ぼくらのみかた
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#1 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今あなたの目の前に立っている人物は味方と判断しますか?


それとも―


敵か味方か、判断できるのは自分しかいないのです―

――――――――――

†horror†を書いている輪廻です。
同時進行で更新していきます。

⏰:11/08/08 18:53 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#2 [輪廻◆j6ceQ96kak]
チャイムで目が覚めた。


教室内がざわめき始める。


どうやら退屈な授業が終わったようだ。


ひとときの夢を見ていたのにチャイムで現実へ引き戻されるとは俺もまだまだだな。


俺は高見 順一(たかみ じゅんいち)

高一の16才。


恋愛も勉強も興味なし。

この高校も偏差値が低かったからたまたま受かった。


恋愛に興味ない、消極的=草食系男子と世間は言う。


俺がその部類だろう。

⏰:11/08/08 19:06 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#3 [輪廻◆j6ceQ96kak]
草食系男子の反対である肉食系男子という言葉も存在するらしい。


最近、教室内では女子共がこれらの言葉をよく連発する。


『恋人にするなら草食系?肉食系?』

男を動物みたいに言わないでくれ、と言いたい所だが人間も立派な動物である事を理解している為、男子共は女子共に反発できない。


俺の学校では女子の方が圧倒的に多く、男子は不利になる状況もしばしあったりする。

⏰:11/08/08 19:15 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#4 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その為、この学校では女子が優勢。


男子は気が弱そうな奴らばかり。


逆に女子は気が強く荒っぽいのが多い。


だからこの学校で結ばれたカップルなんて見た事がない。


ほとんどの女子は別の学校の男子と付き合ったり、前略プロフィールと呼ばれるサイトで知り合い結ばれたという情報が多数。


そこまでして恋人が欲しいのか、と俺はよく疑問に思う。

⏰:11/08/08 19:21 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#5 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『恋人は自分を支えてくれるパートナー』

ある女子がそう言っていた。


ますます理解できない。

支えてくれるパートナーなら友達だけで十分じゃないか?


前略プロフィールと呼ばれるサイトとかで恋人同士になったとしてもさんざん遊ばれてすぐ捨てられたりするだろ、というのが俺の考えだ。


女子には、アンタの考えが理解できないと言われてしまったが。

⏰:11/08/08 19:26 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#6 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は運命的な出会いしか信じない。


例えば食パンを口に入れながら家を出る。


曲がり角で一人の男とぶつかる。


『大丈夫ですか?』

と手を差し伸べる男。


少女漫画などでよく見られるシチュエーションだ。


もっとも、そんな都合よい展開が何度もある訳ではない事は知っている。


でも俺はそういうのだけは嫌いじゃない。

⏰:11/08/08 19:30 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#7 [輪廻◆j6ceQ96kak]
手を差し伸べてきた男が、いわゆる草食系男子と呼ばれる奴だったら?


何の展開も期待できないだろう。


肉食系男子だとしても、見た目がチャラければ肉食系女子じゃない限りすぐに去っていくだろう。


草食系と肉食系の間は存在しないのだろうか?


と日々どうでもいい事を考えている次第だ。

⏰:11/08/08 19:36 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#8 [輪廻◆j6ceQ96kak]
休み時間だ。


いつものように大きな欠伸をしていると、友達の一人が俺の所にやってきた。


『よ。相変わらずのんびりした顔してんな』

お前に言われたくないと思った。

その言葉をそっくりそのままお返したい。


こいつも草食系だと俺は思っている。


俺と同じで彼女ができた事もないし、そういう意味では俺と気が合うのかもしれない。


少し悲しいが。

⏰:11/08/08 19:39 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#9 [輪廻◆j6ceQ96kak]
でも、俺を裏切るような言葉が奴から飛び出した。


『高見…お前だけには言っとくか。俺さ、彼女できたんだよね』


…は?

なんだこのいきなりすぎる展開は。


俺は苦笑いした。


『冗談はやめろよ』

思わずそう言ったけど、考えてみればこいつは嘘や冗談を言うような奴ではなかった。

⏰:11/08/08 19:43 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#10 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『いやマジで。前略プロフィールってあるだろ?』

…出た。


こいつは草食系と見せかけて、実は隠れた肉食系なのか?


俺は奴の顔をガン見した。


『な、なんだよ。信じてないならメール見てみるか?』

見たくはないけど、真意を知る為には見るを得なかった。


奴から見せられたメールには、その相手であろう女子からのアピール文章が書かれてあった。

⏰:11/08/08 19:47 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#11 [輪廻◆j6ceQ96kak]
なんだ。


こいつが女子を猛アピールしてたと思っていたらまさかの逆だった。


続いて別のメールを拝見。


『学校近いね あたしも彼氏いないので付き合っちゃいます?』

見知らぬ相手に単刀直入に付き合っちゃう?

…とかどうなんだろう。


ほとんどの男はそう言われて嬉しいだろうけど、俺は別だ。

⏰:11/08/08 19:51 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#12 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それは草食系だからとか、肉食系だからとかいう問題じゃない。


それ以前の問題だ。


突然メールで付き合おうなんて言われても、まずその時点で疑うべきだ。


おそらく奴とその女子はまだ直接会った事はない。


前略プロフィールとやらで知り合って何回かメールをやりとりした程度だろうと予測できる。

⏰:11/08/08 20:01 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#13 [輪廻◆j6ceQ96kak]
たかが数回メールをやりとりしただけで、本当にお互いがわかり合えるのだろうか?


