ぼくらのみかた
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#251 [輪廻◆j6ceQ96kak]
「松下さん なんで泣いてるの?」
そう書かれた文章を見てから、雪乃ちゃんに無言でノートを手渡した。
雪乃ちゃんは涙で真っ赤になった顔でその文章を見ると、とっさに涙を腕で拭い、久保の方を見てニコリと微笑んだ。
『ふふ…泣いてないよ』
『雪乃ちゃん素直じゃないね〜』
病室に三人の笑い声が飛び交った―
:11/08/19 10:09
:T005
:CS3FwOpI
#252 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あ、そうだ久保。よかったらお前の携帯電話貸してくれない?』
俺がそう言うと、久保は頷いてベッドの傍にある引き出しを指す。
俺はその引き出しを開けて携帯電話を借りた。
この携帯電話に入っているメールが強力な証拠になる。
明日、木下先生に言いたい事はたくさんあるぞ。
『じゃあ明日も来るからな』
俺と雪乃ちゃんは久保に手を大きく振ると、久保も最後に笑顔を見せながら手を小さく振ってくれた―
:11/08/19 10:29
:T005
:CS3FwOpI
#253 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■Last episode■
『桜、舞う頃』(後編)
その日の夜、俺は父親から衝撃的な言葉を聞いた。
『順一、4月から転勤する事になった』
…突然の事だった。
『て、転勤って…どこにだよ?』
『…北海道だ』
あまりの事に、頭の中が真っ白になった…。
転勤となるともちろん住む家も学校も変わる訳だ。
それよりも、久保とか雪乃ちゃんなど今の学校の奴らと離れる事になるのが信じられなかった。
:11/08/19 10:40
:T005
:CS3FwOpI
#254 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あと2ヶ月しかないからな。お前も早めに準備はしとけ』
…あと2ヶ月?
…嫌だ。
嫌だと言わなければ…
でも体が震えて声が出なかった。
その日は結局何も言えなかった。
それ以上に、転勤するなんて事、クラスの皆に言える訳がない。
:11/08/19 10:48
:T005
:CS3FwOpI
#255 [輪廻◆j6ceQ96kak]
頭の中が混乱する。
まだ久保と木下先生の事も解決していないというのに、その上突然の転勤だなんて。
その日は眠れる訳もなかった。
何も考えずに布団にうつ伏せになっていたらいつの間にか寝ていたみたいで、気がつくと朝になっていた。
:11/08/19 10:58
:T005
:CS3FwOpI
#256 [輪廻◆j6ceQ96kak]
朝ご飯を食べずにおぼつかない足で学校へ向かい、教室に入る。
『高見くん、おはよう』
席に座るなり隣の雪乃ちゃんが元気に声をかけてきた。
『ああ…おはよう…』
『…何かあったの?』
『なんでもないよ』
言うべきか言わないべきか迷ったが、せめて期末テストが終わるまではと思い、親の転勤の事実をその場で打ち明けなかった。
:11/08/20 01:07
:T005
:ApZWZw5c
#257 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ほとんどの授業はボーっとして内容が頭に入らなかった。
もうすぐ期末テストなのに、これでいい訳はない。
でも俺はテストの結果で進級になるか留年になるかよりも、もっと大事な選択を迫られたのだ。
皆と別れる?
