で雪乃ちゃんに深く頭を下げる久保を見て、奴に対して抱いていた疑心が薄れていきそうになった。

⏰:11/08/11 12:16 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#133 [輪廻◆j6ceQ96kak]
野村も含む女子達は久保の姿を見て黙ってしまった。


その時、チャイムが鳴った。


それを聞いて慌てて席に戻る皆。


担任がやってきて朝の号令をした後に、先生が久保に視線をやった。


『久保…数学の木下先生がな、放課後残ってくれと君に伝えてくれって』

…先生がそう言うと


『お前なんかしたの?』


『まさかの補習?』

と、男子が寄ってたかって久保をからかうように言った。

⏰:11/08/11 12:29 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#134 [輪廻◆j6ceQ96kak]
成績に関しての呼び出しか、先生と二人きりの教室で補習を受けるのも嫌だが、久保のあの後に起きる出来事と俺らが知らされる事実に比べれば補習なんてまだ可愛いものだと思った。


俺の席は久保の後ろで離れているので表情はわからないが、ふと見ると体が小刻みに震えているような気がした。


そんなに補習が嫌なのだろうか、とその時は気にも止めなかった。


休み時間も久保はずっと席に座ったまま動かない。


この状態が下校時間までずっと続いていた。

⏰:11/08/11 12:41 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#135 [輪廻◆j6ceQ96kak]
以前の俺だったら、奴に頑張れと声をかけて肩をポンポンと叩いていたかもしれない。


久しぶりにそれをやってやろうかと思ったが、さすがにあの後じゃな。


皆が続々と下校していく。


俺は久保が一人教室の椅子に座っているのを見送ってから下校した。


心の中で『頑張れ』と言ってから。


翌日、一難去ってまた一難という言葉が思い浮かぶほどの、久保の事が原因で事態が急展開されるなんて俺を含むクラスの奴ら…いや、ここの全校生徒の皆が想像なんてしていないだろう―



〜episode6 END〜

⏰:11/08/11 12:55 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#136 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode7■
『昨日の敵は明日の味方』



次の日、久保の事が気になって早めに学校へと登校した。


しかしまだ奴は来ていない。


昨日は、普段呼び出したりしない数学の木下先生に久保がどんな事で呼び出されたのか気になって仕方がなかった。


それともう一つ。

昨日の雪乃ちゃんの件だ。


もし彼女が吉田に伝えていたら…俺は彼にどんな目に合わされるのか。

⏰:11/08/11 13:19 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#137 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『おはよ、高見くん』


『うわっ!』

噂をすれば影が立つとはこの事かと思うほどよいタイミングで登校してきた雪乃ちゃんが後ろから話しかけてきた。


『あ、あのさ…昨日はその…ごめん』

昨日謝ろうとして言えなかった謝罪の言葉を今日、今ここで頭を下げて伝えた。


『大丈夫。気にしてないし、もういいよ』

…君は天使か?

満面の笑みを浮かべてそう言う彼女の顔はまさに天使だ。

⏰:11/08/11 13:27 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#138 [輪廻◆j6ceQ96kak]
やばい。

やっぱり俺は君の事が…


いやいや、でもダメだ。


彼女には吉田というれっきとした彼氏がいるのだ。


吉田みたいな奴と取り合う気もない。


どうせパンチが飛んでくるのはわかりきっている。


でも、せめて番号とアドレスくらいは知りたいぞちくしょう。

⏰:11/08/11 21:31 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#139 [輪廻◆j6ceQ96kak]
いや、それも無理だな。


吉田はああ見えて意外と束縛が激しそうだ。


彼女の携帯電話をチェックして、俺のデータが入っているのを見つけた時点で俺の人生は終わったも同然。


…諦めるしかないか。


そうこう思っている間に教室にはほとんどの奴らが登校してきていた。


その中に久保もいた。


昨日と同じく席に携帯電話もいじらずに座っている。


あの様子じゃ、もしかして昨日は木下先生にこっぴどく怒られたのではないだろうか。


見た目は怖そうな先生だけど怒った所は見た事がないからそういう姿は想像できないが。

⏰:11/08/11 21:54 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#140 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ちょっと皆、聞いてほしい!』

チャイムが鳴る10分前に、担任が急ぎ足で駆け込んできて言った。


皆は、なんだなんだという顔で担任を凝視。


『この後、体育館で1年生だけの学年集会を開くらしいから準備してくれ』

教室内は担任のその一言でざわめき始めた。


誰かが何かをやらかしたのかもしれないな。


例えば煙草を吸っただとか飲酒しただとか。

⏰:11/08/11 22:11 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#141 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そんな校長やら教頭のダラダラとした長い話を立ちっぱなしで聞かないといけないなんて地獄だ。


あいにく俺は煙草も酒も興味ないから安心してくれ。


あるのは雪乃ちゃんとゲームだけなんだ。



それから担任の誘導で廊下に並んで、A組からD組までの計4クラスが一斉に体育館へと向かった。


皆、ダルそうな姿勢だ。


…俺もその一人だけど。

⏰:11/08/11 22:27 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#142 [輪廻◆j6ceQ96kak]
早速、頭がハゲた校長がステージに上がった。


『皆さんお静かに』

ガヤガヤ言っていた館内が校長の一言で収まり、大きな咳払いをしてから話を始めた。



『ええ、名前は伏せておきますが、ここにいる皆さんの中のとある生徒の一人が携帯電話のネット掲示板を通じて中学校の見知らぬ女子生徒と出会い、交際しているという情報を聞きました』


…予想外だ。


飲酒か喫煙の話かと思っていたのだが。

⏰:11/08/11 22:39 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#143 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかし、何かひっかかる。


…ネットで中学生の女子と出会って交際?


なぜか胸騒ぎがした。

何か心当たりがあるような気がするからかもしれない。


いや…というより心当たりはあるではないか。


まさかとは思うがその人物は…



…久保なのか?

⏰:11/08/11 22:44 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#144 [輪廻◆j6ceQ96kak]
あの日、あいつが俺だけに話すと言って彼女ができたと告白してきた。


その彼女とは…確か年が二つ下の中学生だったと記憶している。


おい、久保…これはさすがにやばいのではないか?


でもこの学校には他の学校の生徒と付き合っているという奴は多いはずだ。


なぜ学校は久保の件だけを持ち出してきたんだ?



校長はまた咳払いをして話を続けた。

⏰:11/08/11 22:52 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#145 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『この事を職員会議で話し合った結果、学校はその生徒を2学年に進級するまでの期間、謹慎処分とする事を決定しました』

…おい校長。


さっき名前は伏せておくと言っていたが、謹慎処分という事はどの道そいつが誰がなのかいずれわかる事になるぞ?


謹慎ならいっそ今すぐここで名前を挙げてくれた方が久保はまだスッキリするんじゃないのか?


まさかのハードルをあげられるような真似をされて、奴もいい迷惑だろう。

⏰:11/08/11 23:03 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#146 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかも、こうも言ってたな。


『女子生徒と出会って』って。


それですでに、そいつが男子だって事に絞られてしまっただろ。


ただでさえこの学校は男子が少ない。


そいつが1学年という事と男子だという事に限られた時点で男子が劣勢になる。


これじゃあ女子の男子に対する視線が変わってしまうだろうが。

⏰:11/08/11 23:11 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#147 [輪廻◆j6ceQ96kak]
自分の発言には気をつけろよ校長。


館内は先生が注意しても騒ぎは一向に収まらず、学年集会は閉会された。


俺は一つ安心した事がある。


久保のせいで俺に彼女ができた事になったあの時、色んな女子が、その彼女は何歳なのかと聞いてきた。


その時に年齢を言ってしまっていたら今頃危なかっただろう……ん?



いや、待て待て待て待て!

⏰:11/08/11 23:22 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#148 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その後の黒板事件で、久保が黒板に書いたのは確か…


『高見順一 初カノは年下の中学生!?』


…まずい。

いや、でもそれは去年の事だし皆はさすがに忘れているか?


言うまでもなく、それからは誰かが思い出すかもとヒヤヒヤしながら学校生活を送る日々が続いた訳だ。


俺の予想通り、あの学年集会の翌日から久保は学校に来ていない。

⏰:11/08/11 23:29 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#149 [輪廻◆j6ceQ96kak]
当然といえば当然だが、やがて学校に来なくなった久保に皆が疑いを抱き始める。


担任は風邪だとか言ってごまかしているが、もう一週間以上も休んでいては、じきに言い訳は難しくなってくるだろう。


久保…なんとかしてやりたいが、策が思い浮かばない。


でもわかってくれ。


今の俺はお前の味方だ。

⏰:11/08/11 23:33 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#150 [輪廻◆j6ceQ96kak]
カレンダーは1月が終わって2月に突入した。


この月は、魔の期末試験がある。


これで赤点で、さらに追試もダメだったら留年決定だ。


進級できるか否かの最後のチャンス。


俺は自信あるが久保はどうだろうか。


進級するまで謹慎って言っていたが、それじゃあ試験はいつやらせるんだ?


あの校長、言う事が矛盾だらけだ。

⏰:11/08/11 23:46 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#151 [輪廻◆j6ceQ96kak]
気になった俺は休み時間に担任を屋上に呼び出した。


『高見、どうした?』

この雰囲気、まるで刑事ドラマの最後で崖の上などで犯人を説得するシーンみたいだ。


俺は単刀直入に聞いた。


『あの、謹慎になったのって久保なんですよね?』


『え…な、何を言い出すんだ?』

…明らかに動揺してるぞ。


もうちょっと探りを入れてみるか。

⏰:11/08/11 23:57 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#152 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『謹慎って言われた学年集会の次の日から休むなんて、そんな偶然あるんですか?』


『く、久保はだな…風邪をひいて…』

いつも冷静な先生のこの取り乱し様…。


もういい加減認めればスッキリするだろうに。



『久保は俺の友達で、心配だから言ってるんです』

つい、そう言ってしまった。


いつか胸張って奴にそう言える時がくるといいけど。

⏰:11/08/12 00:04 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#153 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『わかった…。でも他の人には言わないで欲しい』

…やっと認めたか。


でもあいにく俺のクラスの奴らは大体、久保だって事に感づいてきてるぞ。


『実はな、久保が携帯電話のネットを通じて知り合った女の子というのは…数学の木下先生の娘さんなんだ』


…え!?

えええええええええ!?



なんだこの衝撃的な展開は…。


俺は先生から聞かされたその衝撃的な事実に、ただ口をポカーンと開けるしかなかった―



〜episode7 END〜

⏰:11/08/12 00:23 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#154 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode8■
『高見vs木下〜人は見かけによらない〜』



…先生。


俺はどうしたらいいんだ。


久保が彼女だと名乗ったその子は中学生にして、まさかの自身の通っている学校で数学を担当している木下先生の娘だったなんて。


でもこれで久保が先生に呼び出された理由がハッキリした。


担任の話では、久保を呼び出した木下先生は…


『黙っておいてやるから退学しろ』

…と久保に言ったそうだ。

⏰:11/08/12 00:40 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#155 [輪廻◆j6ceQ96kak]
例の知り合った彼女が木下先生の娘だとわかった久保は、以前から担任に相談をしていた。


それを聞いた担任が校長に。


そして校長から木下先生へと確認がいき、職員会議を決行。


木下先生が、久保は退学にすべきと言い続ける中、俺の担任はすかさず久保をフォロー。


退学ではなくせめて謹慎にした方がいいという事を校長に伝えた。

⏰:11/08/12 00:46 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#156 [輪廻◆j6ceQ96kak]
大半の職員が担任の言うことに賛同。


木下先生もそれを認めて受け入れるしかなかったのだという。


それにしても、彼の久保に対する言い方は教師としてどうなんだ?


『黙っておくから退学しろ』なんてただの脅しではないか。


途端に怒りがこみ上げてきた俺は、木下先生と戦う事を決めた。


顔は怖いが生徒思いで優しいと思っていたのだが、それは撤回させてもらう。

⏰:11/08/12 00:54 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#157 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今日の放課後にでも屋上に呼び出してやる。


休み時間にそう思っていると…


『高見〜』

久しぶりに聞いたような声がした。


ドアの方を見ると、吉田がニヤニヤしながら立っていた。


久保や木下先生の事で頭がいっぱいで、アンタの存在忘れる所だった…なんて本人に言ったらパンチをくらうな。

⏰:11/08/12 01:05 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#158 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今アンタに構ってる暇はないのだが、後が怖いのですぐに彼の元へ。


『久しぶりだな、元気?』


『はあ、まあまあですかね』

意外にも普通の世間話で内心ホッとする。


『久保の野郎、残念だったわな』


『はいそうですね…って! 吉田さん知ってたんですか?』


『当たり前じゃん。俺が木下にチクったんだから』

…え。


この人、今とてつもなく重大な事をサラッと言わなかったか?

⏰:11/08/12 01:15 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#159 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あのええと…どういう事ですか?』

そう聞きたくなるのは当然だ。


『そのまんまの意味だろ? ちなみに木下の娘の茜ちゃんは俺の妹の友達だから。家にもよく遊びに来るんだよな〜』

普通にケラケラ笑って言ってるが、お前は木下先生の次に最低な奴だよ。


『前に茜ちゃんが家に遊びに来た時さ、彼氏ができたって俺の妹に漏らしてた訳よ。俺それ聞いてどんな奴って聞いてみたんだよ。したら何て言ったと思う?』

…それが久保だったって訳か。

⏰:11/08/12 09:14 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#160 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『お前の予想通り、この高校の1年の久保太一って言いやがってさ。俺、それ聞いて爆笑しまくったわ』

…そこは笑うほどのものではない。


『久保の奴もバカだよな。会った事もない女に軽々しく通ってる学校名とか名前とか暴露しまくっちまうんだもんな』

…こいつ。


彼が年上じゃなかったら俺は今頃殴りかかっていた所だ。

⏰:11/08/12 09:23 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#161 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『お前もさ、そういうのには気をつけろよ〜。じゃな』

…俺は廊下に立ち尽くしていた。


まるで自分の事のように頭が真っ白になりそうだった。


あれ…


なんか息が…


苦しいな…


意識が…


飛びそう―

⏰:11/08/12 09:28 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#162 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここはどこだ?