いや無理だろう。


メールの文章で人を作り変えるなんて事はたやすい。


最悪な話…女になりすました男、もしくは逆なんてものも存在するかもしれない。


それでさんざん男を釣ってそろそろか、という時に音信不通にする。


そしてそいつは携帯電話片手にあざ笑っている訳だ。

⏰:11/08/08 20:08 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#14 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『なあ、お前それでOKしたの?』

一応聞いてみたが、さっき彼女ができたと言ってたから聞くまでもなかったか。


『もち。まさか俺に彼女ができるなんて思ってもみなかったよ!』

やけに自慢気に話しているが、その場合到底いつか両親に紹介する時がくる。


その時、サイトでたまたま知り合いましたなんて言ったらお互いの両親はなんて思うだろう。

⏰:11/08/08 21:29 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#15 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『その子、何歳なの?』

気になるのは年だ。

同い年くらいの場合、その子の親は心配するぞきっと。


父親としては、可愛い娘をそう簡単には渡したくないだろうし。


もっとも、こいつとその子の父親の気が合えば話は別かもしれないが。


だがこいつは俺の知ってる限りじゃ目上の人には人見知りするタイプだと思う。

⏰:11/08/08 21:34 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#16 [輪廻◆j6ceQ96kak]
よって頑固な父親だった場合は、あたふたするのは確実。


すると自動的に別れさせられるという展開は俺にも予想できている。


『名前は茜ちゃんって言って、俺の二つ下』

…は?


ちょっと待て。

二つ下という事は、中学二年生?


何考えてるんだこいつは。


年下がタイプなんて聞いた事もない。


これにはさすがに呆れた俺は柄にもなく忠告した。

⏰:11/08/08 21:39 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#17 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『お前、それやめた方がいいんじゃない?』

しかし奴は聞く耳を持たなかった。

それどころか反発してきた。


『俺の勝手じゃん。お前にどうこう言われる筋合いないわ』

これには俺の堪忍袋の尾が切れた。


頭の血管がプチンと切れたのと同時に


『何かあっても知らねーからな!』

俺の出した大声に教室の皆の視線が集中した。

⏰:11/08/08 21:45 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#18 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見…なした?』


『大きな声出さないでよ!』


『うるさいんだけど!』

ほとんどの女子から罵声を浴びせられた俺は恥ずかしくなって教室を飛び出した。


穴があったら入りたいとはまさにこの事だろう。


気がついたらトイレの個室に入っていた。


休み時間終了まではあと五分くらいだろうか。


教室に戻りたくなくなった。

⏰:11/08/08 21:49 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#19 [輪廻◆j6ceQ96kak]
高校は義務教育ではない。


このまま次の授業をサボる事を決めた。



…しまった。


ポケットをまさぐるが、あれが出てこない。


そう、携帯電話が。

机の上に置きっぱなしだ。


取りに戻らないと誰かに見られてしまう。


別にやましい事はないのだが、携帯電話はなぜかいつも手元にないと落ち着かない。

⏰:11/08/08 21:54 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#20 [輪廻◆j6ceQ96kak]
せめて電源を切っておけばよかったと後悔しても遅かった。


俺はしぶしぶ教室に戻る事にした。


携帯電話を見られるくらいなら、女子からの罵声と冷ややかな視線の方がマシかもしれない。


戻ろうかと思った矢先に次の授業の始まりのチャイムが鳴り響いた。


俺は血相を変えて早足で教室へ入った。


あいにく先生はまだきていなかった。

⏰:11/08/08 22:00 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#21 [輪廻◆j6ceQ96kak]
席に着くと同時に隣の席の女が俺を見てきた。


『なんだよ?』

静まり返った教室内で俺は小声で聞く。


女は小さく笑って何も答えずに前を向いた。


首を傾げていると数学の先生がやってきた。


一見すると頑固そうな親父だが、意外にも子供好きで優しかったりする。


見た目とは違って声も地味に高い。


その外見から立派な亭主関白っぽいが、家では実際妻の方が強そうだ。


妻の言う事をなんでもハイハイ聞いているようなイメージ。

⏰:11/08/08 22:10 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#22 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『45ページ開いてぇ』

先生が背を向け黒板に問題を書き始める。


その一瞬を見計らって携帯電話をいじる奴が多い。


そして先生が前を向くと、とっさに隠す。


なんという早技だろうかと感心している俺がいる。


俺はどこででも寝れるタイプらしく、欠伸が一回でも出るとすぐにパタリと寝てしまう事が多い。


それが俺の長所でもあり短所でもあった。

⏰:11/08/08 22:16 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#23 [輪廻◆j6ceQ96kak]
前の授業で寝たせいか、眠気はなかった。


だからといって授業も真面目に受けようとも思わない。


つくづく駄目人間なのだ。


だから積極性に欠けてるとか言われるのかもしれない。


そうこう考えてる内に授業は着々と進み、終わりのチャイムが鳴った。


『ねえ』

机に突っ伏している俺に話しかけてきたのは、クラスでも気が強い女子のトップ5に入っている野村可奈恵。

⏰:11/08/08 22:39 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#24 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そんな果てしなくどうでもランキングを誰が作ったのやら。


『彼女できたんだって?』

ニヤニヤしながら膝で俺の肩をツンツンして言った。


『は?』

俺は状況が全く掴めないでいた。


『久保から聞いたよ』

久保…俺が何をしたと言うんだ。


そんな身も蓋もない話をでっち上げやがって。


もしかしてさっきの恨みなのか?