そんなの信じられないし、信じたくない。
休み時間、頭を抱えている俺の所に後ろの席の倉野がやってきた。
『おい高見。お前何かあった?』
その声にハッとして倉野の顔を見る。
:11/08/20 09:37
:T005
:ApZWZw5c
#258 [輪廻◆j6ceQ96kak]
倉野とはそれほど仲良くもないし、そもそもあまり話した事がない奴だ。
彼になら別に言っても大丈夫だろう。
『ちょっと来て』
俺は倉野を廊下に連れ出して、転勤の事を打ち明けた。
『マジで…? 北海道とか遠いじゃん』
『…まだ皆には言わないで欲しいんだよね』
『わかった。テスト前だし余計な心配かけたくないもんな』
俺達はちょっと早い握手を交わした。
:11/08/20 12:15
:T005
:ApZWZw5c
#259 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あ、そういえば…久保はどうだった?』
教室に戻り、席に着いたところで倉野が聞いてきた。
『あ…大丈夫そうだったよ』
危ない危ない…失声症だという事は言ったらダメなんだった。
危うく言ってしまうところだったじゃないか。
『そっか。…なんであんな事したんだろうな』
…自殺未遂か。
木下先生に脅され、謹慎になった事で精神的に参ってしまったという事は、担任が公の場で言うまでは、俺からは言わない方がいいだろう。
:11/08/20 15:48
:T005
:ApZWZw5c
#260 [輪廻◆j6ceQ96kak]
木下はすべての責任を久保に負わせようとしてる。
久保の携帯に木下の娘とのメールのやりとりが残っているかいないかで勝負の行方は決まるはずだ。
倉野が自分の席に戻ったところで、俺はこっそり昨日借りた久保の携帯電話を取り出した。
メール画面を開く。
『あった…』
やりとりはしっかりと残されていた。
:11/08/21 06:52
:T005
:eIzae13s
#261 [輪廻◆j6ceQ96kak]
とにかく受信メールを一つ一つ見て行くことにしよう。
「こんにちは 前略のメルボから来ました よかったら仲良くなりませんか?」
「はい こちらこそよろしくお願いします」
「好きな人はいないです」
「じゃあタメで」
「先輩だぁ」
「わかった じゃあよろしくね」
「いい名前だね あたしは茜だよ」
「ありがとう そんなこと言われた事ないから嬉しい」
…ここらへんまでは普通のやりとりだ。
:11/08/21 07:03
:T005
:eIzae13s
#262 [輪廻◆j6ceQ96kak]
メールはまだある。
「うん 照れちゃった」
「あはは そういえばどこの高校に通ってるの?」
「あ 知ってるよ」
「学校近いね あたしも彼氏いないので付き合っちゃいます?」
「やったぁ じゃあ太一って呼ぶね あたしは茜でいいよ」
「今度会おうよ」
「もう私の彼氏だもん 会いたいよ」
「じゃあ来週の日曜日で 楽しみにしてるね」
…メールはおおむねここで終わりだ。
:11/08/21 07:28
:T005
:eIzae13s
#263 [輪廻◆j6ceQ96kak]
でも…
なんだろうこの違和感。
このメールの中に何か違和感を感じる。
その違和感の正体に気づくのにそれほど時間はかからなかった。
それは受信メールの一つにあった。
「もう私の彼氏だもん 会いたいよ」
…今までのメールでは彼女の一人称は『あたし』だったのに、この文章だけはなぜか『私』だ。
:11/08/21 07:34
:T005
:eIzae13s
#264 [輪廻◆j6ceQ96kak]
別にそれほど気になるような事ではないのだが、俺からしてみればちょっとおかしいなとは思う。
まあ単なる俺の気にしすぎだろうと自分に言い聞かせて久保の携帯電話を閉じて鞄にしまった。
俺の今日のやるべき事はこのメールを放課後、木下先生につきつける。
向こうからアピールしてきた文章を見せれば、さすがの木下も自分のやった事を自覚するだろう。
:11/08/21 07:44
:T005
:eIzae13s
#265 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん、今持ってた携帯って久保くんの?』
『うわっ! あ、うん…ちょっとね』
雪乃ちゃんはいきなり俺の背後から話しかけてきたので驚いてしまった。
気配を感じなかったから、怖くてチビりそうになった事は内緒だ。
『もしかして、メールとかチェックしてたの?』
『えっ?』
さすが雪乃ちゃん…鋭い。
でも彼女はもう知っているから変に驚く必要はないな。
誰が知ってて誰が知らないのか、ちょっと混乱してきた。
:11/08/21 07:58
:T005
:eIzae13s
#266 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もし茜さんが木下の娘じゃなかったら、久保は謹慎になる事も自殺未遂をする事もなかったかもしれない。
単純に考えれば、偶然携帯サイトで知りあった人が自分の通っている学校の教師の娘だったという事だが、それはそれで後から複雑になる。
そういった色々な事が久保を精神的に追い詰めたのかもしれない。
結果、俺は久保の気持ちをわかってなかった。
それどころか、わかろうともせずに『やめといた方がいい』とか適当な事言ってた。
:11/08/21 08:19
:T005
:eIzae13s
#267 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は最低な奴だ。
人の気持ちを知った気でいて、全く知らなかった。
いつか本当に人の気持ちをわかってやれる男になれるだろうか。
いや、なりたい。
笑い合いながら、時には悲しみを分かち合いながら『お前の気持ち、わかるよ』と言える男に―
その日の放課後、俺は屋上に木下先生を呼び出す事に成功した。
今度ばかりはトイレなんかでする話ではないからな。
:11/08/21 08:30
:T005
:eIzae13s
#268 [輪廻◆j6ceQ96kak]
制服の右ポケットには、久保の携帯電話もしっかりと入っている。
『高見…ワタシは試験問題の最終チェックなどで忙しいんだよ。話なら、なるべく早く済ませて欲しいね』
『ちゃんと答えてくれるなら時間は取らせねーよ』
『で…なんだね?』
俺はポケットから強力な武器…携帯電話を取り出した。
メール画面を開く。
『…え?』
『どうしたのかね』
そんなまさか…
茜さんからの受信メールが全て…
消えている―
:11/08/21 08:49
:T005
:eIzae13s
#269 [輪廻◆j6ceQ96kak]
消した覚えもないし、消すはずもない。
一気に血の気が引いた。
『話がないなら戻らせてもらうよ』
いや、まだ帰すわけにはいかない!
