ぼくらのみかた
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#201 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ホラ、雪乃のイチ親友として放っておけないじゃん?』

…そこかよ。

久保はどうでもいいのかよ。


『カナ、ありがとう』

…おいおい、雪乃ちゃん。

君もそこは礼を言う所じゃないから。


この二人が揃うと…とりあえず怖いと思った。

⏰:11/08/15 09:23 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#202 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『今日病院行く前に花でも買ってく?』


『あ、いいね』


『そうそう…隣のクラスのさぁ…』

二人は俺の存在を忘れて女子の会話…いわゆるガールズトークを始めてしまった。


次の授業までまだ時間があるので、立ち上がってトイレへ向かおうと廊下へ出た時…


『高見〜』

この声はやっぱり…。

⏰:11/08/15 09:35 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#203 [輪廻◆j6ceQ96kak]
声のした方を見ると、満面の笑みを浮かべた吉田の姿。


アンタ…他に友達はいないのかよ。


俺も人のことは言えないが。



『なんですか?』


『昨日、久保んとこ行ってきたんだって?』


『だからなんですか?』

…もう面倒くさい。


俺は棒読みで、聞かれた事に対して一言で返した。

⏰:11/08/15 09:40 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#204 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『そんな怖い顔すんなって! 俺だってこう見えて心配してんだよ?』

…いや、そんな笑みを浮かべながら言われても全くそうは見えませんから。


その言葉どの口から出るか。



『でさ、お前…雪乃と二人きりで見舞いに行ったんだってな?』

…出た。


またヤキモチか?


見た目は男らしいけど中身は全く男らしくないな。

⏰:11/08/15 09:45 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#205 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『昨日の夜、雪乃と電話してたらお前と二人で行ったって聞いたんだよ』


『あれは、俺が病院に行こうとしたら雪乃ちゃんも行きたいって言ってきたから…』


『…さすがは俺の女だな。俺に似て人を心配する心遣いができるイイ子よなぁ』


…そこかよ。

顔真っ赤にしてキレてくると思って身構えてしまったではないか。

⏰:11/08/15 09:56 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#206 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あれ高見くん…優斗くんと仲いいんだね』

いきなり後ろから雪乃ちゃんの声がした。


俺は一瞬戸惑ったが、それ以上に吉田が戸惑っていた。


…なぜアンタがしどろもどろしている。


『ちょっと邪魔』

雪乃ちゃんの隣に立っていた野村が、俺じゃなく吉田の方を見て言った。


…え?

野村…今、もしかして吉田に言ったのか?


年上の吉田に?

⏰:11/08/15 10:12 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#207 [輪廻◆j6ceQ96kak]
なんという度胸だろう。


いや、気が強い野村だからこそかもしれない。


一方、邪魔だと言われた吉田は…


『あっ悪い悪い…』

…弱ェ!


野村を前にした吉田の表情はさっきまでの笑みが完全に消え、それどころかまるで野村の顔色を伺うような表情に変わった。


普通の人にとってはヒヤヒヤな空気なのだが、吉田の情けなさそうな顔を見ていたら少し面白くなってきた。

⏰:11/08/15 10:20 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#208 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『うぷっ』

…まずい。

吉田のその顔を見る度に、思わず吹き出しそうになる。


必死に笑いをこらえようと、自分で自分の腕を指で痛くなるほどつねった。


『あ、優斗くん。高見くんにあのストラップ返してあげてね。あれは買い物に付き合ってくれたお礼にあげたものだから』

追い討ちをかけるように、雪乃ちゃんが笑みを浮かべて言った。


『あ、ああ…わかってるって』

おい、本当にわかってるならもっと早くに返せよと俺も追い討ちをかけたい所だよ。

⏰:11/08/15 10:47 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#209 [輪廻◆j6ceQ96kak]
吉田はあたふたしながら一度自分の教室に戻り、少ししてすぐ俺達の所に戻ってきた。


吉田のその手には、久しぶりに見る去年のクリスマスに雪乃ちゃんから貰った金色の招き猫ストラップが光っているではないか。


『ほらよ…』

俺はそれを受け取り、ギュッと強く握りしめた。


吉田は最後に俺に一瞬だけ『覚えてろよ』と言わんばかりの睨みをきかせると、教室に帰っていった。

⏰:11/08/15 11:06 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#210 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん、よかったね』


『あ、ありがとう』

そんなニコニコしながら言われると、つい赤面してしまうではないか。

…もうしているけど。


『雪乃もさ、なんであんなのと付き合ってんの?』

俺達の雰囲気をぶち壊すように野村が割って入り込んだ。


『優斗くんは私のお母さんの親友の息子さんだからね…色々あるんだよ』

…ちょっと待て。

そんな事実初めて知ったぞ。

⏰:11/08/15 11:21 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#211 [輪廻◆j6ceQ96kak]
という事は、親に言われて仕方なく付き合ってる感じですか?