俺はただ、友達として心配だからこそ忠告してやっただけなのに。

⏰:11/08/08 22:47 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#25 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『それ嘘だから』

とりあえず軽く言い放った。


でも野村はまだニヤニヤしている。


『隠さなくったっていいじゃん』

いや隠す以前に本当に彼女なんていませんから、とツッコミを入れたくなった。


さて、こうなった場合は非常に厄介だ。

⏰:11/08/08 22:54 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#26 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保を問い詰めるのは後回しだ。


今ここで問い詰めれば、奴の思うツボだ。


だからといって否定しても、恋愛話に目がない女子に通用するとも思えない。


言い訳した所でますます話が大きくなるだけだ。


ここは肯定も否定もせずにおとなしくしてるのがいいだろう。

⏰:11/08/08 23:05 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#27 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『どこの子?』


『何歳?』


『スミにおけないな!』

そう言って俺の周りに人が段々と群がってきた。


俺は終始無言で携帯電話をピコピコいじりながら質問を無視し続けた。


ふと久保の席を見ると、奴と目が合った。


その表情は…笑っていた。


まるで、ざまあみろと言わんばかりの嫌な笑み。

⏰:11/08/08 23:12 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#28 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>24 訂正

膝 ×
肘 〇
――――――――――


その時は目を反らすしか選択肢はなかった。


質問攻めは続く。


『ねえ何歳さ』


『高見くんって意外と肉食系…』


まずい。

このままでは違ったイメージを植え付けられてしまう。


何か打開策はないだろうか。

⏰:11/08/08 23:24 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#29 [輪廻◆j6ceQ96kak]
威張って言うほどの事ではないが、俺は友達がこれといって多い訳ではなく、いるとしてもクラスが違うのでフォローしてくれる人はこのクラスにはまずいないだろう。


友達だと思ってた奴にも、こうもあっさりとやられたわけで。


奴は嘘を言うような性格ではないと思っていたが、今日の事でその考えは撤回する。


『今度紹介してね』


『おめでとう!』

中にはいいコメントをしてくれる奴もいた。


しかし何度も言うが、彼女はできていない。

⏰:11/08/08 23:54 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#30 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ピンチはチャンスという言葉がある。


この場合、それを利用してみてはどうだろう。


つまり、あまり気は進まないが彼女ができたという事にしておく。


変に反論すると、更にややこしくなる。


奴は俺が必死に反論している情けない姿をどうしても見たいはずだ。


ここは冷静に…。


流れに身を任せてみようではないか。

⏰:11/08/09 00:02 📱:T004 🆔:2k340WRo


#31 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『どこで知り合ったの?』

女子が出したこの質問に俺は初めて答えた。


『前略プロフィール…』

そうポツリと言うと、拍手喝采が巻き起こった。


その中でどさくさに紛れて久保の方をチラ見した。


奴は…少し悔しそうな表情をしていた。


『勝った…』

そう思った。


俺の考えが正しければ、この後久保の奴は彼女ができたのは実は俺だった…なんて弁解するだろう。


それで俺のイメージは元に戻る。

⏰:11/08/09 00:18 📱:T004 🆔:2k340WRo


#32 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺にとっても奴にとっても得する話だ。俺の考えに狂いはない。


しかし俺が甘かった。


奴は…俺が不利になる状況を作り出す、まるで悪魔のような奴だったんだ―



〜prologue END〜

⏰:11/08/09 00:22 📱:T004 🆔:2k340WRo


#33 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode1■
『昨日の味方は明日の敵』



久保の奴が俺をハメてから一週間が過ぎた。


あれから奴とは口を聞いてない。


目も合わせない。


例の彼女とはどうなっているのか気になってはいたが、意地でも聞く事はなかった。


『よお、彼女とはどう?』

今まであまり話した事がなかった奴が、俺が彼女ができたとなってから、まるで手の平を返したように話しかけてくるようになった。

⏰:11/08/09 00:33 📱:T004 🆔:2k340WRo


#34 [輪廻◆j6ceQ96kak]
こういう時だけ都合がいいなと思いつつも適当に答えた。


『普通かな』


『なんだよそれ。キスとかしてないの?』

…キス?

俺にとって縁がない言葉が出たものだ。


『してないよ。まだ会った事ないし』


『あ、そっか。前略で知り合ったんだもんな。でさ、ぶっちゃけどっちから告ったの?』

よくもまあ次から次へと質問が浮かんでくるものだ。

⏰:11/08/09 00:39 📱:T004 🆔:2k340WRo


#35 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ん〜覚えてないわ』


『なんだよつれないな…。あ、そうそう、違うクラスでも噂になってるよ』

んな大げさな。


草食系男子の俺に彼女ができたなんて確かに驚きだろうけど。


奴も俺が有名になりつつあるからさぞ悔しいだろうし、これはこれでよしとしておこう。


元はと言えばあいつ自身がまいた種だからな。


今更謝られても許す気はさらさらない。

⏰:11/08/09 01:03 📱:T004 🆔:2k340WRo


#36 [輪廻◆j6ceQ96kak]
まさに昨日の味方は明日の敵といった所だろう。


それから何事もなく平和な毎日が続いていった。


二年になったらクラス替えがあるので早く進級して奴と別のクラスになりたいと早くも思っていた。


それかもう一つの選択肢。

そう…留年だ。


俺にとってテストで赤点取るのは造作もない事だ。


やろうと思えばできる。


しかし…少し恥な気もする。

⏰:11/08/09 01:10 📱:T004 🆔:2k340WRo


#37 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここはあえてやめておこう。


奴とクラスが別れるまでは留年する訳にはいかない。


学校を辞める気もない。


これは一種の真剣勝負だ。


逃げない。


負けられない。


様々な気持ちを胸に、俺は心の中で久保の奴に宣戦布告をした。

⏰:11/08/09 01:15 📱:T004 🆔:2k340WRo


#38 [輪廻◆j6ceQ96kak]
翌日、俺が教室に入ると黒板の周りに人が集まっていた。


その中の一人の女子が俺に気がついて、駆け寄ってきた。


『高見くん…あれホント?』

俺は何が起こっているのかわからずポカーンと口を開けていた。


口を開いたまま黒板の方へ向かう。


人だかりが黒板から離れていき、チョークで書かれた文字が目に入った。

⏰:11/08/09 01:21 📱:T004 🆔:2k340WRo


#39 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それを見て開いた口が更に開いて、危うく顎が外れそうになった。