ゆっくりと目を開ける。


…薬のにおい?


…保健室か。


どうやらあの後、気絶してしまったみたいだな。


『…目覚めた?』

まるで透き通るような綺麗な声がする方に目をやる。


保健室の美人すぎると有名な女の先生が、仰向けに寝転がっている俺の元へやってきた。

⏰:11/08/12 09:34 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#163 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺はこの高校に入ってから保健室には一度もきた事がない為、どんな先生なのかわからなかった。


今初めて知った。


確かに美人だ。


年齢は20代後半くらい。

細いモデル体型に、薄くも濃くもない化粧。


そして触るとぷるんとしそうな唇には綺麗なピンク色の口紅が上品に塗られている。


一見、先生には見えない。


白衣を着ていなければ、この学校の生徒だと勘違いしてしまいそうだ。

⏰:11/08/12 09:43 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#164 [輪廻◆j6ceQ96kak]
当然だけど、俺はその先生を前にして緊張してしまった。


『…あなた過呼吸になったのよ。覚えてる?』

確かに気絶する前に呼吸が激しくなって息をするのがすごい苦しかったな。


…恥ずかしい。

廊下のど真ん中でぶっ倒れたなんて。


『高見くんだっけ…あなた、もしかして恋でもしてるんじゃないの?』

おい、なぜいきなりそんな事を聞く。


しかも的中してるし。


あなたは人の心の中を読む事ができる能力でも持っているのか?

⏰:11/08/12 09:52 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#165 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『恋をするのは悪い事じゃないのよ。むしろ素敵な事』

いや確かにそうだけどさ、今は別にそんな話してる時ではないだろう。


『で…誰なの?』

…はい?


まだ恋をしてるなんて一言も言ってないのに、なぜ恋してる前提で聞いてくる。


…それに言う訳ないだろう。

⏰:11/08/12 09:59 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#166 [輪廻◆j6ceQ96kak]
吉田みたいに誰かに言いふらされたりしたらたまらないからな。


『い、いませんから』

どうせ願いが叶う訳がない恋だし、ここは自信を持って否定しよう。


『ふふふ…可愛い』

え、なんだいきなり。

この意味ありげな微笑みは一体…。


『君のこれからが楽しみになってきちゃった。頑張ってね』

…何を頑張れと言うんだ?


先生はそれ以上何も言わなかった。

⏰:11/08/12 10:08 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#167 [輪廻◆j6ceQ96kak]
だいぶ体調がよくなった俺は、その保健室の居心地の悪さもあり、さっさと教室に戻る事にした。


俺の教室では丁度、数学の授業が行われていた。


チャイムが鳴ったらすぐ木下先生の元へ向かおう。


放課後にしようかと思っていたが、今はなぜか頭が冴えている。


さっきの保健室の先生のおかげかもしれない。


今ならなんでも面と向かって言えるような気がする。

⏰:11/08/12 10:14 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#168 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『そこ! 何くっちゃべってる!』

突然した先生の怒鳴り声に、辺りは驚きの顔をした。


この木下先生が大声を張り上げる所なんて初めて見たからだろう。


『上野! 倉野! お前らだ! ちょっと放課後残りなさいよ!』

…まさか名指しまでするなんて、この先生まるで人が変わったようだ。

⏰:11/08/12 10:30 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#169 [輪廻◆j6ceQ96kak]
上野と倉野はよく数学の授業中に話をしているが、それは今に始まった事ではない。


なぜ今になって注意を始めた?


そしてなぜ今まで注意しなかった?


どうやら、久保の件でイライラしているらしいな。


でもそれで生徒に当たるのはどうなんだろう。


喋ってる二人も悪いけどさ、今まで注意しなかった先生も先生だろ。

⏰:11/08/12 10:34 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#170 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから皆、緊迫したムードの中で授業を受けた。


先生が背を向けて黒板に書くと、今までは携帯電話を開く奴らがいたが、さっきの事があったせいか珍しく誰も携帯電話をいじっていない。


これはこれでよかったのかもしれないが、先生の態度は許せない。


『人は見かけによらない』ってこういう事を言うのか。


いや、元々顔が怖いからこういう場合は『人は見かけによる時もある』が正しいのか?

⏰:11/08/12 10:39 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#171 [輪廻◆j6ceQ96kak]
やけに長く感じた数学の授業も、鳴ったチャイムによって終わった。


木下先生が教室を後にしてから、皆さっきの事を色々と言い始める。


『意外だよね〜』


『びっくりした』

…などの会話。


俺はすぐに席を立って、職員室へ向かう先生に近づいていった。

⏰:11/08/12 10:54 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#172 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『先生、ちょっといいですか?』

ついに話しかけてしまった。


…だが後悔はしてない。


先生はすぐに俺の声に気がついて振り返った。


『…何か用かね』


『あの…久保の事ですけど』


『…来なさい』

ここでは分が悪いと判断したらしい。


先生の後に黙って着いて行くと、なぜかトイレにたどり着いた。

⏰:11/08/13 01:39 📱:T004 🆔:wGsNjQTg


#173 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『それで…久保がどうしたというのかね』

入るなり先生は俺に背を向けて切り出した。


『先生の娘さんと知り合ったっていう久保に、退学しろって言ったそうですね』


『それがどうした?』

生徒に確信を迫られたっていうのに全く動揺するそぶりは見せない。


それどころか、大きな自信に満ち溢れている。

⏰:11/08/13 23:25 📱:T004 🆔:wGsNjQTg


#174 [輪廻◆j6ceQ96kak]
肝が据わっているというのだろうか。


こんな態度でよく教師をしているものだ。


俺は拳を震わせて強気な態度で攻めた。


『久保が先生の娘と付き合ってるからって別に退学に追い込もうとする必要はないんじゃないですか?』


『…君も父親になればわかる。ワタシの娘…茜はまだ中学生だぞ。まだ未熟な娘が知らん男に言い寄られ、強引に交際を迫るなんぞもってのほかではないかね』

…言い分はわかる。

が、先生は勘違いをしている。

⏰:11/08/13 23:42 📱:T004 🆔:wGsNjQTg


#175 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ちょっと待ってくださいよ。久保はそんな簡単に交際を迫ったり言い寄ったりするような奴じゃありません』

それはなにより俺が知っている。


この先生はどうやら自分の娘の事を棚にあげて久保に責任を全部負わせようとしているようだ。


『しかしC組の吉田くんが教えてくれたのだよ。久保はそういう奴だと』

吉田の奴、久保の事何も知らない癖にそんな事を…。

⏰:11/08/13 23:58 📱:T004 🆔:wGsNjQTg


#176 [輪廻◆j6ceQ96kak]
何か方法を考えろ。


久保だけに問題があると思っている先生の考えをぶち壊す方法を…。



…………あった。


自分でもびっくりするくらい意外にもすぐに思い浮かんだ。


保健室の先生にますます感謝だ。


頭が妙に冴えている。

⏰:11/08/14 00:03 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#177 [輪廻◆j6ceQ96kak]
でも今は言えないな。


先生を追い詰めるには今日の放課後、久保の家に言って証拠を貰ってくるしかない。


勝負の決着は明日つけてやる。


『言いたい事はもうないようだね。次の授業の準備があるから失礼するよ』

…と、俺の肩をポンと叩いて出て行った。


言いたい事は明日全部言ってやるよ。


それまで先生も、うまい言い訳を考えておく事だな。


俺はその場でニヤリと笑いながらのガッツポーズをとったのだった―



〜episode8 END〜

⏰:11/08/14 00:18 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#178 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode9■
『勝利の女神』



木下先生との勝負を明日に控え、俺はニヤけながら授業を受けていた。


でもそのニヤけ顔にストップをかけたのは、帰りの号令の時に先生が言った衝撃的な言葉だった。


『みんな落ち着いて聞いて欲しい。さっき久保の両親から電話があって、久保が…自殺未遂をしたと…』

それを聞いた皆は一瞬だけ静まり、そしてすぐに大騒ぎした。


…久保が自殺未遂?


俺は確認するようにそう思った次の瞬間、廊下まで普通に聞こえる悲鳴のような大声を張り上げた。

⏰:11/08/14 00:34 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#179 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もちろんそれから教室内は大混乱の渦。


担任が『静かに!』と叫ぶように連呼しても、当然だけどこればっかりには一向に収まる気配はなかった。


騒ぎを聞きつけた他のクラスの奴らも、野次馬のように俺達の教室内を廊下から見物していた。


…無理もない。


これで、木下先生の娘である女子中学生と知り合い交際し、謹慎処分を受けたのが久保である事がほぼ知れ渡る事になるだろう。

⏰:11/08/14 00:46 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#180 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保がそんな事をするなんて…。

それもこれも全て木下先生、アンタのせいだ。


教師が生徒を自殺未遂に追い込んだなんて知られたら大問題になる。


例の女子中学生が木下先生の娘だって事はまだ知られていないみたいだ。


その事実を知っているのは俺の知る限りじゃあ、俺と担任と久保と吉田の四人。


吉田の性格上、この騒ぎを知ったら嬉しそうにその事実をぶちまけるに違いないだろう。


そうすれば久保の自殺未遂は木下先生が原因である事が自然と立証される。

⏰:11/08/14 01:00 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#181 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それで先生に処分が下されれば嬉しい所だ。


時限爆弾がいつ爆発するか…少し楽しみになってきた。



すでに下校時間が過ぎた。


だが教室内にはまだほとんどの人が残っていて久保の話題で持ちきり状態。


俺は、しどろもどろになっている担任の元へ向かった。


『あの、久保の事…心配なので様子見に行ってきてもいいですか?』


『あ、ああ…。今は3条通りにある病院にいるから行ってあげてくれ…』

⏰:11/08/14 01:15 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#182 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺がすぐに向かおうと廊下へ出ようとすると…


『高見くん…』

後ろからした声に振り返ると、雪乃ちゃんが不安そうな表情で立っていた。


『私も行っていいかな』


『うん、行こう』

そう言った時、俺は反射的に彼女の手をひいて走り出していた。


とにかく久保の事が心配で仕方がなかった。

⏰:11/08/14 01:27 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#183 [輪廻◆j6ceQ96kak]
学校から10分ほど走った所で、久保が搬送された病院に到着した。


受付で病室の番号を聞き、2階の203号室へと急ぐ。


『久保太一 様』

と名前の書かれたプレートがついた部屋をコンコンとノックすると、しばらくしてから母親が出てきた。


『あの、久保と同じクラスの高見といいます』


『私も久保くんと同じクラスの松下雪乃です』

俺達が名前を言うと久保の母親は無言で、部屋に入るよう誘導した。

⏰:11/08/14 02:07 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#184 [輪廻◆j6ceQ96kak]
病室の奥に向かうとベッドに仰向けの状態で、頭に包帯が巻かれた久保の姿があった。


『久保くん…』

雪乃ちゃんがものすごい心配そうに呟く。


少しの沈黙の後、ずっと無言だった久保の母親がやっと口を開いた。


『来てくれてありがとう。太一、さっきまで目は覚めてたのよ。でも…』


…でも?

俺は母親のその言葉がとてつもなくひっかかった。


だが、それ以上は下を向いたままで何も言う事はなく時間だけが静かに過ぎていった…。

⏰:11/08/14 02:18 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#185 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保…


目を開けてくれよ…


どうしちゃったんだ…?


寝たフリでもしてるのかよ?


お前はそんなキャラじゃないだろ?


心の中で久保に問いかけるように言い続けた―


『太一!』

俺と雪乃ちゃんがずっと下を向いていた時、母親の突然出した大きな声でハッとしてから久保の方を見た。

⏰:11/08/14 02:28 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#186 [輪廻◆j6ceQ96kak]
奴は…うっすらとだけど目を開けていた。


視線は天井を見ていたが、やがて俺達に気がついたのか視線をゆっくりと天井から俺、そして雪乃ちゃんへと順に追うように見てきた。


『久保!』


『久保くん!』

俺達は座っていた椅子から同時に立ち上がった。


『久保! よかったぁ…』

こういう場合は奴の手を両手で握りしめながら言うべきなのだろうけど、どうも照れくさくてできなかった。

⏰:11/08/14 02:39 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#187 [輪廻◆j6ceQ96kak]
とりあえず一安心だ。


さっき母親が『でも…』と言っていたから、まさかの最悪な展開になるかと思っていた。


目を覚めたのはいいけど、久保は視線を再び天井に戻し一言も喋りかけてはくれなかったので俺達は母親に頭を下げてから帰った。


明日くらいになれば口を利けるようになるだろう。


部屋を去る際に久保に『また明日来るから』と伝えて帰宅した。

⏰:11/08/14 14:39 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#188 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『久保くん、よかったね』


帰り道で雪乃ちゃんが聞いてきた。

そう言って見せる微笑みは、まるで無理して作っているようだった。


俺に悲しい顔とか暗い顔を見せたくなくて無理に笑っているんだろう。


『…許せない』


『えっ?』

俺が小さい声でポツリと言った言葉に、彼女はすぐに反応した。

⏰:11/08/14 14:46 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#189 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼女には言っておいた方がいいのかもしれない。


俺は久保の自殺未遂の原因と思われる事を全て話した。


彼女は始めは驚いていたが、最後には納得したような表情を見せて言った。


『木下先生ってそんな人じゃないって思ってたのにな…』


『雪乃ちゃん…俺の言う事信じてくれるの?』

普通であれば『先生はそんな人じゃない』など真っ向から否定すると思っていたが、彼女は違った。

⏰:11/08/14 14:56 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#190 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『当たり前じゃない。だって高見くんは人を傷つける嘘をつくような人じゃないでしょ?』

…なんて純粋なのだろう。


俺は彼女の言葉に思わず涙が出そうになった。


もちろん、なんとか横と上をを向いたりしてごまかしたが。



『じゃあまた明日ね』

そう言って真っ赤で綺麗な夕日を背に手を振る彼女はやはり天使…


いや、その時は女神に見えた。

⏰:11/08/14 15:04 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#191 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺はその夕日に向かって


『雪乃ちゃん好きだー!』

と叫びたくなった。


…当然できなかったが。



こういうのが青春というのかとほのぼのと感じていた俺は、その時は全く知るよしもなかった。


病室で久保の母親が言っていた…


『でも…』

その言葉の本当の意味を―



〜episode9 END〜

⏰:11/08/14 15:13 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#192 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■Last episode■
『桜、舞う頃』(前編)



翌日―


学校では昨日の久保の話題がまだまだ続いていた。


俺が席に着くと同時に、クラスの奴らが次々と俺の周りに集まってきた。


『高見! 久保のいる病院行ってきたんだって?』


『久保どうだったの?』

次々と投げかけられる質問。


まるでマスコミの格好の餌食にされているような気分だ。


誰か一人カメラを手にしててもおかしくないくらいに。

⏰:11/08/14 15:28 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#193 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺が仕方なく答えていこうとした時…


『皆、久保くんの事面白がってるんでしょ?』

そんな言葉が聞こえて後ろを見ると、雪乃ちゃんが険しい表情でクラスの奴らを見ていた。


『ゆ、雪乃ちゃん…』

彼女の強気な顔なんて初めて見た気がする。


おとなしい人ほど怒ると怖いというのはこの事か。

⏰:11/08/14 15:46 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#194 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『そんなんじゃないよ。俺達は久保が心配で…』

一人の男子がそう言うと、雪乃ちゃんはますます険しい表情になった。


そして言い放った…


『心配ならなんでお見舞いとか行かなかったの?』

もっともだ。


俺は心の中で彼女を応援した。


彼女の言った言葉でクラスの皆は黙り込み、教室は異様な雰囲気に包まれる。

⏰:11/08/14 15:56 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#195 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しばらくその状態が続いてから、鳴ったチャイムによって皆は黙ったまま席に着いた。


雪乃ちゃん…俺は君を見くびっていた。


このクラスで最強なのは野村だと思ってたけど、君もある意味最強だ。


これじゃあ吉田とも気が合う訳だと納得した時であった。


『じゃあ号令』

担任がいつものように言う。


しかし日直は黙ったままで『起立』という言葉を発さない。

⏰:11/08/14 19:14 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#196 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『今日の日直…市川と斉藤。どうした?』


『…………』

なんだ果てしなくこの気まずい雰囲気は。


二人共…このまま黙ってたら真面目な先生だってキレるぞ多分。


しかし先生は皆の気持ちを悟ったように小さくため息をついてからこう言った…


『皆、久保が心配なんだな?』

この一言に、皆は無言で頷いた。

⏰:11/08/14 20:02 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#197 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その反応に、ちょっと調子がいいなと思う。


おそらく雪乃ちゃんも俺と同じ考えだろう。


『時間がある人は学校が終わってからでも見舞いに行ってあげて欲しい…では日直』


『起立』

この中で俺と雪乃ちゃん以外で本当に心配に思っててお見舞いに行きたがる奴はいるのだろうか。


でも行ったら行ったで、久保に対して好奇心からの質問が飛び交うのは目に見えている。

⏰:11/08/14 20:23 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#198 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は、久保の友達としてそれは許せない。


お見舞いは代表を二人か三人くらい決めて行くくらいがちょうどいいだろう。


起立から着席し、俺は手を上げた。


『先生!』


『高見、どうした?』


『お見舞いは何人か代表を決めて行く方がいいと思うんですけど』

俺の提案に、隣に座っている雪乃ちゃんがうんうんと何度も首を縦に振って頷いた。

⏰:11/08/14 20:32 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#199 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ああ…確かに高見の言うとおりだな。では今日の放課後、久保の見舞いに行ってくれる人は手を挙げて欲しい』

俺と雪乃ちゃんがすぐに手を挙げた。


周りを見ると、もう一人だけ挙手している女子がいる。


『よし、じゃあ高見と松下と野村。頼んだぞ』

…野村可奈恵か。


一応は雪乃ちゃんの友達だし、彼女なら面白がったりはしないだろう。

⏰:11/08/15 09:03 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#200 [輪廻◆j6ceQ96kak]
休み時間―


『高見、雪乃…アンタらは偉いよ』

そう言いながら近づいてきたのは今日、久保のお見舞いに一緒に行く野村可奈恵だ。


ちょっと今の言い方はおばさんくさかった…なんて言えないな。


『カナが手挙げるなんて思ってなかったよ』

隣で雪乃ちゃんが微笑みながら軽々しく言った。


…怖いもの知らずなのか。

俺は一瞬ヒヤっとしたが、野村は雪乃ちゃんと同等の笑みを浮かべた。

⏰:11/08/15 09:15 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#201 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ホラ、雪乃のイチ親友として放っておけないじゃん?』

…そこかよ。

久保はどうでもいいのかよ。


『カナ、ありがとう』

…おいおい、雪乃ちゃん。

君もそこは礼を言う所じゃないから。


この二人が揃うと…とりあえず怖いと思った。

⏰:11/08/15 09:23 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#202 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『今日病院行く前に花でも買ってく?』


『あ、いいね』


『そうそう…隣のクラスのさぁ…』

二人は俺の存在を忘れて女子の会話…いわゆるガールズトークを始めてしまった。


次の授業までまだ時間があるので、立ち上がってトイレへ向かおうと廊下へ出た時…


『高見〜』

この声はやっぱり…。

⏰:11/08/15 09:35 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#203 [輪廻◆j6ceQ96kak]
声のした方を見ると、満面の笑みを浮かべた吉田の姿。


アンタ…他に友達はいないのかよ。


俺も人のことは言えないが。



『なんですか?』


『昨日、久保んとこ行ってきたんだって?』


『だからなんですか?』

…もう面倒くさい。


俺は棒読みで、聞かれた事に対して一言で返した。

⏰:11/08/15 09:40 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#204 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『そんな怖い顔すんなって! 俺だってこう見えて心配してんだよ?』

…いや、そんな笑みを浮かべながら言われても全くそうは見えませんから。


その言葉どの口から出るか。



『でさ、お前…雪乃と二人きりで見舞いに行ったんだってな?』

…出た。


またヤキモチか?


見た目は男らしいけど中身は全く男らしくないな。

⏰:11/08/15 09:45 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#205 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『昨日の夜、雪乃と電話してたらお前と二人で行ったって聞いたんだよ』


『あれは、俺が病院に行こうとしたら雪乃ちゃんも行きたいって言ってきたから…』


『…さすがは俺の女だな。俺に似て人を心配する心遣いができるイイ子よなぁ』


…そこかよ。

顔真っ赤にしてキレてくると思って身構えてしまったではないか。

⏰:11/08/15 09:56 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#206 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あれ高見くん…優斗くんと仲いいんだね』

いきなり後ろから雪乃ちゃんの声がした。


俺は一瞬戸惑ったが、それ以上に吉田が戸惑っていた。


…なぜアンタがしどろもどろしている。


『ちょっと邪魔』

雪乃ちゃんの隣に立っていた野村が、俺じゃなく吉田の方を見て言った。


…え?

野村…今、もしかして吉田に言ったのか?


年上の吉田に?

⏰:11/08/15 10:12 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#207 [輪廻◆j6ceQ96kak]
なんという度胸だろう。


いや、気が強い野村だからこそかもしれない。


一方、邪魔だと言われた吉田は…


『あっ悪い悪い…』

…弱ェ!


野村を前にした吉田の表情はさっきまでの笑みが完全に消え、それどころかまるで野村の顔色を伺うような表情に変わった。


普通の人にとってはヒヤヒヤな空気なのだが、吉田の情けなさそうな顔を見ていたら少し面白くなってきた。

⏰:11/08/15 10:20 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#208 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『うぷっ』

…まずい。

吉田のその顔を見る度に、思わず吹き出しそうになる。


必死に笑いをこらえようと、自分で自分の腕を指で痛くなるほどつねった。


『あ、優斗くん。高見くんにあのストラップ返してあげてね。あれは買い物に付き合ってくれたお礼にあげたものだから』

追い討ちをかけるように、雪乃ちゃんが笑みを浮かべて言った。


『あ、ああ…わかってるって』

おい、本当にわかってるならもっと早くに返せよと俺も追い討ちをかけたい所だよ。

⏰:11/08/15 10:47 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#209 [輪廻◆j6ceQ96kak]
吉田はあたふたしながら一度自分の教室に戻り、少ししてすぐ俺達の所に戻ってきた。


吉田のその手には、久しぶりに見る去年のクリスマスに雪乃ちゃんから貰った金色の招き猫ストラップが光っているではないか。


『ほらよ…』

俺はそれを受け取り、ギュッと強く握りしめた。


吉田は最後に俺に一瞬だけ『覚えてろよ』と言わんばかりの睨みをきかせると、教室に帰っていった。

⏰:11/08/15 11:06 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#210 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん、よかったね』


『あ、ありがとう』

そんなニコニコしながら言われると、つい赤面してしまうではないか。

…もうしているけど。


『雪乃もさ、なんであんなのと付き合ってんの?』

俺達の雰囲気をぶち壊すように野村が割って入り込んだ。


『優斗くんは私のお母さんの親友の息子さんだからね…色々あるんだよ』

…ちょっと待て。

そんな事実初めて知ったぞ。

⏰:11/08/15 11:21 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#211 [輪廻◆j6ceQ96kak]
という事は、親に言われて仕方なく付き合ってる感じですか?


これはこれでチャンスかもしれない。


雪乃ちゃんの方から彼に惚れて付き合ったわけではないとすると尚更だ。


俺はストラップを握りしめた拳を見ながらニヤついた。


恋する前は、そういうは面倒くさいと思っていたが、恋をするとこうも心が生き生きするとは。


性格にも積極性が出てくる感じだ。

⏰:11/08/16 09:25 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#212 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>211 訂正

そういうは ×
そういうのは ○
――――――――――


『ちょっと高見? アンタ何ニヤけてんの?』

野村が俺の表情に気がついてしまった。


『い、いや…なんでもない』


『アンタもしかして…』

…え。

まさか雪乃ちゃんが好きな事バレた?


野村と俺のにらめっこが数秒間続いてから野村が言った言葉に俺は唖然とする。


『アンタまさかとは思うけど、吉田のこと…』

⏰:11/08/16 09:35 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#213 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…は?』

何を言ってるんだコイツと思った。


『あれ、高見くん…そうなの?』

…ちょい待ち!


雪乃ちゃんまでなんでそんな事を!


俺は確かに草食系男子だと思うし、恋愛には興味がなかったよ。


でもさすがに同性を好きになったりなんて、もっとあり得ないから。

⏰:11/08/16 09:40 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#214 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『そんなのあり得ないし』

俺は苦笑いしながら即、否定した。


『…そうだったら面白かったのにねぇ』

そう言う野村は、まるで噂好きのおばさんのようだ。


本人におばさんっぽいなんて言ったら吉田以上のパンチ…いや、ビンタをくらうだろうから言わなかったが。


ともあれ、変なイメージを植え付けられずに済んだ。

⏰:11/08/16 09:46 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#215 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃ、今日の放課後ね。高見、アンタも花買うんだよ』

…言われなくてもそのつもりだから安心してくれ。


そして次の授業を知らせるチャイムが鳴った。


吉田…アンタに止められたせいでトイレに行きそびれたではないか。


でもおかげでこの招き猫ストラップが戻ってきたわけだから、ある意味感謝だな。

⏰:11/08/16 09:56 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#216 [輪廻◆j6ceQ96kak]
次の授業は数学だった。


当然、担当は木下。


『自分は悪くない』みたいなすました顔しやがって。


そう思って先生を影から睨みつけながら授業を受けた。


そして教科書の問題を当てる時、俺と思わず目が合った瞬間に…


『…じゃあ高見。85ページの問1から問5まで答えてもらおうかな』

…なんだそれ。

いつもだったら1問につき一人を当てていた癖に。


あのトイレでの事があってからか、俺は先生の格好の的になってしまったようだ。

⏰:11/08/16 10:13 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#217 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼こそが本当の敵なのかもしれないとその時感じた。


それにしても、的になるんだったら俺の自信のある教科がよかったよ。


数学は全教科の中で一番苦手な科目なのだ。


俺が答えられずに黙っている状態が少し続いた後、隣の席の雪乃ちゃんが一枚の紙をそっと俺の机にスライドさせるように置いてきた。

⏰:11/08/16 10:21 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#218 [みゆ]
ひどい先生ですね><

⏰:11/08/16 11:55 📱:841SH 🆔:oveDIIGk


#219 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>218さん
ありがとうございます。

こんな先生がいたらムカつくな〜とか思いながら書いてます(^^)

⏰:11/08/16 16:04 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#220 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は反射的にその紙をチラリと見ると、それには先生が当てた問1から問5までの問題の答えが完璧に書かれているではないか。


『高見、どうした? わからないかぁ?』

木下は小馬鹿にしたような目つきで言う。


俺はありがたく雪乃ちゃんがくれた答えが書かれた紙をチラチラと見ながら全ての問いに答えた。


『…なんだ。わかっているのなら早く答えなさいよ』

…ラッキー。


カンニングペーパーを見ていた事はバレなかったようだ。

⏰:11/08/17 23:31 📱:T005 🆔:oMmBgzuY


#221 [輪廻◆j6ceQ96kak]
次の休み時間になったら、雪乃ちゃんに思いきり感謝しなくてはならないな。


彼女には借りを作ってばかりだし、そろそろこちらからもお礼をしたい所だ。


そして休み時間―


チャイムが鳴って木下が出ていったのと同時に隣の雪乃ちゃんの方を見た。


『あの雪乃ちゃん…さっきはありがとう』


『…どういたしまして。それにしても、木下先生ひどかったね。高見くんを馬鹿にするような事言ったりして』

そんな事、わかってくれるのは彼女だけだ。

前にも言ったが、一人でも心強い味方がいてくれる事がどれだけ素晴らしい事か。

⏰:11/08/18 00:06 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#222 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見。木下が呼んでるぞ』

前に数学の授業の時に喋っている事を注意された上野が俺の所に来て言った。


指さす方を見ると、ドアの所で木下先生が『来い』と言わんばかりの視線を向けている。


…まさかとは思うがさっきのカンニングがバレたのだろうか?