これはこれでチャンスかもしれない。


雪乃ちゃんの方から彼に惚れて付き合ったわけではないとすると尚更だ。


俺はストラップを握りしめた拳を見ながらニヤついた。


恋する前は、そういうは面倒くさいと思っていたが、恋をするとこうも心が生き生きするとは。


性格にも積極性が出てくる感じだ。

⏰:11/08/16 09:25 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#212 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>211 訂正

そういうは ×
そういうのは ○
――――――――――


『ちょっと高見? アンタ何ニヤけてんの?』

野村が俺の表情に気がついてしまった。


『い、いや…なんでもない』


『アンタもしかして…』

…え。

まさか雪乃ちゃんが好きな事バレた?


野村と俺のにらめっこが数秒間続いてから野村が言った言葉に俺は唖然とする。


『アンタまさかとは思うけど、吉田のこと…』

⏰:11/08/16 09:35 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#213 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…は?』

何を言ってるんだコイツと思った。


『あれ、高見くん…そうなの?』

…ちょい待ち!


雪乃ちゃんまでなんでそんな事を!


俺は確かに草食系男子だと思うし、恋愛には興味がなかったよ。


でもさすがに同性を好きになったりなんて、もっとあり得ないから。

⏰:11/08/16 09:40 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#214 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『そんなのあり得ないし』

俺は苦笑いしながら即、否定した。


『…そうだったら面白かったのにねぇ』

そう言う野村は、まるで噂好きのおばさんのようだ。


本人におばさんっぽいなんて言ったら吉田以上のパンチ…いや、ビンタをくらうだろうから言わなかったが。


ともあれ、変なイメージを植え付けられずに済んだ。

⏰:11/08/16 09:46 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#215 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃ、今日の放課後ね。高見、アンタも花買うんだよ』

…言われなくてもそのつもりだから安心してくれ。


そして次の授業を知らせるチャイムが鳴った。


吉田…アンタに止められたせいでトイレに行きそびれたではないか。


でもおかげでこの招き猫ストラップが戻ってきたわけだから、ある意味感謝だな。

⏰:11/08/16 09:56 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#216 [輪廻◆j6ceQ96kak]
次の授業は数学だった。


当然、担当は木下。


『自分は悪くない』みたいなすました顔しやがって。


そう思って先生を影から睨みつけながら授業を受けた。


そして教科書の問題を当てる時、俺と思わず目が合った瞬間に…


『…じゃあ高見。85ページの問1から問5まで答えてもらおうかな』

…なんだそれ。

いつもだったら1問につき一人を当てていた癖に。


あのトイレでの事があってからか、俺は先生の格好の的になってしまったようだ。

⏰:11/08/16 10:13 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#217 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼こそが本当の敵なのかもしれないとその時感じた。


それにしても、的になるんだったら俺の自信のある教科がよかったよ。


数学は全教科の中で一番苦手な科目なのだ。


俺が答えられずに黙っている状態が少し続いた後、隣の席の雪乃ちゃんが一枚の紙をそっと俺の机にスライドさせるように置いてきた。

⏰:11/08/16 10:21 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#218 [みゆ]
ひどい先生ですね><

⏰:11/08/16 11:55 📱:841SH 🆔:oveDIIGk


#219 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>218さん
ありがとうございます。

こんな先生がいたらムカつくな〜とか思いながら書いてます(^^)

⏰:11/08/16 16:04 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#220 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は反射的にその紙をチラリと見ると、それには先生が当てた問1から問5までの問題の答えが完璧に書かれているではないか。