『高見順一 初カノは年下の中学生!?』

…とピンク色のチョークで大きく大々的に書かれているではないか。


それを見て、すぐこれを書いた犯人が久保である事がわかった。


あいつまたしても…。


久保の席を見る。


奴は満面の笑みを浮かべて俺を見ていた。

⏰:11/08/09 01:29 📱:T004 🆔:2k340WRo


#40 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見、ホントなの?』


『本当だったらすごい』


『でも恋愛に年なんて関係ないよ〜』

俺をフォローするような言葉も飛び交う。


俺はそういう言葉を聞いたからか、取り乱す事もなく冷静でいられた。


奴はまた俺の情けない姿を見れるとでも思っていたのだろうが、そうはいかない。


この勝負、また俺の勝ちのようだ。


策士、策に溺れるとは言うが、この場合は策士、策に外れるというべきだろう。

⏰:11/08/09 01:36 📱:T004 🆔:2k340WRo


#41 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保の小さい舌打ちが聞こえ、俺は奴に向けてドヤ顔を見せた。


どうせならこの文字、このまま残しておくか?


先生が来たら犯人を見つけてくれるだろう。


なんたって俺のクラスの担任は真面目だからな。


彼は理想と情熱を併せ持っているこの学校では数少ない逸材だ。


しばらくしてチャイムが鳴って担任が入ってきた。


『じゃあ日直、お願いします』

…え?

先生、黒板の文字は無視?


今明らかに黒板の方をチラ見しなかったか?

⏰:11/08/09 10:43 📱:T004 🆔:2k340WRo


#42 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺はその一瞬を見逃さなかったぞ。


何か言ってくれよ先生。


せめて、誰が書いたんだくらいは聞いてくれよ。


アンタはそんな人じゃないだろう?


俺も認める最高の担任なんだからアンタは。


その中で隣の席の女子から救いの言葉が…


『先生、黒板消さなくていいんですか?』

おお、君は神様か。

今まではおとなしく意味ありげにくすくす笑ってて変な奴と思ってた事を許してくれ。

⏰:11/08/09 10:48 📱:T004 🆔:2k340WRo


#43 [輪廻◆j6ceQ96kak]
みんなの視線が先生に向けられた。


先生は表情を一切崩さずにこう言った。


『高見、駄目ですよ。ふざけた事を書いては』

…はい?


俺は言葉を失った。


なぜそうなる?


俺は被害者なんですけど?


教室内がシーンとなった。


誰もフォローしてくれないまま、俺がなぜか久保が書いた文字を消すハメになった。

⏰:11/08/09 10:56 📱:T004 🆔:2k340WRo


#44 [輪廻◆j6ceQ96kak]
席に戻る際に久保の顔を見た。


奴は…さっきの俺以上のとびきりなドヤ顔を見せていた。


こいつ、俺が黒板の文字を残しておこうって考えを読んでたな?


俺とした事が、なんたる不覚。


俺と奴の裏での見えない心理勝負は今のところ互角。


次は何を仕掛けてくる?


この勝負、奴の考える更に先を考える必要があるようだ。


でなければさっきのような事にになる。

⏰:11/08/09 11:02 📱:T004 🆔:2k340WRo


#45 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保 太一


俺は必ずお前をギャフンと言わせてやる。


やられたらやり返すが俺のモットーなんでね。


色々と汚名を着せられるのもごめんだ。


その場合、まずは信頼できる味方を探さなければならない。


久保も俺と同じで友達が多い方ではない。


その点ではまず俺が先手を取る。


味方さえいれば怖くないんだよ!