でもあのメールがないと追い詰める事はできない。
…それなら最終手段だ。
上からがダメなら下からだ。
:11/08/21 08:57
:T005
:eIzae13s
#270 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『今日これから、先生の娘さんの茜さんに会わせてくれませんか?』
一か八か聞いてみた。
『…断る』
即答だった。
久保の受信メールがない以上、今のところ強力な武器は娘のメール送信内容が書かれた携帯電話しかない。
向こうでも消されている可能性は否定できないが、少しの可能性を信じるのであれば見てみる価値はある。
:11/08/21 09:08
:T005
:eIzae13s
#271 [輪廻◆j6ceQ96kak]
でもこの先生を通さないと娘に会う事はできない。
…いや、そうでもないかもしれない。
たった一人だけ、いるではないか。
木下の娘と交流がある人が。
そう…吉田の妹だ―
木下の娘と吉田の妹は友達なんだ。
吉田の話によると、木下の娘は吉田の家によく遊びに来るという事だ。
:11/08/21 23:28
:T005
:eIzae13s
#272 [輪廻◆j6ceQ96kak]
いい情報をくれた事に感謝するぞ吉田…
いや、吉田さん。
色々考えている内に、気がついたら木下は屋上から姿を消していた。
まあいいだろう。
少し手間がかかるけど『苦労は買ってまでしろ』という言葉を聞いた事あるし、ここはありがたく買わせてもらおう。
俺は自分の携帯電話を取り出して、吉田に電話した。
…電話した結果、運のいい事に木下の娘は今、吉田の家に来ているとの事。
:11/08/21 23:45
:T005
:eIzae13s
#273 [輪廻◆j6ceQ96kak]
またまた運のいい事に、吉田さんの家は一度行っているから場所はわかる。
あの荷物持ちジャンケンが無駄じゃなかったって訳だ。
俺は早速、吉田さんのマンションに向かう事にした。
女の子の携帯電話をチェックするなんて失礼な事はしたくないけど、これは友達の久保の為だ。
それを伝えれば彼女もわかってくれるだろう。
:11/08/22 09:12
:T005
:0Fa9Sr/Y
#274 [輪廻◆j6ceQ96kak]
:11/08/22 09:36
:T005
:0Fa9Sr/Y
#275 [輪廻◆j6ceQ96kak]
学校から歩いて40分くらいだが、俺は急いで歩いたので30分くらいでマンションに到着した。
吉田さんの部屋は13階。
さっさとエレベーターに乗って部屋前に。
そしてチャイムを鳴らすと、しばらくして背の小さめな女の子が現れた。
『…どちら様ですか?』
この子が吉田さんの妹だろうか。
小柄な体型、服装は制服のままで髪は黒髪のツインテール。
雪乃ちゃんには及ばないが、清楚でかわいらしい子だ。
:11/08/22 09:45
:T005
:0Fa9Sr/Y
#276 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そのくりくりとした瞳は、思わず吸い込まれてしまいそうなほどだ。
『あの〜』
妹さんが不思議そうに俺の顔を見て言う。
…しまった。
つい顔を凝視していた。
決して見とれていた訳ではないぞ。
:11/08/22 09:50
:T005
:0Fa9Sr/Y
#277 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あの、ええと…吉田優斗さんはいるかな…?』
『兄貴に何か用ですか?』
…ちょい待ち。
兄貴だと?