いや、それならその時点で注意するだろう。

⏰:11/08/18 08:43 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#223 [輪廻◆j6ceQ96kak]
嫌な予感を胸に先生の元へ。


『高見、ちょっと来なさい』

そう言って俺を連れ出して向かった先はトイレだ。


…なぜトイレなのだろう。


以前と同じような雰囲気になった。

木下は俺に背を向けてポケットに手を突っ込んでいる。


『高見。君は昨日、久保のいる病院に行ったらしいな?』

…セーフか?


どうやらカンニングの事ではないらしい。

⏰:11/08/18 08:53 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#224 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『それがなんですか?』

わざわざトイレまで来なくても、廊下で言えばよかったんじゃないか?


『行ったなら、久保の親から聞いているのだろう?』


『え…何を…?』

この後、木下の口から出た言葉に俺は驚愕し言葉を失う事になる。

⏰:11/08/18 09:51 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#225 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『久保は…失声症になってしまったらしい』


『……しっせい…しょう?』

呆然とした。

一瞬冗談だと思った…いや、思いたかった。


『昨日見舞いに行ったのだろう? もしかして聞いていなかったのかね?』


『…………』

こいつ…なんでこんなあっけらかんとした顔をしてるんだ?

⏰:11/08/18 11:57 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#226 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…なっ!』

先生が突然倒れた。

それは当然だろう。


気がついたら俺は先生を殴っていたのだから。


…でもなぜだろう。

口より先に手が出ていた。


それに不思議な事に、先生を殴ったというのに後悔が襲ってこない。


むしろ今は殴って正解だったと心の中にいるもう一人の俺に言われた気がした。

⏰:11/08/18 12:10 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#227 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺に殴られた先生は頬を手で押さえながらゆっくり立ち上がり


『高見…どういうつもりだね、これは…』

と俺を睨みつけながら言った。


『久保…あいつがそうなったのは先生のせいだろ!』


『待ちなさい。一体何の話をしているのかね』

…話にならない。

⏰:11/08/18 20:14 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#228 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『もういいです』

その場を立ち去ろうとした時、先生がとっさに俺の肩をガッと掴んだ。


『待ちなさい』


『もう話す事なんてありませんから』

俺はそう言って肩を掴む手を振りほどいてトイレのドアを開け廊下へ出た。

その際に後ろで先生が言い放った。


『あまり人を簡単に信用してはいかんよ!』

…馬鹿か。


最初から信用してないよ。

先生、アンタだけは。

⏰:11/08/18 20:27 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#229 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その日の放課後、俺と雪乃ちゃんと野村の三人で花屋で花束を買ってから久保のいる病院へ向かった。


『久保くん大丈夫かな…』

病室へ向かう途中の廊下で雪乃ちゃんがやけに心配そうに呟く。


もしかすると雪乃ちゃんは久保の事が…


いやいや、まさかね。


それよりも、木下先生が言っていた事がまだ信じられなかった。

⏰:11/08/18 20:38 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#230 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保が、声を失う病…


つまり…失声症だなんて。


この二人にはもちろん、クラスの皆にも言えなかった。


もし知ったら大騒ぎになる事はわかりきっていたから。


『あった、ここだ』

雪乃ちゃんが病室を見つけ、俺達三人は中に足を踏み入れた。

⏰:11/08/18 20:44 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#231 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あれ、久保くんだけなんだ…』

今日は母親は来ていないようだ。


昨日と同じく奥のベッドで仰向けに寝ている久保の姿があり、傍へ行く。


『久保!』

俺が、目をつぶっている久保に大きな声で呼びかけると、ゆっくりと目を開けた。


『久保くん!』

雪乃ちゃんも嬉しそうに呼びかける。

⏰:11/08/18 20:57 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#232 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『久保、調子はどうなの?』

野村が心配そうな顔で聞く。


しかし久保は応えない。


黙ったまま俺達をジッと見つめている。



喋りたくても喋れないんだ―


そう思った瞬間に、目に涙が浮かんできた。


なんとかこぼれ落ちないように上を向いて、乾いてくるまで待つ。


でも、その不自然な俺の行動に雪乃ちゃんがすぐ気がついた。

⏰:11/08/18 21:07 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#233 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん、泣いてるの?』


『えっ? い、いやそんな事ない…け…ど』

…ダメだ。

女に涙を見せるなんて事したくなかったのに。


『雪乃、こういう時は何も見てない事にしておきなよ』

野村が俺をフォローするように雪乃ちゃんに言う。


『あ、ごめん…高見くん。でも私も泣きたいよ…』

そして俺につられて彼女も泣き出した。

⏰:11/08/18 21:21 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#234 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ちょっとちょっと、雪乃までどうしちゃったのさ!』

いつにもなく野村があたふたしながら言う。


『別に死んだ訳じゃないんだからさ…』

…野村、少しは空気を読んでほしい。


これは悲し泣きではなく嬉し泣きなのだ。


雪乃ちゃんが落ち着くまでの間、俺と野村は久保の傍で顔を見続けていた。

⏰:11/08/18 21:36 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#235 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃ちゃんは嬉し泣きだが、俺の場合は悲し泣きだった事は言わなかった。


しばらくして病室のドアがノックされ、担任が入ってきた。


『あ、先生…』


『心配になってな。それより久保はどうだ?』

担任は久保の顔をちょこっと見てから、隅で泣いている雪乃ちゃんの方を見る。

⏰:11/08/18 21:57 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#236 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『松下…どうかしたのか?』


『先生。空気を読んでください』

野村がツッコミを入れるように言うと、どこからか小さな笑い声が聞こえた。


それは雪乃ちゃんでも野村でも担任でもない。


そう、久保だった。


『久保!』

俺は誰よりもすぐに久保に声をかける。

⏰:11/08/18 22:10 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#237 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ちょっと高見…いきなりどうしたの?』

野村が不思議そうに聞いてきたが、俺は無視して久保の顔を凝視した。


『久保…よかった。そうやって笑えるんだな』


『高見、ちょっと聞いてる? というか…生きてるんだから笑うに決まってるじゃん』


『野村…それはなんか失礼じゃないか?』

担任と野村は、漫才のようなやりとりを見せていた。

⏰:11/08/18 22:20 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#238 [輪廻◆j6ceQ96kak]
失声というからには、笑う事すらもできないと思っていたが、違ったようだ。


『先生、ちょっと久保の状態を聞いてくるな』

そう言って担任が病室から出ていった。


担任も、久保が失声症だということは聞かされていなかったようだ。


では、なぜ数学の木下先生には知らされていたのだろうか。

⏰:11/08/18 22:32 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#239 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もしかすると木下先生は昨日、ここに来たのではないか?


それなら納得できるけど、あの先生が担任でも副担任でもないクラスの生徒のいる病院にお見舞いに来るのには違和感を覚える。


すると、誰かを通して知った事になる。


…久保の母親だろうか?


木下先生にはもう話す事はないと言ったが、今すぐにでも言いたい事ができてしまった。

⏰:11/08/18 22:40 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#240 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しばらくして、担任が血相を変えて戻ってきた。


『先生…どうかしたんですか?』

担任は野村を無視して久保の傍に駆け寄る。


『ちょっと! 先生まで無視ですか…』


『野村! いい加減にしろよ!』

久保の事を何もわかっておらず、ふざけている野村に我慢できなくなった俺は彼女相手に初めて声を荒げた。

⏰:11/08/18 22:59 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#241 [輪廻◆j6ceQ96kak]
野村は俺の声に驚いて周りの空気を悟ったのか、おとなしくなった。


『先生、久保くんどうかしたんですか?』

そう言う雪乃ちゃんの顔は、たくさん泣いたせいか目の回りが真っ赤になっている。


『今担当の先生から聞いてきた。久保は…心因性失声症という病気にかかったと…』

担任のその言葉を聞いた雪乃ちゃんと野村は、途端に呆然となった。

⏰:11/08/18 23:11 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#242 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『先生…心因性ってどういう事ですか…?』

雪乃ちゃんが震えた声で担任に聞く。


『主に精神的なショックやストレスなどが原因という事だ』


『…それってやっぱり、久保くんが謹慎になった事が関係しているんですか?』


『松下…知っていたのか』

そう言って担任は俺に何か言いたげな視線を向けてきた。

⏰:11/08/18 23:27 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#243 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…まあいい。皆にはいずれわかる事だしな』

…危ない。

雪乃ちゃんに言ってしまった事で怒られるかと思った。


『皆へは、来週の期末テストが終わってから言う。それまでこの事はお前達の胸にしまっておいて欲しい』

担任のお願いに、俺達は小さく頷いた。

⏰:11/08/19 08:28 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#244 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『よし、じゃあ先生はテストの問題作りがあるから学校に戻るな。お前達もあまり遅くまでいないようにな』

担任は俺達に手を振って、病室をあとにしていった。


『じゃあウチらもそろそろ帰る?』


『雪乃ちゃん、野村…先に帰っていいよ。俺はもうちょっとだけ残る』


『カナ、私も残るから帰っててもいいよ』

俺と雪乃ちゃんが残ると言った中、野村は申し訳なさそうな顔をして『じゃあ帰るわ』と言って病室を出ていった。

⏰:11/08/19 08:44 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#245 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん…私、高見くんに謝らなくちゃならない事があるの』


『え…?』

彼女が謝るような事何かしたか?


『昨日の帰り道で高見くんから聞いた事…実は知ってたの』


『どういう事?』

つい疑問系で聞いたが、薄々わかってきた気がする。

⏰:11/08/19 09:06 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#246 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『前に優斗くんから聞いてたの。木下先生の娘さんと久保くんが付き合ってる事とか、謹慎になったのは久保くんだった事とか…』


『そうだったんだ』

…吉田のやつ、この場合だと他の人に言いふらすのも時間の問題だろう。


『昨日は、初めて聞いた事にしちゃってごめんなさい』


『いやいや、別にそんな謝るような事じゃ…』

深々と頭を下げる彼女に、俺は必死に頭を上げるように言った。

⏰:11/08/19 09:21 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#247 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その時だった。


『た………か…………み…』

ベッドにいる久保が途切れ途切れの声で俺の名前を呼んだ。


俺と雪乃ちゃんは驚いて、すぐ久保の傍にいった。


『久保くん! 喋れるの!?』

俺が話しかける前に雪乃ちゃんがすかさず話しかける。

⏰:11/08/19 09:30 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#248 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…き…きて……』

かなり近くに寄らないと聞き取りづらい小さな声ではあったが、俺はとにかく久保が喋れる事に安心した。


『久保、なんだ?』


『きて……く……れ…て……さ…』

雪乃ちゃんは首をかしげていたが、俺は久保が何を言いたいのか理解できた。

⏰:11/08/19 09:36 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#249 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…ああ、お前の友達なんだから当たり前だろ。それよりあまり無理して喋ろうとするな』


『高見くん…久保くんが何て言ってるのかわかるの?』


『うん、もちろん』

例え喋れなかったとしても、友達だったら心で通じ合えるものだと誰かが言っていた。


『……うう』

久保が少しでも喋れる事に安心したのか、雪乃ちゃんがまた泣き出した。

⏰:11/08/19 09:45 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#250 [輪廻◆j6ceQ96kak]
こういう場合になんと声をかけてあげればいいのかわからない俺は、申し訳ないと思いつつも何も見ていない事にした。


『久保、何か言いたい事があったらここに書いて』

俺は鞄からノートと鉛筆を取り出して久保に渡した。


無理して喋らない方法は、メールのように文章を書いて伝える事だろう。


久保は早速ノートに字を書き始めた。

⏰:11/08/19 09:56 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#251 [輪廻◆j6ceQ96kak]
「松下さん なんで泣いてるの?」

そう書かれた文章を見てから、雪乃ちゃんに無言でノートを手渡した。


雪乃ちゃんは涙で真っ赤になった顔でその文章を見ると、とっさに涙を腕で拭い、久保の方を見てニコリと微笑んだ。


『ふふ…泣いてないよ』


『雪乃ちゃん素直じゃないね〜』


病室に三人の笑い声が飛び交った―

⏰:11/08/19 10:09 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#252 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あ、そうだ久保。よかったらお前の携帯電話貸してくれない?』

俺がそう言うと、久保は頷いてベッドの傍にある引き出しを指す。


俺はその引き出しを開けて携帯電話を借りた。


この携帯電話に入っているメールが強力な証拠になる。


明日、木下先生に言いたい事はたくさんあるぞ。


『じゃあ明日も来るからな』

俺と雪乃ちゃんは久保に手を大きく振ると、久保も最後に笑顔を見せながら手を小さく振ってくれた―

⏰:11/08/19 10:29 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#253 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■Last episode■
『桜、舞う頃』(後編)



その日の夜、俺は父親から衝撃的な言葉を聞いた。


『順一、4月から転勤する事になった』

…突然の事だった。


『て、転勤って…どこにだよ?』


『…北海道だ』

あまりの事に、頭の中が真っ白になった…。


転勤となるともちろん住む家も学校も変わる訳だ。


それよりも、久保とか雪乃ちゃんなど今の学校の奴らと離れる事になるのが信じられなかった。

⏰:11/08/19 10:40 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#254 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あと2ヶ月しかないからな。お前も早めに準備はしとけ』


…あと2ヶ月?


…嫌だ。


嫌だと言わなければ…

でも体が震えて声が出なかった。


その日は結局何も言えなかった。


それ以上に、転勤するなんて事、クラスの皆に言える訳がない。

⏰:11/08/19 10:48 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#255 [輪廻◆j6ceQ96kak]
頭の中が混乱する。


まだ久保と木下先生の事も解決していないというのに、その上突然の転勤だなんて。


その日は眠れる訳もなかった。



何も考えずに布団にうつ伏せになっていたらいつの間にか寝ていたみたいで、気がつくと朝になっていた。

⏰:11/08/19 10:58 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#256 [輪廻◆j6ceQ96kak]
朝ご飯を食べずにおぼつかない足で学校へ向かい、教室に入る。


『高見くん、おはよう』

席に座るなり隣の雪乃ちゃんが元気に声をかけてきた。


『ああ…おはよう…』


『…何かあったの?』


『なんでもないよ』

言うべきか言わないべきか迷ったが、せめて期末テストが終わるまではと思い、親の転勤の事実をその場で打ち明けなかった。

⏰:11/08/20 01:07 📱:T005 🆔:ApZWZw5c


#257 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ほとんどの授業はボーっとして内容が頭に入らなかった。


もうすぐ期末テストなのに、これでいい訳はない。


でも俺はテストの結果で進級になるか留年になるかよりも、もっと大事な選択を迫られたのだ。


皆と別れる?