今なら女子の言う事も理解できそうな気がする今日この頃―



〜episode1 END〜

⏰:11/08/09 11:08 📱:T004 🆔:2k340WRo


#46 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode2■
『口は災いの元、沈黙は金なり』



奴と勝負を始めてから、俺が授業中に寝る事はなくなった。


ある意味感謝したい所だ。


俺は休み時間、普段話さないような奴らに積極的に話しかけるように心がけた。


久保の奴はずっと携帯電話をいじっている。


俺と同じ行動は起こさないようだ。


味方が増えればその分フォローしてくれる人も増えるという事だ。

⏰:11/08/09 11:18 📱:T004 🆔:2k340WRo


#47 [輪廻◆j6ceQ96kak]
奴が次の作戦に入るまでに何とか味方を作りまくる。


俺は話しかけるだけじゃなく連絡先も聞いたりした。


何かあったらメールや電話で相談できるからだ。


それこそ本当の仲間。


なんと素晴らしい事だろう。


味方もできるし積極性も上がるし一石二鳥ではないか。

⏰:11/08/09 11:26 📱:T004 🆔:2k340WRo


#48 [輪廻◆j6ceQ96kak]
沈黙は金なりとは言うが、黙っていては何も始まらない。


自分から動き出さないと意味がないんだ。


相変わらず恋人は作る気はないが、友達作りにはとにかく熱中した。


いつしか、休み時間には俺の席の周りに沢山の人が集まってくる。



…と思っていた俺が甘かったのか。

⏰:11/08/09 11:31 📱:T004 🆔:2k340WRo


#49 [輪廻◆j6ceQ96kak]
またよからぬ噂が飛び交ったのは数日後の事。


まただ…朝学校に来たら黒板の周りに人だかり。


どうせまた奴が何か書いたんだろう。


軽い気持ちで黒板の文字を見にいった。



『高見順一 人に番号やアドレスを聞き回って個人情報収集!?』


俺は愕然とした。


でもこれまた身も蓋もない事だし、みんなもわかってくれるだろう…そう思った。

⏰:11/08/09 11:37 📱:T004 🆔:2k340WRo


#50 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかし、みんなが俺を見る視線がいつもと違う。


まるで怪しい人を見るような目つき、疑いの眼だ。


俺はさすがにこれは否定せざるを得なかった。


『ちょっと待ってよ! こんなの嘘に決まってるしょ!』

シーンとなる教室。

この空気、どうやら誰も信用していないようだ。


一人の女子が長い沈黙を破ってポツリとこう言ったんだ…


『やけに色んな人に話しかけてると思ってたらこんな事してたんだ…最低』

俺はその一言で、弾丸が体を貫通したような感覚で体が固まった。

⏰:11/08/09 11:45 📱:T004 🆔:2k340WRo


#51 [輪廻◆j6ceQ96kak]
続けて男軍団も俺に言葉の弾丸を放っていった。


『お前収集マニアだったのかよ、きめえ』


『お前なんかに教えなきゃよかったよ。あ〜あ…番号とアドレス変えなきゃな』


『さいなら』

一気に離れていく人だかり。



終わった…直感でそう思った。

⏰:11/08/09 11:50 📱:T004 🆔:2k340WRo


#52 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もう久保の顔を見る気も起きなかった。


しかし一瞬だけ見てみた。


奴は…笑ってないしドヤ顔もしていない?


普通に携帯電話をいじっている?


なぜだ?


お前は俺の情けない姿を見たいのではないのか?


奴はまるで何事もなかったかのように携帯電話とにらめっこしていた。

⏰:11/08/09 11:55 📱:T004 🆔:2k340WRo


#53 [輪廻◆j6ceQ96kak]
まさかこれも奴の手の内なのか?


久保が何を考えているのか一瞬にしてわからなくなった。


黒板の文字を消して、とぼとぼと席戻る。


いつものようにチャイムが鳴って担任がやってくる。


勝負に燃えていた俺はもういなかった。


言うまでもなく、それからの日々は地獄だった。


誰が漏らしたのか全クラスに俺の噂が行き届き、廊下を歩いているだけで男子、女子から嫌な視線を向けられる。

⏰:11/08/09 12:02 📱:T004 🆔:2k340WRo


#54 [輪廻◆j6ceQ96kak]
こそこそ話をしているグループもいるが、こそこそ話しするならもっと小さい声で言えよと言いたくなるほど大きな声で俺の事を言ってる奴らもいた。


積極的に味方を作ろうと思っていたのが全てアダになった訳だ。


全ての元凶は当然、久保の奴だろう。


しかし奴の態度に違和感があるのも確かだ。


一つ目の黒板事件の時はフォローしてくれた人もいたし、久保も笑っていやがった。

⏰:11/08/09 12:07 📱:T004 🆔:2k340WRo


#55 [輪廻◆j6ceQ96kak]
でも二つ目の黒板事件の時はそれとは逆だった。


フォローしてくれる人もいなかったし、久保も俺は関係ないと言わんばかりの態度。


誰か教えてくれ。


一体、俺はどうしたらいいんだ?


もう俺に味方は一人もいないのか?


そう思っていた矢先、俺は信頼できると思われる別のクラスの肉食系男子と出会ったんだ―



〜episode2 END〜

⏰:11/08/09 12:15 📱:T004 🆔:2k340WRo


#56 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode3■
『草食&肉食の化学反応』



『なあ、お前ここで何してんの?』

俺が学校の屋上で仰向けになりながら空を眺めていると、目の前に見た事もない男が現れたではないか。


『…誰ですか?』

見た目はチャラく年上っぽいので先輩だと思って思わず敬語を使った。

⏰:11/08/09 12:19 📱:T004 🆔:2k340WRo


#57 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『はあ〜、なんで敬語なのよ?』

男は残念そうな顔をした。


それは敬語を使ったからではなくて年上だと思われた事が嫌だったのか?


『お前A組の高見っしょ?』

やけに馴れ馴れしい口調だが、それを言うとどんな目に合わされるかもわからないだろう。


『え…それで君は?』

同い年で同じ学年とは思えないほど背が高く、ワックスでガチガチに固められたその髪型からチャラさが醸しでている。

よく見るとミントのガムを噛んでていかにも不良だ。

⏰:11/08/09 12:26 📱:T004 🆔:2k340WRo


#58 [輪廻◆j6ceQ96kak]
平和主義者の俺にとってはあまり関わりたくない人材だ。


『C組の吉田だけど、お前の噂聞いてるよ?』

なんだこの人も興味本位で俺に近づいてきたのか。


ため息をついて仰向けから起き上がって屋上を後にしようとしたが…


『ちょい待ち』

吉田と名乗る男が俺の足を止めた。

⏰:11/08/09 12:33 📱:T004 🆔:2k340WRo


#59 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…なんですか?』

…しまった。


またつい敬語を使ってしまった。


同い年とはいえこの人にタメ口を使うのはものすごい違和感を覚える。


『俺の事は吉田でいいわ。まあ座れよ』

面倒とは思いつつも言われるがまま彼の隣に腰をおろした。

⏰:11/08/09 12:38 📱:T004 🆔:2k340WRo


#60 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『いきなり聞くけど、彼女できたってホントなの?』

彼だけには否定しても信じてもらえる気がした。


『い、いないけど』

まだ使うのがなかなか慣れないタメ口。


すると男は途端にアハハと笑い出した。


俺、今何か面白い事を言っただろうか?


『な、なに!』

笑い声を無理やり遮るように大声を出して言った。

⏰:11/08/09 12:46 📱:T004 🆔:2k340WRo


#61 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『だよな? だよな? 俺でさえまだいないってのにお前にいるわけないわな!』

…失礼な物言いだ。


だが、信じてくれた事だけには感謝しよう。


『お前面白いわ!』

いや、そう言われても別に面白いキャラをしているつもりはない。


それについては否定する気も起きなかった。

⏰:11/08/09 12:49 📱:T004 🆔:2k340WRo


#62 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『んじゃあもう一つ。お前ってアドレス収集マニアなの?』

そう直接言われると心にグサリとくるだろ。


この件については否定しても信じてもらえない気がしたので…


『ご想像にお任せするよ』

…と適当に言った。


するとまた笑い始めた。


実に感情豊かな人だと思っていたら、なぜか俺もその笑いにつられて気がついたら俺自信も笑っていた。

⏰:11/08/09 12:55 📱:T004 🆔:2k340WRo


#63 [輪廻◆j6ceQ96kak]
こんな青春漫画であるようなシチュエーションが現実にあるとは思ってもみなかったから驚いた。


『とりあえずアドレス交換しようぜ』

この人は俺の事を信じているのか?