『高見、どうした? わからないかぁ?』

木下は小馬鹿にしたような目つきで言う。


俺はありがたく雪乃ちゃんがくれた答えが書かれた紙をチラチラと見ながら全ての問いに答えた。


『…なんだ。わかっているのなら早く答えなさいよ』

…ラッキー。


カンニングペーパーを見ていた事はバレなかったようだ。

⏰:11/08/17 23:31 📱:T005 🆔:oMmBgzuY


#221 [輪廻◆j6ceQ96kak]
次の休み時間になったら、雪乃ちゃんに思いきり感謝しなくてはならないな。


彼女には借りを作ってばかりだし、そろそろこちらからもお礼をしたい所だ。


そして休み時間―


チャイムが鳴って木下が出ていったのと同時に隣の雪乃ちゃんの方を見た。


『あの雪乃ちゃん…さっきはありがとう』


『…どういたしまして。それにしても、木下先生ひどかったね。高見くんを馬鹿にするような事言ったりして』

そんな事、わかってくれるのは彼女だけだ。

前にも言ったが、一人でも心強い味方がいてくれる事がどれだけ素晴らしい事か。

⏰:11/08/18 00:06 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#222 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見。木下が呼んでるぞ』

前に数学の授業の時に喋っている事を注意された上野が俺の所に来て言った。


指さす方を見ると、ドアの所で木下先生が『来い』と言わんばかりの視線を向けている。


…まさかとは思うがさっきのカンニングがバレたのだろうか?


いや、それならその時点で注意するだろう。

⏰:11/08/18 08:43 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#223 [輪廻◆j6ceQ96kak]
嫌な予感を胸に先生の元へ。


『高見、ちょっと来なさい』

そう言って俺を連れ出して向かった先はトイレだ。


…なぜトイレなのだろう。


以前と同じような雰囲気になった。

木下は俺に背を向けてポケットに手を突っ込んでいる。


『高見。君は昨日、久保のいる病院に行ったらしいな?』

…セーフか?


どうやらカンニングの事ではないらしい。

⏰:11/08/18 08:53 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#224 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『それがなんですか?』

わざわざトイレまで来なくても、廊下で言えばよかったんじゃないか?


『行ったなら、久保の親から聞いているのだろう?』


『え…何を…?』

この後、木下の口から出た言葉に俺は驚愕し言葉を失う事になる。

⏰:11/08/18 09:51 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#225 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『久保は…失声症になってしまったらしい』


『……しっせい…しょう?』

呆然とした。

一瞬冗談だと思った…いや、思いたかった。


『昨日見舞いに行ったのだろう? もしかして聞いていなかったのかね?』


『…………』

こいつ…なんでこんなあっけらかんとした顔をしてるんだ?

⏰:11/08/18 11:57 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#226 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…なっ!』

先生が突然倒れた。

それは当然だろう。


気がついたら俺は先生を殴っていたのだから。


…でもなぜだろう。

口より先に手が出ていた。


それに不思議な事に、先生を殴ったというのに後悔が襲ってこない。


むしろ今は殴って正解だったと心の中にいるもう一人の俺に言われた気がした。

⏰:11/08/18 12:10 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#227 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺に殴られた先生は頬を手で押さえながらゆっくり立ち上がり


『高見…どういうつもりだね、これは…』

と俺を睨みつけながら言った。


『久保…あいつがそうなったのは先生のせいだろ!』


『待ちなさい。一体何の話をしているのかね』

…話にならない。

⏰:11/08/18 20:14 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#228 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『もういいです』

その場を立ち去ろうとした時、先生がとっさに俺の肩をガッと掴んだ。


『待ちなさい』


『もう話す事なんてありませんから』

俺はそう言って肩を掴む手を振りほどいてトイレのドアを開け廊下へ出た。

その際に後ろで先生が言い放った。


『あまり人を簡単に信用してはいかんよ!』

…馬鹿か。


最初から信用してないよ。

先生、アンタだけは。

⏰:11/08/18 20:27 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#229 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その日の放課後、俺と雪乃ちゃんと野村の三人で花屋で花束を買ってから久保のいる病院へ向かった。


『久保くん大丈夫かな…』

病室へ向かう途中の廊下で雪乃ちゃんがやけに心配そうに呟く。


もしかすると雪乃ちゃんは久保の事が…


いやいや、まさかね。


それよりも、木下先生が言っていた事がまだ信じられなかった。

⏰:11/08/18 20:38 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#230 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保が、声を失う病…


つまり…失声症だなんて。


この二人にはもちろん、クラスの皆にも言えなかった。


もし知ったら大騒ぎになる事はわかりきっていたから。


『あった、ここだ』

雪乃ちゃんが病室を見つけ、俺達三人は中に足を踏み入れた。

⏰:11/08/18 20:44 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#231 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あれ、久保くんだけなんだ…』