そんなの信じられないし、信じたくない。


休み時間、頭を抱えている俺の所に後ろの席の倉野がやってきた。


『おい高見。お前何かあった?』

その声にハッとして倉野の顔を見る。

⏰:11/08/20 09:37 📱:T005 🆔:ApZWZw5c


#258 [輪廻◆j6ceQ96kak]
倉野とはそれほど仲良くもないし、そもそもあまり話した事がない奴だ。


彼になら別に言っても大丈夫だろう。


『ちょっと来て』

俺は倉野を廊下に連れ出して、転勤の事を打ち明けた。


『マジで…? 北海道とか遠いじゃん』


『…まだ皆には言わないで欲しいんだよね』


『わかった。テスト前だし余計な心配かけたくないもんな』

俺達はちょっと早い握手を交わした。

⏰:11/08/20 12:15 📱:T005 🆔:ApZWZw5c


#259 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あ、そういえば…久保はどうだった?』

教室に戻り、席に着いたところで倉野が聞いてきた。


『あ…大丈夫そうだったよ』

危ない危ない…失声症だという事は言ったらダメなんだった。


危うく言ってしまうところだったじゃないか。


『そっか。…なんであんな事したんだろうな』

…自殺未遂か。


木下先生に脅され、謹慎になった事で精神的に参ってしまったという事は、担任が公の場で言うまでは、俺からは言わない方がいいだろう。

⏰:11/08/20 15:48 📱:T005 🆔:ApZWZw5c


#260 [輪廻◆j6ceQ96kak]
木下はすべての責任を久保に負わせようとしてる。


久保の携帯に木下の娘とのメールのやりとりが残っているかいないかで勝負の行方は決まるはずだ。


倉野が自分の席に戻ったところで、俺はこっそり昨日借りた久保の携帯電話を取り出した。


メール画面を開く。


『あった…』

やりとりはしっかりと残されていた。

⏰:11/08/21 06:52 📱:T005 🆔:eIzae13s


#261 [輪廻◆j6ceQ96kak]
とにかく受信メールを一つ一つ見て行くことにしよう。


「こんにちは 前略のメルボから来ました よかったら仲良くなりませんか?」

「はい こちらこそよろしくお願いします」

「好きな人はいないです」

「じゃあタメで」

「先輩だぁ」

「わかった じゃあよろしくね」

「いい名前だね あたしは茜だよ」

「ありがとう そんなこと言われた事ないから嬉しい」


…ここらへんまでは普通のやりとりだ。

⏰:11/08/21 07:03 📱:T005 🆔:eIzae13s


#262 [輪廻◆j6ceQ96kak]
メールはまだある。


「うん 照れちゃった」

「あはは そういえばどこの高校に通ってるの?」

「あ 知ってるよ」

「学校近いね あたしも彼氏いないので付き合っちゃいます?」

「やったぁ じゃあ太一って呼ぶね あたしは茜でいいよ」

「今度会おうよ」

「もう私の彼氏だもん 会いたいよ」

「じゃあ来週の日曜日で 楽しみにしてるね」


…メールはおおむねここで終わりだ。

⏰:11/08/21 07:28 📱:T005 🆔:eIzae13s


#263 [輪廻◆j6ceQ96kak]
でも…

なんだろうこの違和感。


このメールの中に何か違和感を感じる。


その違和感の正体に気づくのにそれほど時間はかからなかった。


それは受信メールの一つにあった。


「もう私の彼氏だもん 会いたいよ」

…今までのメールでは彼女の一人称は『あたし』だったのに、この文章だけはなぜか『私』だ。

⏰:11/08/21 07:34 📱:T005 🆔:eIzae13s


#264 [輪廻◆j6ceQ96kak]
別にそれほど気になるような事ではないのだが、俺からしてみればちょっとおかしいなとは思う。


まあ単なる俺の気にしすぎだろうと自分に言い聞かせて久保の携帯電話を閉じて鞄にしまった。


俺の今日のやるべき事はこのメールを放課後、木下先生につきつける。


向こうからアピールしてきた文章を見せれば、さすがの木下も自分のやった事を自覚するだろう。

⏰:11/08/21 07:44 📱:T005 🆔:eIzae13s


#265 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん、今持ってた携帯って久保くんの?』


『うわっ! あ、うん…ちょっとね』

雪乃ちゃんはいきなり俺の背後から話しかけてきたので驚いてしまった。


気配を感じなかったから、怖くてチビりそうになった事は内緒だ。


『もしかして、メールとかチェックしてたの?』


『えっ?』

さすが雪乃ちゃん…鋭い。

でも彼女はもう知っているから変に驚く必要はないな。


誰が知ってて誰が知らないのか、ちょっと混乱してきた。

⏰:11/08/21 07:58 📱:T005 🆔:eIzae13s


#266 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もし茜さんが木下の娘じゃなかったら、久保は謹慎になる事も自殺未遂をする事もなかったかもしれない。


単純に考えれば、偶然携帯サイトで知りあった人が自分の通っている学校の教師の娘だったという事だが、それはそれで後から複雑になる。


そういった色々な事が久保を精神的に追い詰めたのかもしれない。


結果、俺は久保の気持ちをわかってなかった。


それどころか、わかろうともせずに『やめといた方がいい』とか適当な事言ってた。

⏰:11/08/21 08:19 📱:T005 🆔:eIzae13s


#267 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は最低な奴だ。


人の気持ちを知った気でいて、全く知らなかった。


いつか本当に人の気持ちをわかってやれる男になれるだろうか。


いや、なりたい。


笑い合いながら、時には悲しみを分かち合いながら『お前の気持ち、わかるよ』と言える男に―



その日の放課後、俺は屋上に木下先生を呼び出す事に成功した。


今度ばかりはトイレなんかでする話ではないからな。

⏰:11/08/21 08:30 📱:T005 🆔:eIzae13s


#268 [輪廻◆j6ceQ96kak]
制服の右ポケットには、久保の携帯電話もしっかりと入っている。


『高見…ワタシは試験問題の最終チェックなどで忙しいんだよ。話なら、なるべく早く済ませて欲しいね』


『ちゃんと答えてくれるなら時間は取らせねーよ』


『で…なんだね?』

俺はポケットから強力な武器…携帯電話を取り出した。


メール画面を開く。


『…え?』


『どうしたのかね』

そんなまさか…

茜さんからの受信メールが全て…


消えている―

⏰:11/08/21 08:49 📱:T005 🆔:eIzae13s


#269 [輪廻◆j6ceQ96kak]
消した覚えもないし、消すはずもない。


一気に血の気が引いた。


『話がないなら戻らせてもらうよ』

いや、まだ帰すわけにはいかない!


でもあのメールがないと追い詰める事はできない。


…それなら最終手段だ。


上からがダメなら下からだ。

⏰:11/08/21 08:57 📱:T005 🆔:eIzae13s


#270 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『今日これから、先生の娘さんの茜さんに会わせてくれませんか?』

一か八か聞いてみた。


『…断る』

即答だった。


久保の受信メールがない以上、今のところ強力な武器は娘のメール送信内容が書かれた携帯電話しかない。


向こうでも消されている可能性は否定できないが、少しの可能性を信じるのであれば見てみる価値はある。

⏰:11/08/21 09:08 📱:T005 🆔:eIzae13s


#271 [輪廻◆j6ceQ96kak]
でもこの先生を通さないと娘に会う事はできない。


…いや、そうでもないかもしれない。


たった一人だけ、いるではないか。


木下の娘と交流がある人が。



そう…吉田の妹だ―


木下の娘と吉田の妹は友達なんだ。


吉田の話によると、木下の娘は吉田の家によく遊びに来るという事だ。

⏰:11/08/21 23:28 📱:T005 🆔:eIzae13s


#272 [輪廻◆j6ceQ96kak]
いい情報をくれた事に感謝するぞ吉田…

いや、吉田さん。


色々考えている内に、気がついたら木下は屋上から姿を消していた。


まあいいだろう。


少し手間がかかるけど『苦労は買ってまでしろ』という言葉を聞いた事あるし、ここはありがたく買わせてもらおう。


俺は自分の携帯電話を取り出して、吉田に電話した。



…電話した結果、運のいい事に木下の娘は今、吉田の家に来ているとの事。

⏰:11/08/21 23:45 📱:T005 🆔:eIzae13s


#273 [輪廻◆j6ceQ96kak]
またまた運のいい事に、吉田さんの家は一度行っているから場所はわかる。


あの荷物持ちジャンケンが無駄じゃなかったって訳だ。


俺は早速、吉田さんのマンションに向かう事にした。


女の子の携帯電話をチェックするなんて失礼な事はしたくないけど、これは友達の久保の為だ。


それを伝えれば彼女もわかってくれるだろう。

⏰:11/08/22 09:12 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#274 [輪廻◆j6ceQ96kak]
アンカー
>>1-100
>>101-200
>>201-300

⏰:11/08/22 09:36 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#275 [輪廻◆j6ceQ96kak]
学校から歩いて40分くらいだが、俺は急いで歩いたので30分くらいでマンションに到着した。


吉田さんの部屋は13階。


さっさとエレベーターに乗って部屋前に。

そしてチャイムを鳴らすと、しばらくして背の小さめな女の子が現れた。


『…どちら様ですか?』

この子が吉田さんの妹だろうか。

小柄な体型、服装は制服のままで髪は黒髪のツインテール。


雪乃ちゃんには及ばないが、清楚でかわいらしい子だ。

⏰:11/08/22 09:45 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#276 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そのくりくりとした瞳は、思わず吸い込まれてしまいそうなほどだ。


『あの〜』

妹さんが不思議そうに俺の顔を見て言う。


…しまった。

つい顔を凝視していた。


決して見とれていた訳ではないぞ。

⏰:11/08/22 09:50 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#277 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あの、ええと…吉田優斗さんはいるかな…?』


『兄貴に何か用ですか?』

…ちょい待ち。


兄貴だと?

こんなかわいらしい女の子が兄を兄貴と呼ぶ?


気が強い女子が言うならわかるけど、こんな子が兄貴って呼ぶなんて違和感があるんですけど。

⏰:11/08/22 09:55 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#278 [輪廻◆j6ceQ96kak]
いや、兄がそういう性格だから似たのかもしれない。


まさか吉田一家は皆、気が強いのだろうか?


そうだとしたらあまり関わりたくはない。


『俺はあなたの兄貴…いや、お兄さんと同じ高校に通ってる高見といいます』

年下が相手なのになぜか敬語を使ってしまう。


タメ口で話したら豹変しそうで怖いからだ。

⏰:11/08/22 10:01 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#279 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…ちょっと待っててください』

そう言って妹さんが兄を呼びに行った。


『おう高見〜。来たか〜』

数秒して、リズムにのった声と共に吉田さんが現れた。


『吉田さん。さっきの話ですけど…』


『茜ちゃんなら佳代の部屋にいるぜ〜』

彼はなぜこんなにテンションが高いのだろう。


それにしても、妹さんの名前は佳代ちゃんというのか。

⏰:11/08/22 10:11 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#280 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『佳代の部屋はここね〜。勝手に入ったらぶっ飛ばされるからちゃんとノックするんだぞ〜』

…笑顔で、しかも陽気な声で言われると逆に怖いんですけど。


『あの…吉田さんも一緒に入ってくれませんか?』


『そりゃ無理〜』

…こいつも即答かよ。


理由は聞く気もおきなかったので、仕方なく俺一人で佳代ちゃんの部屋に入る事にした。

⏰:11/08/22 10:17 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#281 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ぶっ飛ばされたら怖いので、ドアを3回ノックした。


佳代ちゃんはすぐにドアを開けてくれたが、さっきまでのかわいらしい顔とは裏腹に強ばっているではないか。


そのまま『失礼しました』と冷や汗をかきながら言ってドアを閉める人をテレビなどでよく見かける。


でも俺は別に君に用があるわけではない。


その部屋に一緒にいる木下の娘の茜さんに用があるのだ。

⏰:11/08/22 10:27 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#282 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『何ですか?』


『あ、あの…この部屋に木下茜さんという子は…?』

年下の、しかも女の子にこんな情けない態度をしなくてはならないとは。


『佳代、どうかしたの?』

佳代ちゃんの後ろから高い声がして、ついに彼女が俺の前に姿を現した。


『この人、茜に用があるんだって。茜の知ってる人?』

茜さんは俺の顔をガン見する。

⏰:11/08/22 10:37 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#283 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その子は、父親とは似ても似つかない顔でおとなしそうな子だった。


『え…知らないけど』

初めて会うから知らないのも当然なんだけど、真顔でそう言われるとちょっとヘコむ。


『あの、なんで茜の名字知ってるんですか?』

…それを一から説明するのは面倒だ。

ここは一言でまとめよう。


『あの、俺の通ってる高校に木下っていう先生がいて…君がその…』

俺がここまで言うと、茜さんは何か納得したような表情を見せた。

⏰:11/08/22 10:46 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#284 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>272 訂正
苦労は買ってまでしろ ×
苦労は買ってでもしろ ○

――――――――――


『ああ…佳代のお兄ちゃん達から聞いてます。高見さん…ですよね?』


『あ、まあ…そうかな』

吉田さん…俺のあることないことベラベラ喋ってないだろうな?