こんなかわいらしい女の子が兄を兄貴と呼ぶ?
気が強い女子が言うならわかるけど、こんな子が兄貴って呼ぶなんて違和感があるんですけど。
:11/08/22 09:55
:T005
:0Fa9Sr/Y
#278 [輪廻◆j6ceQ96kak]
いや、兄がそういう性格だから似たのかもしれない。
まさか吉田一家は皆、気が強いのだろうか?
そうだとしたらあまり関わりたくはない。
『俺はあなたの兄貴…いや、お兄さんと同じ高校に通ってる高見といいます』
年下が相手なのになぜか敬語を使ってしまう。
タメ口で話したら豹変しそうで怖いからだ。
:11/08/22 10:01
:T005
:0Fa9Sr/Y
#279 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…ちょっと待っててください』
そう言って妹さんが兄を呼びに行った。
『おう高見〜。来たか〜』
数秒して、リズムにのった声と共に吉田さんが現れた。
『吉田さん。さっきの話ですけど…』
『茜ちゃんなら佳代の部屋にいるぜ〜』
彼はなぜこんなにテンションが高いのだろう。
それにしても、妹さんの名前は佳代ちゃんというのか。
:11/08/22 10:11
:T005
:0Fa9Sr/Y
#280 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『佳代の部屋はここね〜。勝手に入ったらぶっ飛ばされるからちゃんとノックするんだぞ〜』
…笑顔で、しかも陽気な声で言われると逆に怖いんですけど。
『あの…吉田さんも一緒に入ってくれませんか?』
『そりゃ無理〜』
…こいつも即答かよ。
理由は聞く気もおきなかったので、仕方なく俺一人で佳代ちゃんの部屋に入る事にした。
:11/08/22 10:17
:T005
:0Fa9Sr/Y
#281 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ぶっ飛ばされたら怖いので、ドアを3回ノックした。
佳代ちゃんはすぐにドアを開けてくれたが、さっきまでのかわいらしい顔とは裏腹に強ばっているではないか。
そのまま『失礼しました』と冷や汗をかきながら言ってドアを閉める人をテレビなどでよく見かける。
でも俺は別に君に用があるわけではない。
その部屋に一緒にいる木下の娘の茜さんに用があるのだ。
:11/08/22 10:27
:T005
:0Fa9Sr/Y
#282 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『何ですか?』
『あ、あの…この部屋に木下茜さんという子は…?』
年下の、しかも女の子にこんな情けない態度をしなくてはならないとは。
『佳代、どうかしたの?』
佳代ちゃんの後ろから高い声がして、ついに彼女が俺の前に姿を現した。
『この人、茜に用があるんだって。茜の知ってる人?』
茜さんは俺の顔をガン見する。
:11/08/22 10:37
:T005
:0Fa9Sr/Y
#283 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その子は、父親とは似ても似つかない顔でおとなしそうな子だった。
『え…知らないけど』
初めて会うから知らないのも当然なんだけど、真顔でそう言われるとちょっとヘコむ。
『あの、なんで茜の名字知ってるんですか?』
…それを一から説明するのは面倒だ。
ここは一言でまとめよう。
『あの、俺の通ってる高校に木下っていう先生がいて…君がその…』
俺がここまで言うと、茜さんは何か納得したような表情を見せた。
:11/08/22 10:46
:T005
:0Fa9Sr/Y
#284 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>272 訂正
苦労は買ってまでしろ ×
苦労は買ってでもしろ ○
――――――――――
『ああ…佳代のお兄ちゃん達から聞いてます。高見さん…ですよね?』
『あ、まあ…そうかな』
吉田さん…俺のあることないことベラベラ喋ってないだろうな?