それとも久保みたいに何か嫌な事を考えてたりして…。


『サブアドでいい?』


『なんだよ、もしかして悪用されるとか考えてんの?』

ちょっと思っていたなんて言えない。

⏰:11/08/09 13:00 📱:T004 🆔:2k340WRo


#64 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『安心しな、俺そういうのに興味ねえし。俺が興味あんのは可愛い女の子だけ』

なんという自信に満ち溢れた態度だろう。


彼こそは正真正銘、肉食系男子と呼ばれる人材ではないか。


草食系の俺と肉食系の吉田。


一見、気が合わなそうだがこれはこれで面白い化学反応が起こるかもしれない。


どうやら本当の味方を見つけたようだ。


見た目はチャラいが、心は意外としっかりしているように思える。

⏰:11/08/09 13:06 📱:T004 🆔:2k340WRo


#65 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼の存在は久保にとって大きな弱点になるはずだ。


俺でさえ彼を年上だと思ったんだ。


目上の人にはペコペコするタイプの奴だったら彼には服従するしか選択肢はないだろう。


久保 太一


どこからでも来やがれ。


こっちには、一人でも信じてくれる味方がいるんだ。


なにも大勢の人に信じてもらわなくたっていい。


一人でもそういう人がいる事がどれだけ素晴らしい事だとわかった。

⏰:11/08/09 13:12 📱:T004 🆔:2k340WRo


#66 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかし久保はそれから何かを仕掛けてくる事はなかった。


俺は奴の試合放棄だと勝手に判断しておいた。


いや、もしかしたら何か大きな計画を着々と準備している可能性がある。


一応用心しておくに越した事はないだろう。


やっと久しぶりに平和な学校生活が送れそうだ。


人の噂も75日とは言うが、その日数はさすがに長すぎるだろうと思った俺であった―



〜episode3 END〜

⏰:11/08/09 13:19 📱:T004 🆔:2k340WRo


#67 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode4■
『決戦はクリスマス』



早くも12月。


高校に入ってから8ヶ月が過ぎた。


残念ながら俺の地方では雪が降らないので冬という実感がわかない。


ただ風が尋常じゃない冷たさになったら、それが冬がきたという合図なのだ。


そして12月上旬といえば…

そう、俺の嫌いな期末試験の日がやってくる。


その後は冬休みだが、何も予定がない為に憂鬱だった。

⏰:11/08/09 13:33 📱:T004 🆔:2k340WRo


#68 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そんな時だ、まさかの俺にお誘いが入ったのは。


しかもそれはあろうことか俺の隣の席の女子からではないか。


『ねえ高見くんってクリスマス何か予定とかある?』

こんな誘いを受けるのは初めてだったから、何と返せばいいのか戸惑った。


『ないけど?』

そうサラッと言うと、その女子は何やらもじもじと下を向いている。

⏰:11/08/09 13:38 📱:T004 🆔:2k340WRo


#69 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それを見た俺はなぜか顔が赤くなってきた。


なんだろう、この感じ。


今まで感じた事もない感覚が俺を襲う。


胸に手を当てる。


心臓がばくばく鳴って動いている。


なぜそんなに鳴る必要がある?


まさか、これが恋という感覚なのか?

⏰:11/08/09 13:42 📱:T004 🆔:2k340WRo


#70 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そんな初めての感覚に興奮してきた俺はなるべく心の内を悟られないように真顔を保った。


しばらくしてその女子がこう言った。


『じゃあ、付き合ってくれない?』


『…は?』

今、何と言った?


よく聞こえなかったぞ。


いや、聞こえてたけど聞き間違いっていう可能性もある。

⏰:11/08/09 13:46 📱:T004 🆔:2k340WRo


#71 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『今なんて言ったの?』

改めて聞き返してみる。


『だから、付き合ってくれない?』

やっぱり聞き間違いではなかったようだ。


さて、どうしたもんか。


ここは一度、彼に相談してみるのはどうか?


いや、そんな報告をしたら彼は裏切られたと思うだろう。


厄介な事になるのは目に見えている。


せっかくできた味方だ。


信頼は時間をかけてじっくり築き上げるものだが、無くすのは一瞬だと聞いた事がある。

⏰:11/08/09 13:51 📱:T004 🆔:2k340WRo


#72 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あのさ、なんで俺なの?』

恐る恐る聞いてみた。


『え? 力ありそうだからいいかな、と思って』

なんだそりゃ。


力あれば誰でもいいんかい、とツッコミたい気分だ。


『力ある奴なら他にもいると思うけど?』


『他の人とはあんま話した事ないから。駄目ならいいよ』

だからなんじゃそりゃ。

答えになってないような気がする。

⏰:11/08/09 13:59 📱:T004 🆔:2k340WRo


#73 [輪廻◆j6ceQ96kak]
前から変わった奴だとは思ってたが、間違いではなかったようだ。


悪いけど前の撤回を更に撤回させてもらおう。


しばらくしてその女子の友達数人がやってきて、俺は信じられない会話を彼女達から聞く事になる。


『荷物係は見つかった?』


『見つかったよ。高見くんが付き合ってくれるって』

…はい?