それにしても、今彼女が言った『お兄ちゃん達』とはどういう事だろう。


他にこの家と交流がある人は…


…いた。

⏰:11/08/22 18:07 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#285 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺の考えに間違いがなければ、それは雪乃ちゃんしかいないだろう。


『あの、雪乃ちゃんって知ってる?』

俺は茜さんの目を見て聞いたのだが、答えたのは佳代ちゃんだった。


『もちろん知ってるよー。雪乃っちは兄貴の彼女だもん』

この女…俺に慣れてきたのかタメ口になりだしたぞ。


『ああそう…。雪乃ちゃん、俺の事何か言ってませんでした?』

ちょっと怖いが、気になるので思い切って聞いてみた。

⏰:11/08/22 18:17 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#286 [輪廻◆j6ceQ96kak]
茜さんと佳代ちゃんはお互いの顔を見合わせ、再び俺の方に視線を戻すと、佳代ちゃんがいきなり笑い出した。


『ふふっ…もしかして雪乃っちの事好きなの?』


『い、いやいや…そういうつもりで聞いたんじゃ…』

彼女が笑っている中、俺は赤面していた。


…穴があったら入りたい。

⏰:11/08/22 18:25 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#287 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃあ教えてあげるー』

じゃあってなんだよ、じゃあって…。


勝手に好きだと決めつけられてしまったようだ。


吉田さんに知られたら特大パンチをくらうぞこれは…。


『誰にも言わないでって言われてたんだけど、あなたの事が気になるみたいな事言ってたよー』

…はい?


これは夢だろうか。


もしくはドッキリとか?

⏰:11/08/22 18:36 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#288 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は今、はてしなく動揺している。


『そ、それは本当なの?』


『…ホントだよ。ちょっと中入っていいよー』

佳代ちゃんに手を引っ張られて部屋に入れさせられた。


まあ、部屋に入れただけでも好都合だ。


部屋の中はいかにも女の子の部屋だ。


壁紙はピンク、ベッドの枕や毛布もピンク、カーペットもピンク。


よっぽどピンク色が好きなのだろう。


…女の子なら当然だが。

⏰:11/08/22 18:42 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#289 [輪廻◆j6ceQ96kak]
こんなピンク一色の部屋に男が一人と女が二人…。


俺は激しく場違いではないだろうか。


女の子の部屋なんて当然入った事もないから、目のやりどころに困る。


俺が正座して下を向いたまま黙っていると、佳代ちゃんが早速切り出した。


『昨日の夜、雪乃っちが兄貴に会いに遊びに来たんだけど、病院に入院してる友達を想うあなたに感動したって言ってたよー』

…久保の事か。

こういう場合は何といって返事をした方がいいのだろう。

⏰:11/08/22 19:06 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#290 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『その前もねー、去年のクリスマスに買い物に付き合ってくれたとか、人を思いやる気持ちがあるとか沢山言ってたよー』

その無駄に語尾を伸ばして言うのはやめてほしい。


なぜかバカにされているような気分になる。


それにしても、雪乃ちゃんが俺の知らない所で俺を褒めていたんて。


『あ、そう…』


『あははっ、照れてる』


『いや、別に…』

…ダメだ。

完全に彼女のペースにハマってしまった。

⏰:11/08/22 19:15 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#291 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺がここへ来た目的はただ一つ。


茜さんに携帯電話を見せてもらう…


…つもりなのだが、佳代ちゃんのような明るく気が強そうなタイプが隣にいると、携帯電話を見せてなんて言いづらい。


ここはまず、彼女に久保の事を話す方がいいだろう。


俺は覚悟を決めて茜さんの目を見て切り出した。

⏰:11/08/22 19:22 📱:T005 🆔:0Fa9Sr/Y


#292 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あの茜…さん。く、久保って人の事知らない?』

どんな反応が返ってくるのかが怖い。


が、彼女は動揺する事もなく表情を変えなかった。


『久保太一くんですよね? 知ってますけど』


『その…前略プロフィールで知り合ったんだっけ?』


『あ、はい。それが何か…?』

…この子はまだ知らないのだろうか?

その知り合った人が自分の父親が働いている学校の生徒だという事を…。

⏰:11/08/23 22:45 📱:T005 🆔:qOK7xnyA


#293 [輪廻◆j6ceQ96kak]
知らないのであれば、今言わなければ永久に言うチャンスがこなくなるかもしれない。


まず彼女自身の久保に対する気持ちを知る必要がある。


言うのはそれからでも遅くはないだろう。


『ええと…君は久保にメールで告白したんだよね?』


『…………』

茜さんは俺の単刀直入な質問に対して一瞬目をそらした。


問題は、その告白が本心であるか否かだ。

⏰:11/08/23 22:57 📱:T005 🆔:qOK7xnyA


#294 [輪廻◆j6ceQ96kak]
告白がただの…いわゆる釣り行為だったら、彼女にも多少は責任がある。


携帯サイトで知り合って、まだお互い会った事もないのにメールでいきなり付き合おうなんて言ってしまうのには、俺にはある種のイタズラにしか思えない。


彼女はまだ中学生だ。


この子の父親が言うとおり、知らない男と付き合うなんて聞かされたら断固反対するのは親としては当然だ。

⏰:11/08/23 23:08 📱:T005 🆔:qOK7xnyA


#295 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼女の父親の木下先生は、久保の方から茜さんに言い寄ったと吉田から聞いたと言っていた。


あの吉田さんの事だから、それは嘘に決まっている。


それに茜さんから久保に届いたメールはしっかり確認した。


最初に付き合おうと言ってきたのは、茜さんの方からだ。


それで軽くOKする久保も久保だが、このまま久保から交際を迫ったと思われるのは嫌だ。

⏰:11/08/23 23:22 📱:T005 🆔:qOK7xnyA


#296 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『茜さん、悪いけど携帯見せてくれない?』

気づいたらそう言っていた。


久保が俺に勇気をくれた…そんな気する。


『な、なんでですか…?』

俺の視線がキツいのか、彼女は怯えたような目をしていた。


隣に座る佳代ちゃんは止める事はなくじっと黙っている。


『この際だからハッキリ言うよ。君のせいで俺の友達の久保が学校を謹慎になって…その上、自殺しようとしたんだ』


『あたしの…せい…?』

まだ状況をよく理解していないようだが、やがて彼女の目に涙が浮かんできた。

⏰:11/08/23 23:37 📱:T005 🆔:qOK7xnyA


#297 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『茜…』

茜さんの突然の涙に佳代ちゃんは戸惑いながらも肩に手をやってなんとかなだめようとする。


不思議な事に、友達の女の子を泣かせたというのに佳代ちゃんは俺を責めようとはしなかった。


ただ、ずっと茜さんの俯く顔を見ながら『茜…』と声をかけ続けている。


その様子から俺は察した。


佳代ちゃんは久保と茜さんのメールのやりとりの事を知っていたのではないかと。

⏰:11/08/23 23:49 📱:T005 🆔:qOK7xnyA


#298 [輪廻◆j6ceQ96kak]
さっき茜さんに携帯を見せてと言った時、彼女は止めなかった。


佳代ちゃんも、何かしら二人のメールのやりとりに関与している可能性がある。


そういえば、茜さんから久保に来たメールに一つだけ違和感があった。


その違和感とは、自分の事を言う名前…つまり一人称。


一人称が『あたし』が多い中で、一つだけ『私』となっているメールがあった。

⏰:11/08/23 23:56 📱:T005 🆔:qOK7xnyA


#299 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もし一人称が『私』と書かかれたメールを送ったのが佳代ちゃんだったとしたら…


『佳代ちゃん。君は二人のメールについて何か知らない?』


『わたし…? それは…』

明らかに動揺している。


でも仮に佳代ちゃんもメールのやりとりに関わっていたとしても、理由がわからない。


『茜…携帯借りるよ』

突然、佳代ちゃんが泣いている茜さんに言い、側に置いてある携帯電話を取って俺に差し出した。

⏰:11/08/24 00:06 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#300 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『わたし…携帯持ってないからよく茜の借りてたの。それで、前に借りた時にメールを見ちゃって…』

…その内容が久保とのやりとりだったという事だろう。


それからの展開は大体想像できる。


『それで…茜さんを装ってメールを送っちゃった訳だね?』


『…うん。茜、勝手なことしてごめん!』

謝られた茜さんは、涙を拭いながらゆっくりと佳代ちゃんの方を向いた。

⏰:11/08/24 00:20 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#301 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『別にいいよ…』

…と、そう一言だけ言った。


それから俺は二人に詳しい話をした。


茜さんが携帯サイトで知り合い告白した相手が、彼女の父親が働いている学校の生徒だと言うこと。


父親が、言い寄ってきたのは久保の方からだと勘違いをしている事も伝えると、彼女はわかってくれたようで…


『お父さんには、あたしからちゃんと事実を伝える』

…と俺に約束してくれた。

⏰:11/08/24 00:30 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#302 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃあ、行こう』


『ど、どこに…?』

俺は行く場所を伝えずに茜さんを外に連れ出した。


行く先は決まっている。


吉田さんのマンションから数十分歩いて、久保のいる病院に到着した。


『ここは…?』

茜さんが不思議そうに問う。


『久保とはメールはしてたけど、会うのは初めてでしょ?』


『あ、いえ…。一回だけ会った事あります』

…これは予想外だ。


まさか会った事があるとは。

⏰:11/08/24 00:43 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#303 [輪廻◆j6ceQ96kak]
いや、久保が初めて俺に彼女ができたと言ってから半年は経っている。


一回や二回会っていても不思議ではないだろう。


それにしても、吉田さんなりの優しさなのだろうか、茜さんが原因で久保が謹慎になったりした事は伝えていなかったようだ。


俺はそんな吉田さんをちょっと見直した。


…ちょっとだけだけど。

⏰:11/08/24 00:58 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#304 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保の病室をノックして茜さんと二人、中に入った。


『久保、遅くなったな』

軽く手を振りながらそう言って、茜さんの背中をポンと押して久保の姿を見せた。


『…ひ、久しぶり…だね』


なんだこの雰囲気…

かなり気まずいではないか。


久保は側にある俺が昨日あげたノートと鉛筆を手に取ると、何かを書き始めた。

⏰:11/08/24 01:11 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#305 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ほら茜さん…いや、茜ちゃん。久保が何か伝えたいみたいだよ』

彼女はノートに書く久保に首を傾げながらも、側にかけ寄った。


俺は気をきかせて二人とは離れた所で何も見てないフリをする事にしよう。


『失声症…!?』

茜ちゃんの驚いた声が聞こえてくる。


…そりゃ驚くだろうけど。


俺も正直、木下先生からそう聞かされた時は言葉を失った。

⏰:11/08/24 01:19 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#306 [輪廻◆j6ceQ96kak]
…いや、待て。


木下先生が久保の失声症の事を知っていた理由がハッキリしていない。


…でも、なんとなくわかるような気がする。


木下先生も木下先生で少しくらい罪悪感があったのだろう。


だから暇を見てこっそりお見舞いに来ていたのかもしれない。


俺はそう思う事にした。


例の木下先生の勘違いの件は茜ちゃんに任せよう。


今の彼女なら自分自身の言葉でちゃんと伝えられる。


そして木下先生もわかってくれるはずだ。

⏰:11/08/24 01:29 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#307 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そして…

俺は久保と茜ちゃんを二人にさせてこっそりと病室を出た。


少し悔しいが、俺はやっぱりこのままの草食系男子でいいと思っている。


『自分は自分でいい』

…そう言い聞かせて。



さて、次は俺の番だ。


4月に親の仕事の関係で北海道に行く事を、来週から3日間行われる期末テストが終わってからクラスの皆に報告する―

⏰:11/08/24 01:40 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#308 [輪廻◆j6ceQ96kak]
皆と別れるのは辛いけど、だからといってこれまでやってきた事は消えたりはしない。


ずっと忘れられない思い出として心の中に留まり続ける。



―4月 春


…あれから期末テストが終わった後、担任は久保の事をクラスの皆に全て話した。


一方、娘の茜ちゃんに事実を伝えられた木下先生は、さすがに自分のした事を後悔したみたいで、自分は教師失格だと言い残して辞職した。


これらの事で、しばらく各クラス内で大騒ぎが続いたのは言うまでもない。

⏰:11/08/24 01:56 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#309 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それと…


北海道に行く事を打ち明けた後、雪乃ちゃんが俺に突然謝ってきた。


理由を聞くと、あの時久保の携帯電話の受信メールを削除したのは自分だと言ってきた。


更にその理由を聞いたが、なぜか今度は泣き出して、それを目撃した野村に『また泣かせたな』と言われてビンタされる始末。


…今となってはどうでもいいが。

⏰:11/08/24 02:10 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#310 [輪廻◆j6ceQ96kak]
失声症の久保は、まだ声は途切れ途切れで出るものの、身体はよくなったので3月の中旬頃、無事に退院した。


久しぶりの学校に久保は大いに喜んでいた。


そこで久保は一人テストを受けて、2学年への進級も決まる。


俺は久保達と一緒に2学年を過ごす事はできないが、最後にクラスの皆で撮った写真…


これを持っていれば、いつでも皆と一緒にいれる気がする。

⏰:11/08/24 02:23 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#311 [輪廻◆j6ceQ96kak]
―4月10日 土曜日


俺ら家族は北海道に行く為に空港に来ていた。


ソファーに座って時間を待っていると、目の前に一人の人物が現れた。


『よっ、高見〜』

この声は…やっぱり…


『よ、吉田さん!』


『見送りに来てやったよ。一応世話になったしな』

…世話をした覚えはないけど、しいて言えば荷物持ちジャンケンで荷物を持ってあげた事くらいか。

⏰:11/08/24 02:32 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#312 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『そういえば吉田さん…進級はできたんですか?』


『は? バカにすんなよ? 俺だってやる時はやるし』

…という事は、進級できたらしい。


『でもさあ、進級できたのはいいけど、雪乃とはまたクラス別なんだよ』


『それはなんていうか…残念ですね』

俺はそう言う反面、少し安心した。


『あ、あのよ…えと…』

…なんだ?