それにしても、今彼女が言った『お兄ちゃん達』とはどういう事だろう。
他にこの家と交流がある人は…
…いた。
:11/08/22 18:07
:T005
:0Fa9Sr/Y
#285 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺の考えに間違いがなければ、それは雪乃ちゃんしかいないだろう。
『あの、雪乃ちゃんって知ってる?』
俺は茜さんの目を見て聞いたのだが、答えたのは佳代ちゃんだった。
『もちろん知ってるよー。雪乃っちは兄貴の彼女だもん』
この女…俺に慣れてきたのかタメ口になりだしたぞ。
『ああそう…。雪乃ちゃん、俺の事何か言ってませんでした?』
ちょっと怖いが、気になるので思い切って聞いてみた。
:11/08/22 18:17
:T005
:0Fa9Sr/Y
#286 [輪廻◆j6ceQ96kak]
茜さんと佳代ちゃんはお互いの顔を見合わせ、再び俺の方に視線を戻すと、佳代ちゃんがいきなり笑い出した。
『ふふっ…もしかして雪乃っちの事好きなの?』
『い、いやいや…そういうつもりで聞いたんじゃ…』
彼女が笑っている中、俺は赤面していた。
…穴があったら入りたい。
:11/08/22 18:25
:T005
:0Fa9Sr/Y
#287 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃあ教えてあげるー』
じゃあってなんだよ、じゃあって…。
勝手に好きだと決めつけられてしまったようだ。
吉田さんに知られたら特大パンチをくらうぞこれは…。
『誰にも言わないでって言われてたんだけど、あなたの事が気になるみたいな事言ってたよー』
…はい?
これは夢だろうか。
もしくはドッキリとか?
:11/08/22 18:36
:T005
:0Fa9Sr/Y
#288 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は今、はてしなく動揺している。
『そ、それは本当なの?』
『…ホントだよ。ちょっと中入っていいよー』
佳代ちゃんに手を引っ張られて部屋に入れさせられた。
まあ、部屋に入れただけでも好都合だ。
部屋の中はいかにも女の子の部屋だ。
壁紙はピンク、ベッドの枕や毛布もピンク、カーペットもピンク。
よっぽどピンク色が好きなのだろう。
…女の子なら当然だが。
:11/08/22 18:42
:T005
:0Fa9Sr/Y
#289 [輪廻◆j6ceQ96kak]
こんなピンク一色の部屋に男が一人と女が二人…。
俺は激しく場違いではないだろうか。
女の子の部屋なんて当然入った事もないから、目のやりどころに困る。
俺が正座して下を向いたまま黙っていると、佳代ちゃんが早速切り出した。
『昨日の夜、雪乃っちが兄貴に会いに遊びに来たんだけど、病院に入院してる友達を想うあなたに感動したって言ってたよー』
…久保の事か。
こういう場合は何といって返事をした方がいいのだろう。
:11/08/22 19:06
:T005
:0Fa9Sr/Y
#290 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『その前もねー、去年のクリスマスに買い物に付き合ってくれたとか、人を思いやる気持ちがあるとか沢山言ってたよー』
その無駄に語尾を伸ばして言うのはやめてほしい。
なぜかバカにされているような気分になる。
それにしても、雪乃ちゃんが俺の知らない所で俺を褒めていたんて。
『あ、そう…』
『あははっ、照れてる』
『いや、別に…』
…ダメだ。
完全に彼女のペースにハマってしまった。
:11/08/22 19:15
:T005
:0Fa9Sr/Y
#291 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺がここへ来た目的はただ一つ。
茜さんに携帯電話を見せてもらう…
…つもりなのだが、佳代ちゃんのような明るく気が強そうなタイプが隣にいると、携帯電話を見せてなんて言いづらい。
ここはまず、彼女に久保の事を話す方がいいだろう。
俺は覚悟を決めて茜さんの目を見て切り出した。
:11/08/22 19:22
:T005
:0Fa9Sr/Y
#292 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あの茜…さん。く、久保って人の事知らない?』
どんな反応が返ってくるのかが怖い。
が、彼女は動揺する事もなく表情を変えなかった。
『久保太一くんですよね? 知ってますけど』
『その…前略プロフィールで知り合ったんだっけ?』
『あ、はい。それが何か…?』
…この子はまだ知らないのだろうか?