俺はすかさずその女子の顔を見た。

⏰:11/08/09 14:05 📱:T004 🆔:2k340WRo


#74 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女は…満面の笑みを浮かべてやがった。


『高見っちありがとう』


『さっすがー!』

なんだこの展開。


変なあだ名もつけられているし。


そもそもなんだ。

あの黒板事件の時は俺を冷ややかな目で見ていたのに、この変わりようは…。

⏰:11/08/09 14:14 📱:T004 🆔:2k340WRo


#75 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今更断る訳にもいかず、なぜか俺は彼女らの買い物の荷物係に選ばれてしまった。


『付き合う』の意味を問い正さなかった自分を恨んだ。


苦の期末試験が終わって、冬休みが始まり12月25日のクリスマス当日を迎えた。


女複数に男一人というなんとも悲しいクリスマス。


しかもよりによって荷物係とは…。

⏰:11/08/09 14:21 📱:T004 🆔:2k340WRo


#76 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見っち何してんの、こっちこっち!』

街のど真ん中で大声でその呼び方はやめていただきたい。


次々と店を入っては出て服やら雑貨やらを買いあさっていく女達。


それはある意味、恐ろしい光景であった。


買った袋を次々と俺の腕に引っ掛けていく。


俺は物ではないのだが…。


だが彼女らの楽しそうな顔を見ていると、仕方ないなという気持ちがこみ上げてきた。

⏰:11/08/09 14:31 📱:T004 🆔:2k340WRo


#77 [輪廻◆j6ceQ96kak]
レディーファーストという言葉があるらしい。


俺は嫌な気持ちを忘れて積極的に彼女らをエスコートした。


荷物を言われる前に持ってあげたり、店を出る際にドアを開けてあげたり。


彼女らは楽しめたようだ。


時間はあっという間に過ぎていった。


『高見くん、今日はありがと。助かったよ』

俺は柄にもなく照れ笑いをした。

⏰:11/08/09 14:41 📱:T004 🆔:2k340WRo


#78 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『これお礼だよ』

そう言って女子が俺に差し出したのは、2000円くらいはするであろう金色の招き猫のストラップ。


『さ、サンキュー』

…やばい。


また心臓がばくばく鳴り始めた。


その音は今にも彼女らに漏れそうだった。

⏰:11/08/09 14:45 📱:T004 🆔:2k340WRo


#79 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その音をなんとか聞かれないようごまかそうと、大きな咳払いを何度もした。


『大丈夫? 風邪?』

心配そうに女子が言って、手を平を俺の額に当ててきた。


『……!!』

別の意味で気絶しそうになった。


女子のこういう優しい気遣いに男心がくすぐられてしまうのだろうか?


それなら恋人も悪くないと一瞬思ってしまったのは言うまでもない。

⏰:11/08/09 14:51 📱:T004 🆔:2k340WRo


#80 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は彼女から貰った招き猫ストラップを右手に握ったまま夜の街を後にしていった。


悪くないクリスマスだった。


そしてもう一つ。

俺はこの日を境に初めて彼女に対して恋というものが芽生えた。


やはり恋人なんてものはネットとか、そんな上辺だけのようなやりとりから始めて作るものではないと勉強になった日でもあった―



〜episode4 END〜

⏰:11/08/09 14:56 📱:T004 🆔:2k340WRo


#81 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode5■
『脱・草食系男子』



やっと冬休みが終わった。


普通の奴なら『やっと』ではなく『もう』と思うだろう。


だが俺は、これといった予定がなかったし退屈だったからこれはこれでよかった。


なにより、彼女に会えるのが楽しみで仕方がなかった。


まさかこの俺が人を好きになるなんて、俺と俺の家族だって想像はしていなかっただろう。

⏰:11/08/09 15:04 📱:T004 🆔:2k340WRo


#82 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼女から貰った招き猫ストラップは携帯電話につけて重宝している。


久しぶりの学校、そして教室へと足を運んだ。


誰もまだ登校していない。


一番乗りのようだ。


そういえば昨日まで彼女の事ばかり考えてたせいか、久保の事をすっかり忘れていた。


何か計画を練っているに違いないだろうが、俺は立ち向かってみせる。

⏰:11/08/09 15:10 📱:T004 🆔:2k340WRo


#83 [輪廻◆j6ceQ96kak]
席に座ってストラップを眺めていると、突然携帯電話の着信音が響いた。


ディスプレイを見ると、あのチャラい吉田からだ。


あまり出たくはなかったが、後々怖いのでしぶしぶ電話に出る事にした。


『はい?』


『吉田だけど』

…え?

なんだろう、この果てしなく低い声は。


朝のせいか、テンションが低い気がする。


もしくは…機嫌が悪い?

⏰:11/08/09 15:14 📱:T004 🆔:2k340WRo


#84 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ど、どうしたの?』

嫌な予感がする。

この緊迫したムードはなんだろう。


そして予感は的中したのだ。



『お前さ、今どこにいる?』


『どこって…教室だけど…』

その瞬間、通話がブチっと切られ廊下からバタバタと走ってくる音が聞こえた。

⏰:11/08/09 15:17 📱:T004 🆔:2k340WRo


#85 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は同時に血の気が引いた。


そしてドアが乱暴に開かれると、眉をしかめた吉田が近づいてきた。


『お前、雪乃と付き合ってんの?』


『…え?』

雪乃といえば…俺の隣の席の子で、ストラップをくれた俺の初恋の女子の名前ではないか。


『お前のクラスの久保って奴から聞いたけど、クリスマスの日に一緒にいたんだって?』

この彼の威圧感に、今にも飲み込まれそうな勢いだった。

⏰:11/08/09 15:26 📱:T004 🆔:2k340WRo


#86 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保…。

どこまで俺を苦しめたら気が済むんだ。


これはどう言い訳をしたらいいのか…。


『ん? そのストラップ…』

吉田が招き猫に気がついてしまった。


しかし実際付き合っているわけではない。


…そうだ。

彼女らが登校してきたら彼に納得する説明をしてもらえばいいんだ。

⏰:11/08/09 15:29 📱:T004 🆔:2k340WRo


#87 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それまで何とか俺自身の言葉で少しでも彼をなだめなければならない。


『ちょっと落ち着いて…』


『あ? タメ口かよ』


…え?