吉田さんが口ごもる姿なんて初めて見たぞ。

⏰:11/08/24 02:43 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#313 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『どうしたんですか?』

そう言いながらふと彼の手元を見ると、何やら白い紙を手にしていた。


まさか…

いや、そんな訳ないよな。


何考えてるんだ俺は。



『あの、それ…』

その持っている紙を指さすと、彼はサっとそれを俺に差し出した。


その紙には、携帯電話の番号とメールアドレスが記入されているではないか。


でも番号もアドレスも吉田さんのものとは違うようだ。

⏰:11/08/24 02:49 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#314 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あの…これは誰のですか?』

俺が首を傾げていると、吉田さんが背後を気にする素振りを見せた。


俺もつられて彼の後ろの方に視線をやる。


『あ…』

今、柱の影に誰かがいた。


『ちょっと待ってろ』

吉田さんはそう言って柱の方へ向かって、そこにいた人物の腕を引っ張って再び俺の元に戻ってきた。

⏰:11/08/24 02:57 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#315 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼が連れてきた人物は、まぎれもなく雪乃ちゃんだった。


『雪乃、やっぱり言いたい事はちゃんと面と向かって伝えた方がいいぞ』


『そ、そうだね』

…という事は、この番号とアドレスはもしかして…。


『高見くん…それ私の携帯の。いつでも連絡してきてね』


『あ、うん。あ、ありがとう…』

こういう雰囲気はやっぱり苦手だ。

⏰:11/08/24 03:04 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#316 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『それとこれ…久保くんに言われて、高見くんに渡して欲しいって』

雪乃ちゃんがバッグから取り出したのは、見覚えのある一冊のノート。


…久保にあげたやつだ。


『ありがとう。久保によろしく言っておいて』


『…うん、わかったよ』

それからしばらく俺と彼女の間に何ともいえない沈黙が続いた。

⏰:11/08/24 03:09 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#317 [輪廻◆j6ceQ96kak]
「午前10時10分発〜北海道行きの便〜間もなく出発致します。搭乗手続きがお済みの方は〜」


『順一、行くぞ!』

アナウンスが流れ、親父が俺を呼んだ。


『じゃ、じゃあ…二人共、元気で』

涙が出そうになるが、唇を思いっきり噛んで耐えた。


『いつでも連絡してこいよ!』


『体に気をつけてね』


…ダメだ。


このとどめを刺すような二人の言葉にやられ、涙を流してしまった。

⏰:11/08/24 03:19 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#318 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん…私は何も見なかった事にするから』


『俺はバッチリ見たけどな』

二人が笑いながら言う最後の姿を見届け、俺は後ろを振り返る事なく飛行機に搭乗した。


北海道か…

そこで転入する高校でまた新たな出会いが待っているんだ。


俺には皆がついてるから大丈夫だ。



飛行機の中で久保からのノートを何気に開く。


その1ページ目には、クラスの皆からの寄せ書きが書かれていた。

⏰:11/08/24 03:30 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#319 [輪廻◆j6ceQ96kak]
「高見、向こうの学校でも頑張れ 倉野」

「俺らの事忘れたら承知しない! 上野」

「向こうでも女の子泣かせたりしないよーに 野村」


「黒板に、高見は個人情報収集してるとか書いたのは俺です。本当にごめん! 島田」


他にも、あまり話した事のない奴らからも書かれていた。


涙を堪えながら最後のページを開いてみると、久保から一言…


「ぼくらのみかた 久保」

…と大きく書いてあった。

⏰:11/08/24 03:43 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#320 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…どういう意味だよ』

俺が笑い泣きに変わった瞬間だった。



数時間後―


北海道の空港に到着したようだ。


飛行機なんて初めて乗ったけど、皆の事を考えたり眠ったりしていて、外の景色など全く楽しむ余裕などはなかった。


空港から出ると、4月だというのに異様に肌寒いではないか。


北海道の冬は寒いと聞いた事があるけど、4月でもまだ寒いんだ…冬だったらこれの倍以上は寒いんじゃないかと思うと嫌になってきた。

⏰:11/08/24 03:51 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#321 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ああ、地元が恋しい。


『よし、じゃあまずはお前の実家に寄ってくか』


…え?

親父が母さんに言った『お前の実家』という言葉がひっかかった。


『ねえ親父…母さんの実家って?』


『実家は実家だろ。…ああ、お前は知らないのか。葉子は北海道出身。出張でここに来た俺と出会って結婚して、お前が生まれたばかりの頃まではここにいたんだ』


という事は…

俺の地元は北海道だったって事…?



『んなバカなあぁぁぁぁッ!!』



〜Last episode END〜

⏰:11/08/24 04:14 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#322 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■epilog■



親父から衝撃的な事実を聞かされて数日が過ぎ―


なんとか精神が落ち着いてきた俺は高校に転入した。


一応転校生という事になる。


自己紹介が緊張するではないか。


それに転校生が来ると聞くと、その教室内は皆が期待して騒ぐだろう。


そう…無駄にハードルをあげてくるのだ。

⏰:11/08/24 04:20 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#323 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃあ行きましょうか』

俺の新しい学校のクラスの担任になる教師の後ろについていく。


…心臓がバクバクしている。


今は自己紹介よりも、変に期待されて俺の顔を見た途端にクラスの皆のテンションが下がるのが嫌だ。


男は『なんだ男かよ〜』


女は『イケメンじゃないじゃん〜』

そう言ってざわめき始めた日には、正直ヘコむぞ。

⏰:11/08/24 04:29 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#324 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここは『人は顔じゃない』って事を自己紹介でわからせてやるしかない。


「2―C」

と書かれた教室の前で足を止めた。


ますます心臓が高鳴る。


担任がまず教室に入って、俺は呼ばれるまで廊下で待機していた。


『今日は親の仕事の都合で地方の学校から転入してきた生徒を紹介します。では入ってきてください』

…ついにきた。

もう後戻りはできない。

⏰:11/08/24 04:37 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#325 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺はゆっくりと歩いて、教室に入り担任の隣に立った。


『では高見くん、まずは軽くでいいので自己紹介をお願いします』


『は、はい…』

…もうやけだ。


こういう場合は皆の顔を大根だと思え、俺!


『えと…高見順一です。母親が一応北海道の出身らしいです。でも俺はそんな事を最近まで知らなくて、それ聞いてびっくりして…』

何言ってるのか自分でもわからないが、とにかくなんでもいいから言いまくるんだ、俺。

⏰:11/08/24 04:44 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#326 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『えと…俺はいわゆる草食系男子です。でもそんな俺でも前の学校では好きな人が出来たけど、その人には彼氏がいて…』


『た、高見くん…そのくらいで結構ですよ』

…しまった。


担任がものすごい引いた目で俺を見ている。


いや、担任だけではない。


教室内の皆が、唖然とした表情で俺を凝視しているではないか。

⏰:11/08/24 04:50 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#327 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ず、随所と個性的な生徒で賑やかになりそうですね。皆、仲良くしてあげてください…』

おーい担任よ。

声に全く感情がこもっていないのは何故?


『じゃあ高見くんは…あそこの空いてる席に』

運がいい事に、一番後ろの席だ。


これで授業中に目立つ事なく寝る事ができる。


…いや、その前に一人でも多く友達を作らなければ。


休み時間にでも、気が合いそうな奴に積極的に声をかけてみる事にしよう。

⏰:11/08/24 05:00 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#328 [輪廻◆j6ceQ96kak]
できれば久保のような友達が欲しい。


朝の号令を終え、担任が教室を出ていった後、それを見計らっていたかのように教室がざわめき始めた。


当然といえば当然の光景なのだが、この騒ぎ様は尋常ではないぞ。


前の学校の倍はあるだろうバカでかい声が響き渡る。


こっちの学校では、前の学校とは逆で男子の方がうるさそうだ。


女子は、ほとんどが最初の授業の準備などをしていて真面目でおとなしいものだ。

⏰:11/08/24 05:09 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#329 [輪廻◆j6ceQ96kak]
同じ男で気が合いそうな奴はこの教室にはいない気がする。


まるで、吉田さんが沢山いるみたいだ。


いつでも連絡してこいって言ってたから、暇がある時にでも相談するとしよう。


『ねえ転校生くん、転校生くん』

大騒ぎの中、突然俺の前の席に座る男子が失礼な呼び方をしながらこっちを向いてきた。


『…なに?』

人は第一印象でどんな性格か決まる…もしくは決められてしまう事が多い。


ここは強気にいかなければ、ナメられる。

⏰:11/08/24 05:18 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#330 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『俺もどちらかって言えば草食系なんだよね。まあ仲良くしようぜ』

その男はそう言ってわざわざ手を伸ばして俺の肩をポンポンと叩いた。


この男…ぱっと見、肉食系にしか見えないが、人を見た目で判断してはダメだろう。


『転校生くん』と呼ばれるのは腹立たしいが。


こいつも俺にとって『味方』になるのか『敵』になるのか…まだわからない。



こうして北の大地、北海道での新しい高校生活がスタートした―




ぼくらのみかた【完】

⏰:11/08/24 05:39 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#331 [輪廻◆j6ceQ96kak]
本編完結しましたが、密かに構想を練っていた主人公のサイドストーリー(過去篇)を書いていきたいと思います。

―――――――――
本編 アンカー
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-330
―――――――――

⏰:11/08/24 20:53 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#332 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■Side Story■



俺は高見順一。

この世には草食系と肉食系と呼ばれる人が存在する。

それは男子にも女子にもいるらしい。

一体誰がこんな言葉を作ったのだろうか。


そんな俺は恋愛には特に興味も関心もないので、草食系だと思っている。

自分が恋愛に興味がないんだと自覚をしたのは、俺が中学1年生の時だ。


これは、そんな俺の中学校生活の話―

⏰:11/08/24 21:14 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#333 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■Side episode1■
『高見順一、13才』



4月は別れの季節であり、同時に出会いの季節でもある。


様々な出会いと別れを繰り返して人は成長していく。


そんな俺は今日から中学1年生。


小学校生活はいたって平凡だった。

友達もそれほど多くはなく、あまり目立ない存在として6年間を過ごしてきた。


これから始まる3年間の中学校生活も、何事もなくただ平凡に過ごしていくのだろうな。

⏰:11/08/24 21:33 📱:T005 🆔:EjU97vFg


#334 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そしてこれは中学1年生の1年間に焦点を当てた俺の物語だ。


中学校から初めて着ることになる制服。

小学生の時はずっと私服だったから、いきなり制服になると最初は慣れないかもしれないが悪くはなさそうだ。


私服は1日1日で別の服を着て来なくてはいけない。

何日も同じ服を着ていたらひかれるだろう。

上下のコーディネートが少しでも変だと『合わない』とか『似合わない』とか言われて面倒くさい。


その点、制服はそんな面倒な事がないから楽といえば楽だ。

⏰:11/08/26 00:44 📱:T005 🆔:MydqyUME


#335 [輪廻◆j6ceQ96kak]
桜が満開だ。

桜の木の下を歩きながら、今日から始まる中学校へ向かう。

周りの歩いている人を見ていると、緊張した面もちで歩いている人、小学校で一緒だったのか友達同士で喋っている人など色々いる。

俺は特に緊張する事もなく、友達と一緒でもなく一人で無表情で歩く。

なんと悲しい光景だろうか。

自分でも少し虚しいと思う。


とにかく俺にとって大事な事はただ一つ。


もちろん、変なイメージを植え付けられない事である。

⏰:11/08/26 10:16 📱:T005 🆔:MydqyUME


#336 [輪廻◆j6ceQ96kak]
小学校で6年間過ごしてきて、俺は色々なイメージを植え付けられた奴らを腐るほど見てきた。

俺もその一人になりたくなく目立たずに小学校生活を送ってきた。

でもどこかで『変わり者』と思われていた可能性もある。

それはおそらく、女子と絡む事は滅多になかったからだと思う。

よく男友達から『好きな子いないの?』など聞かれた事があるが、その時の俺は異性はもちろん人に対しての好き嫌いなどの感覚がわからなかった。

⏰:11/08/26 10:30 📱:T005 🆔:MydqyUME


#337 [輪廻◆j6ceQ96kak]
だから人の悪口や陰口を傍で聞いてても『こいつら何の話してるんだ?』程度にしか思わなかった。

時には『アイツってキモいよね』と聞かれても肯定も否定もしないでいたので、変わり者と思われても仕方がないだろう。

おかげで一部の女子からは『人の悪口に便乗しない純粋な人』というイメージをつけられた事もある。

そういった良いイメージは嬉しい限りだが、変なイメージをつけられるのは絶対嫌なので言葉などにはいつも注意を払っていた。

⏰:11/08/26 10:40 📱:T005 🆔:MydqyUME


#338 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そんな俺が変なイメージをつけられずに無事小学校を卒業できた事は奇跡に近いだろう。


でもこれから始まる中学校生活で、たった一人の人物が原因で俺のそんなイメージの経歴に傷がつく事になるとはこの時の俺は想像すらしていなかった―



中学校は俺の家から15分ほど歩いた所にある。

様々な人が校内に入っていく中、俺は門の前で足を止めてゆっくりと深呼吸した。


そして『無事に3年間を過ごせますように』と心の中で祈った。

⏰:11/08/26 10:56 📱:T005 🆔:MydqyUME


#339 [輪廻◆j6ceQ96kak]
玄関で上靴に履き替え、入学式の日に決まった1年2組の教室がある4階へ向かう。


『1―2』

…しっかりとそうプレートに書かれている事を確認して辺りを気にしながら教室の中に足を踏み入れた。

昨日の入学式の時に一度座った為、席は覚えている。

鞄を机の横のフックにかけて席に座って目を色々な所に泳がせていた。

辺りにはすでに何人かで固められたグループがいくつかできている。

ほとんどが同じ小学校だった奴らだろう。

いきなり入学式の翌日の朝から別の学校だった奴と仲良くなっている可能性はまず少ない。

⏰:11/08/26 11:22 📱:T005 🆔:MydqyUME


#340 [輪廻◆j6ceQ96kak]
昨日貰ったクラスの名簿を見た限り、俺と同じ小学校で友達だった奴は残念ながらこのクラスにはいない。

それもそれで一からスタートできるという意味で新鮮ではあるが。

一人くらいは、いてくれてもいいとは思った。


そうこう考えている内にチャイムが鳴って担任が教室に入ってきた。

見るからに小顔でロングヘアーのスラリとした体型の、このクラスの担任になる女性だ。

小学校の時はなぜだか男の担任ばかりだったので、一からのスタートで女性の担任とはこれまた新鮮である。

⏰:11/08/26 11:42 📱:T005 🆔:MydqyUME


#341 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『皆さん、おはよう』

…なんとも綺麗な事だ。

こんな声で朝起こされたら、気持ちの良い目覚めになるだろう。

教師でいるのがもったいないくらいの美貌。

その顔と声だったら歌手であってもおかしくないくらいだ。


『改めて…今日から皆の担任になる入江恭子、担当は国語です。よろしくね』

そう言って黒板に名前を書き始める。


字も国語の担当というだけあって達筆であり、どこか繊細さも出ていた。

⏰:11/08/27 08:49 📱:T005 🆔:KnYTPhDU


#342 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『今日は皆の事も知りたいので1時間目は一人一人、前に出て自己紹介の時間にします』

…来た来た来た。

この自己紹介でまず第一印象が決まる。

挙動不審な態度をとらないよう気をつけなければいけない。


『では自己紹介カードを配ります。一人一人、自己紹介が終わってから写真も撮ります。それで、私が皆のカードを集めて写真を貼ったそのカードは後日、後ろに提示します』

…写真だと?