今日は母親は来ていないようだ。


昨日と同じく奥のベッドで仰向けに寝ている久保の姿があり、傍へ行く。


『久保!』

俺が、目をつぶっている久保に大きな声で呼びかけると、ゆっくりと目を開けた。


『久保くん!』

雪乃ちゃんも嬉しそうに呼びかける。

⏰:11/08/18 20:57 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#232 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『久保、調子はどうなの?』

野村が心配そうな顔で聞く。


しかし久保は応えない。


黙ったまま俺達をジッと見つめている。



喋りたくても喋れないんだ―


そう思った瞬間に、目に涙が浮かんできた。


なんとかこぼれ落ちないように上を向いて、乾いてくるまで待つ。


でも、その不自然な俺の行動に雪乃ちゃんがすぐ気がついた。

⏰:11/08/18 21:07 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#233 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん、泣いてるの?』


『えっ? い、いやそんな事ない…け…ど』

…ダメだ。

女に涙を見せるなんて事したくなかったのに。


『雪乃、こういう時は何も見てない事にしておきなよ』

野村が俺をフォローするように雪乃ちゃんに言う。


『あ、ごめん…高見くん。でも私も泣きたいよ…』

そして俺につられて彼女も泣き出した。

⏰:11/08/18 21:21 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#234 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ちょっとちょっと、雪乃までどうしちゃったのさ!』

いつにもなく野村があたふたしながら言う。


『別に死んだ訳じゃないんだからさ…』

…野村、少しは空気を読んでほしい。


これは悲し泣きではなく嬉し泣きなのだ。


雪乃ちゃんが落ち着くまでの間、俺と野村は久保の傍で顔を見続けていた。

⏰:11/08/18 21:36 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#235 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃ちゃんは嬉し泣きだが、俺の場合は悲し泣きだった事は言わなかった。


しばらくして病室のドアがノックされ、担任が入ってきた。


『あ、先生…』


『心配になってな。それより久保はどうだ?』

担任は久保の顔をちょこっと見てから、隅で泣いている雪乃ちゃんの方を見る。

⏰:11/08/18 21:57 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#236 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『松下…どうかしたのか?』


『先生。空気を読んでください』

野村がツッコミを入れるように言うと、どこからか小さな笑い声が聞こえた。


それは雪乃ちゃんでも野村でも担任でもない。


そう、久保だった。


『久保!』

俺は誰よりもすぐに久保に声をかける。

⏰:11/08/18 22:10 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#237 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ちょっと高見…いきなりどうしたの?』

野村が不思議そうに聞いてきたが、俺は無視して久保の顔を凝視した。


『久保…よかった。そうやって笑えるんだな』


『高見、ちょっと聞いてる? というか…生きてるんだから笑うに決まってるじゃん』


『野村…それはなんか失礼じゃないか?』

担任と野村は、漫才のようなやりとりを見せていた。

⏰:11/08/18 22:20 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#238 [輪廻◆j6ceQ96kak]
失声というからには、笑う事すらもできないと思っていたが、違ったようだ。


『先生、ちょっと久保の状態を聞いてくるな』

そう言って担任が病室から出ていった。


担任も、久保が失声症だということは聞かされていなかったようだ。


では、なぜ数学の木下先生には知らされていたのだろうか。

⏰:11/08/18 22:32 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#239 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もしかすると木下先生は昨日、ここに来たのではないか?


それなら納得できるけど、あの先生が担任でも副担任でもないクラスの生徒のいる病院にお見舞いに来るのには違和感を覚える。


すると、誰かを通して知った事になる。


…久保の母親だろうか?