なんですかそれ。

同い年に同じ学年のはずだろう?

⏰:11/08/09 15:33 📱:T004 🆔:2k340WRo


#88 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『え? なに? もしかして同い年とか思ってる?』

同じ学年だからそうではないか。


しかし、その言葉を根底からくつがえす言葉を彼は放った。


『同じ学年だけど、俺がいつお前と同い年だって言った?』

…なんだって?


じゃあ…残された可能性は―


『留年?』

⏰:11/08/09 15:36 📱:T004 🆔:2k340WRo


#89 [輪廻◆j6ceQ96kak]
つい口に出して言うと、彼の顔が真っ赤になった。


…俺、殺される?


そんな言葉が脳裏をよぎった。


『お前…ふざけんなよ?』

…怖いんですけど。


この怒り様、幽霊や心霊現象が可愛く見えてくるように思えた。

⏰:11/08/09 15:42 📱:T004 🆔:2k340WRo


#90 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それにしても、久保の奴は吉田にどうやって連絡したのだろうか。


奴と彼には何の接点もないはずだ。


全くタイプの違う二人がどこかで繋がっていたとでもいうのだろうか。


考えても仕方がなかった。


『よ、吉田さん落ち着いてください…』

非常に情けないが、声が震える。


こんな所を女子達に見つかってしまったら俺のイメージががた落ちだ。

⏰:11/08/09 15:46 📱:T004 🆔:2k340WRo


#91 [輪廻◆j6ceQ96kak]
いや、今はそんな事を気にしている場合ではないだろう。


『もう一回聞くわ。雪乃と付き合ってんのかって?』


『付き合ってません付き合ってません!』

そう言って首を横にぶんぶんと振りまくった。


『じゃあそれ、誰から貰った?』

彼の指先には、雪乃ちゃん自身から貰った招き猫ストラップ。

⏰:11/08/09 15:54 📱:T004 🆔:2k340WRo


#92 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここで本当の事を言ってしまったら、修羅場になる事はまず間違いはない。


『え、ええと…11月の誕生日の日に友達から貰いました…』

嘘をついてしまった。

後でどうなるかなんて想像したくもない。



『へえーそれはすごい。フライングゲットできたんだな』


…え?

フライングゲット?


それは、あのハンバーガーショップにある…


いやそれはフライポテトとチキンナゲットだろう。

⏰:11/08/09 16:06 📱:T004 🆔:2k340WRo


#93 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『それさ、俺も雪乃から貰ったんだよね。12月限定発売なんだってよ』


『そ、それは奇遇ですね』

…いや、待て。


今何て言った?


12月限定発売?


…しまった。

大事な所で墓穴を掘ってしまうなんて。

⏰:11/08/09 16:09 📱:T004 🆔:2k340WRo


#94 [輪廻◆j6ceQ96kak]
言うまでもないが、その後本当の事を白状すると彼から大きな一発パンチをくらった訳で…。


俺の頬は真っ赤に腫れ上がったのだ。


脱・草食系男子を目指そうと思っていたが、やはりこのままでいいと思った。


彼のような野蛮人にはなりたくない。


俺はやはり草食系でいる事と草食系の人と関わる方がよっぽど平和だと改めて実感した日であった―



〜episode5 END〜

⏰:11/08/09 16:18 📱:T004 🆔:2k340WRo


#95 [我輩は匿名である]
†horror†も読んでます!こちらも今日読んでハマりました♪
更新頑張ってください☆

⏰:11/08/10 08:41 📱:P03A 🆔:3icoSHyk


#96 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>95さん

そんな嬉しいお言葉…
私にはもったいないです。

ありがとうございます。

2つの作品はジャンルが全く異なるので切り替えが難しいですが、まったり頑張ります☆

⏰:11/08/10 12:30 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#97 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode6■
『一難去ってまた一難』



無念だー


あれから雪乃ちゃんから貰った招き猫ストラップは吉田の奴に取り上げられてしまった。


それもこれも全部…

久保、お前のせいだ。


吉田…アンタもアンタだ。

初めて俺と会った時は彼女なんていないと言っていたのに。


全部罠だったのだ。


久保の奴が先回りして吉田に色々と…。


あくまで俺の想像なのだが。

⏰:11/08/10 13:00 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#98 [輪廻◆j6ceQ96kak]
おかげで俺の初めての恋は塵のごとく消え去った訳で。


まあいいだろう。


仮に雪乃ちゃんに彼氏がいなくて告白したとしてもOKの返事を貰える訳はないと思っていたし。


それよりも疑問に思うのは、彼女みたいなおとなしく変わった子と吉田のような年上肉食系男子がどういう経緯で恋人同士になったのかだ。


全くタイプの違う二人ではないか。


あんなチャラい男…雪乃ちゃんにいつか捨てられてしまえばいいんだ。

⏰:11/08/10 13:09 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#99 [輪廻◆j6ceQ96kak]
うん、捨てられるだろう。


…と、なんとか自分に言い聞かせる毎日。



『おい高見』

今日もか…。


あれから休み時間になると度々吉田が俺を呼びにくる。


その吉田の隣には、まるで腰巾着のように張り付く久保の姿もあった。


この二人が以前から手を組んでいたとは、さすがの俺も予想外だった。

⏰:11/08/10 13:15 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#100 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『下の自販機でコーラ買ってきてや、二人分な』

…はいはい。


金はまた俺が出すんだろうな。


これじゃあまるでパシリだ。


俺がパシリにされる?


俺の高校生活は、ただ普通に平和に目立たず過ごす…そう決めていたのに。


俺が吉田なんかと出会わなければ、こうなる事なんてなかった。


…辞めたい。


不良の餌食になるくらいなら学校なんて辞めたい。

⏰:11/08/10 13:21 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


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