なぜそんな面倒な事をする必要があるのだ?

しかもその写真が貼られたカードを後ろの壁に貼るなど…。

⏰:11/08/27 09:06 📱:T005 🆔:KnYTPhDU


#343 [輪廻◆j6ceQ96kak]
写真を撮られるのならもう少しマシな髪型にしてくるんだったと後悔しても遅かった。

今の俺の髪はペタンコになっていて、いかにも印象の薄い人のような感じになっていると思う。


『皆、カードはいきましたね? 1時間目の最初の15分でカードに書いて、残りの時間を自己紹介に当てます。1時間目が始まる9時までまだ時間あるので今書いてもいいですよ』

先生の言葉にほとんどの人が時計に目をやる。


―8時46分

再び視線を戻しペン入れからシャープペンシルを取り出して書き始める人が大半だった。

⏰:11/08/27 09:20 📱:T005 🆔:KnYTPhDU


#344 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その皆につられるように俺も買ったばかりのシャープペンシルを出してカードに書く。


名前や趣味、特技など書く項目は沢山ある。


趣味はともかく、俺にこれといった特技はない。


あったとしても人に言えるようなものじゃなく、くだらない事だろう。


でもあえて自信がある特技はペン回しかな。

⏰:11/09/10 10:22 📱:S004 🆔:w1pFl2Mw


#345 [輪廻◆j6ceQ96kak]
小学生の時に流行っていたから得意な友達に聞いて練習した結果、その得意な友達よりも得意になってしまってなぜか縁を切られてしまったという悲しい過去があったりする。


たかがペン一本で友情が壊れてしまうなんて、俺はペンと自分を呪った。


それ以来ペン回しをする事はなくなって今に至る。


またペンが原因で友情が壊れるのは嫌だ。


俺は特技の項目に『特になし』と記入した。

⏰:11/09/10 21:52 📱:S004 🆔:w1pFl2Mw


#346 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>341 訂正
なんとも綺麗な事だ ×
なんとも綺麗な声だ ○
――――――――――


他の趣味や自己アピールを夢中で書いている内に1時間始業のチャイムが鳴って、担任が再び教室に入ってきた。


『自己紹介カードをまだ書き終えてない人は9時15分までに書いてください。書き終わっている人は、どう自己紹介するかを自分なりに考えておいてくださいね』

担任はニコニコ顔で言うが、そう言われても困る。


自分なりの自己紹介で自分を印象づけろという事なんだろうけど、あいにく俺はそこまで器用ではないのだ。

⏰:11/09/10 22:32 📱:S004 🆔:w1pFl2Mw


#347 [輪廻◆j6ceQ96kak]
だから、残念だが先生の期待には応えられない。


自己紹介なんてヘタに飾らずに自然のまままに、ありのままを伝えるのが一番いいのだ。


『時間です。では一人ずつ前に出て自己紹介しましょう。そっちの席から順に男子からいきましょうか』

担任から見て左側のドアがある方の一番前の席の男子が、担任の合図で立ち上がって前に出た。


俺は女子の列を挟んで縦三列目の一番後ろの席。


縦一列が5人だから、俺は10番目になるわけか。

⏰:11/09/10 22:57 📱:S004 🆔:w1pFl2Mw


#348 [輪廻◆j6ceQ96kak]
自己紹介一人目を飾るのは、背が小さく眼鏡をかけたインテリ系の奴だ。


趣味や特技などを言ってる最中に時々、眼鏡を中指でクイッとあげる仕草を見せる。


一見おとなしそうな奴だけど、プライドが高く勉強ヲタクという感じで俺とは気が合いそうもない。


彼のようなタイプだったら学級委員とか生徒会委員に喜んで立候補しそうだ。


彼の自己紹介が終わると、担任の拍手によって他の皆もつられて拍手をする。

⏰:11/09/10 23:10 📱:S004 🆔:w1pFl2Mw


#349 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『では石橋くん、写真を撮るのでそこに立ってください』

窓際に座る担任がピンク色の高級そうなデジカメを取り出して言った。


石橋とやらは、また中指で眼鏡をクイッとあげてから担任の方を向いて立つ。


その表情からは全く緊張している様子はない。


これがいわゆるポーカーフェイスというものだろうか。

⏰:11/09/10 23:26 📱:S004 🆔:w1pFl2Mw


#350 [輪廻◆j6ceQ96kak]
当然だけど俺も含め皆の視線は写真を撮られている奴に集中する。


担任のデジカメからシャッターが2回ほど押され、石橋は担任にカードを渡してやっと席に戻された。


自己紹介のうえに写真撮影なんて、そこまで大袈裟な事をしなくてもいいじゃないか。


ここまで時間が5分もかかったぞ。


一人の自己紹介に5分もかけるなんぞ時間の無駄だ。

⏰:11/09/10 23:40 📱:S004 🆔:w1pFl2Mw


#351 [輪廻◆j6ceQ96kak]
次は石橋の後ろの席の奴が立って前に出る。


俺は多少心臓をバクバクさせながら出番を待つ。


『桐谷蓮でっす! 趣味はゲーム。特技は野球とかサッカーとか。よろしく!』

インテリ系の次は、随分と調子のよさそうな男がきたか。


俺はスポーツは卓球とかバドミントンしか興味がない。


…これまた気が合いそうもないな。

⏰:11/09/11 09:26 📱:S004 🆔:ihm0PsH6


#352 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『桐谷くんはお父さんが忙しい人で転勤する事が多く、よく転校やお引っ越しを繰り返していたのよね?』


『そうなんすよ! だからせっかく友達できてもすぐ別れてばっかりで!』

…それは辛いだろうな。


少し嫌味にも聞こえたが、実際俺も奴と同じ立場だったら悲しいだろう。


『だから多分、また転校するかもしれないからそれまでみんな仲良くしてくれよな!』

そう言って満面の笑みを浮かべてピースサインをした。

⏰:11/09/11 23:49 📱:S004 🆔:ihm0PsH6


#353 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そして桐谷とやらが写真を撮って席に戻る際、偶然にも俺と目が合ってしまった。


彼はなぜか顔をニヤつかせてきたが俺はすぐに目を反らす。


彼の存在が俺のイメージを変えていくなんてその時は想像もせずに。



自己紹介…ついに俺の番が回ってきた。


カードを持っておぼつかない足で黒板の前に立って皆の顔を見回す。


この視線が集中する感覚はやっぱり苦手だ。


例えば小学生の時だったら夏休みなどの自由研究で前に出て発表するという事があり、俺はそういうのがとにかく大嫌いだった。

⏰:11/09/13 00:25 📱:S004 🆔:x0bAJc16


#354 [輪廻◆j6ceQ96kak]
中学では自由研究はないものの、他の発表などあると思うと気が遠くなってくる。


『えと…高見順一です。趣味はゲームとかバドミントンで、特技は特にありません。よろしくお願いします』

これこそが俺流のシンプルな自己紹介だ。


『ではこちらに来てください』

担任の方を向いて写真を撮って貰い、カードを渡して早々と席に戻った。

⏰:11/09/13 22:08 📱:S004 🆔:x0bAJc16


#355 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>354 訂正
気が遠くなる ×
気が重くなる ○
―――――――――


どんな顔をしているのかは写真ができるまではわからない。


でも多分、顔はひきつっていると思う。


そんな顔が後に皆に見られると思うと、更に気が重い。


そして次々に自己紹介が行われ、男子の最後の紹介が終わった所でタイミングよくチャイムが鳴った。

⏰:11/09/13 22:16 📱:S004 🆔:x0bAJc16


#356 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あらら時間が来ちゃった。じゃあ女子の自己紹介は2時目にやりましょうか』

担任がそう言い残して教室から出ていき10分休みになった。


俺はあまり目立たないように机に突っぷして寝たフリをする仕草をする。


だがそれは数秒で無駄に終わった。


『なあなあ、ちょっといい?』

…といきなり声がして肩を数回叩かれた。

⏰:11/09/13 22:35 📱:S004 🆔:x0bAJc16


#357 [輪廻◆j6ceQ96kak]
心の中で溜め息をついて、ゆっくりと起き上がり声のした方を振り返る。


そこに満面の笑みを浮かべた彼がいた。


『なにか…? ええと…』

先ほど自己紹介したとはいえ、すぐに名前を覚えられるわけもなく、彼の顔を凝視しながら必死で思い出そうとした。


『…桐谷ね』

思い出そうとする努力は報われないまま、向こうから名乗ってきた。

⏰:11/09/13 22:47 📱:S004 🆔:x0bAJc16


#358 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ああそうだ…桐谷くん。桐谷…』

今度は下の名前が思い出せなくなる。


彼は一瞬困惑していたが、すぐに笑顔を見せて言った。


『蓮だよ、桐谷蓮』


『…そう! 桐谷蓮くん』


『絶対覚えてなかったしょ?』

今度は苦笑いで言う。

⏰:11/09/13 22:55 📱:S004 🆔:x0bAJc16


#359 [輪廻◆j6ceQ96kak]
実に感情豊かな人だと思いつつ、そんな彼を見てニヤついてしまった。


『いきなりだけど高見くんさぁ…ゲームが趣味だって言ってたよね?』

…ほんとにいきなりだ。


そういえば彼も自己紹介でゲームが好きだって言ってた気がするな。


もしかして気が合うかもしれないと若干の期待をした。

⏰:11/09/13 23:03 📱:S004 🆔:x0bAJc16


#360 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『どんなゲームやってる?』


『えと…格闘ゲーとかアクションゲーとかかな』


『そか。じゃあ今度家行っていい?』

…なぜそうなる。


いや別に嫌というわけではないが、ちょっと馴れ馴れしいなとは思う。


それを本人に直接言えたら苦労はしないのだが。

⏰:11/09/13 23:12 📱:S004 🆔:x0bAJc16


#361 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃ、そゆ事で! これからもよろしくな』

彼はそう言い残して去っていった。


めんどくさそうな人と知り合ってしまったようだ。


自己紹介の時に趣味をゲームと言わなければ彼も俺なんかに話しかけたりはしなかっただろう。


…俺は後悔した。


よりによってクラスで一番明るくてうるさそうな人と関わりをもってしまったのだから。


とにかく、こうして俺の中学校生活は彼との出会いで幕をあけた―



〜Side episode1 END〜

⏰:11/09/16 10:13 📱:S004 🆔:v7UPVMbU


#362 [輪廻]
■Side episode2■
『美人って、時には罪』


2時間目。

男の自己紹介から今度は女の自己紹介の時間。

女子のトップバッターが教壇の前にゆっくり歩いてくる。


男達はその女子を視線で追う。


俺は『早く終わらないかな』とか思いながらダルそうな顔でその女子を見ていた。


教壇に立った、黒く長い髪をしたおしとやかそうな女子が、恥ずかしそうに自己紹介を始める。


『橋田美波です。趣味は読書で、特技はピアノです。よろしくお願いします』

そう言い終えると、教室内は男達の拍手喝采の渦。


女子も多少は拍手しているのだが、顔はほとんど無表情…というか興味なさそうな顔をしている。

⏰:12/01/10 14:25 📱:Android 🆔:WcuhB.A.


#363 [輪廻]
橋田美波という女子は、まあパッと見て美人なので、他のそうでもない女子が嫉妬しているのだろうか。

それはこの男達の拍手喝采が証明している。


次に教壇に上がる女子が美人ではない場合、その女子が気まずくなるのは目に見えている。

その女子に今から同情を捧げておこうと思う。


『はい、じゃあ次』

橋田美波の写真を撮り終えた先生が言い、その後ろの席の女子が立って教壇へ向かう。


今度は橋田美波の長い髪とは違って短い髪の女子だった。


教壇に立ち、皆の方に顔を向ける。


その髪を見た瞬間、俺は吹き出しそうになった。

前髪はとても短く、しかも真っ直ぐに揃えられている。


コメカミ部分の髪も耳の上部分までで、そこもこれまた真っ直ぐに揃えられているではないか。


頭の上の髪も全体的に丸っこくて、それはまるでキノコのようだ―

⏰:12/01/10 14:52 📱:Android 🆔:x2BzVkhc


#364 [輪廻]
そう思っているのは、おそらく俺だけではないはずだ。

ここにいる半数近くの人間がそう思っているに違いない。


更に驚いたのは彼女の名前だ。


『ええと…木下実和子です。趣味はお母さんと一緒にやってる園芸で、特技は花の名前を沢山言える事です。よろしくお願いします』

変わった髪型のわりに声は意外と可愛らしい。


でも、まさか名前にも“キノコ”が入っているなんて…予想外デス。


『じゃあ木下さん、写真撮るからこっちに』

自己紹介が終わってキノコ…いや、木下さんは先生の元へ。

⏰:12/01/11 23:51 📱:Android 🆔:A9UR4Lis


#365 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑a

⏰:22/10/02 03:19 📱:Android 🆔:Ltpo.xA.


#366 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/07 12:34 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#367 [わをん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/12/17 16:57 📱:Android 🆔:gTMgoNuA


#368 [わをん◇◇]
>>1-30

⏰:22/12/17 16:57 📱:Android 🆔:gTMgoNuA


#369 [わをん◇◇]
>>300-330

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