その知り合った人が自分の父親が働いている学校の生徒だという事を…。
:11/08/23 22:45
:T005
:qOK7xnyA
#293 [輪廻◆j6ceQ96kak]
知らないのであれば、今言わなければ永久に言うチャンスがこなくなるかもしれない。
まず彼女自身の久保に対する気持ちを知る必要がある。
言うのはそれからでも遅くはないだろう。
『ええと…君は久保にメールで告白したんだよね?』
『…………』
茜さんは俺の単刀直入な質問に対して一瞬目をそらした。
問題は、その告白が本心であるか否かだ。
:11/08/23 22:57
:T005
:qOK7xnyA
#294 [輪廻◆j6ceQ96kak]
告白がただの…いわゆる釣り行為だったら、彼女にも多少は責任がある。
携帯サイトで知り合って、まだお互い会った事もないのにメールでいきなり付き合おうなんて言ってしまうのには、俺にはある種のイタズラにしか思えない。
彼女はまだ中学生だ。
この子の父親が言うとおり、知らない男と付き合うなんて聞かされたら断固反対するのは親としては当然だ。
:11/08/23 23:08
:T005
:qOK7xnyA
#295 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼女の父親の木下先生は、久保の方から茜さんに言い寄ったと吉田から聞いたと言っていた。
あの吉田さんの事だから、それは嘘に決まっている。
それに茜さんから久保に届いたメールはしっかり確認した。
最初に付き合おうと言ってきたのは、茜さんの方からだ。
それで軽くOKする久保も久保だが、このまま久保から交際を迫ったと思われるのは嫌だ。
:11/08/23 23:22
:T005
:qOK7xnyA
#296 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『茜さん、悪いけど携帯見せてくれない?』
気づいたらそう言っていた。
久保が俺に勇気をくれた…そんな気する。
『な、なんでですか…?』
俺の視線がキツいのか、彼女は怯えたような目をしていた。
隣に座る佳代ちゃんは止める事はなくじっと黙っている。
『この際だからハッキリ言うよ。君のせいで俺の友達の久保が学校を謹慎になって…その上、自殺しようとしたんだ』
『あたしの…せい…?』
まだ状況をよく理解していないようだが、やがて彼女の目に涙が浮かんできた。
:11/08/23 23:37
:T005
:qOK7xnyA
#297 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『茜…』
茜さんの突然の涙に佳代ちゃんは戸惑いながらも肩に手をやってなんとかなだめようとする。
不思議な事に、友達の女の子を泣かせたというのに佳代ちゃんは俺を責めようとはしなかった。
ただ、ずっと茜さんの俯く顔を見ながら『茜…』と声をかけ続けている。
その様子から俺は察した。
佳代ちゃんは久保と茜さんのメールのやりとりの事を知っていたのではないかと。
:11/08/23 23:49
:T005
:qOK7xnyA
#298 [輪廻◆j6ceQ96kak]
さっき茜さんに携帯を見せてと言った時、彼女は止めなかった。
佳代ちゃんも、何かしら二人のメールのやりとりに関与している可能性がある。
そういえば、茜さんから久保に来たメールに一つだけ違和感があった。
その違和感とは、自分の事を言う名前…つまり一人称。
一人称が『あたし』が多い中で、一つだけ『私』となっているメールがあった。
:11/08/23 23:56
:T005
:qOK7xnyA
#299 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もし一人称が『私』と書かかれたメールを送ったのが佳代ちゃんだったとしたら…
『佳代ちゃん。君は二人のメールについて何か知らない?』
『わたし…? それは…』
明らかに動揺している。
でも仮に佳代ちゃんもメールのやりとりに関わっていたとしても、理由がわからない。
『茜…携帯借りるよ』
突然、佳代ちゃんが泣いている茜さんに言い、側に置いてある携帯電話を取って俺に差し出した。
:11/08/24 00:06
:T005
:EjU97vFg
#300 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『わたし…携帯持ってないからよく茜の借りてたの。それで、前に借りた時にメールを見ちゃって…』
…その内容が久保とのやりとりだったという事だろう。
それからの展開は大体想像できる。
『それで…茜さんを装ってメールを送っちゃった訳だね?』
『…うん。茜、勝手なことしてごめん!』
謝られた茜さんは、涙を拭いながらゆっくりと佳代ちゃんの方を向いた。
:11/08/24 00:20
:T005
:EjU97vFg
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