木下先生にはもう話す事はないと言ったが、今すぐにでも言いたい事ができてしまった。

⏰:11/08/18 22:40 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#240 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しばらくして、担任が血相を変えて戻ってきた。


『先生…どうかしたんですか?』

担任は野村を無視して久保の傍に駆け寄る。


『ちょっと! 先生まで無視ですか…』


『野村! いい加減にしろよ!』

久保の事を何もわかっておらず、ふざけている野村に我慢できなくなった俺は彼女相手に初めて声を荒げた。

⏰:11/08/18 22:59 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#241 [輪廻◆j6ceQ96kak]
野村は俺の声に驚いて周りの空気を悟ったのか、おとなしくなった。


『先生、久保くんどうかしたんですか?』

そう言う雪乃ちゃんの顔は、たくさん泣いたせいか目の回りが真っ赤になっている。


『今担当の先生から聞いてきた。久保は…心因性失声症という病気にかかったと…』

担任のその言葉を聞いた雪乃ちゃんと野村は、途端に呆然となった。

⏰:11/08/18 23:11 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#242 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『先生…心因性ってどういう事ですか…?』

雪乃ちゃんが震えた声で担任に聞く。


『主に精神的なショックやストレスなどが原因という事だ』


『…それってやっぱり、久保くんが謹慎になった事が関係しているんですか?』


『松下…知っていたのか』

そう言って担任は俺に何か言いたげな視線を向けてきた。

⏰:11/08/18 23:27 📱:T005 🆔:wwhjTjoQ


#243 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…まあいい。皆にはいずれわかる事だしな』

…危ない。

雪乃ちゃんに言ってしまった事で怒られるかと思った。


『皆へは、来週の期末テストが終わってから言う。それまでこの事はお前達の胸にしまっておいて欲しい』

担任のお願いに、俺達は小さく頷いた。

⏰:11/08/19 08:28 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#244 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『よし、じゃあ先生はテストの問題作りがあるから学校に戻るな。お前達もあまり遅くまでいないようにな』

担任は俺達に手を振って、病室をあとにしていった。


『じゃあウチらもそろそろ帰る?』


『雪乃ちゃん、野村…先に帰っていいよ。俺はもうちょっとだけ残る』


『カナ、私も残るから帰っててもいいよ』

俺と雪乃ちゃんが残ると言った中、野村は申し訳なさそうな顔をして『じゃあ帰るわ』と言って病室を出ていった。

⏰:11/08/19 08:44 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#245 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん…私、高見くんに謝らなくちゃならない事があるの』


『え…?』

彼女が謝るような事何かしたか?


『昨日の帰り道で高見くんから聞いた事…実は知ってたの』


『どういう事?』

つい疑問系で聞いたが、薄々わかってきた気がする。

⏰:11/08/19 09:06 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#246 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『前に優斗くんから聞いてたの。木下先生の娘さんと久保くんが付き合ってる事とか、謹慎になったのは久保くんだった事とか…』


『そうだったんだ』

…吉田のやつ、この場合だと他の人に言いふらすのも時間の問題だろう。


『昨日は、初めて聞いた事にしちゃってごめんなさい』


『いやいや、別にそんな謝るような事じゃ…』

深々と頭を下げる彼女に、俺は必死に頭を上げるように言った。

⏰:11/08/19 09:21 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#247 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その時だった。


『た………か…………み…』

ベッドにいる久保が途切れ途切れの声で俺の名前を呼んだ。


俺と雪乃ちゃんは驚いて、すぐ久保の傍にいった。


『久保くん! 喋れるの!?』

俺が話しかける前に雪乃ちゃんがすかさず話しかける。

⏰:11/08/19 09:30 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#248 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…き…きて……』

かなり近くに寄らないと聞き取りづらい小さな声ではあったが、俺はとにかく久保が喋れる事に安心した。


『久保、なんだ?』


『きて……く……れ…て……さ…』

雪乃ちゃんは首をかしげていたが、俺は久保が何を言いたいのか理解できた。

⏰:11/08/19 09:36 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#249 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…ああ、お前の友達なんだから当たり前だろ。それよりあまり無理して喋ろうとするな』


『高見くん…久保くんが何て言ってるのかわかるの?』


『うん、もちろん』

例え喋れなかったとしても、友達だったら心で通じ合えるものだと誰かが言っていた。


『……うう』

久保が少しでも喋れる事に安心したのか、雪乃ちゃんがまた泣き出した。

⏰:11/08/19 09:45 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


#250 [輪廻◆j6ceQ96kak]
こういう場合になんと声をかけてあげればいいのかわからない俺は、申し訳ないと思いつつも何も見ていない事にした。


『久保、何か言いたい事があったらここに書いて』

俺は鞄からノートと鉛筆を取り出して久保に渡した。


無理して喋らない方法は、メールのように文章を書いて伝える事だろう。


久保は早速ノートに字を書き始めた。

⏰:11/08/19 09:56 📱:T005 🆔:CS3FwOpI


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